この素晴らしい世界に聖石を!   作:ホムラ

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第二十五話

「お客さん、着きましたよ。ここが水と温泉の都アルカンレティアです

 どうぞごゆっくり!」

 

カズマパーティが原因で走り鷹鳶とアンデッドに襲われた翌日

 

今日は何事もなく目的地にたどり着く事ができた

 

「ここがアルカンレティアか。なぁゆんゆん、アクシズ教の総本山だって話だったが

 ……なるほど、確かにそのようだな」

 

「え!?まだ話しかけられてもないのに分かるんですか?」

 

物陰から数人、馬車から降りた俺達の様子を窺っている奴が数人いる

現にカズマ達が既に絡まれてるし

 

「ようこそいらっしゃいましたアルカンレティアへ!観光ですか?冒険ですか?そ・れ・と・も、アクシズ教への入信ですか!?

 今入信していただくと――」

 

「ただの観光ですからお気になさらず!」

 

俺は怪しいセールストークをしてくる修道服の女性を言葉を遮り、さっさと宿を目指すことにした

 

「おいカズマ、さっさと宿に行こうぜ」

 

「そうだな、アクアとめぐみんはアクシズ教団本部に行くそうだから、俺達だけで先に温泉を満喫しようぜ」

 

どうやらアクアとめぐみんは別行動をとるようだった

 

ゆんゆんもめぐみんの方に付いて行きたそうにしていたので軽く促してみると

教団本部には付いて行かず、宿に向かう方を優先した

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「いらっしゃいませ!旦那様からお話は伺っております!どうか、ごゆるりとおつくろぎください!」

 

カズマが貰った宿泊券に書かれていた店に向かうと、手厚く歓迎された

 

俺とゆんゆんは特に何もしていなかったのだが、カズマの仲間だという事で俺達の分の宿泊券まで渡してくれた

最初は断ったのだが、どうにも押し切られてしまった

 

従業員に案内され、部屋へと向かい荷物を下ろす

 

「なぁツバサ、夕飯まで外をうろつこうと思ってるんだけど、一緒に行かないか?」

 

そうだな、今から温泉に入るのもいいが折角アクセルから出てきたんだ、この街の観光もいいかもしれないな

 

「ああ、行くよ」

 

「ダクネスとウィズ、それにゆんゆんはどうする?」

 

カズマが他のメンバーも観光に誘う

 

「私も行こう、アクセル以外の街をあまり知らないのだ」

 

「私はここでのんびりさせてもらいます」

 

「わ、私もここでのんびりしようかと思います」

 

ダクネスは観光に付いて来るが、ウィズとゆんゆんは残るようだった

 

「キュウッ!」

 

レウスはついてくる気満々だった

 

手ぶらでは何が起こるか分からないから、俺はテン・コマンドメンツからレイヴを外し

それだけ持っていくことにした

 

街に出ると、観光地というだけあって商売人が多い

 

軽く覗いたりしてみたが、珍しいものもあり買う物に困ってしまう

 

「おいそこの兄ちゃん!肩に見たことないワイバーンを乗せてる兄ちゃん!」

 

屋台を見て回っていると、突然声をかけられた

驚き気味に振り向くと、ドワーフのおっさんが店から顔を出していた

 

「どうだい兄ちゃん、ワシん所のドワーフ族特製肉饅頭を買わないかい?

 肉汁たっぷりで旨いぞ」

 

確かに旨そうな匂いがするな

 

「キュル~」

 

レウスも涎を垂らしながら饅頭を凝視している

 

……お前そんなに食いたいのか

 

「じゃあ饅頭二つくだ――」

 

「ちょっと待ってくださいお客様!」

 

俺が饅頭を買うのを遮るように、後ろから声を上げられた

 

「そんな下品な店で買うとお客様の品位が疑われますよ?高貴なお客様にふさわしい、天然素材オンリーで作られたエルフ族特製のアルカン饅頭です。どうか、こちらを見て行ってくださいませ」

 

「あ、スイマセン。俺品位なんて気にしない人で、今は肉饅頭の方が食べたいからコッチでいいです。また後日見させていただきますね」

 

何か言おうとしていたドワーフよりも先に営業スマイルで断らせていただいた

なんか嫌な予感がしたし、アクシズ教の総本山だ。些細なことでも警戒した方がいいだろ

 

俺は肉饅頭を二つ買い、近くのベンチでレウスに食わせてやる

 

「…キュ~ゥ」

 

そんなに旨かったのか、レウスが至福の顔をすると饅頭を夢中になって食べ始めた

 

「さて、それじゃあ俺も」

 

饅頭を一口かじると、中にあった肉から肉汁がこれでもかってくらいジュワっとあふれだし

肉も脂が乗っていて、口の中でとろけた

 

酢豚みたいな肉だと思ったが、それ以上に柔らかいと感じた

 

一体どんな製法で作ったのか気になるな、レシピは……聞いても教えて貰えなさそうだな

 

饅頭を食いながらカズマの様子を窺うとドワーフとエルフの客引きにより、両方の饅頭を交わされていた

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

饅頭を買った後、観光の続きをするつもりでいたが

カズマが気になる情報を持ってきたので俺は宿に戻ってきていた

 

カズマが聞いた話によると、ここ最近、温泉の質が落ちてきているらしい

 

温泉で疲れを癒しに来たのに、その温泉に体調を崩されるなんてまっぴらごめんだ

専門家が調査しても分からなかったとの事だが、ルーンセイブで毒素だけを取り除く事も出来るだろう

 

「…あれ?ウィズとゆんゆんが居ないな」

 

「キュルル」

 

レウスも部屋の中を見渡し、二人が居ない事に不思議がっている

 

二人で観光に出たのか?

のんびりすると言っていたが気が変わったのだろうと思い

テン・コマンドメンツを持ってこの宿の温泉に向かった

 

「従業員さんは此処の温泉は無事だと言っていたが、用心に越した事はないからな」

 

本来温泉に武器の持ち込みは禁止だが、ルーンセイブで温泉の効能を無くさず毒素だけ無くす事が出来ると証明したら、快く持ち込みを許可してくれた

 

ただし、ルーンセイブを使ってすぐに脱衣所のロッカーに直すという条件付きだが

 

まぁその条件も妥当だと思うし、俺も剣を持ったまま温泉に入るつもりはないので文句は言わなかった

 

因みにレウスは部屋で留守番である

ここ数日、俺やゆんゆんが居なくても泣き叫ぶ事がなくなった

 

……毎朝の体当りはまだ続いているが

 

まぁそれはともかく、今は温泉の毒素を取り除いてゆっくりしよう

 

俺はそう思い店員さんに勧められた広い方の露天風呂へ入ると――

 

「ツ、ツバサさんっ!?」

 

ゆんゆんと鉢合った

 

「「……………」」

 

OK、今の状況を整理しようじゃないか

 

まず俺はカズマに誘われて街へ出た、そこで温泉に関して気になる情報を聞いたので

宿へ戻り、念の為ここの温泉を浄化しようと、テン・コマンドメンツを持って露天風呂へ入ろうとしたらゆんゆんと鉢合わせたと……

 

うん、どういう状況なんだこれ?

 

「……キ、キャァアアアアアアア!!何で此処に居るんですかツバサさん!!」

 

ゆんゆんはタオルで体を隠しながら、そう問いかけてきた

 

「いや、なんでって言われても…」

 

俺はゆんゆんから目をそらしつつ、ここに来た経緯を話した

 

「理由は分かりましたけど、女湯に入ってくるなんて信じられません!!」

 

「女湯!?ちょっと待ってくれ、俺は確かに男湯に入ったぞ!!」

 

何だ?お互いの意見が食い違ってるが

 

「てか、ゆんゆんはなんでこの扉の前にいたんだ」

 

「私達が出てきた所の反対側にあるこの扉は何だろうと思って、調べようとしてたんです」

 

ん?それってつまり

 

「なぁゆんゆん、こっちの露天風呂って混浴なんじゃ」

 

「へ?」

 

俺とゆんゆんの間に再び沈黙が訪れた

 

そしてこの沈黙を破ったのは意外な人物だった

 

「あ、ツバサさん。観光は終わって温泉ですか?ツバサさんも店員さんに広くて気持ちいいこちらの混浴を進められたんですか?」

 

女湯の入り口であろう場所からタオル姿のウィズが現れた

 

「ててて、店主さん!ここが混浴だって知ってたんですか!?」

 

「? はい、知ってましたけど……私言いませんでしたっけ?」

 

「聞いてないですよ!」

 

どうやらゆんゆんはここが混浴だったと思っていなかったらしい

 

つか表示くらいちゃんと見ろよな…

 

「……んじゃ俺は温泉の浄化して男風呂の露天風呂に行くわ」

 

俺はこれ以上面倒ごとに巻き込まれないために、浄化だけ済ませて男湯の方へ戻ろうと思ったのだが

 

「ツバサさん、折角ですからお背中流しますよ」

 

「あ、私もお手伝いします!」

 

ウィズとゆんゆんに引き留められてしまった

 

「……どうしてこうなったんだ」

 

その後、俺は抵抗できずウィズとゆんゆんに背中を流され

一緒に温泉に浸かる事になったのだが…

 

あまりの緊張と現実逃避により、部屋に戻るまでの記憶がなかった




最後やっつけみたくなってしまいスミマセン

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