この素晴らしい世界に聖石を!   作:ホムラ

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第二十話

ちょむすけとレウスの戯れの翌日

 

俺とカズマは客間でウィズの店に置くための商品の設計を行っていた

 

「こうしてみると、案外作れそうなものが多いな」

 

「そうだな、コタツにオイルライター、ランタンと、他にも数を上げるとキリが無さそうだ」

 

今は作れそうなものをリストアップして、それから簡単に量産できそうな物から試作品を作る

現段階ではこんなもんだが、いずれこのリストの商品を量産にまでもっていかなければならない

 

「……量産まで考えると、先の長い話だな」

 

とりあえず俺達は、日常でも使えるライターから着手しようという結論になり、話を進めていると

 

「カズマ!アクアから此処にいると聞いたぞ!大変なんだ、聞いてくれ!!」

 

俺達が作業を進めていると突然、普段の恰好とは違い、清楚姿のダクネスが押しかけて来た

その姿はまるで、貴族のお嬢様といったところか

 

って、おいちょっと待て

 

「おいこらダクネス!急ぎのところ悪いが、今すぐ靴を脱いで来い!土足で上がってんじゃねぇよ!!」

 

「は?何を言っているんだツバサは、家の中で靴は普通だろう」

 

「この家は特別なんだ!さっさと靴脱いで、この雑巾で歩いて来たところ掃除しやがれっ!!」

 

俺は棚にしまっておいた雑巾をダクネスにぶん投げる

 

なんかダクネスがドМ発言をしていたが無視して作業に戻った

 

そしてしばらくすると

 

「お、終わったぞツバサ…」

 

俺は廊下を確認し、足跡が付いてないことを確認する

 

「よし、良いだろう」

 

「急いでいるというのに、掃除させられるとは…」

 

「それでダクネス、何の用だ?」

 

「そ、そうだったカズマ!聞いてくれ!!」

 

ダクネスがカズマと話を始めたので、俺は一旦離れることにした

そしてその数分後、カズマは用事が出来たと言って帰って行った

 

ダクネスの恰好と関係でもあるのだろうか?

 

まぁ、その用事の内容は次の日カズマに聞かされたんだがな

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

昨日のダクネスに邪魔されてしまった作業の続きをしていると、またしても招かれざる客が押しかけて来た

 

「サトウカズマはここかあああああ!!」

 

………またか

 

「なな、なんだよこんなところまで!またカエルか!?それとも、別の問題が起こったのかよ!」

 

カズマが先日の軍服メガネの女性に若干気圧されながらも尋ねる

 

が、軍服メガネに答える時間は俺が与えなかった

 

「お前もかぁあああああ!!」

 

「―――っ!?な、何だ貴様、急に大声を出すな!」

 

俺の叫びに気圧されたのか、今度は軍服メガネが気圧される

 

「大声も出したくなるわ阿呆が!いいか、この家は土足厳禁だ!お前入口に書いてある土足厳禁の文字が見えなかったのか!?急いでいたから読む気なんてなかったなんて言うなよ?

 注意書きも読まずに人の家に土足で、しかも許可なく上がり込んでるんだ。もちろん廊下の掃除くらいはやってくれるんだろうな?」

 

「………は、はい」

 

俺は満面の笑みで廊下掃除を頼んだら、軍服メガネの女性は快く引き受けてれた

 

その後掃除が終わり、ビクビクしながら客間でカズマと話をし始めた

 

話に同席させてもらったが、カズマが以前行って来たというキールのダンジョンから謎のモンスターが大量に湧き出ているのはカズマの仕業ではないかという内容だった

 

因みにキールのダンジョンの話と聞いて、カズマのパーティが全員ここに集まっている

 

……なぜここに集まるんだ

 

今回の騒動は全面的にカズマ達が否定して、軍服メガネは帰って行った

 

のだが……

 

「おい、お前今なんつった」

 

なんて言ったのかは知らないが、アクアの言葉を聞いたカズマが、突然アクアの肩を掴んだ

 

「?な、なによ急に。言った通りよ、あそこには私が本気で作った魔法陣が、今もその力を発揮しながら、モンスターを寄せ付けないように――」

 

「このバカがああああああ!!」

 

アクアが最後まで言う前に、カズマが絶叫を上げた

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

俺は今、カズマ達と共にキースのダンジョンへと来ている

なぜ俺が巻き込まれたのかは知らないが、ちょっと興味があったから文句は言わない

因みにゆんゆんは別件で留守にしている

その為、俺の肩にはレウスがいる。本来ならゆんゆんにレウスの事を任せてここへ来たかったが、レウスが駄々を捏ねるので仕方なく連れてきた

 

で、現在どうなっているのかというと

 

「フフフフ。ハハハハハハハッ!カズマ、見ろ!当たる、当たるぞ!こいつらは私の剣でもちゃんと当たる!」

 

先頭にいるダクネスが、攻撃を避けようとしない人形を、嬉々としてバサバサと斬りまくっていた

 

普段攻撃が当たらないからかなり喜んでいる

今回は俺達以外にもパーティが付いて来てるのだが、そいつらは

 

「おおい、ちょ、ちょっと待ってくれ!もっとゆっくり……!」

 

予想外の速度に遅れ始めていた

 

しかし、そんな事はお構いなしにダクネスはガンガン進んでいき

 

「ちょっ……!ああああ、張り付かれた!おい誰か、コイツを剝がしてくれ!」

 

「おわあ、来んな!こっち来るなあ!」

 

隙間とかに潜んでいた人形が遅れた冒険者に張り付いたらしい

この人形の爆発力は確かに脅威だが、鎧を着ているから死ぬことはないだろう

 

「ダクネスその調子だ!そっちを真っ直ぐ!ガンガン進め!」

 

「よし任せろ!ああっ、なんだこの高揚感は!自分が初めてクルセイダーとしてまともに活躍している気がするっ!」

 

なんかとんでもない事を叫びながら、順調に奥まで進み

カズマから聞いた目的の部屋近くにたどり着いた

 

「……なぁカズマ、俺の目が確かなら、人形の主が胡坐かいてるんだが」

 

「大丈夫だツバサ。俺も同じものが見えてる」

 

俺の目に入って来たのは、地面の土をこねて人形を作るタキシードを着た仮面の男だった

人形と同じ仮面をしているから間違いないだろう

 

てか人形作りに夢中なのか、こちらにまったく気が付いていない様子だ

 

どうしたもんかと考えていると、ダクネスがズカズカと仮面の男に近づいていき

 

「……おい。貴様、そこで何をしている。その人形を作っているという事は、貴様がこのモンスター騒ぎの元凶という事で間違いないな?」

 

大剣を構えたダクネスが仮面の男に話しかけると、ようやく気が付いたようで、こちらに顔を向けて来た

 

「……ほう。よもやここまで辿り着くとは。我がダンジョンへようこそ冒険者よ!いかにも、吾輩こそが諸悪の根源にして元凶!魔王軍の幹部にして、悪魔達を率いる地獄の公爵!この世の全てを見通す大悪魔、バニルである!」

 

思いがけない大物に、カズマが後ずさる

肩にいるレウスは多少怯えながらも威嚇している

 

飛竜も恐れる魔王軍の幹部か……

 

俺は背中のテン・コマンドメンツを抜き、戦闘態勢に入った

 

「ダクネス、ツバサ!コイツは俺達三人じゃどうにもならん。何とかしてここから逃げるぞ!」

 

「何を言う!女神エリスに仕える者が、魔王軍の幹部、しかも悪魔を目の前にして引き下がれるか!ここで刺し違えてでもコイツを倒す!」

 

「ダクネスの言うとおりだ!こんな面白そうな相手を前にして引き下がれるか!

 それにだ。魔王軍の幹部が簡単に逃がしてくれると思うな!」

 

「キュキュウッ!!」

 

レウスもやる気でいる。生まれて間もないのにたくましい奴だ!

 

「ほう。我を倒すだと?魔王より強いかもしれないバニルさんと評判の、この我を?

 しかし……。そこの男に風呂場で裸を見られた際、己の割れた腹筋を見られてないかを心配する娘よりも、最近自宅を持ち喜びをかみしめてはいるが、厄介事が増えるばかりで頭を抱えている男よ」

 

バニルと名乗った悪魔はジッとこちらを見ると

 

「…珍しい飛竜を連れているな。貴様のか?」

 

「……この飛竜は俺の家族だ!」

 

「キュイッ!!」

 

俺の言葉が分かったのか、レウスも力強く答えた

 

「フハハッ!フハハハハハハハハハハ!なんと愉快な答えか!モンスターと人間が家族か!我輩も長く生きているが、貴様のような人間は初めて見たぞ!」

 

「……そりゃどうも。それで?一応俺達はこの人形の原因を探してここにたどり着いたわけだが、お前を倒せば人形はいなくなるのか?」

 

俺は再びアイゼンメテオールを構える

しかしバニルは胡坐をかいたまま

 

「まあ落ち着くがいい。我輩は、別にお前達と争うためにこの地へやって来た訳ではない。魔王の奴に頼まれた、とある調査。そして、アクセルの街に住んでいる、働けば働くほど貧乏になるという不思議な特技を持つ、ポンコツ店主に用があってここに来たのだ」

 

バニルの言葉に、俺達は顔を見合わせた

 

その後俺とカズマは、バニルの前に座り話を聞いた

 

要点だけまとめていくと

バニルは結界の維持だけしている名ばかりのなんちゃって幹部であり、人間を殺すつもりはないそうだ

そしてここに来た理由は、以前現れたデュラハンを倒した人間の調査で来たらしい

本命の予定はアクセルにいるという古い友人に会う事らしいが

 

だが街へ行く途中、このダンジョンを見つけ勝手に住み着いたとの事だった

 

「あんた、さっきは俺達人間に傷つかれちゃ困るみたいな事を言っていたが、この人形達は何なんだ?ダンジョンからポコポコ出てきて、街の人達が随分難儀してるんだが」

 

カズマの言った質問は俺も気になってた事だ。返答次第じゃ今すぐ斬らなくてはならないが

 

「……む?我輩はこやつらを使い、ダンジョン内のモンスターを駆除していたのだが。ふむ、ダンジョンの外に溢れ出しているという事は、もうこのダンジョン内にはモンスターはおらぬ様だな。それならば、バニル人形の量産は中止し、そろそろ次の計画に移行するとしようか」

 

「次の計画?おいお前、何を企んでいやがる」

 

俺の問いに、バニルは人形を土に戻しながら答える

 

「企みとは失敬な。夜な夜なその飛竜に腹の上で寝られ苦しんだ挙句、翌朝の朝食前に必ずボディタックルを食らう男よ。我輩には、悪魔としての大きな夢があるのだ。この地には、それを叶えに来た」

 

「……ツバサ、お前かなりハードな朝を送ってたんだな」

 

「おい止めろよ。その同情した目は何だ?」

 

なんかカズマとダクネスに温かい目を送られた

因みにレウスは首をかしげている…

 

「悪魔の抱く夢ってえらく物騒な夢の気がするな。とりあえず、どんな夢なのか聞いてもいいか?」

 

バニルは俯き話し始めた―――

 




次回はバニルとの戦闘となります!

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