この素晴らしい世界に聖石を!   作:ホムラ

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第十七話

リザードソルジャー討伐・ゆんゆんとの出会いから数日が経ち

 

「…なぁゆんゆん、今どのへんか分かるか?」

 

「えっと、あと少しでアクセルの街の筈なのですが……」

 

俺とゆんゆんはアクセルの街を目指して、歩いていた

 

何故歩いているのかというと、火山地帯近くの街から馬車に乗ったところまでは良かったのだが

整備不良で車輪が外れ、ついでに馬も逃げ出すと言う不運に見舞われたからだ

乗っていたのが冒険者の俺とゆんゆんだけだったのは幸いなのか?

 

事故が起きた場所も悪く、一番近い街が出発した街だという

御者は街に戻ると言っていたが、街へ戻って再び馬車に乗るとしても、到着日は此処から歩いて戻るより遅くなってしまうので、俺とゆんゆんはアクセルまで歩くことにした

 

計算では三日も歩けば着くだろうと思っていたが、かれこれ四日くらい経ってる気がする

流石に雪の中を歩き続けるのはしんどいぞ、何度この卵を捨ててやろうかと思った事か

何気に重いんだよコイツ

 

捨てようとする度、ゆんゆんが悲しそうな目で見てくるから捨ててこなかったが

ここは心を鬼にして捨ててしまおうか

 

いやでもなぁ、自分で持っていくとか言い出しそうだしなぁ

 

「あっ!ツバサさん、この辺見覚えないですか!?」

 

ゆんゆんが嬉しそうに目の前の雪原を指さしていた

 

俺は辺りを見渡し、記憶をたどる

確かにこの辺はアクセルの街の近くの草原だった場所に地形が似てる

それ以外に、遠くに見える山にも見覚えがあった

 

「確かにアクセルの近くだな。やっと帰って来れた」

 

「流石に疲れましたね」

 

俺とゆんゆんが安堵していると、遠くの方からズシンッ!という重たい音が聞こえて来た

聞いたことのある音や振動だなと思っていると、丘の上からカエルが出て来た

 

「「カ、カエルっ!!?」」

 

おいおい、今は真冬だぞ!カエルは冬眠中じゃないのか?

 

何かおかしいと思った俺とゆんゆんは荷物を物陰に隠して、急いでカエルの元へ行くと

 

「カズマー!早くしてー!早くして―!!」

 

聞き覚えのある叫び声も聞こえて来た

 

あー、カエルが起きたのはカズマ達が原因か?また厄介な事してるな

 

呆れつつも戦闘しているところまで行くと

 

ちょうどめぐみんがカエルに食べられたところだった

 

「ああっ!めぐみんっ!!」

 

その光景を見てゆんゆんが悲鳴を上げる

てかゆんゆんの言ってた友達って、めぐみんの事だったのか

 

ゆんゆんは慌ててめぐみんを食べたカエルの近くまで行くと

 

「『ライト・オブ・セイバー』ッ!!」

 

俺の時と同じように、光の刃でカエルを斬り裂いた

 

「ゆんゆんだけにいい格好はさせないぜ!『シルファードライブ』!!」

 

俺はカズマ達に迫っていた三匹のカエルに爆撃を放ち、カエルは香ばしい香りと共に倒れた

爆龍の十二翼からシルファードライブへ名称を変更した理由は、原作でもそうだったように

『爆発の剣と爆炎の剣との連携技』と誤認されないようにするためだ。深い意味はない

 

「今のは上級魔法……!こんな駆け出しの街に、上級魔法を使える者がいるなんて……

 それに爆発を起こす剣なんて、聞いたことが無い……!」

 

眼鏡をかけた軍服のお姉さんが驚きの声を上げた

そんな彼女を他所に

 

「ツバサっ!お前今までどこ行ってたんだよ!!お前が居なかったせいで俺は、俺はなぁ!!」

 

カズマが俺の肩を激しく揺さぶる

 

「何なんだいきなり!やめろってカズマ!!」

 

その後何とか落ち着かせたカズマから事情を聴かされた

 

話を聞くと、俺がアクセルを出た次の日にデストロイヤーっていう起動要塞が現れ、その動力源であるコロナタイトをランダムテレポートで飛ばしたら、運悪く領主の屋敷を吹き飛ばして

国家転覆罪で拘束されたと

 

話を聞く限り理不尽な事ばかりだな、状況が状況だったからランダムテレポートは仕方ないだろうに、死人も出てないって言うんだから屋敷の一つや二つ、街がなくなるより安いもんだろ

なんて心の狭い領主なんだ

 

そういえばデュラハンの時もそうだったな、洪水による街への被害額の一部を払えって、おかしいだろ普通

魔王軍の幹部の一人を倒したんだぞ。普通だったら駆け出し冒険者しかいない街なんて速攻で壊滅してるはずだ

それを撃退じゃなくて討伐したんだ、金払えってのはおかしすぎる

 

ふむ、それにしてもデストロイヤーか

 

「確かに俺が居たら楽勝だっただろうな」

 

封印の剣でコロナタイトの暴走を止めれただろうし

 

「ホントなんで肝心な時に居なかったんだよ!」

 

「だからクエストと重なったんだから仕方ないだろ。それにお前らだけでどうにかしたんだろ?俺に頼るのは間違ってると思うぞ」

 

「お前が居なかったせいで俺は犯罪者扱いなんだぞ!」

 

「落ち着け、一応処刑は間逃れたんだろ、良いじゃねぇか」

 

「……言いたいことは山ほどあるが、今は黙っておこう

 それより、その子は?」

 

カズマはゆんゆんの方を見て、俺に訪ねて来た

 

「あぁ、今回のクエストで俺を救ってくれた命の恩人だよ

 アクセルに戻るのも偶然重なったんだ。名前は―――」

 

「―――久しぶりねめぐみん!」

 

カズマにゆんゆんを紹介しようとしたのだが、ゆんゆんの方が話の腰を折ってきた

 

「…めぐみんの知り合いか?」

 

「みたいだな、俺もさっき知ったばかりだ」

 

目の前でめぐみんとゆんゆんの言い合いがされているが、俺は話を続ける

 

「名前はゆんゆん、めぐみんと同じ紅魔族でアークウィザード、中級魔法と上級魔法を使えるらしい。今までアクセルに居なかったのは上級魔法を習得するために旅に出てたんだと」

 

「―――学園で同期だった!めぐみんが一番で、私が二番で!私は上級魔法を使えるようになるまで修行して来るって……!」

 

「……おい、学園でお前が一番だとか、なんか聞き捨てならない事が聞こえたんだが」

 

めぐみんが一番っていうのは俺もビックリだ…

 

「今更何を。初めて出会った時に、紅魔族随一の魔法の使い手と名乗ったはず」

 

あぁ、確かにそんな事言ってた気がする……

 

その後ゆんゆんとめぐみんの言い合い(?)を聞いていると

どうやら二人は勝負してめぐみんはゆんゆんの弁当を巻き上げていたらしい

 

勝負の賭け対象が弁当ってどうなんだ

てかゆんゆんは何時も負けてたのか

 

「ねえねえ、長引きそうなら私は先にギルドに行ってきてもいい?カエル肉が痛んじゃう。ギルドの人を呼んで、運んでもらってもいい?」

 

アクアが数匹のカエルを指さして言ってきた

 

「……ふむ、何やら積もる話もありそうですね。では、自分も今日のところはこれで

 ……サトウカズマさん、今日はあまりにもあんまりな冒険の姿でしたが、これが、自分の目を欺くための演技だという可能性も捨ててはいませんよ。………自分はまだ、あなたを信用してはいませんから」

 

軍服メガネの女性がカズマにそう言って帰って行った

 

コイツは一体何をやらかしたんだ?

まぁいいや、俺はとりあえず隠した荷物を取ってくることにしよう

 

俺は一旦、荷物を隠した場所へ向かい、ゆんゆんの荷物も持ってカズマ達のところへ戻ると

丁度めぐみんとゆんゆんが勝負をするところだった

 

「……ねえめぐみん。ちょっと待って。……その、あなたの体がテラテラしてるんだけれど。それってもしかして…………」

 

「そーですよ。これはカエルの粘液です」

 

さっきから気になってたが、やっぱカエルの粘液だったか

そもそもさっき、食われてるところを助けたから、粘液まみれなのは当たり前か

 

「先程は助かりました。この全身ねっちょりは、全てカエルのお腹の中の分泌物です」

 

今回は口の中だけでは済まなかったのか……

 

「……さあ、そんな事より掛かってきなさい!近づいた瞬間に、思いっ切り抱きついてそのまま寝技に持ち込んであげます!」

 

うわ、あの粘液まみれの体で寝技されるとか嫌だぁー

俺と同じ想像をしたのか、隣ではカズマも鳥肌を立てている

 

「め、めぐみん?笑えない冗談は止めてね?噓でしょ?わ、私の戦意を挫いて、降参させようって作戦なのよね?でしょう?学園時代もそんなのばかりだったし。わ、私はもう騙されないからね?」

 

虚勢を張るが、ゆんゆんは後ずさっている

それに対しめぐみんはジリジリと近寄っていく

 

「私達、友達ですよね。友人というものは、苦難も分かち合うものだと思います」

 

あ、コイツはマジだ

ゆんゆんも今の言葉を聞いて、背を向けて走り出した

 

そしてめぐみんも追いかけるため走り出した

 

「降参!降参するから!マナタイトならあげるから、こっち来ないで!」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「……うぅ、気持ち悪かったよぅ」

 

めぐみんによってヌルヌルにされてたゆんゆんをどうにかする為、ウィズに頼んで風呂を貸して貰ったは良いものの

 

案外ヌルヌルにされたダメージはデカく、ゆんゆんのトラウマになっていた

 

「とても大変な目に合われたんですね…」

 

事情を話したウィズも少し引いている

 

さて、ここへ来る前に親方から家が完成したと言う朗報を聞いたから、ゆんゆんのヌルヌルをどうにかするついでに、自分の荷物をまとめに来たが

いざこの店から離れるとなると―――

 

 

 

 

 

―――不安しかないな…

 

 

 

 

 

「ウィズ、さっきも話したけど、自宅が完成したから俺は今日からそっちに住む」

 

「…そうですね。少し寂しいですが私は―――「だが、店の経営が心配だからバイトは続けさせてもらう」―――えっ?」

 

俺の言葉にウィズが驚きの声を上げた

 

「えっ?じゃねぇよ。ウィズは少しでも目を離すと、とんでもない物を仕入れるからな

 現に俺が数日留守にしただけで赤字じゃねぇかよ!」

 

「うぅ…」

 

痛いところを突いて可哀想だが、黒字にしようと思ったらこれくらいしないと駄目だ

これも此処に住まわせてくれたお礼の一つだ

 

「クエストの合間見てまた来るから、じゃあまたな」

 

軽い挨拶だけをして、俺とゆんゆんはウィズの店を出た




初めから『シルファードライブ』と明記しなかったのは『爆龍の十二翼』という字面が好きだったからです(笑)

次回は例の卵でひと騒動ありますので、お楽しみに!

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