この素晴らしい世界に聖石を!   作:ホムラ

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第十四話

「大喜びで代わってやるよおおおおおおおおおおっ!!」

 

雪精討伐から数日後、クエストを受けるために冒険者ギルドに入ると同時に

カズマの叫び声が聞こえて来た

 

「……えっ?」

 

カズマに絡んでいたであろう戦士風の男が、ジョッキを片手に間抜けな声を上げた

 

「代わってやるよって言ったんだ!おいお前、さっきから黙って聞いてりゃ舐めた事ばっか抜かしやがって!ああそうだ、確かに俺は最弱職だ!それは認める。……だがなあ、お前!お前その後なんつった!」

 

だいぶキレてるな、前に会った魔剣持ちのチーターの時以上か

あの男、一体なんてカズマに――

 

「そ、その後?その、いい女三人も連れてハーレム気取りかって……」

 

あ、それはキレるわ…

 

「いい女!ハーレム!!ハーレムってか!?おいお前、その顔にくっついてるのは目玉じゃなくてビー玉かなんかなのか?どこにいい女がいるんだよ!俺の濁った目ん玉じゃどこにも見当たらねぇよ!お前いいビー玉つけてんな、俺の濁っ目ん玉と取り替えてくれよ!」

 

「「「あ、あれ!?」」」

 

どういう状況なのか大体理解できた

 

つまり、上級職で顔もいい女三人を連れてるからハーレムと間違われ、難癖つけられたってところか

代わってやるとか言ってたから、あの男が代わってくれよとか言ったんだろうな

しかも嫌味交じりの羨ましそうな態度で…

 

俺はあの三人の性格知ってるから代わりたいなんて思わないし、そもそもカズマのパーティに入るつもりもない

まぁ最近は借金返済の手伝いでクエストに同行したりしてるが

 

しばらくカズマと戦士風の男のやり取りを眺めていると

俺の存在に気が付いためぐみんが話しかけて来た

 

「ツバサ!聞いてくださいよ、カズマがっ!」

 

「いや、最初からじゃないけど見てたから大体察しは付く

 カズマがパーティを代わるのを止めて欲しいんだろ?」

 

「話が早くて助かります!では早速――」

 

「面白そうだから嫌だ」

 

「えぇっ!?」

 

俺の返答がそんなに予想外だったかね

だが、偶には良いだろ

 

「パーティリーダーが代わるのもいい経験になるんじゃないのか?」

 

「そういう問題では!」

 

「逆に自分達の存在の有り難さをカズマに見せつけるチャンスと思えばいい」

 

「そ、その発想はありませんでした!そうですね、いかに私達が優秀な存在だと、カズマに再認識させるチャンスではありませんか!早速アクアとダクネスに話してきます!」

 

そう言ってめぐみんはアクア達のところへ戻って行った

 

よし、これで俺が巻き込まれる心配はなくなったな

 

これ以上関わるのは嫌だったので俺はクエストボードに向かい

張り出されていた『白狼の群れ討伐』と『初心者殺し討伐』の二つを受ける事にした

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「やっぱ雪山は寒いなぁ……」

 

今回は雪精とは別の雪山に来ているが、あまりいい気はしないな

数日前に雪山で死んだわけだし……

 

まぁあの時は冬将軍にやられた訳じゃないからいいけど、モンスターにやられてたとなると

しばらく来る気にはなれなかっただろうな

 

っと、なんか無数の敵の気配を感知したぞ

この先にいるっぽいな

 

敵感知スキルと潜伏スキルのおかげで狩りがずいぶん楽になった

 

丘の上からゆっくりと様子を見てみると

狼の群れが休憩してるところだった

 

……………おい

 

狼の群れの頭数は最多で40頭って聞いたことがあるんだが、これはどう見ても倍はいるよなぁ

 

丘の下で休憩していた狼の群れはざっと見た感じ80頭ほど確認できる

 

さて、どうやって討伐したものか…

 

俺がどう討伐するか考えていると突然、俺のそばに何かが撃ち込まれた

 

「なっ!?」

 

何かの着弾音と俺の叫び声で全ての狼がコッチを向いてきた

既に何頭か、コッチに向かって走ってきている

 

「くそっ!作戦なしでやるしかないか!」

 

俺はテン・コマンドメンツを抜き、襲い掛かって来た狼を斬り倒し始めた

 

「爆龍の十二翼!!」

「シルファリオン!!」

「スクリーンボム!!」

「エクスプロージョン!!」

 

俺は多彩な技を駆使し、狼たちとの戦闘を終えた(*手抜き戦闘でスミマセン

 

「ハァ、ハァ、ハァ、……どうにかなったか。それにしてもさっきのは何だったんだ」

 

俺は狼にバレた原因である、撃ち込まれた何かに関して考えていると

 

「あははははは!!流石はレイヴマスターだ、この程度の狼じゃ傷一つ付けられないか」

 

「誰だ!?」

 

気が付くと、そいつは狼の群れの真ん中で座っていた

俺と同じように、背中に大剣を背負っている

顔はフードを深く被っているため口元しか見えない

 

「ん~、別に名乗ってもいいが、ここはあえてアラシとでも名乗っておこうか」

 

「アラシ?ふざけてるのか」

 

「別にふざけてなんていないさ、俺はお前の力を見てみたかっただけで他意はない」

 

「……レイヴマスターって言葉を知ってるって事はお前、転移者か」

 

アラシは口の端を吊り上げると

 

「ご名答!ただし俺はお前より後に来た転移者だけどな」

 

先駆者達の特典でも聞いて、俺がレイヴを手に入れたことを知ったのか?

 

「しかし先輩がこんな奴でガッカリだよ」

 

「どういう意味だ!」

 

「今の戦い見てたけど、第四の剣は仕方がないとして第五の剣以降の剣を一切使ってないよな

 つまりお前のレベルは20よりもしたって事だ。それくらいあれば狼ぐらい何とかなる」

 

コイツ、来て早々解放条件を見抜いてるのか

 

「ホントにガッカリだよ先輩、俺よりもレベルが低いなんてな」

 

「なっ!?」

 

アラシは背中の剣を抜くと、その剣を変化させ地面に突き刺した

 

「重力の剣『グラビティ・コア』レベル30で解放される剣だ」

 

「…………………………」

 

正直声が出なかった。俺よりも後に来てレベルも上となると、誰でも絶句するだろう

 

「どうした先輩、驚いて声も出ないのか?」

 

「…あぁ、レイヴマスターだなんて一度も名乗ったことは無いが、その称号はお前の方が合ってるみたいだな」

 

俺がそう言うとアラシは不思議そうに首を傾げ

 

「俺がレイヴマスター?何言ってんだお前。よく見ろよ」

 

アラシは剣の鍔の中央部分を指さした

そこには十字のレイヴではなく、紫色の丸い宝石が埋め込まれていた

 

「ま、まさか…」

 

「そのまさかだよ、俺は――」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

アクセルの街の近くの草原

 

ここに初心者殺しが現れるハズなんだが

 

俺は敵感知スキルを使って周りを探してみたがそれらしい反応が無い

 

…もうこのままリタイアしてしまおうか

アラシの事も気になるし

 

『俺は、ダークブリングマスターだ』

 

確かにアイツはそう言った

その後すぐにどこかへ消えて行ったから、詳しく話を聞けなかったんだよな

 

「アイツは一体、何を考えてるんだ?」

 

あぁ駄目だ!アラシの事が気になりすぎて初心者殺し討伐に集中出来ねぇ

 

………帰るか

 

俺は諦めてアクセルへ帰ろうとした瞬間

 

「初心者殺し!!」

 

聞きなれた声が遠くから聞こえて来た

 

声のした方をよく見ると、四人組がサーベルタイガーもどきに追いかけられている

 

「居たぁ!!」

 

俺は素早くシルファリオンへと変化させ初心者殺しに向かって走り出した

四人組は初心者殺しから逃げきれないと思ったのか、立ち止まり迎え撃とうとしていた

 

「おらああああっ!かかって来いよ、この毛玉があっ!」

 

そう叫んで三人の前に出て剣を構えた

そしてそれをすり抜けるようにしてカズマが前に出ると

 

「ウインドブレスッ!」

 

手のひらを初心者殺しに向け、魔法を唱えた

 

「フシャーッッ!」

 

直後、初心者殺しが目元を抑えて苦しみ始めた

 

カズマの手から砂嵐的な物が一瞬見えたから、おそらくクリエイトアースと組み合わせたのだろう

巧い事考えるぜまったく

 

「ナイス足止めだ、カズマっ!」

 

俺は初心者殺しのすぐそばまで近づくと、振り下ろすシルファリオンをアイゼンメテオールに戻し、初心者殺しを斬り裂いた

 

「「「「えっ!?」」」」

 

突然の出来事で、カズマ達が驚いている

 

「ようカズマ、奇遇だな」

 

「奇遇ってお前、こんなところで何やってるんだよ」

 

「何やってるんだって聞かれてもな、白狼の群れ討伐のクエスト終えて

 続けて初心者殺し討伐のクエストに来たんだよ」

 

「「「「二連戦!?」」」」

 

おぉう、すっげぇ驚かれてる

まぁ当然だろうな。俺も、もう二度と続けてクエストをやりたくない……

 

「カ、カズマ、この人って何者なの?」

「それよりも今、剣が変化しなかったか?」

「確かにしたな。何者なんだコイツ」

 

うわー、相変わらずの反応だな

 

その後カズマが大げさに俺の事を紹介するもんだから大変だった

レイヴの事で質問攻めにあったり、変化できる剣を全て見たいなど

冒険者ギルドに着くまで大変だった

 

「つ、着いたあああああっ!今日は、なんか大冒険した気分だよ!」

 

リーンの声を聞きながら、カズマはギルドの扉を開けると

 

「ぐずっ……。ふぐっ……、ひっ、ひぐう……っ。あっ……、ガ、ガズマあああっ……」

 

なんか泣きじゃくっているアクアを見た気がするが、カズマがそっと扉を閉めたのでちゃんと確認できなかった

 

「おいっ!気持ちは心底よーく分かるが、ドアを閉めないでくれよっ!」

 

リーン達についで扱いで紹介されたダストってやつが、めぐみんを背負い泣きながら飛び出してきた

 

何があったのかは、……あまり知りたくないな

 

ダストの話を簡単にまとめると、めぐみんがいきなり爆裂魔法をぶっ放し、爆発音を聞きつけて襲ってきた初心者殺しにダクネスが突っ込んで行き

ダクネスを倒した初心者殺しがアクアの頭にかぶりついたという

 

これはもう、なんて言ったらいいか。逆に予想通りですごく安心する……

 

「おい皆、コイツの事はほっといて、まずは飯でものんびり食おうぜ。新しいパーティ結成に乾杯しよう!」

 

「「「おおおおおっ!!!」」」

 

カズマの言葉に、リーン・キース・テイラーの三人が喜びの声を上げていた

 

「待ってくれ!謝るから!土下座でもなんでもするから、俺を元のパーティに戻してくれぇっ!」

 

「これから、新しいパーティで頑張ってくれ」

 

「俺が悪かったからっ!!今朝の事は謝るから許してくださいっ!!」

 

……哀れだ

ダストとやら、カズマと係わったのが運の尽きだったな

 

この時俺はアラシの事を忘れて、カズマ達の馬鹿騒ぎに加わっていた

 

後日ルナさんに、俺と同じような剣を持った男が冒険者登録をしたのか尋ねてみたが

そんな人は一人も居なかったらしい

 

アラシの件については、謎が深まっただけだった

 

余談だが、今回の初心者殺し討伐は間違って張り出されていたものであり

討伐する必要はなかったのだという(ちゃんと報酬は貰ったが…)

 




という訳で、ダークブリングとそれを扱うキャラの登場です
正直出すかどうか散々悩みましたが、やはりダークブリングあってのレイヴだと思った結果です

今後ツバサとアラシがどのように活躍するかご期待ください!!

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