ここは関東近郊にある大学、東都大学。人はこの大学のことを「最高学府かつ最高スポーツ校」と呼ぶ。日本のありとあらゆる天才が集まるだけでなく、日本でも指折りのスポーツ選手も集まる大学である。
今年、この大学に2人の新入生が入学した。1人は将来は医者を目指すべく大学入試史上最高得点でも入学してきた少女、もう1人は史上最高のスプリンターとして将来を期待されている少女、この2人が東都大学に新しい風を巻き起こそうとしていた。
ラブライブUC H&H編 第1話 「2人のユニドル」
「う~ん、ここが日本の最高学府なんだね」
東都大学東門にある少女が降り立った。代々木はるか、2年前のラブライブを優勝した音乃木坂学院スクールアイドルオメガマックスのメンバーであり、大学入試最高得点をマークして入学した才女である。と、同時に生粋のアイドルおたくである。
「って、私はアイドルおたくではありません」
と、どこか心の中でツッコミをいれてしまうはるかであるが、彼女の夢はアイドルになる…、
「ことじゃありません!!」
と、はるかから心のツッコミがきてしまった。実際は医者になることである。そのため、日本の最高学府である東都大学に入学してきた。この1年間東都大学に入るために一生懸命勉強し、勉強し過ぎて知らないうちに大学入試史上最高得点をマークするくらい勉強していたのだった。
「さっ、ここでもっといろんなことを勉強して、みんなの役に立てる医者になるぞ!!」
と、(だて!!)メガネを上下に動かしつつ校門をくぐろうとしていた。
一方、東都大学西門にもある少女が降り立っていた。
「日本一のスプリンターになれるように頑張るぞ!!」
彼女の名は神宮はやて。彼女もはるかと同じ2年前ラブライブに優勝した音乃木坂学院スクールアイドルオメガマックスのメンバーであり、将来史上最高のスプリンターとして期待されている少女である。ちなみに、彼女はアイドルおたくではない。
彼女の夢は史上最高のスプリンターになることである。この1年間、音乃木坂の陸上部でエースとして活躍した。そして、夏に行われたインターハイで短距離において高校新をマークしたことにより、将来を期待されるようになった。そして、この大学にスポーツ推薦で入学してきたのだ。
「この1年間走り込みばかりしてきた。これからも走り込みの毎日だ!!」
はやては将来に向かって頑張ろうとしていた。
ところで、この2人、実はこの大学に入学したことはお互い知らなかった。というのも、オメガマックスとしての活動を終了してからというもの、お互い自分の夢を叶えるため、一生懸命になっていたのだった。音乃木坂にいるときは2人は挨拶する程度しかなかった。雑談すらしなかったのだ。この2人が自分の夢を叶えるために入学してきたのは皮肉にも偶然としかなかった。いや、もしかすると必然かもしれない。なぜなら、この東都大学は日本最高学府かつ最高スポーツ校だから。だが、この2人の入学は偶然か、必然かわからないが、のちに運命的になるかもしれなかった。
「え~、今年は…」
大学の講堂では入学式が行われていた。壇上では大学の学長が長い挨拶をしていた。はるかとはやては観客席のところで学長の話を聞いていた。この時点では2人ともお互い入学してきたことは知らなかった。なぜなら、入学式には何千人もの新入生が入っていたからだった。2人ともこれから先、まわりにいる新入生と友達を作り、4年間青春を謳歌することができると思っていた。
「医者になるという夢、ここにいるだけで達成できると思えるよ」
と、はるかは小さな声で言った。この大学には最新設備はもちろん世界的にも権威のある教授も数多くいらっしゃる。この下で学べるということははるかにとって幸せでもあった。
一方、はやても、
「ここにいる新入生と切磋琢磨すれば僕の力は伸びる。そして、世界へと進出できる」
と、この大学に入学してきたことを実感していた。この大学には日本を代表する若きスプリンターたちが数多く入学してきた。まわりにはライバルたち、この人たちと一緒に切磋琢磨しながらタイムを縮め、世界へと羽ばたこうとする、それがはやての夢である。
入学式は厳かの中進められ、そして終わった。
「これで明日から講義が始まる。どんな講義があるのかな」
と、はるかは講義を楽しみにしていた。
一方、はやては、
「さぁて、明日は陸上部の初めての会合だ。頑張らないと」
と、明日からの本格始動に向けて気合をいれていた。
2人とも別の出口から講堂をでていった。入学式後は各学科に分かれて講義の説明会が行われることになっていた。新入生はこの講義の説明会を受け、シラバスと1週間にわたり行われる模擬講義によって自分の受ける講義を決めていく。
はるかは自分の気になる講義がないかシラバスを見ながら説明会のある校舎へと歩いていた。そのとき、
「すいませんが、代々木はるかさんですか」
と、はるかを呼び止める黒づくめの男がいた。
「はい、私が代々木はるかですが」
と、その男に反応するはるか。その男ははるかの前に立つと、
「すいませんが、これから来てもらいたいところがあるのですが」
と、はるかをどこかに連れ出そうとしていた。
「ちょっと、今から講義の説明会がありますので…」
と、断ろうとするはるか。
それを聞いた男はすぐに、
「あっ、それはすいません。私は大学のものなのですが…」
と、はるかに首にかけている名札を見せる。
「あっ、大学の事務員ですね」
と、名札に事務員であることを示すものをはるかは確認する。
「で、私になにか用事ですか」
と、はるかは男に質問すると、男ははるかにあることを伝える。
「実は、代々木はるかさんに学長室に来てもらいたいのです」
男はそう言うと、はるかの手を握ろうとしていた。
「ちょっとやめてください」
はるかはそう言うと、男の手を振り払おうとする。
「ご、ごめんなさい」
と、男が謝ると、すぐに、
「大変申し訳ございませんが、来てもらえますか」
と、はるかにお願いをする。無論、45度の最高礼でもってで。こうなるとはるかとはいえむげに断る事はできない。
「わかりました。それでは学長室に行きましょう」
と、はるかはこの男に学長室に連れていってもらうように頼んだ。
「ありがとうございます。それでは学長室へお連れいたします」
と、その男ははるかに学長室へと案内した。
はるかは黒づくめの男によって学長室のドアの前に立った。
「しつれいします」
と、ドアを開けるはるか。そこにははるかが知っている顔がいた。
「はやて!!」
そこにいたのははやてだった。実ははやても学長室に呼ばれていた。だが、その横にいた男の顔には大きなあざがあった。
「どうして隣にいる男の顔にあざがあるの?」
と、はるかははやてに聞く。すると、はやて、
「実は僕の手を握ろうとして条件反射でやってしまった」
と白状する。実ははるかの時と同じように学長室に連れていこうとしていた際、その男ははやての手を握ろうとして、つい、はやてはその男の顔面にパンチを食らわせたのだった。
「大丈夫ですか」
と、はるかを連れだした男がはやてを連れだした男に聞くと、
「まだいたいですが、このくらいのあざはすぐに治りますよ」
と、元気があるように見せる。はやても、
「この度は本当に申し訳ない」
と、あざのある男にお詫びする。
「それくらい大丈夫です。これでも柔道部出身ですから、こんなの痛いうちにはいりません」
と、はやてを連れ出した男、はやてに対して大丈夫であることを伝える。
そんなやりとりのあと、学長室にとある大男が現れた。
「これは2人ともご足労をおかけした」
その大男はこう言うと、学長室の大きな応接セットのイスに腰掛けた。
「あなたたちが代々木はるかさんと神宮はやてさんだね」
大男は2人を見て言うと、
「2人ともそこに立っているのもつらいだろう。イスに腰掛けてくれないかな」
と、はるかとはやて2人を応接セットの大男の反対にあるいすに腰掛けるようにお願いした。
「それではお言葉に甘えさせていただきます」
と、はるかがイスに腰掛けると、はやても無言でイスに腰掛けた。
2人がイスに腰掛けると、その大男は2人に挨拶をした。
「2人ともこんにちは。私はこの東都大学で学長をしているものです」
と、2人に名詞を渡した。そこには学長を示す文字があった。
「あ、あなたが学長ですか。私は代々木はるかです」
と、はるかはいきなり学長に挨拶をした。はやても、
「これは失礼しました。僕は神宮はやてです」
と、少しびっくりしながら挨拶をした。
すると、学長はいきなり立ち上がった。
「2人には実は私から学長命令があってここに呼んでもらった」
と、学長が言うと、2人をじっくりと見た。
「学長から直々の学長命令とは…」
と、はるかが言うと、学長は口を開いた。
「単刀直入に言おう。2人ともアイドル、いや、ユニドルとして活動しなさい」
学長からのお願い、それは2人でユニドルとして活動してもらうことだった。
「な、なんでユニドルとして…」
と、はるかが言うと、はやても、
「活動しないといけないのだろうか」
と、学長に聞き返す。すると、学長は2人に言った。
「2人でユニドルとして活動。これは大学としての絶対命題でもある」
そして、学長は2人にその理由を言った。
「実は少子高齢化の中、それぞれの大学は生徒募集にあの手この手を使っている。大阪にある大総大学はお笑いに力をいれている。九州博多にある福博女子大学ではアイドルに力をいれており、そこにいるユニドルは前年のユニドル選手権、通称ユニライブの決勝に進出し、優秀な成績を残している」
学長はさらにこの大学の現状についても語った。
「この大学はたしかに日本の最高学府かつ最高スポーツ校として有名だが、それいえにいらぬイメージがついてしまう。そのイメージとは…」
と言うと、はるかは、
「そのイメージとは…」
と言い返す。学長は話を続ける。
「そのイメージとは、頭が固すぎる、頑固すぎるというイメージだ。この大学は昔から旧帝大の流れをくむ。歴史ある大学である。そのため、伝統があり、それがいやで敬遠する生徒も多い。そして、このイメージのせいか、最近の生徒はこの大学に対して悪いイメージを持ってしまっている」
そして、学長は2人を見つめてこう言った。
「少しでもこの負のイメージを払拭したい。無論、大学のイメージ戦略という面もある。少しでもイメージアップしたいからね」
学長が言い終わると、はやては学長に向かって、
「では、なんで僕たちなんですか。ほかにも僕たちよりもアイドルにふさわしい人たちがいるのではないですか」
これに対し、学長は断言した。
「あなた方2人こそこの大学の中でアイドルにふさわしいからだ。その証拠に2年前のラブライブに優勝したではないか」
そう、2人は2年前のラブライブに優勝した音乃木坂学院スクールアイドルオメガマックスのメンバーであった。
学長はさらに話し続ける。
「大学のイメージアップは今待ったなしの状況である。一からアイドルをつくる時間はない。むしろ2人はラブライブ優勝という大きなはくがある。すぐにでもユニドルとして活動し、大学のイメージアップに貢献してもらいたい」
学長の言葉のあと、はるかはあることを言った。
「ユニドルとして活動する。これによって自分の夢は遠のいてしまう。さらに、私たちはスクールアイドルを辞めて1年のブランクがある。1年のブランクはアイドルにとって致命的なダメージとなる」
そして、はやても、
「私は日本一のスプリンターになりたいためにこの大学に入学した。僕の夢を大人たちであるあなたたちに壊されてしまうのか」
と、嘆いていた。
すると、学長はあることを言った。
「それは大丈夫。むしろ、あなたたちの夢を応援したいと思っている。これは約束しよう、大学から最大限のバックアップをしよう。2人は大学から奨学金を支給するだけでなく、2人の夢を最短ルートで叶えるようにカリキュラムを組む。むろん、そのためにスケジュールがハードになるが、単位の心配はしなくてよい」
これを聞いたはるか、
「最短ルートで夢を叶えてくれる…」
と、目をキラキラにさせながら言うと、はやても、
「大学は単位が必要と言うが、その心配がない…」
と、ちょっとひいてしまう。
そんな2人を見て学長は言い続けた。
「1年のブランクについては心配ない。1日のうち、平日の朝から夕までは講義や部活をしてもらいたい。そのかわり、夜や休日についてはユニドルになるための訓練をしてほしい。具体的には私たちが呼んだ講師陣やアイドルスクールでボイストレーニングやダンス練習などをしてもらう」
そして、学長に対して決断を迫った。
「代々木さん、そして、神宮さん、ユニドルとして活動してくださいますか」
2人の近くまで顔を近づかせ、応接セットの机を叩く学長。これを見ていたはるかとはやて、びっくりする。そして、
「は、はい…」
と、まずはるかが白旗を上げた。対するはやては、
「最後に聞きますが、日本一のスプリンターになる夢を阻害するようなことはしないのですね」
と、学長に聞くと、
「それは大丈夫。私たちを信じなさい」
と、学長は確約をした。すると、はやても、
「それならこの話をお受けいたします」
と、ユニドルになることを承諾した。これを聞いた学長、
「本当にありがとう、2人とも。これで大学入試最高得点を記録した日本一の才女と、インターハイで高校新を記録した日本一のスプリンターの奇跡のコラボの実現、奇跡のユニドル結成だ~」
と、喜んでいた。これを見ていたはるか、
「大男である学長の笑い顔、なんかシュール」
と言うと、はやても、
「じっとしている方が威厳があるんだけど…」
と、妙に顔がひきずっていた。
そして、翌日からはるか、はやてのユニドルとしての生活が始まった。2人は大学から特別なカリキュラムが用意された。
「まさか、あの教授からじかに教えてもらえるなんて…」
はるかは感動していた。一般の講義も受けているのだが、あいているコマの時間に自分が希望する教授からマンツーマンで講義を受けることができたからだった。これも単位として認められた。
一方、はやては別の意味で感動していた。
「まさか、世界的に有名なコーチからじかに教えてもらえるなんて…」
はやては大学の講義が終わったあと、大学が用意してくれたコーチからマンツーマンでコーチを受けていた。そのコーチは世界的にも有名で、なおかつ、その教え子たちはみな世界中で大活躍しているくらい凄いコーチだった。そのコーチのマンツーマンの指導を受けられることははやてにとって天にも昇る気持ちだった。
そして、夜になると、
「1、2、3、4、1、2、3、4」
と、大学近くのダンススクールに聞こえる声があった。
「もっと体を大きく伸ばす」
と、講師の声が聞こえてくる。
「ハイッ」と、はるかが答えると、はやても、
「わかりました」
と答える。
2人はユニドルになるため、夜と休も休みなくトレーニングを行った。無論、平日の朝から夕は大学の講義や部活も休むことはなかった。
2人は普通ユニドルでもしないような過酷なトレーニングを受けていた。とはいえ、若い女の子、休みの日も作られており、そのときは、
「はやて、原宿でも遊びに行こう!!」
と、はるかがはやてを誘ってウィンドショッピングなどをすることもあった。
こうして、はるかとはやては大学が用意した特別カリキュラムとハードなトレーニングをすることで、大学の講義や部活を消化しつつもユニドルとしての基礎的な下地を作っていった。
そして、6月。ついに2人はユニドルとして初めてのライブを開催することになった。ステージは東都大学の講堂だった。ここには約二千人以上が入る観客席がある。2人のユニドルとしてはもってこいの場所だった。
そして、ユニドル名には2人は考えた結果、2人の名前のイニシャルから「H&H」という名前となった。
ライブの日取りが決まると、2人はもっと頑張ろうとトレーニングに励むことになった。
「はるか、少し遅れているぞ」
はやてははるかに対して言うと、はるかも、
「はやては少しはやいかも」
と、はやてに対し注意する。そう、2人はトレーニング以外でも自主練をしていた。大学が用意したトレーニング以外にも自主練だけをしていた。そう、自主練だけをしていたのだった。大学側もライブに対して講堂での調整や2人へのバックアップを中心に行われていた。
そして、講堂の前の掲示板にあるポスターが貼られた。
「東都大学初のユニドルグループ「H&H」ファーストライブ開催」
そう書かれたポスターだった。だが、ただそれだけだった。2人のファーストライブを宣伝するものはこれしかなかった。
こうして、6月、2人のファーストライブが始まろうとしていた。
「ファーストライブはとても緊張する」
と、はるかが言うと、はやても、
「それもそうだな。この日が僕たちにとって最初の一歩になるのだから」
と、はるかに同意した。
そして、幕があがった。だが、2人は愕然とした。広い観客席にいたのは…、たった数人だった。それも2人の講師をしている教授や学長、そして学生たち数人だった。
「ど、どうして…」
と、はるかはがっかりした。はやても、
「これが現実とは…」
と嘆いていた。
それでもたった数人であったとしてもライブは行われた。だが、はるかとはやてにとってとても寂しいものだった。
なぜ、2人のライブの観客は少なかったのだろうか。そして、2人はこれからユニドルとして活躍できるのか、それは次回のお楽しみである。
(ED 1番のみ)
続く
次回 「2人の力」
あとがき
みなさん、こんにちは。La55です。今回から「H&H」編が始まりました。みなさんお元気していましたでしょうか。この編も充分楽しめると思います。どうぞごゆっくりお読みくださいませ。
ところで、各編にはそれぞれテーマがあることは前にお話しした通りですが、この編のテーマはズバリ「支援と行動、結果」です。「博多小娘編」の場合、愛たちは大学からの支援を断ち切り、自分たちの手で「ユニライブ」に出場しました。それとは逆で、今回、はるかとはやては大学の支援を受け入れました。ただ、ラブライブ!を見ている人たちならご存知だと思いますが、穂乃果たち「μ’s」も千歌たち「Aqours」も最初のうちはビラ配りなどをして出来る限りライブにお客さんを呼んだりなどしていました(でも、「μ’s」の場合、たしか、リーダーを決めるためじゃなかったかしら)。それを、支援を受ける側(はるかたち)、支援をする側(大学)ともにしていなかったら、どうなるのでしょうか。はたして、はるかたちはこの先、どのようになっていくのでしょうか。
ここでお知らせ。ピクシブだけですが、「ねこねこらいおん」という日本一ヘタで日本一つまらない4コマを投稿しております。今週は第4話は投稿しました。暇が有れば読んでみてください。
と、いうわけで、今回のラブライブUCはどうでしたでしょうか。楽しかったでしょうか。ついに次回、「H&H」編後編をお送りいたします。次回をお楽しみに。それでは、さよなら、さよなら、さよなら。