ラブライブΩ/ラブライブUC   作:la55

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 ラブライブ-スクールアイドルの甲子園。ある者はスターになり、ある者は伝説となる場所。第1回優勝A-RISEはラブライブをきっかけに一躍スターとなる。そして、第2回優勝μ'sはたった1年間という短い活動だったが、秋葉原でのスクールアイドルフェスティバスを成功させ、そして伝説となった。
 勝者いれば敗者もいる。多くのスクールアイドルが予選敗退という敗者となる。勝者と敗者、どの世界にも必ずいる。そう、スクールアイドルの世界でも・・・。
 しかし、勝者はずっと勝者とは限らない。A-RISEは勝者となり、敗者となった。μ’sも敗者となり、そして、勝者となった。わずかな望みでも勝者となれる。それがスクールアイドルの世界。
 さて、彼女たちは勝者となれるのか。それとも敗者であり続けるのか。そして、伝説(μ’s)を超えることができるのか・・・。



第1部 結成編
第1話 叶え?誰の夢?


第1話 叶え?誰の夢?

 

「これがμ’s最後のライブです」

 音ノ木坂学院アイドル研究部部室、そこには未来のスクールアイドルになりたい生徒たちが集まっていた。そして、3年生になったアイドル研究部部長の高坂雪穂、副部長の絢瀬亜里沙の姿もあった。

 μ’sが第2回ラブライブを優勝してから3年の月日がたった。秋葉原でのスクールアイドルの祭典、スクールアイドルフェスティバルの大成功により、ラブライブはドーム大会が開かれるようになった。そして、全国各地に実力のあるスクールアイドルが次々と誕生していく。時はスクールアイドル戦国時代。全国のスクールアイドルが切磋琢磨して、力を蓄えていた。

 そして、4月、新入生が入るこの時期、音乃木坂のスクールアイドルとして活動していた雪穂、亜里沙も新しいメンバーを勧誘しようとしていた。音乃木坂のアイドル研究部、それは伝説のスクールアイドルμ’sを輩出した部。明日のμ’sになろうと夢見る生徒たちがアイドル研究部の勧誘レセプションに多く集まっていた。それは1回では入りきれず、3回、4回しないと入らない程に。

「これがμ’sのライブ・・・」「とてもすごい」

 あこがれのμ’s、それも誰も見たことのない、μ’sの最後のライブ、それが見られて本当に幸せ。これがここにいるすべての生徒たちの気持ちだった。「僕らはひとつの光」の歌詞に合わせて、まるで飛び立とうとしているμ’s、伝説を見ている瞬間だった。

 そして、映像終了後、雪穂、亜里沙は未来のμ’sを夢見る新入生たちにアイドル研究部としての活動内容を説明すると、最後に()()()呼びかけを行った。

「このように、私たちは未来のμ’sになるため、頑張っています」

雪穂の言葉に亜里沙が続けて言う。

「全国には多くのスクールアイドルが未来のμ’sを目指しています。私たちも一緒に未来のμ’sを目指してみませんか」

 この時の雪穂、亜里沙の姿はまるで誰かに助けて欲しいと助けを求めるような()()()()()()。しかし、未来のμ’sを夢見る生徒たちにとって、自分たちは求められているものだと解釈している人たちがほとんどだった。

「明日、講堂で勧誘ライブを行います」

「それをみても遅くないから、友達などにも入部を進めてください」

 雪穂、亜里沙はこう言うとともに、約1時間にわたる勧誘レセプションを終わらせた。しかし、勧誘レセプション全体を通しても雪穂、亜里沙は()()()()()。いや、()()()()()()()()()()()だった。()()()()()()()()()()()()()()()()()。しかし、そのことをこの日集まった生徒たちは知らなかった、()()()()()()()()。だが、それは如実にこのレセプションに現れていた。なぜ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()・・・。

 

翌日、講堂は勧誘レセプションに参加した生徒たちだけでなく、音乃木坂の生徒たち、先生たち、近くにある中学校、高校の生徒たちで入りきれない程の超満員だった。今から行われる雪穂、亜里沙の(・)勧誘ライブを見るために集まったのだ。しかし、先生や一部の生徒たちの眼は楽しみにしているのでなく冷やかそうだった。ある事情を知っているために。

「みなさん、こんにちは」

「私たち、音乃木坂のスクールアイドル『New age(ニューエイジ:新時代)』です!!」

ステージに立った雪穂、亜里沙は大きな声で観客に挨拶する。

「あれ~、μ’sではないんですかー」

新入生の1人から大きな声で質問が飛ぶ。

「石鹸の名前だからですか~」

今度は2年生から掛け声が飛ぶ。一瞬のうちに講堂中が笑いであふれる。

「μ’sはお姉ちゃ・・・、穂のか先輩たち9人のグループ名です。今や伝説のグループの名前を継ぐことはできません」

雪穂が大声で言うと、亜里沙も続けて言う。

「私も入学前にμ’sに入れると思いました。でも、途中でμ’sは穂のか先輩たち9人のグループ名だと気付いたんです。しかし、私たちはμ’sをいつかは超えたいと思っています。そこで、ラテン文字でΜ(μ)の次にくるΝ(ν)をもとに『New age(ニューエイジ:新時代)』として活動することにしました」

 「μ’sを超えたい」この言葉に新入生たちはどよめきを感じた。しかし、先生たちなど一部の観客からは舌打ちなどが聞こえるとともに、またも冷ややかな目で2人を見ていた。

 そして、ある1年生が予想にもしていない、いや、誰がしてもおかしくない質問をした。

「どうして、2人しかいないんですか?」

この質問には他の生徒だけでなく、観客全員がどよめいていた。

「どう、どうしてって・・・」

「それは・・・」

いきなりたじろく雪穂と亜里沙。そう、ステージには雪穂と亜里沙し(・)か(・)いなかった。

 一方、その様子を観客席で見ていた見た目からしてガテン系、皆からジャイアンと呼ばれていた2年生はふとある言葉をつぶやいていた。

「なんで高坂先輩たち、たじろいているんだろうか?」

これに隣に座っていたメガネをかけてショートカットの髪をした2年生がすぐさま反応した。

「お教えいたしましょう」

これにはガテン系の生徒すら驚いていた。それでもお構いなしにメガネの生徒は続けて答えた。

「実は、音乃木坂学園のアイドル研究部の部員はあの2人しかいないんだ。去年まではまきりんぱなこと真姫先輩、凛先輩、花陽先輩の3人も在籍していたんだが、その3人が卒業したため、今残っているのは雪穂先輩と亜里沙先輩だけなんだ」

これにはガテン系の生徒には驚いた。そして、こう言う。

「どうしてなんですか」

それにすぐさまメガネの生徒が答える。

「実は伝説となったための代償なんだ。μ’sは今や伝説のスクールアイドル。そのため、絵里先輩、希先輩、にこ先輩の3人が卒業した後、アイドル研究部に入部してこれまで続けられたのは雪穂先輩と亜里沙先輩だけだった。伝説の一員であるみきりんぱながいるため、その先輩がいる部に入部するのをためらう生徒が多かったんだ。」

「伝説・・・」

「そして、入部してもまきりんぱなに対して引け目を感じたり、きついトレーニングのために挫折する部員も少なかった。」

「引け目・・・、そして、きついトレーニング♪♪」

ガテン系の生徒、いきなり目をきらきらしてきた。これにはメガネの生徒は少したじろく。

「なんか目をきららしているが。まっ、いいか。さらに、まきりんぱなと雪穂、亜里沙の5人でまとまりがあったために自分が入る余地がないと考えて退部する部員もいた。これにより、まきりんぱなの3人が卒業した今、残っている部員は雪穂先輩と亜里沙先輩の2人しかいないんだ。ちなみに、残りのメンバーの穂のか先輩、ことり先輩、海未先輩は生徒会活動との兼務が難しいこと、そして、μ’s活動終了のケジメのために参加を辞退していたんだ」

 メガネの生徒をしている最中だったが、そんな事情を知らない1年生は野次馬のように2人に目を向けていた。

「…、そんなことは、あ・と・に・し・て…」

お茶を濁す雪穂。亜里沙もまるでそれがなかったのごとく言う。

「今は私たちのライブを楽しんでください。では、一曲目は『僕らのLIVE 君とのLIFE』!!」

まるでその質問を振り切るかの様に2人は強引にライブを始めた。

 

「次の曲は『ユメノトビラ』です!!」

 雪穂、亜里沙はμ’sの代表曲を次々と歌う。そして、『もぎゅっと“love”で接近中!』『夏色えがおで1,2,Jump!』など、μ’sでは発表していないが、まきりんぱなが在籍していたときに発表していた曲も次々と歌った。

「これが『New age(ニューエイジ:新時代)』の曲なんだ!!」

ガテン系の生徒は目を輝かせてそう言った。いや、ほとんどの生徒が目を輝かせていた。これがラブライブ優勝をした学校のスクールアイドルのだと。

 しかし、曲を重ねるごとに発生するある異変をガテン系の生徒は気付いた。

「あれ。なんか最初輝いていたみんなの目が、ちょっと、少しずつ、曇っていく…」

「気付いたんだ」

メガネの生徒を発するとその理由をガテン系のそっと教えた。

「だって、今歌っているのはμ’sの曲、もしくはμ’sが歌うこと前提の曲だから。だから、音乃木坂の生徒にとって聞き慣れているんだ。そして、これが最もの原因。それは、μ’sの曲は『START:DASH!!』を除いて、本来グループで歌うことを前提にしているんだ。それを2人用に編曲せずに、無理やり2人で歌ってる。それで、ところどころに綻びが発生しているんだ」

メガネの生徒の解説通り、曲のところどころで綻びが発生していた。それでも、雪穂、亜里沙、2人は必死に歌っていた。その綻びも2人のコンビネーションでカバーしていた。

 しかし、…。

「これが音乃木坂を代表するスクールアイドルとは…」

「本当にがっかりですわ」

「これでは今年も予選落ちは決定ですな」

こんな声がガテン系の生徒にも聞こえてきた。これにはガテン系の生徒は驚いた。

「一生懸命歌っているのに、どうして…」

少し悲しそうな声をにじませて言うと、メガネの生徒が意外な一言を言う。

「これが先生たちの本音なんだ」

「本音!!」

これにはガテン系の生徒は2度目の驚きだった。メガネの生徒はすぐに解説を始めた。

「実はμ’sという伝説は一つのきっかけを作ったんだ。μ’sはもともと廃校から音乃木坂を守るために穂のか先輩たちがもの。そして、μ’sは廃校の危機から救っただけでなく、入学する生徒を大幅に増やしたという実績を作った」

「すごい…」

ガテン系の生徒の目が点となる。メガネの生徒の解説は更に続く。

「それで、これが音乃木坂のサクセスストーリーとして全国に紹介され、結果、全国各地の学校がとある理由でスクールアイドルに力を入れることになるんだ。それはスクールアイドルの地位向上、全体的な実力のアップにもつながった。そして、ドーム大会開催の原動力となった」

「μ’sって伝説以上なんだ…」

ガテン系の生徒はμ’sの凄さに舌を巻いた。だが、メガネの生徒の話は急転直下する。

「でも、実力が全体的に上がった分、音乃木坂と他の学校の実力の差は縮まる。この結果、一昨年は東京都予選でUTX学園にまさかの敗北、そして、去年は『Wonderful Rush』を完成させ、UTX学園を倒し全国大会に進出、しかし、九州の学校に圧倒的に敗北しているんだ」

この話のが終わったところで、また、先生たちのこそこそ話がガテン系の生徒に聞こえた。

「今年も予選落ちしたら、入学希望者が減ってしまう」

「でも、今年は過去最高を記録した去年に匹敵する入学希望者が来ましたぞ」

「今年は今年、来年は来年だ!!」

「そうだな。このままではまたも廃校になってしまう」

「もとはといえば、アイドルとして実力のある生徒を集めるべきなのに、南理事長はそれを認めてくれない」

「文武両道の乙女を育てるべきだと言っていたな」

「これでは実力のある生徒を他校に取られるぞ!!」

このこそこそ話にガテン系の生徒は不思議がっていた。

「なんでアイドルの実力のある生徒が必要なの?」

これにはメガネの生徒がその答えを出した。

「実はね、全国各地の学校がスクールアイドルに力を入れていることと密接な関係があるんだ」

「密接な関係?」

また不思議がるガテン系の生徒。メガネの生徒は続ける。

「少子高齢化を迎える日本において、生徒集めは学校にとって生き残るために必要なことだった。スポーツに力を入れる学校、秀才を集めて学力の全体的なアップを図る学校。しかし、スポーツに重点を置くにしても、スポーツをする施設をつくる必要がある。お金がかかる。また、スポーツ、学力関係なく、実力のある生徒は限られる。限界がある」

「ゴクッ」

メガネの生徒の迫力ある解説。息を飲むガテン系の生徒。それでも解説は続く。

「それに比べて、スクールアイドルは少ないコストで大きな効果を生み易い。練習場所とトレーニング場所、そして、発表する場所があればすぐにできる。現にμ’sは屋上を練習場所、神田明神など近場でのトレーニング、講堂だけでなく、屋上、そして、秋葉原のメイドカフェの店の前でも歌ったことがある」

メガネの生徒の熱意ある解説はさらに続く。

「そして、アイドルとして実力を持った原石が全国各地に沢山いる!!現に強度の引きこもりだった少女が母親の一通の申込により大阪の某有名アイドルグループの一員として活躍している!!」

嘘のようで本当の話をしてくるメガネの生徒。クールダウンすらしない。

「けれど、それも限度がある。そのため、全国各地の学校は将来有望な生徒をアイドル特待生として入学させることを勧めてきた。一方、音乃木坂の南理事長は、この特待生制度を嫌い、去年まで行わなかった。文部両道、たとえアイドルとして成功しても、勉強、スポーツ共にできないと人として成功しない。これが南理事長の考え。しかし、それにより、たとえ、音乃木坂の入学者数が増えても、アイドルとして将来有望、実力のある生徒は他校に取られる。一部(・・)を(・)除き(・・)実力ある生徒は入学していない」

メガネの生徒からこんな解説を聞かされるガテン系の生徒。ちょっと疲れたと思うとまた、先生たちの小言が聞こえた。

「でも、ようやく、今年、南理事長を説き伏せて、待望のアイドル特待生が2人入学した!!」

「これで音乃木坂も安泰ですな。なんだって、あのメンバーの妹たちだからな」

一瞬喜ぶ先生たち。しかし、すぐに暗くなる。

「あの2人ですが、あんまり使えません。入学するなり、いたずらに精を出している始末」

「これではアイドル特待生を導入した意味がありません」

「ハー」

先生たちの大きなため息がこだました。

 一方、ライブを見ていた生徒たちからも不満が噴出していた。

「ニューエイジとか、ニュージャージーとか知らないけど、ただの理事長の腰ぎんちゃくじゃないの!!」

「たった2人だけなのに、広い部室、そして、講堂も使い放題」

「ただμ’sの先輩たちの七光りでしかないのに~」

雪穂、亜里沙のアイドル研究部の不平不満を言う生徒たちを見て、ガテン系の生徒が言う。

「なんてことを言うの!!一生懸命頑張っているのに」

これを見て、メガネの生徒は説明する。

「たしかに。言っていることのほとんどが事実無根。アイドル研究部の部室、いつも集まる部室と練習場と他の部と比べて広くない。そして、講堂を含めて全ての場所は申請が必要。だから、先客がいれば使用できない。むろん、使い放題ではない。さらに、理事長は依怙贔屓せず、むしろ厳しく接している。ただ、2人がμ’sの先輩の妹だから親の七光りならぬ姉の七光りであると思っている生徒が自分に溜まっていた不平不満をぶつけているだけ」

「へえ」 

メガネの生徒が説明を終えて、妙に納得するガテン系の生徒。しかし、不平不満を言う生徒の中にはこんな言葉もあった。

「スクールアイドルって勝ってなんぼだろう」

「そうだよ、頂点に立つスクールアイドルこそ本当のスクールアイドルだよ」

「ほかのスクールアイドルはただの物まね集団だよね」

これにはガテン系の生徒はまたも怒り出す。

「スクールアイドルって勝つことが絶対なの!!」

「ま~ま~」

ガテン系の生徒をなだめるメガネの生徒。しかし、それでも怒りは収まらない。

「そんなに勝負が大事なの!!」

「落ち着いて」

メガネの生徒の二度目の言葉にようやく落ち着くガテン系の生徒。そして、こんな質問をメガネの生徒にぶつける。

「でも、なんで勝利が必要なの?」

「実はね…」

メガネの生徒の長い説明が開始する。

「実は、スクールアイドルの世界はちょっといびつな考え方が流行っている。『スクールアイドル勝利至上主義』。字の如く勝利が全てという考え方」

「勝利至上主義…」

「そう。このため、ラブライブに限らず、多くの大会で勝った方が負けた方を見下す風潮が流行っている」

これにガテン系の生徒が質問する。

「でも、なんでそんなことに…」

メガネの生徒、すぐさま答える。

「それもね、μ’sという伝説より派生したものだったんだ。μ’sが当時頂点にいたA-RISEに勝った。勝ったからこそ伝説になった。そのような誤った考えが広がった。これにより、スクールアイドルを目指す生徒たちはラブライブなので実績を持つ学校に次々と集まる。例えば、去年ラブライブに優勝した九州の高校はいまやスクールアイドル部が6軍制を引くぐらい集まるんだ」

という具合に文句を言う先生と生徒たち、その理由を解説するメガネの生徒をよそに、ライブは尾張を迎えていた。

「最後の曲は『START:DASH!!』」

「それでは最後の最後まで聞いてください!!」

2人の掛け声と共に曲が鳴り響く。一部を除き盛り上がる観客たち。

 そして、盛り上がったところで曲が終わる。ライブという夢の空間が終わった瞬間だった。

「私たちはあなたたちの入部をお待ちしております」

「私たちと一緒にラブライブ優勝を目指しましょう」

「もし興味がありましたら、明日、神田明神の境内に動ける服装で来てください」

「あなたの入部をお待ちしております!!」

雪穂、亜里沙の必死の呼びかけでもってライブは終了した。

「とても楽しかったね」

「感動したーーー!!」

「やっぱμ’sの妹分であることあるよ」

お褒めの言葉が多数聞かれる中、厳しい意見もあった。

「あれが『New age(ニューエイジ:新時代)』という音乃木坂を代表するスクールアイドル!!私と比べて下手でしかありません!!」

高飛車な性格、お金持ちでツンデレのように見えるツインテールのお嬢様風の生徒が言うと、それまでガテン系の生徒に説明していたメガネのいや、いかにも秀才にみえる生徒がすぐに近づき、相槌を打つ。

「そうですよー。愛さんと比べて下手でしかありません。いや、比べる必要すらありません」

これにはツインテールの生徒こと愛もすぐに肯定する。

「そうです。そうです。あれを見て他のスクールアイドルに勝てそう?」

この質問。メガネの秀才の生徒はすぐに答える。

「勝てない…、って、私、アイドルオタクではありませんから!!」

メガネの秀才の生徒、そこは否定するのね、とツッコミをいれたい愛は、隣にいたアスリート風のポニーテールをした生徒に声をかけた。

「これなら私たち、あのスクールアイドルに勝てるでしょ!!どう、はやて」

「そうかな。僕はとてもよかったと思うよ。それから、例の計画、僕は参加しないから」

アスリート風の生徒ことはやては断言的に断る。愛、食い下がる。

「そこをなんとか。あなたの力が大事なのよ」

「僕は陸上のことで頭がいっぱい。他の人に当たって」

「いけず…」

まるでハンカチを口で噛んで引っ張るしぐさを表現するツインテールの生徒。それを見てはやては少しはにかんだ。

 それとは別に、他の客席からはこそこそ喋る双子がいた。

「どう、あれが雪穂姉ちゃんに亜里沙姉ちゃんです」

「絵里姉ちゃん、穂のか姉ちゃんに比べてあまり上手じゃないね」

「でも、私たちの姉ちゃんが1番上手です」

「そうだね。私たちの姉ちゃんが1番上手!!」

「そうです」

「でも、私たちには関係ないもん!!」

「そうです!!」

こそこそと逃げ出す双子だった。

 そして、ガテン系の生徒は、ただ感動していた。

「あれがスクールアイドルなんですね!!とても感動しました!!」

涙だけではなく、顔から出る全ても出ているような状態だった。

「私も出来るかな、スクールアイドル。でも、私、体がごついからなぁ。出来るかな」

ちょっと考え込むガテン系の生徒。

「でも、ちょっと参加してみようかな。確か、明日、神田明神だね」

そう決意するガテン系の生徒。そして、これまでスクールアイドルの実情を教えてくれたメガネの生徒が席を離れるのをみて、お礼を言う。

「これまでの解説、ありがとう。あなたってすごいアイドルに詳…」

「いやいや、そうでもないって。って、私、アイドルオタクではありませんから!!」

そう否定するメガネの生徒。そして、ガテン系の生徒は別れを告げる。

「じゃ、またね。って、まだ名乗っていなかったね。私、…。」

「私ははるか、代々木はるか!!またね」

メガネの生徒ことはるかはガテン系の生徒に別れを告げる。

 そんな時、ステージにいた雪穂、亜里沙、そして、ガテン系の生徒、愛、はやて、はるか、さらにあの双子は一瞬止まってしまった。上から白い羽が落ちてくる。そのような感覚を持ったからだった。それは錯覚だったと現実に引き戻された、そうのような感覚に襲われた。不思議に思う8人。でも、これは幻だと思うのが殆どだった。しかし、後でバラバラのピースが一つに繋がることになるかもしれない。ないかもしれない。それは神のみぞ知る。

 そして、入部希望の生徒たちは…、このライブを見てこう思っていた。

「とてもすごかった。自分も2人と一緒にスクールアイドルになりたい!!でも、このライブを見てわかったかも。あの2人だから、あんなステージできたんだもの。私の入る余地ってないよね。むしろ、足を引っ張るだけかも…」

 

 翌日、神田明神、そこには雪穂、亜里沙の姿があった。

「今年はすごい!!20人もいるよ」

「去年よりも多いよ…」

雪穂と亜里沙はお互いに喜んでいた。2人の前には約20人ものスクールアイドル候補生というべき新入部員20人が集まっていた。昨日のライブを見て、感動したのか、自ら志願してきた生徒たちだった。

「それなら、今からトレーニング、始めるよ!!」

「え~」

雪穂の掛け声に生徒たちはいっせいにブーイング。

「なんでトレーニングするんですか」

新入生の1人から質問、亜里沙はたじろく。

「トレーニングって…」

そう、雪穂と亜里沙にとってトレーニングは当たり前だが、新入部員にとっては入部、即スクールアイドルという考えを持つものが殆ど…。

「そりゃあ、踊るにも体力がいるでしょ」

雪穂、たじろく亜里沙を見て、すぐに助け舟をだす。

「それもそうですけど…」

新入生、すこし困るが、雪穂は続けて言う。

「やっていけば体力がつくよ。では、石段50往復!!」

「え~」

石段50往復。新入部員だからはじめはやさしめ、と言いたいが、雪穂はそんなことお構いなしに言う。もちろん、候補生からは大ブーイング。

「ブーブー」

「さ、いろんなこと言わず、行おう」

雪穂の一言に新入部員たちも仕方なくトレーニングを始める。

 しかし、それは序の口だった。新入部員に対し、次々と過酷なトレーニングをかす雪穂。

「もう駄目」

「こんなのスクールアイドルじゃない」

次々と音を上げる新入部員たち。

「どうしてこんな過酷なトレーニングをするの?」

草葉の陰ならぬ境内の隅からみていたガテン系の生徒はそうつぶやいた。参加したいが、ちょっと恥ずかしいため、声をかけづらく、境内の隅からずっと見ていた。

「それはね…」

「えっ!!」

突然の声に驚くガテン系の生徒。隣を見ると偶然?通りかかったと思われるはるかの姿があった。はるかは驚くガテン系の生徒をよそに語り始めた。

「それはね、雪穂先輩も亜里沙先輩も焦っているんだ。先輩たちが卒業した今、2人しかいない。そして、今年も駄目だったら、ラブライブに優勝しないと、と。もっとメンバーを増やして、曲のバリエーションを増やせば、いろんなことができるからね。でも、長時間ライブをするためには体力が必要。ほかにもステージに立つためにはいろんな能力を高めないといけない。しかも2人に残された時間は残り少ない。そのため、より密に、より過酷にすることで短期間でラブライブ優勝を目指せるほど超一流のスクールアイドルにしようとしているんだ」

「そうなんだ、でも、何でラブライブ優勝を目指すの?」

ガテン系の生徒の問いにはるかが答える。

「それは伝説のグループ、μ’sという存在があるから。μ’sと同じく優勝しないといけない。μ’sのメンバーの妹であるから。そのことが2人を縛っているんだ」

「なるほど」

はるかの答えにうなずくガテン系の生徒。そして、ガテン系の生徒は続けて言う。

「そのμ’sの束縛って強いの?」

その問いにはるかはさらに答える。

「そう、2人にとってμ’sは超えないといけない存在。そのためにラブライブ優勝。優勝は絶対なんだ。それほど2人はμ’sという束縛にきつく縛られている」

はるかはそう言うとガテン系の生徒はとってもないことを言い放つ。

「私はμ’sの束縛ってただの幻(げん)実(じつ)、幻想でしかないと思う」

「え!!」

ガテン系の生徒の言葉に驚くはるか。ガテン系の生徒は続けて言った。

「2人にとって束縛なら、ほかの人が解放すればいいんだよ」

「そんなにかんたんなことじゃ…」

はるか、困窮する。他人がその人の束縛を解き放つのは難しい。そう思っていた。

「それに、このぐらいのトレーニング、私にとって朝飯前さ」

「あまり無理は…」

ガテン系の生徒のとっておしのない答えにどう答えればよいか解らなくなるはるか。

「ようし、参加しよう!!」

ガテン系の生徒、即行動。雪穂たちのところに行こうとする。

「ガテン系の生徒、待ちなさい!!」

はるかはガテン系の生徒を止め、こう言い放った。

「少しは落ちつきなさい!!あなたが行ったところでなにも変わらないでしょ」

これにガテン系の生徒、少し躊躇する。

「それはそうだけど…」

「放っておけばあの2人ならわかるよ。無理していることが」

はるかの言葉にガテン系の生徒は反抗する。

「でも、私も参加すれば…」

「それでも駄目。さぁ、あっちに行くぞ」

はるかはガテン系の生徒にこう反撃すると、ガテン系の生徒のTシャツの首根っこを掴み、まるで猫のように簡単に引っ張って行った。

「私も参加したいー」

ガテン系の生徒はエコーを解き放つつ、遠ざかって行った。

 一方、きついトレーニングに新入部員の殆どは音を上げていた。

「スクールアイドルになるのってこんなに大変なんだ」

「もうこんなトレーニング、やりたくない!!」

こんなことを考える新入生が殆どだった。

 

そして、翌日…。

 トレーニングをするために神田明神に集まった雪穂、亜里沙は愕然とした。集まった新入部員はたった5人だった。ほかの新入部員はきついトレーニングのため、スクールアイドルとしての夢に挫折した。そう、μ’sに憧れただけで入部した新入部員。たとえ続けたとしてもあまりにもきつすぎるトレーニングに嫌気を刺した新入部員が殆どだった。

 そして、次の日。

またも雪穂、亜里沙はさらに愕然とした。たった2人しか参加していない。二日続けてきついトレーニング。これにより3人が脱落した。理由は前日辞めた新入部員と同じ理由だった。

 さらに次の日。

 トレーニングに来た新入部員0。そう、誰もいなくなった。雪穂と亜里沙を除いて。

「私たち、また、2人だけ…」

「あ~、どうして~」

雪穂、亜里沙、共にがっかりする。今度こそ新しいメンバーが入ると思っていた。すぐに使えるように過酷なトレーニングメニューを新入部員に課していた。

「どうしよう~か」

雪穂の言葉に亜里沙はこう答える。

「ん~、もう一回募集する?」

「でも、またも同じだったら~」

雪穂、困窮する。また同じことの繰り返しだったらと思うと気落ちしそうだからだった。

雪穂、亜里沙、共にがっかりした表情を見せると石段に座った。

「こうなったら、2人だけで頑張ろうか」

雪穂の突然の開き直り、しかし、亜里沙は暗い表情のまま、こう言った。

「でも、私たちだけでラブライブ優勝できるの?」

「ん~」

亜里沙の言葉に雪穂も暗い表情で唸るだけだった。

 そんな暗い表情で下を向く2人。そんなとき…。

「先輩、そんな暗い表情、しないでください」

元気のいい声が2人の前で解き放たれた。

「私も練習、参加させてください」

「えっ!!」

2人は元気のいい声に驚き、見上げると、あのガテン系の生徒が立っていた。

「あなたのお名前は?」

雪穂はそう言うと、ガテン系の生徒はこう名乗った。

「みやこ、京城みやこです!!」

 

ラブライブΩテーマソング Over the LEGEND(君と紡ぐ伝説(ストーリー)

 

私たち、開拓者(チャレンジャー)

 

遥か彼方に見える伝説の地(レジェンド)

先輩たち(レジェンドラ)が築いた希望の場所

 

私たちの力だけでは乗り越えられない

だから君と力を合わせてみれば

必ず乗り越えられるはずさ

 

伝説(とき)を(伝説(とき)を)乗り越えて(乗り越えて)

見えてくる未来(あした)の私たち

本当の(本当の)美しさ(美しさ)

心に秘めて未来(あした)に進もう

Glory(グロリ) my heart

 

「次回」

「あいはやるか」

 




あとがき

 こんにちは。お元気でしたでしょうか。Laです。
 まず最初に、ラブライブと私の出会いから。ラブライブとの出会いはラブライブが始動したときからでした。ラブライブ1stシングルが出るのを知った時、これはとても良い作品になると思いました。ただ、当時も金欠だったため、そのシングルを買うのはできませんでした。それでも、新曲が出る度にそれを確認し、周りにいる友人にそれを進めておりました。ラブライブ関連の商品を買ったのはラブライブ1stライブのDVD。それも販売されるということですぐに予約するくらいでした。むろん、ベストアルバム1が出るということですぐに予約しました。このようにラブライブ歴はすでに5年を過ぎているつもりです。
 そして、この二次創作小説を考え付いたのが映画公開4週目の土曜日でした。当時、入場者プレゼントの色紙がもらえるということもあり、近くの映画館に1回目と2回目の鑑賞券を買っていたのです。しかし、1回目で配り終えてしまいました。とても悔しい思いで2回目を見たのですが、何度も観ているので内容は覚えていました。そこで、他の切り口がないか観ておりました。それを探しているうちに映画の最後のシーンで数年後、音乃木坂のアイドル研究部は雪穂と亜里沙の2人しかいないのではと思う様になりました。なら、その続きを作ったらと思うととても嬉しくなり、家に着くなり、すぐに登場人物の簡単な設定と第1部のプロットを作り上げました。そして、第2部、第3部、+αのプロット、及びその関連楽曲16曲の作詞を少しずつ作り上げました。おまけにまったく関係のない曲2曲の作詞もしました。
では小説を作りましょうと思ったのですが、戦国ドライブを思いついてそれから先に小説を作り上げてしまいました。3ヶ月ぐらい塩漬け状態でした。では、何で今なのか。それは、ラブライブサンシャイン(私は略してラブシャインと呼んでいます)のアニメ化です。雪穂役の東山奈央さんは神のみぞ知る世界の中川かのん役としてCDを多く出しております。そして、亜里沙役の佐倉綾音さんはのんのんびよりの夏海役、ごちうさのココア役として多くのキャラソンを出しております。この2人、歌はとってもうまいので、ラブシャインでもライバル役として活躍するのではと予想しております。これだと後出しになりかねないと思いました。そして、戦国ドライブ・イエヤス伝第1部を作り上げたので、ようやくこの小説を作り始めたというわけです。なお、この小説が自分にとって初めてプロットを書いた作品となります。
 ちなみに、余談ですが、劇場版ラブライブの色紙ですが、自分に起きた変な逸話があります。2~4週目の色紙を1枚もらっているのですが、もらったのが海未、凛、花陽、希の4人(第3週だけ2枚ゲットすることができました)。そう、Lily Whiteが揃ったのです。さらに、コンボセットのミニクリアファイルもLilyWhiteの3人しか当たらず。何度購入しても、別の映画館で購入しても同じ結果…。しまいには近くにいた観客から希と絵里を交換してもらう始末。最後の最後で花陽がでてくれた時には喜びました。(色紙はその後、後日の色紙配付及びヤフオクなどで全種類集めました。)
 そして、劇場版ラブライブでもう一つ奇跡がありました。それは映画フィルム。映画フィルムをもらうために予約開始からすぐに予約したのですが、土曜日2回目が最後の1席だったのですぐに予約。そして、その回でもらったフィルム。これが最後の「僕光」のような大当たりではないのですが、予告編でも登場した顔面アップのシーンのをもらいました。(なお、これで運を使い果たしたのか、10週目のフィルムは神田明神の境内、どこかわからない場所のシーンしかもらえず、ガルパンも戦車ばかりでした。)これをPileさんの握手会の時に直接見せたところ、大変驚いた様子でした(ただ、驚いたので握手はできず、さらに、緊張していたので、Pileさんの顔を見れず、ずっと下を向いていました。がくし)。
 ちょっと長くなりましたが、この物語は大きく分けて3章+αで構成されております。そして、この作品のために16曲の作詞も行いました。この曲は物語の中で発表していきます。おまけの2曲も物語の中で発表するつもりですので楽しみにしてください。
 それでは次の話を期待しておいてください。それでは、さようなら。

(追伸)
 本当はライトノベル3巻+αを予定していたのですが、自分の創作レベルが低いためか、結局、3章+αで構成することになりました。そして、少しでも読みやすいように1話分をノート10ページぐらいで抑えるようにしております。全体で12~15話+αぐらいで終わるように努めてまいりますので、どうぞよろしくお願い致します。

(追伸2)
 なお、この作品に出てくる雪穂たちのグループの人数は8人です。これは虹の7色を各メンバーのイメージカラーとしている(8人のうち、双子は2人で1色なので、全員で7色。って、アイマスを参考にしていませんから)、そして、コンサート時、μ’sのライブ前に行うメンバーの掛け声において、1~9と言った後に観客が10と叫ぶことが定番になっているみたいでした。つまり、観客こそが10人目のμ’sのメンバーなのです。それならば、この小説では8人のメンバー+読者の皆さんで9人、これで読者の皆さんも参加できるグループになってくれたらいいなあと思い、1人少ない8人というメンバー構成にしました。この小説ではあなた自身が9人目のメンバーとして参加してみてはいかがでしょうか。(なお、これが後に本編で重要になってくると思っておりますが、書き忘れてしまうかも。書き忘れたらごめんなさい)。

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