今回はアルミン・アルレルトとイスカンダルです。
「これが…海…」
調査兵団所属、アルミン・アルレルトは心の底から感動していた。
目の前にあるのは、どこまでも広がる青い海。
潮の匂いが鼻に流れ、海岸に打ち寄せる波の音が心地いい。
彼は海を見た事がなかった。
そしてこの光景は、彼がずっと追い求めてきたものであった。
彼の生まれた街では…いや、かれの存在していた世界での人類は、三つの巨大な壁が覆い尽くす中を、外敵から隠れるように生きてきた。
彼の生きる世界では、巨人が人間を支配していた。
圧倒的捕食者である巨人に対し、人間は逃げ惑うことしかできなかったのだ。
故に彼は、今まで壁の中という、世界の中ではほんの一粒に過ぎない、限られた場所で生きざるを得なかった。
憧れの始まりは、一冊の本であった。外の世界についてが書かれている本だ。
それは、まるでおとぎ話のような内容であった。
塩が含まれた、どこまでも続く巨大な湖…
まるで地獄のような高熱を放つ、炎の水…
砂塵吹き荒れる、砂の雪原…
山も足場も、全てが氷でできている、氷の大地…
ページを一枚一枚めくる度に、心が踊った。
世界にはこんなものがあるのだなと、それを見てみたいと、強い欲求に取り憑かれたのだ。
そして今、強く望み続けていた夢が一つ、叶ったのだ。
しかし一つ贅沢を言うならば…自分と同じく外の世界に憧れた、一人の親友と共に、この景色を眺めたいものだったのだが…
「貴様にとって初めて見る光景か…いいものよなぁ、未知との出会いというものは」
アルミンのサーヴァント、制服王イスカンダルが隣から語りかける。
太陽の光を反射させ、美しく輝く海を肴に、上質な酒を喉奥に流し込んだ。
「ーーしかしだ、小僧。貴様はこのような、偽りの海で満足できるのか?」
イスカンダルが顔を険しくする。
そう、所詮この世界は、聖杯戦争の為に生み出された、仮想世界に過ぎないのだ。
「貴様の積年の夢だったのだろう?それをこんなまやかしで妥協する気か?」
「片腹痛い!」と、イスカンダルは吐き捨てた。
「そ…それは僕だって、できれば本物の海をこの目で見たいさ!」
「ーーで、あろう?ならばやる事は一つだ、己の力でこの戦を勝ち残り、聖杯を手に入れる!それが最も手っ取り早い、貴様の夢への活路だ!」
「もちろん、自分の手で叶えたいという拘りがあるのならば、あまり勧めはしないがな」と付け足す。
「…僕なんかでやれるだろうか…
相手はあらゆる英雄達なんだろう!?そんな人達を相手に…僕なんかが太刀打ちできるのだろうか…」
「なぁにを言う!!」
不安で俯くアルミンを背に、イスカンダルは大声で笑い飛ばした。
「貴様にはこの余が!制服王イスカンダルがついておるのだぞ!?武装付きの大船に乗ったつもりで、どっしりと構えておけばよい!!」
イスカンダルがドンッと、大きな音が鳴るほど強く自分の胸を叩いた。
白い歯を見せて笑いかける。その大きく逞しい身体からは、止めどない安心感が溢れていた。
「ライダーは少し、少しだけ僕の友達に似てるね」
笑うイスカンダルの顔を見ながら、アルミンは親友である、エレン・イェーガーの事を思い浮かべた。
少し危なっかしい所や、途方も無いことを平然と言ってのける所が、そう思えたのだろう。
「余と似ているか!そいつはさぞ偉大な王なのだろうな!」
「あくまで少しだよ」
勝手に自己解釈し、笑うイスカンダルに、アルミンが苦笑を浮かべながら指摘した。
「…さて、止まっていてもしようがない、そろそろ動くとするか?小僧」
「そうだね、行こう。ライダー」
「いい顔になったではないか、それでこそ我がマスターだ」
覚悟を決め、腹を括ったアルミンに、イスカンダルは嬉しそうにそう言った。
「いざ!二度目の聖杯戦争へ!!我が覇道を示そうぞ!!」
海を前に、ライダーがキュプリオトの剣を空高く掲げた。
雷光走り、轟音響く。
天からは雷の神獣が、戦車を引きいて舞い降りた。
【作品】Fate
【CLASS】ライダー
【マスター】アルミン・アルレルト
【真名】イスカンダル
【性別】男性
【属性】中立・善
【ステータス】筋力B 耐久A 敏捷D 魔力C 幸運A+ 宝具A++
【保有スキル】
対魔力(D)
魔術への耐性。一工程の魔術なら無効化できる
乗馬(A+)
騎乗の才能。獣ならば竜以外の幻獣・神獣まで乗りこなせる。
軍略(B)
多人数を動員した戦場における戦術的直感力。自らの対軍宝具行使時、相手の対軍宝具および対城宝具の対処時に有利な補正がかかる。
神性(C)
明確な証拠こそないが、多くの伝承によって最高神ゼウスの息子であると伝えられている。
カリスマ(A)
大軍団を率いる才能。Aランクはおおよそ人間として獲得しうる最高峰の人望。
【宝具】
『
ランク:A+ 種別:対軍宝具
雷気を纏った二匹の神牛
ゴルディアス王が主神ゼウスに捧げた供物であったものを、イスカンダルが自身の持つキュプリオトの剣で、繋いでいる紐を断ち切ったという逸話が由来するもの。
高速飛行も可能である。
『
ランク:A+ 種別:対軍宝具
神威の車輪の真名開放による蹂躙走法。
対軍宝具に相応しい威力・範囲を誇る。
『
ランク:EX 種別:対軍宝具
ライダーの生き様の象徴とされる宝具。
彼が生前駆け抜いてきた景色を心象風景とし、生前率いていた近衛兵団を独立サーヴァントとして連続召喚する。
彼自身は魔術師ではないが、彼の仲間たち全員が心象風景を共有し、全員で術を維持するため固有結界の展開が可能となっている。