提督が着任したのです!   作:ハイズ♂

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書き溜めも無くなり、話もひと段落。
お疲れ様でした。


作戦完了なのです!

『……ということでうちは北方海域突破です、このあとはやっと北方棲姫にご対面ですよ』

 

『南西諸島をやっと抜けれるようになったうちとは大違いですね』

 

『まだ様子見ですが、無理そうならば後回しにしますよ。

 そちらも焦らず行けばいいと思いますよ、これは競争するようなものじゃないですし、自分のペースでやれば』

 

『はい、とは言っても錬度は上げたいのですよね……』

 

『南西諸島抜けたなら、北方海域でのモーレイ海哨戒抜けたあと、キス島撤退作戦が錬度上げはかどりますよ』

 

『ふむ、キス島ですか、モーレイ海哨戒ならば先日終わりましたね』

 

『キス島は水雷戦隊以外だと攻略できない場所ですが、逆に考えるんです、攻略しなくてもいいさ、と』

 

『なんと……』

 

『空母で制空権抑えて一戦して撤退するだけのお仕事です』

 

それ撤退作戦じゃない、殲滅作戦だ。

 

『さて、食事を取ってきますね』

 

『はい、それでは』

 

 

彼の鎮守府は私の予想以上に強くなっているようだ……

私の泊地は未だ戦艦クラスを相手取るにも大破艦が出ることすらあり、毎回冷や汗が出るというのに。

に、しても姫と言ったか……初めて出る単語だったが、深海棲艦にも階級制度のようなものがあるのだろう。

 

最近は艦娘の皆も改造が一通り終わり、戦力が整ってきた。

とはいえ、だ。

 

聞いた話だと周りの泊地には、ほとんど艦娘がおらず少数の駆逐艦が警備に回る程度らしい。

 

きっと、戦力の大多数を前線に送っているのだろう。

苦労が偲ばれる。

 

前線に艦娘を置き続けるような錬度は現状なく、やれといわれても無理なのだが。

我が泊地にはそのような命令は来ていない、大本営からしたら、うちのような些少の戦力などにこだわっていられないのだろう。

おかげである程度自由に動けるのだ、チャットの彼の言うとおり自分のペースでやらせてもらうとしよう。

 

 

さしあたってはキス島か……だが撤退作戦とは、誰を撤退させるのだろうか?

あの地はすでに人など住んでいないはずだが……陸軍でも残っているのか?

 

「キストウイクノ?」

 

「おや、妖精さんか、そうだな次の目標はキス島だよ」

 

もう最近はこの神出鬼没ぶりにも慣れてきた。

どこにいても出てくるからな。

 

「ナラ、ナカマタスケテ」

 

「仲間、とな?」

 

「キストウ、ナカマイッパイ、シンカイセイカンニカコマレテ、デレナイミタイ」

 

「なるほど……」

 

住民でも陸軍でもなく妖精さんの撤退作戦、か

 

「コンカイ、ワタシタチモツイテイッテ、テツダウ」

 

「判った、そういうことならば手を打とう」

 

 

 

榛名・霧島・扶桑・鳳翔・龍驤・はっちゃん

金剛・比叡・山城・赤城・千歳・千代田

 

このあたりに順々に外周で戦ってもらって

その合間に、軽巡率いる駆逐艦たちに内部に潜入してもらうとしようか……

 

我が泊地はじまって以来の全力出撃だな……

 

 

警備任務のことも放っておけない、駆逐艦の数が足りないか……久々に建造を行うか。

 

 

「こ、こんにちは、軽巡、阿武隈です」

「アタシは軽巡、北上」

 

 

駆逐艦を求めているときに軽巡が出る不具合について……

いや、いいんだけどね。

軽巡でも警備任務できるし。

 

「うわ……北上さん……」

「何さー、あ。……なんだ、阿武隈かー」

 

「ん、なんだ北上は球磨型、阿武隈は長良型のはずで姉妹艦じゃないはずだが……知り合いなのか?」

 

「え?あたしのこと気になってんの~?そりゃあ趣味いいねー」

「正直いって、北上さん苦手です……」

「えーぶつかられたの私じゃん……この艦首が突っ込んできたんだよねー」

「ふあぁぁ~っ! あんまり触らないでくださいよ、私の前髪崩れやすいんだから!」

「ごめーん、ちょっと壊しちゃったよ」

 

あぁ、電と深雪みたいなものか。

 

「とりあえず、二人ともよろしく頼むよ」

 

「阿武隈、ご期待に応えます!任せて任せて」

「まーよろしくー」

 

彼女らは皆がキス島に行っている間、警備任務の穴埋めをしてもらわなければならない。

 

早速だが、漁船の皆さんに揉んでもらうとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令官さん、お手紙が届いたのです」

 

「おや、珍しいな誰だろうか……」

 

「司令官さんに、お手紙送ってくれるようなお友達がいたんですね……」

 

「だから不名誉なことを言わないでくれないか!?」

 

 

私は電にどんなふうに見られているんだろうか……

 

さて、手紙だが……

 

 

「なんてことだ、大本営からか……」

 

もしや、前線への戦力供出命令だったりするのだろうか……

だとするなら我が泊地としては厳しいものがあるのだが……

 

 

「大丈夫なのです、司令官さん」

 

「電……そうだな、心強いよ」

 

暗い顔をしたのを見られたのだろう、電がこれまでにない意志の強い目でこちらを励ましてくる。

こうも信頼を向けられると私ががんばらなければと思わされる。

 

「お友達、いなくても私たちがいるのです」

 

「……」

 

泣きたくなってきた。

 

 

 

「それで、大本営からはなんと言ってきたのです?」

 

「どうやら査察のようだが、どうもおかしいんだ」

 

「何がなのです?」

 

「近場の呉鎮守府から来るのはいいのだが、どうも中将がじきじきに来るそうなのだ」

 

「中将なのです!?」

 

それと随伴として戦艦二隻、か

 

 

 

「だがしかし日取りが悪いな……予定では艦娘はキス島にほとんど出払っているぞ」

 

「あ、本当なのです……」

 

「かといって出撃を取りやめるわけにもいくまい」

 

「なら、せめて私はここに残るのです」

 

「しかし、駆逐艦は今回重要な艦だぞ、錬度も電は駆逐艦で随一だ、編成から抜けるのは痛い」

 

「でも初期艦として配置された私は残ったほうがいいと思うのです……

 提督以外でここの事を一番知っているのは、私なのです。

 それに……」

 

「それに?」

 

「艦隊の皆も錬度は充分上がっているのです、信頼しても良いと思うのです」

 

こちらを見つめ話す電の言葉にはどことなく熱がこもっていた。

 

「ふむ……一理ある。わかった電にはここに残ってもらおう。

 あと、これ以上反論しても、皆を信頼していないと言うことになってしまうからな」

 

「なのですっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、呉鎮守府から柱島に査察が入る日。

提督と電は中将たちを迎えるために港に来ていた。

 

「こうして、二人だけになるのはいつ振りかな」

「執務中では結構あるのです……でも泊地に二人だけは最初の数日だけ、なのです」

 

 

時間的に今、皆はキス島で撤退作戦を行っているところだろうか。

 

 

「あ、船影が見えて来たのです、三隻なのです」

 

艦娘の戦艦2、あとは中将が乗っている船だろう。

 

「では迎え入れるとしようか」

「なのです」

 

 

意外なことに普通の船のほうは艦娘に曳航されてきたわけではなく、自力で航行してきたようだ。

そして、船からは操舵室から一人、軍服を着こなした初老の人物が降りてきただけだった。

 

「ここらの海域は安全度が高いから、たまには自分で舵を取りたいとおっしゃってな……」

 

ショートカットの艦娘がそう話すが、まさか自分で船を動かしてくるとは……

 

「ふふ……びっくりしちゃったかな?」

 

ポニーテールの艦娘が悪戯が成功したかのような顔で笑いかけてくる。

 

 

「それもなのですが、一人だけで来たのに驚いたのです……」

 

それは私もだてっきり護衛の数十人は来てもおかしく無いと思っていたのだが。

 

 

「そりゃ、深海棲艦に護衛何人付けても意味無いからだ

 出迎えご苦労、駆逐艦電に柱島の提督だな?」

 

「暁型4番艦電なのです!」

「柱島提督━━━━です!」

 

 

敬礼と共に確認のため自己紹介を行う。

 

 

 

 

 

 

船の操舵は私自身の趣味だ。

足の軽さのおかげで元帥には重用されているが、それ以外だとなかなか船を動かせない。

みな止めるのだ。偉くなるのも考え物だな。

まぁ、横須賀に定例報告に行くときしか舵を握れないので今回はいい機会だった。

 

 

 

さて、仕事を進めるとしようか。

 

「今日のところは建造ドックを重点的に見たいと考えてる、案内を頼む」

 

「ハッ、了解しました」

 

 

道すがらうちの艦娘が駆逐艦に問うていた。

 

「ここはやけに施設が大きいが、いつの間にこんな施設を建てたんだ?」

「ここは空母寮であちらが戦艦寮なのです、妖精さんが一晩で増設してくたのです」

「そうか……」

 

妖精とは、建造だけでなくそんなこともするのか……

 

 

少し毛色が違う建物があったので私も問うてみる。

 

「あの建物はなんだね?」

「食堂になりますね」

 

「じゃあ、その隣にある大きな建物は?」

「食料保管庫になります」

 

待て、ちょっとした体育館くらいあるぞ。

 

「あの、どでかい建物、中身は全部食料庫なのかね!?」

「はい、艦娘20名以上がおりますので……よく食べる艦娘も居ますし……」

 

20以上……その数に驚けばいいのか、その程度の数で体育館並みの保管庫か必要となることに驚けばいいのか……

 

「食糧供給はどうなっているのかね?」

「漁協の皆さんに提供されることがほとんどですね」

「……あぁそういえば」

「いかがなされました?」

「漁協から感謝状が届いていたぞ、あとで送ってやろう」

 

山のようにな

 

 

「ここがドックか」

「いえ、工廠になりますが、ドックは工廠の中の一部です、ご案内します」

 

工廠の内部に入るが、物音一つしない。

 

 

「静かだね」

「ちょうど今北方の作戦に出撃させておりますので」

 

北方……つい最近まで南西諸島での活動していたのは確認しているが……活動海域を増やしたのか。

 

 

「ここが建造ドックです」

「ふむ……今建造することは出来るかね?」

 

「いいえ、今は動かすことは不可能です」

「な、何故だ?」

 

「先ほども申したとおり全員出撃しておりますので」

「全員、かね……艦娘が20人以上居ると言ってなかったか?」

 

「はい、近海の警備任務に軽巡駆逐合わせて6隻」

「ふむ」

 

「キス島に戦艦4航空戦艦2正規空母1軽空母2水上機母艦2軽巡1駆逐艦5潜水艦1の18隻」

「は……?」

 

柱島の提督が発した言葉を理解するのに少々時間がかかった。

最初期、英雄と呼ばれた元帥が率いていた艦数は長門を旗艦とする連合艦隊12隻だった。

それで日本近海の全土を救って回ったのだ。

 

今目の前にいるこの人物はそれに倍する艦隊を運用していると言う。

 

しかもあのかつての英雄の艦隊の5割増しの数を一方面の一つの作戦に投入していると言ったのだ。

 

 

「あと妖精さんが作戦に参加しています」

 

 

話に聞く妖精とやらもか……

 

 

「まったく……その海域の奥にはどれ程の敵が居るのやら……」

 

「……北方棲姫でしょうね、これ以上先に居る姫とはまだ戦いたくありません」

 

さらりと言った言葉、姫、ホッポウセイキ、北方に棲まう姫だろうか。

 

深海棲艦の指揮官だろうか……その艦隊で戦いたくないと言わしめる深海棲艦

いや、まるで居ることが前提の、戦力を計算したようなその言葉……

まさか一度なりとも戦ったのだろうか?

まだ戦いたくない、まだ、と言ったのだ。すでに倒すことを前提にしている。

 

その両目には、いったい何が見えていると言うのか……

 

 

 

「君は、これからどうするつもりかね?」

 

自然とそう尋ねていた。

 

 

「今まで通りやって行きますよ」

 

気負う風もなくそう答えた。

 

「今まで通り、か」

 

日本近海を開放し、遠方にすら作戦行動に向かわせ、彼の英雄を超える艦隊を率い、深海棲艦の指揮官すら射程に収める、今まで通り、か

 

「何か困ったことがあったら、私に伝えなさい、出来うることならば便宜を図ろう」

 

「はっ!ありがとうございます!」

 

 

こうして私は柱島を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「特に何事も無く終わってよかったよ」

 

「なのです」

 

中将と艦娘二人を港から見送って電と二人肩の力を抜く。

 

「建造、結局見ずに行っちゃったけど、まぁあちらの鎮守府にはもっと立派なのあるだろうしね

 がっかりさせてなければいいけど……」

 

「特に問題があると言われるよりはいいのです」

 

今回の査察はこれで終了だ。

中将直々に見に来たのだから、軍部によくありそうな横槍で難癖付けられるようなこともないだろう。

 

終わってみれば万々歳の結果だと言えよう。

 

 

「司令官さん、あっちの方角、あの独特の艦橋ととても大きい艤装は……」

 

「扶桑型だね、いやぁ遠目にも判りやすいねアレ」

 

さぁ我が艦隊の帰還だ、ちょうどいいから港で出迎えるとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

中将の帰還中

 

「なぁ伊勢、日向……その飛行甲板っぽい物は何かね?」

「やだなぁ中将、飛行甲板に決まってるじゃん」

 

決まってるじゃんと言われてもだな

 

「お前ら戦艦だよな、空母じゃないよな?」

 

 

「改造なら電でも出来ると言うことでな、やってもらった、お土産で瑞雲も貰ったぞ」

「今の私たち35.6cm連装砲が2と瑞雲25機よ」

「まさかの航空戦艦の時代だな」

「戦艦の火力と軽空母並の航空機運用力……ね、素敵でしょ?」

 

艦種まで変わってるじゃないかお前ら

 

「あの泊地……どうなっとるんだ……」

 




提督「なぁ中将から、山のように漁協の感謝状が送られてきたんだが」
電「だいたい中身は同じようなことばかり書いてあるのです」

提督「明らかにうちだけじゃないよな、きっとうちのなんて精々1枚か2枚くらいだ」
電「あ、きっと以前演習した響ちゃんのところの泊地のだったりするのです」

提督「あぁあそこか……」
電「あそこの錬度なら納得なのです!」

提督「じゃあ、一枚だけ額縁に飾らせて貰って、あとは全部送るか」
電「なのです!」




響提督「なんぞこれ」
響「全部近場の漁協からの感謝状のようだね」

響提督「にしても多すぎるだろう」
響「電曰く、一枚貰ったらしいから、一枚とったら他に回せって事じゃないかな?」

響提督「回覧板か!?」

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