提督が着任したのです!   作:ハイズ♂

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この作品は艦隊これくしょんの短編二次創作です。
『』内のセリフはチャットで喋っていると思ってください。


着任したのです!

かつて、突如として現れた深海棲艦

また人類の味方として敗戦間近であった我が国に現れた艦娘

 

深海棲艦の大攻勢は艦娘を率いる海軍の抵抗にて近海より戦線を下げ

本土周辺は散発的にはぐれ艦隊が現れる程度にに留まる

とはいえシーレーンはいまだ破壊されたままであるし、物資とて無限に貯蓄してあるはずも無い

 

 

海軍は遠方に橋頭堡としていくつかの泊地を作り、シーレーンを確保すべく優秀な人材を送り込んだ。

本土の鎮守府も戦力を供出し、遠征艦隊を出し、戦線の維持に努めている

 

……そう維持だ、現状シーレーン確保などとは言えたものではない

 

だが物資の輸送の都合や慢性的な戦力不足もあり、よくやっていると言えるほうだろう。

 

偉そうな事を言ったが、遠方に送られたのが『優秀』な提督であるならば、内地に配置された私は凡人だろう。

内地付近に配置された私に課せられた任務は「戦力拡充せよ」ただこれのみである。

一艦とはいえ駆逐艦を配置され、物資は細々としているが確実に送ってきてもらえる。

これ以上は贅沢といえるものだろう

 

この柱島泊地に着任して三日

内地にあり、呉鎮守府も近いこともあり深海棲艦の襲撃も散発としたもの

これが南部や北部になるにつれ強力な敵も出る、らしいが

 

 

 

 

「司令官さん近海周回終わったのです!」

 

そんなことより職場にかわいい子が居る現状っていいよね!

 

 

 

「ご苦労様、こっちも着任の書類も終わったし……これからどうすればいいんだろうね?」

 

「えっと、どうすれば、と言われても……」

 

今まで海軍ですごしてきたが、周りはむさい男ばっかりだったので彼女の一挙手一投足に癒される気分だ。

 

 

いやだがしかし、本当どうすればいいんだろう

大本営からの指令は事実「戦力拡充」これしか送られてきていないのだ。

彼女……電には泊地周辺の警備で確実に錬度を上げていけばいいが、それだと私はすることがないのだ。

 

「司令官さん、それじゃあ詳しい人に聞いてみたらどうなのです?」

 

「詳しい人って言ってもね、ツテも無いし……ここ電話線だってまだ繋がってないよ」

 

「そのぱそこんと言うので連絡はできないんですか」

 

「これかぁ……」

 

一応大本営への報告書なんかをまとめるための物で回線なんて繋がってないんだが……

と言うか書類をまとめるだけならば私用のノートPCで十分で、この据え置き機は使う気が無い

ちょっとした悪戯心から私はひとつ彼女をからかってみようと考えた

 

「それじゃ秘書艦電!」

 

「はいなのです!」

 

「これを使って誰でもいいから、アドバイスをくれる人に連絡を取ってくれ」

 

「あ、え、電がですか?」

 

「あぁそうだ、頼んだよ。

 わたしはちょっとお茶でも入れてこよう」

 

そして私は振り向かず給湯室に向かった。

後ろからパソコンに向かって「よろしくお願いするのです!」という電の言葉を聞きながら。

 

 

 

 

 

「連絡が取れたのです!」

 

「は?」

 

二人分のお茶とおせんべいを持って戻ってきた私を迎えた第一声がそれだった。

いや繋がるわけはないのだ。

あぁ、なんかいじっているうちにそれっぽい何かでも起動して勘違いしているのかもしれない。ならば彼女が傷つかないよう、最初はそれっぽく話をあわせて、このパソコンでは連絡を取るのは無理そうだと話を持っていくか。

 

「そうか、お茶とおせんべいを持ってきたから一息つくといい、では……」

 

そう言って画面を見てみる

これは……チャットアプリだろうか、こんなものが入っていたのだな

 

「いただくのです!

 ありがとうございます、きっちり半分こなのです!」

 

せんべいは大き目のものを「4枚」持ってきたから、ま、2枚づつだな。

どうやら喜んでいるようだし全部食べても構わんのだが

 

チャットだが、繋がるべくもないだろう

そうだな挨拶してみたが返事が無い所を見せ、仕方ないで済ますとするか。

 

『初めまして、柱島で提督をしているものです。

 つい先日着任して、これからについてアドバイスをいただきたくご連絡をさせていただきました。』

 

うん、こんなものか……返事が無いとわかっているのに、こういう書き込みをするのも奇妙な

 

『初めまして、柱島の提督、ですか艦隊運営とか大変ですよね、

 私のことではないですが、提督をやっている友人はいつも資源が足りないと嘆いています』

 

 

 

……

 

 

「なぁっ!?」

 

「はわわ!?どうしたのです?」

 

「返事が、挨拶への返事があったんだ!」

 

「あ、ちゃんと連絡取れたのですね、よかったのです」

 

いや、よかったよくなかったじゃなくて現状に理解が追いつかない!

戦艦の主砲ぶっぱなして潜水艦を沈めたとか、爆雷を投射して敵艦載機を倒したと言われたほうがまだ信じられただろう。なんぞこれ、なんぞこれ。

 

 

『着任したてという事なら戦力増強でしょう。

 工廠で妖精さんに建造してもらってはどうでしょう』

 

・・・ん?

 

 

「なぁ電、そもそもここ工廠あるのか?

 いやそれよりも、妖精さんってどこにいるんだろうな?」

 

いや、この人物は妖精さんなどとひどくファンタジーな事を言うものだ、

妖精などといえば森の中だとか湖のほとりだとかそういったところが定番だろうに、よりによって工廠などと油臭い場所を指定するのもちぐはぐな印象を受ける。

 

「妖精さんなら、そこでおせんべいかじってるのです」

 

「オチャハナイノデスカー?」

 

 

電が指し示した先には2頭身の何かがおせんべいの1枚を両手に持ってお茶を要求してきていた。

 

 

「ぱそこんもその妖精さんがやってくれたのです」

 

「ヤッチャッタゼー」

 

二度三度と眼を瞬かせてもそこに居る謎生物……生物?は存在していた。

艦娘なんて存在も居るのだし、許容範囲……なのだろうか?

 

 

「その……妖精さんは、工廠で艦娘の建造なんかも、できるの、だろうか……?」

 

さまざまな驚愕を飲み込み、なんとか言葉を捻り出したものだが、どうにもつっかえつっかえになってしまった事を私は自覚した。

 

 

「えっと、どうなのです?」

 

「ツクレル、カンムスモ、ソウビモ、カイタイモオマカセ!」

 

「解体なのです!?」

 

ズサッと電が一歩妖精さんから後ずさる。

解体って、実はこの妖精さんさらっと恐い事を言う。

 

 

「司令官さん解体とか恐ろしい事しないで欲しいのです!」

 

「私かい!?」

 

「ケンゾウモ、カイタイモ、テイトクメイレイシダイ」

 

「しないよ、解体とか!

 解体なんてしてもメリットがないじゃないか安心しなさい!」

 

電は青ざめた顔で懇願してきているが、知らなかった上に、出来たとしてもそんな事するつもりも無い

 

 

「そうですよね、安心したのです……」

 

「メリットナラ、シザイガフエルデスヨ」

 

「しないから!」

 

この妖精、いや妖精「さん」だな、なんなんだこいつ。

 

 

「あの、あれ、お返事しなくていいのですか?」

 

「そういえばパソコンそのままだったな」

 

 

画面の向こう側の人はどうやら艦隊運営に詳しいようだと推測される。

なんで回線繋がってないパソコンで連絡が取れるかとかは、そこの妖精さんの謎パワーとかだったりするのだろう。

友人に提督がおり、妖精さんの事も知っていた彼の人物の知識は今の私にとってとても重要な指標だ。

海軍上層部のお偉いさんのご子息、いや提督に着任したてとはいえ私でも知らなかった妖精さんの事を知る事から鑑みて同業の先達だろうか。

いずれにしろ失礼があってはならないだろう。

しょっぱなから、会話に夢中になって放置してしまったが。

 

 

『返事が遅れてまことに申し訳ありません。艦娘や装備品を作るのが妖精などというファンタジーに驚き戸惑い色々確認を取っていたところであります。

 右も左もわからぬ若輩者ですが、なにとぞご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします』

 

『いえいえ、私もつい先日提督になったばかりです、かたい言葉は抜きでいきましょう。

 妖精さんが装備を作るとか言われたらそうですよね、一般的に妖精が手がける装備と言ったら剣とかそんなファンタジーなの想像しますよね』

 

 

「おぉ、やはり同業だったか、先任の方だと思っていたがなったばかりという事は同期かな」

 

「司令官さんの同期の方だったですか」

 

「同期なんて勉強ばかりでコネも作らなかったからな、おそらくまったく知らない人だろうが……」

 

だから左遷代わりにここに送られたわけなんだが、いや不満はまったくないんだけどな。

 

 

「お友達、居なかったんですね司令官さん……」

 

「不名誉なこと言わないでくれないか!?

 しかし、こうして偶然からでも結んだ縁、大切にしたいものだな」

 

「なのです!」

 

 

 

 

 

「戦力拡充」か、大本営の命令はこういった事を指していたのだな、確かにこれは着任して現物の「妖精さん」をみるまで説明もし難いだろう。確かに艦娘が建造できるのならば「戦力拡充」たりえる。

 

これから、忙しくなりそうだ。

 

まずはお礼を言った後に、工廠で建造か。

 

 

 

「響だよ。その活躍ぶりから不死鳥の通り名もあるよ。」

「雷よ!かみなりじゃないわ!そこのとこもよろしく頼むわね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………これより定例報告を聞こう」

 

大本営の静かな一室にて声を上げたのは胸に多くの勲章を下げた老齢の人物であった。

彼の人物は最初期の深海棲艦の襲撃を生き残り、艦娘と邂逅し、柔軟に彼女らを受け入れ、日本近海より戦火を退けた英雄であった。

かつての彼の上司に当たる人物の多くは九段の元にあり、今はその後を引き継ぐように元帥となった人物でもある。

 

半年前、なんとか日本近海の安定化を図り、どうにか体裁を整えたが、慢性的な戦力不足はいなめない。

戦力としては強力な遠方の敵艦相手には何かと不足しがちな駆逐艦を新任の提督に預け、錬度を上げたのち、一大攻勢に移る予定であったのだが……

 

 

「呉鎮守府の……なんで柱島のは『艦隊』を持ってるんだ?」

 

「妖精さんが一晩でやってくれた、と……」

 

「妖精さんとは何かの暗喩か?

 ……金剛型戦艦などは南方にいるのではなかったのかね?

 なぜかの艦隊に居るのだ」

 

「いえ、南方にも間違いなく居ます」

 

 

大本営も予想外なことに近海の警護が出来れば良し、錬度を上げて貰えば万々歳、そう考えていたところに新任の一人がいつの間にか大艦隊を引き連れ、ある程度安定化していたとは言え深海棲艦はびこる日本近海をあっさり奪還したのである。

 

それだけでなく、いつの間にか増えた艦隊のうち水雷戦隊などはタンカーの護衛などをはじめとする資源輸送、漁業の助けにもなる警備、おまけに敵の偵察や通商破壊などまで行っているらしい、その活躍は軍部のみでなく、一般にも受け入れられていて海軍の名声に一役買っていて強攻策にも出れない。

 

 

「最近は敵艦載機が厄介であり、軽空母で支えてはいるが正規空母を求めている……と報告がありました」

 

「……配置していない赤城がいただろ、もういっそ送ってやれ」

 

投げやりに、かつての英雄はそう言った。

 




大本営「戦力拡充(錬度上げ)な」
提督「戦力拡充ですね(建造しなきゃ)」

提督『どうやったら戦艦とか出るんだろう』
|д゚) 『このレシピで出るらしいよ』
提督『おおありがたい!』

大本営「あるぇ?」

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