「三日月欲しいー! 狐欲しいー!」
席を離れ雑談する者も多い中で、周りと同じようにグループを作っていた少女は友人の欲しがる声に肩を竦めた。『何の話?』と首を傾げる級友は珍しくもあのゲームをやっていないのだろう。
「じじい来て! 早く来て! めっちゃお世話するから!」
「どこのお年寄り求めてるの? この子」
「いやいやいや、三次元の老人欲しがってるわけじゃないから。そんな女子中学生いないから」
怪訝な顔をする真面目な同級生はスマホでアプリゲーなどしないのだろう。有名なゲームでも知らない人は知らないものだ。私も今月始めたばかりだった。
「ゲームだよ、ゲーム。駅のホームにポスター貼られまくったりテレビCMで流されてるやつ。広告費用どんだけってゲームだからかなり登録者多いんじゃないかなぁ」
そうなのだ、元はパソコン専用のゲームだったが今月に入りアプリ化して手軽にプレイ出来るようになった。その押せ押せな流れに乗って自分も気付けば審神者となっていたが、振り返ってみれば異様に広告費用が掛かっている。一企業がそんなにお金出せるもの? とどこぞのドキュメンタリー番組を見た知識から違和感を持っているが、まぁ協賛とか色々あるのだろう。
「うぐぐぐ、いいよねぇ新規登録者プレゼント……!」
「は?」
「おいこら、睨むな。そんな文句は運営にでも言え」
アプリ公開と同時に新規審神者登録をした人にはレア刀とかいう二振りが配られることになった。それまで鍛刀でもドロップでも出てこないと言われた稀少価値のある2キャラ。それが三日月宗近と小狐丸である。
登録してチュートリアルで初期刀と初期鍛刀した二振りをGETした後に受信箱を覗くと、何の労苦もなくレア刀二振りが届いていた。正直四振りも居ては初期刀のありがたみを感じられることもなく、他の本丸の初期刀べったりさが理解出来なくてガックリきた。二人三脚してお互い大事っていいよね。
遠い目をする私、レア刀を求め悲痛な声を上げる友人、そんな二人の反応が理解できない非審神者という相互理解の出来ない関係がそこにあった。
その時は。
まさか、知らなかったのだ。
刀剣乱舞というゲームが三次元だったこと。
国が発信元の審神者適性を見るための二次元だったこと。
……まさか、私が審神者適性があったこと。
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女審神者、ブラック本丸、悲しい過去にほのぼの展開。好きなものを詰め込みました。普段はなろうにてオリジナル小説を別名投稿してます。