Daydream 0(デイドリーム・ゼロ)   作:皐月潤

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ご結婚おめでとうございます。


第十話~Boy Meets Girl~

刀剣男士side

 

 

 

 ピンポーン♪

 

 

 

『うわっ、何か音したんだけど!?』

『随分かわいい響きだねぇ……鳴き声がだよ?』

『これは鳴き声? なのでしょうか?』

 

 インターホンと知らずに押したのか?

 そう、躊躇いを知らない槍が押したのである。だって目の前に押してとばかりにあったんだもの。

 

 お宅訪問などしたことのなかった刀剣男士は、当然昭和に発明された呼び鈴など知る由もないわけで。

 これ何ぞ? と槍が刺していたのである。イタズラな指先で。

 

『ふむ。これで家人を呼ぶのかな?』

『えっ、そうなの!? 京では見たことない!』

 

 比べる対象が江戸時代。同じものがあるわきゃない。

 

『だとしたら……おや、来たね』

 

 索敵に秀で、気配を消すことも知らないパンピーの足音がわからぬ筈もない脇差しがにっかり(・・・・)と嗤う。

 

「はぁーい、どちら樣?」

 

 警戒心ゼロの愚かな人間が実に実に──おかしくて。

 

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 

 極々一般的な戸建て民家を『狭いな』『低いな』『可愛くない』と神と人のジェネレーションギャップなことを散々言い放ちながら乗り込んだ。

 

「ちょ、あの!? どちら樣で!?」

 

 もちろん了解は得ていない。そもそも名乗りはしなかった。

 何故? だって顕現後に名乗り上げる相手は主じゃなきゃおかしいよね?

 

 ピンポン鳴らしてコスプレ帯刀集団なんて怖いに決まってる。出迎えた審神者候補の母親は不審者だと悲鳴を上げたかったが、何故か初対面の美形レイヤーたちに睨み付けられ、その迫力に完全に押し負けた。

 

 切れ長の目でガンつける加州清光、妖艶に微笑むにっかり青江、タッパある石切丸が真上から見下ろし、のほほーんとしている筈の御手杵が無の表情。トゲトゲの歯をガッチンガッチン言わせながら岩融が威嚇する。喰われる。

 何の集まり? とビビる審神者母が視線を感じ目線を下げると、瞳孔の開きまくった平野藤四郎が自分をガン見していた。ヒッと喉で悲鳴を上げる。

 

 刀剣とは本来、己を血に染め主の敵を討つもの。人一人の命を奪うことは造作もない。

 邪魔をするならこの場で柄まで通していいが、どうしようかな? くらいの気持ちだ。加州や石切丸が完全スルーなのは一刻も早くその目に主を映したいだけで、家人の始末も時間の問題であった。

 

『(主、主、主! どこ? 俺迎えに来たよ!)』

 

 間取りは全く知らないが、刀剣能力か初期刀能力か? タイミング的にも家族全員がリビングに居たので役者の揃った部屋での対面となった。

 

 部屋には、審神者候補の父親と娘三人がいた。

 年齢のそれほど離れていない三姉妹。

 だが、初期刀でもある自分が間違う筈はないのだ。

 

 ぱかーん、と口を開けてこちらをガン見するまだ若い女の子。

 その傍には同世代の少女がいて、同じく驚きの表情を見せるが……

 

『(俺の主と全然違う。この歳ですぐに打算働かせるなんてバカじゃないの?)』

 

 伊達に新選組の看板背負って老若男女問わず取り締まってきていない。壬生狼(みぶろ)と恐れられ忌避された期間もある。人間の汚さなど嫌ってほど見慣れているし、それが見た目によらないことはよくよく知っている。

 

『(だから──めいっぱい可愛くしてきたけど、愛してくれるかな?)』

 

 愛だの何だの言う自分を奇っ怪なものでも見る目だった前任。更には素気なく手を払ったあいつのように距離を置かないで。

 カタ、と刀を持つ手が震えたけれど一心に見つめた。主になって欲しい人を。

 

「かっ」

 

 目を見開き、指がつーっと加州に向けられる。

 

「か、か、か」

「か?」

「え、アンタの知り合いなの何それ紹介しろ」

「かっ、加州! わた、私の(・・)加州!!!???」

 

 絶叫した。

 

 わたしの。

 私の。

 わ、た、し、の。

 私の(・・)加州!!!???

 

『……っっっ!!!!!』

 

 何という甘美な響きだろう!

 加州清光は感じたこともないゾクゾクとした快感に目が潤み、頬が薔薇色に染まり、唇が艶めいた。

 

 リーンゴーン、と幸せの鐘が鳴る。

 それは一生に一度聞くという、チャペルで愛を誓った者同士が聞く鐘の音。

 これまでの胸の虚無感を一言でひっくり返した彼女は確かに運命の唯一の人なのだ。

 

『っっそう!!!! 俺! 主の! 加州!!!!!』

 

 オイ。

 

 同行していた刀剣男士の眼差しが突き刺さるが、全く気にならない。

 持ち前の機動で主の前に立つと、自分を指していた手をそっと包み込む。

 

「わっ、体温ある! え、触れる!? え、え、本丸から出てきたの!?」

『うんっ! うんうんっ! 俺、初期刀だからね! 主の(・・)加州清光だから! 迎えに来たよ! 主!』

 

 オイ。

 

『五振りの中から俺を選んでくれてありがとう主! チュートリアルの初戦では悲しませてごめんね! でも俺のこと信じて戦いに出し続けてくれて嬉しかった! 二人三脚で本丸を大きくしていけて嬉しかったよ!』

 

 打ち合わせにない設定盛りすぎィ!

 ここからはアドリブか、アドリブ勝負なのか加州。




刀ミュか!

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