蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH ~まだ私は、ここにいる~   作:鳳慧罵亜

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かなり更新が途絶えてしまいましたが、なんとか更新することができました。
何やら結構見てくれている人もいたようで嬉しい限りです。

ぼちぼち、更新していけたらと思います


激戦 ~くのう~ Ⅱ

アルヴィスの通路で、史彦は日野親子と話をしていた。その内容は、普通の親子にするようなものでは決したないが、それでも、彼らには不可欠な話だった。

 

「島で初めての自然受胎。皆城乙姫により、ミールが生と死を学び、誕生した最初の子供」

 

此処で史彦は一度言葉を切る。史彦の表情はどこか辛そうなものだった。

 

「皆城総士にとっても、未知の、ミールに等しい存在だ」

 

日野弓子は史彦の言葉を聞き、小さいバッグを持つ手を震わせた。その表情は、ひどく、辛く、苦しそうなものだ。

 

「美羽君もまた、日常的にクロッシング状態にある。それも、島のミールそのものと」

 

島のミール。それはこの竜宮島を覆う空気であり、島の環境そのものと言える。そして、日野美羽はそのミールと日常的にクロッシング、つまり意識レベルでの同一化をしているのだ。

 

故に彼女は2歳という年齢にもかかわらず、ひとりで自律的な歩行ができ、幼児レベルとはいえど人の言葉を話すことが出来、その身長、体格も2歳という赤ん坊にしては異常なほどしっか尻していた。

 

美羽はふと、持っていて人形から目を離し、顔を横に向けた。

 

「ママ」

 

「?」

 

美羽が容子に声をかけた。それに振り向く容子。美羽はさらに言葉を続けた。

 

「おねがい。みわにおはなしさせて?」

 

「美羽……」

 

容子はしゃがみ、美羽と同じ視線になる。史彦と、容子、両名は苦悩の表情をしていた。

 

――――

 

サイレンが響く竜宮島。半ば焼け野原と貸した島の山中で、敵の襲来を待ち受ける巨人達。視認できる距離に近づいた時点で、今までと違う圧倒的な数が迫ってきていることを知った。だが、後退は出来ない。長期戦も、できるわけがない。退けばそれだけで島がのっとられ、戦闘が長引けばその分、島の命が危ないのだから

 

「いけえええええええ!!」

 

カノンの号令で、各機が突撃を開始する。その中で、一際凄まじい速度で、敵に突撃する一体の巨人。深紅のカラーを施された機体、マークドライツェン。

 

その搭乗者、羽佐間カノン。

 

「はああああああああああああ!!!」

 

彼女は今までよりも、さらに鬼気迫る勢いでフェストゥムに突っ込んでゆく。その目には、以前とは違う。複雑な色が浮かんでいた。

 

――――

 

「やめて降伏して、みんないなくなる!!」

 

アルヴィス内部。皆城総士の部屋で、来栖操は一騎の肩をつかみ、必死になって、叫んでいた。だが、一騎は臆することは無く、今までのように、来栖に言葉をつむぐ。

 

「お前が戦いをやめさせろ!」

 

「ミールは俺の声なんか聞かない!!」

 

いつかと同じ、諦めの言葉を吐く来栖。それでも、一騎はそれを変させたかった。だから、こういったのだ。

 

「想ったんだろ!空が綺麗だって!!」

 

「ッ!?」

 

目を見開き、激しく動揺する来栖。そして、一騎は言葉を続ける。かつて、彼の親友がそうしたように、戦えない彼が出来た唯一の手段。対話で、彼に教えようとしていた。

 

「命令もされずに、人間みたいに、空が綺麗だって想ったんだろ!?」

 

一騎は来栖が着ている総士の服の襟元をつかんだ。

 

「それを奪われることがどんなことか、お前の神様に教えてやれ!!」

 

直後、ドアが開いた。二人は開いたドアを見る。黒いジャケットと、特徴的なヘルメットで身を包んだ特殊部隊に囲まれて居るのは日野親子と、真壁史彦だった。

 

そして、部屋に入ってきたのは日野美羽だけだった。美羽を見た来栖は一騎から手を離し、彼女を見つめる。美羽は周囲を見渡すと、来栖に向けて、

 

「ママのおかあさんもなおせないの?」

 

こういった。それに来栖は反応を示し、「俺達の言葉が、解るの?」と、動揺したそぶりを見せる。

 

「みわといっしょなら、おはなしできるよ」

 

その言葉を皮切りに、来栖の様子が変化した。肩幅よりやや開いた足が肩幅とちょうど同じ間隔へ閉じ、手も体の横に置かれ、まるで生真面目な人間のような姿勢だ。

 

「彼女が希望です。真壁司令」

 

「……!?」

 

「ッ!」

 

それまで、美羽に集中していた視線が来栖に集まる。だが、其処に居るのは来栖操であって、来栖操ではない。其処に居るのは

 

「そう、し……?」

 

美羽が静かに微笑んだ。

 

――――

 

ガシャァァン!!

 

そんな音がアルヴィスの内部に響く。下層部にある職員寮まで響くほどではないが、比較的上層部にある医療質には十分届くほどの音と衝撃だ。その衝撃で、ベッドに横たわる人影が落ちる。

 

どさっと言う音がし、床に打ち付けられた人影は、静かに目を開き、たちあがった。そして、

立っているのもやっとといった様子なのに、ある一点へと歩き出す。

 

それが何を意味するのかは、もう少し先になるだろう。

 

――――

 

竜宮島の戦闘は激しさを増していた。

 

マークノインが持つサラマンダー。およそ900℃に達する高温の炎に焼かれ、フェストゥムは体組織を崩壊させ、消滅する。

だが、その直後側面に回ったもう一体のフェストゥムが放った攻撃。彼女はかわすことができず、左腕で体をかばう。

かばった左腕は、4枚の板のようなモノにねじ切られた。切断された装甲から流れ出る赤い衝撃吸収剤は、腕から流れ出る鮮血が如くに鮮やかな緋色で、腕と大地を染め上げる。

 

その直後に襲い掛かったフェストゥム・スカラベJ型種の緑色のワームスフィアに右半身を削り取られ、そして、機体の胸部に鋭く、刃のようになった職種を突き刺された。

 

「うあああ!!」

 

―――――通じた心の声―――――

 

「里奈ーーー!!」

 

空に響く剣司の声。射出されるコアブロック。それはフェストゥムに捕らえられた。つかんだコアブロックを振り上げるフェストゥム。それは過去の悪夢を思わせた。

 

――――

 

 

 

      『生きて、帰るって……やくそく……!』

 

 

 

 

――――

 

―――絶対にやらせねえ!今度は、誰も死なせはしねえ!!―――

 

振り上げられた腕が下ろされる直前、銃弾がフェストゥムの腕を貫く。フェストゥムのてから離れ、落下するコックピットをしっかりと左手で包み込む。片手で掃射するガルム―44は里奈を捕らえたフェストゥムのコアを破壊する。

 

ワームスフィアとともに、消滅するフェストゥム。それをギリギリで体を半身にして躱す剣司。奇しくも、彼は自分の親友を失った経緯から後輩を守ってみせたのだ。

 

「里奈!大丈夫か!?」

 

コックピット内部。返事はないが、里奈は気絶しているだけで、バイタルに異常はなかった。

 

―――――「守る」と聴こえたような―――――

 

だが、それに安心している暇など彼にはなかった。

 

「ッ!」

 

 剣司の目の前に現れたのは、エウロス型。深紅の体から放たれたミサイルは、剣司の駆るマークアハトの直撃コースを辿った。

 

「ケンジーーーー!!うぐっ!」

 

―――――奪うのは幼いから?―――――

 

大切な人のなを呼んだ咲良。彼女の駆るマークドライも、フェストゥムに体を飛翔させるリンドブルムを破壊され、堕ちて行く。

 

墜落し、爆炎を上げるマークドライ。それを横目で目撃した少年。

 

「里奈……先輩達……っくっそおおおおおお!!」

 

―――――土へ海へお還り―――――

 

内気な少年は、激昂し、フェストゥムへ突撃するが狙撃型の機体で突撃するのは愚策。背後から接近していたスカラベJ型種に脚部を取られ、ライフルを手放してしまった。

突撃の勢いもあり、ドラゴントゥースは前にバウンドしながら放り出される。

 

海へ引きずられてゆくマークツェーンと輝。それを見た真矢。

 

―――――「空」の綺麗さ 命の儚さ―――――

 

「輝君!!」

 

その絶対的冷静さを欠き、彼の救出にい行こうとする。

それをさせまいと彼女に迫るフェストゥム。目の前のフェストゥムが放つおびただしい数のワームスフィーアーを彼女はブーストをフルパワーにして旋回することで避けながら、狙いを定める。

 

引鉄を引く手は震え、銃身はブレる。ファフナーの変性意識による冷静さを欠くほどに今の彼女は焦っていた。

 

普段からは想像もつかないような程に射撃を外していく。ジーベンにワームスフィアを放ちながらフェストゥムは上昇し、マークジーベンも一気に昇る。

 

そして、互が最接近した瞬間に、ようやくレールガンがフェストゥムに直撃した。

 

消滅するフェストゥムを身もせずにに彼を追っていく。

マークツェーンが海中へ引きずり込まれてからまだ5秒と立っていないが、それでも手遅れになるかもしれないと、真矢は鬼気迫る表情で海中に飛び込んだ。

 

―――――強さは信じるって事ですか?―――――




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