蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH ~まだ私は、ここにいる~ 作:鳳慧罵亜
戦闘が始まる。、島は既に前回の戦闘でいたるところにクレーターができ、戦闘の激しさを物語っている。そして、また稚拙ながらも戦法を学んだフェストゥムによる攻撃が始まる。
「マークドライ、マークジーベンは空爆部隊を攻撃しろ。マークドライツェンは俺と一緒に上陸部隊を迎撃。マークツェーンは援護頼むぜ。マークフュンフはマークノインとツヴォルフとトリプルドッグを組んで迎撃。マークヌルは遊撃だ。よし、行くぜ!!」
レイの助言や普段の練習もあり、実戦での前線指揮官を行えるようになった剣司の堂に入った指揮と掛け声が火蓋となり、それが切って落とされる。
そして、すぐに異変に気がついた。
スフィンクス型を周りに置き、島の上空を回遊する新型のフェストゥム。その両翼から噴出される粉末状の物質が島に降り注ぎ、木々が枯れてゆくのだ。
堂馬広登は驚愕に疑問を発せずに入られなかった。
「何だ……?これ」
剣司は木々が枯れてゆくのを見て、すぐに新型がどういうものかを悟った。
「島を殺しに来やがった!!マークツェーン!あの新型を撃て!!」
剣司の指示に手持のドラゴントゥースを構え、標準を新型にあわせる。
放たれる弾丸は、まっすぐ新型に向かう。だが、その弾丸は前を遮ったスフィンクス型に止められた。そのスフィンクス型は消滅したが、2発3発と、同じようにとめられてゆく。
「仲間を、護ってる?―――っは!?」
狙いをつけていた新型から、ワームスフィアー特有の発行が現れる。だが、改良を重ねたノートゥングモデルにはそう簡単にはダメージは通らない。
そのはずだった。
新型が放ったワームスフィアーは緑色の光を放ち、マークツェーンを覆う。緑色の光は、マークツェーンノ左腕と左足を綺麗に消してしまった。
「うわあああああ!!?」
「マークツェーン!」
マークツェーンは戦闘不能になり崩れ落ちる。だが、それは無駄ではない。既にマークドライとマークジーベンが、対処に向かった。
「盾を潰すよ」
「了解」
咲良と共に真矢は新型へと向かう。フェストゥムたちは、迎撃のためにワームスフィアーお、放出するが咲良と真矢は二手に分かれ、避ける。
左手から、真矢が狙撃を加える。一体、二体と、フェストゥ無を消滅させ、そのうちの一体が、マークジーベンへ、向かってゆく。フェストゥムはワームスフィアーを多量に放出し、真矢を倒そうとするが、機動力の高いマークジーベンには掠りもせずに、マークジーベンは空を舞いながら、フェストゥムを狙撃して行く。
右手からはマークドライが、大量のミサイルを放ち、フェストゥムがなぎ倒されてゆく。何匹かがミサイルを避け、反撃を加えるものの、リンドブルムによって高い飛行能力を持つマークドライには当たらずに、逆に、マークドライから放たれたプラズマ砲を喰らい、消滅した。
――――
「まだるっこい!だったら……」
レイは新型の対処法にもどかしさを感じ、マークヌルならではの行動にでる。黒き巨人の破壊の右腕、その掌に燈色の光を輝かせる。
「盾諸共、消してやる!!」
マークヌルの最大火力を持つ装備、『シヴァ』の燈色の閃光が新型のフェストゥムへ牙を剥く。その光は親衛隊のフェストゥムがまるでいなかったかのように、もろともに消滅させる。
「よし、このまま一気に―――ッ!」
もう一度シヴァを撃とうとするが、他のフェストゥムが突進をしてくる。まるで、その砲撃をさせまいとするように。
「危険だと判断したのか?くそっ、学習が早すぎる!」
レイは突進してくるフェストゥムを右腕の爪で引き裂いてゆくが、そのために新型への対処が出来なくなってしまってゆく。
――――
島で戦闘が行われている時、真壁一騎と来栖操はかつて皆城総士がいた部屋で、対話の続きをしていた。外では激しい戦闘が行われているが、それを感じさせないほどに静かな空間だ。
「総士と君がいる」
机やベッドにソファ、テーブルにコンパクトなバスルームがつき、部屋を出て11歩の距離に自動販売機がある、『きわめて便利』な部屋で来栖は飾ってある写真を見て「ここにきたかったんだ」と言った。写真を被うガラスの板に、うっすらと来栖の顔が映りこむ。その顔は無邪気な少年の当に笑っていた。
「皆城総士がいた場所に。彼をもっと理解したいから」
「だから総士の服を着るのか」
それに対する一騎の反応は芳しいものではなく、苛立ちを孕んだ声であった。
「ぴったりだからね」
一騎は苛立ちを抑えながら、来栖に質問を投げかける。
「総士はドコに在るんだ?」
「無の中。存在を取り戻せると良いね」
来栖の返答はどこか他人事のように聞こえ、それが一騎を苛立たせる。一騎が少し強く拳を握るが、来栖はそれに気がつか無い様子で椅子に座った。
「話そう。君と話せるのは嬉しい」
部屋の外には、溝口が率いる特殊部隊が銃を構え、扉に張り付いている。『何か』が、おきたときにすぐに救出にいけるように。
その扉を通して、かすかだが、一騎の声が聞こえてくる。
『島を、みんなを苦しめて、なのに話すことが楽しいのか」
その声には、苛立ちを超えた明確な怒りが含まれていた。
「一騎は俺に憎しみを感じるの?」
一騎の言葉に高質問した来栖。だが、言葉で知っていても、意味が理解できていないようなしゃべり方をしている。
「違う、腹が立っただけだ」
「俺には、怒りも憎しみもよくわからない。苦しむのが嫌なら、俺の言うとおりにしなよ」
「コアを奪うのなら、何故今しない」
来栖の言葉に、一騎はそう投げかける。確かに、来栖の能力は未知数だが、やろうと思えば単身でコアを奪うことも可能だろう。だが、その答えについて来栖はこう語った。
「君たちとは戦いたくないからだよ」
「ならお前のミールを止めろ!」
「無理だよ、ミールは俺の声なんか聞かない」
来栖の言葉には諦観の色がにじんでいた。まるで、最初からどうなるかが、わかっているように。
「一度はとめただろ!」
それは、最初の乱戦の時、一騎と来栖が始めてあったとき、西の灯台で、来栖ガ何かを呟いたのを皮切りに、フェストゥム一斉に去った事があった。
「俺が目的を話す間だけ還ったんだ。俺の存在は、君たちでいう、指みたいなものだよ。」
そう言いながら、来栖は右手を眼前に掲げ、指を広げる仕草をする。
「君の指は君に命令しない。そうでしょ?」
笑いながら言うが、そこには諦観の色が浮かんでいた。
「どこに還るんだ?」
「船だよ。俺の島みたいなモノ」
「その船に、お前のミールがいるのか」
一騎の念を押して、確認するような口調に、ただならぬ気配を覚えた来栖が、怒っているとも、悲しんでいるとも搗かない表情で
「いま、ミールを攻撃しようって思った?」
と質問を投げかける。一騎は少し、にらむような表情でこういった。
「島を護るためなら、そうする」
その目には、決意の色が見て取れた。来栖はその理由がよくわから無かった。だから誰かに言われたのかと思った。
「皆城総士がそうしろっていったの?」
「なに!?」
来栖はおもむろに立ち上がり、体を抱きしめるようにしていった。その目には明らかな悲しさでいっぱいになっている
「彼の声は聞こえる?俺にはもう聞こえない。彼の存在が本当に消えないようにするので精一杯なんだ」
―――刹那
「ッぐ……!」
一騎の脳裏に様々なイメージが流れ込んできた。
―――巨大な水晶のような塔―――
「ぐう……」
―――大量に並ぶ赤い水晶のようなモノとその中に浮かぶ人影のようなモノ―――
―――『ソレ』を見守るフェストゥム―――
―――業火に包まれるフェストゥム―――
「うう……っ!」
―――全てが崩壊する中でソレを両手に包み、護ろうとするフェストゥム―――
―――全てを破戒する巨大な、雷を纏った雲―――
―――ガタン!!
テーブルが倒れ、一騎がその場にうずくまる。全てのイメージを見た一騎は、驚愕に目を剥き、来栖へとその目を向けた。
「おまえが……総士を……護った……っ!?」
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