まあ相手が殆ど居ないんですがね(物理的に)
主砲を捨てた俺は一直線にレ級の元まですっ飛ばしていた。
補給したとはいえ殆ど燃料が無い今の状況じゃまともな手段でレ級を止めるなんて出来るはずがねぇ。
そこで俺は少し前にレ級と再開した時を再現しようと思い立った。
つってもレ級を怪我させる訳には行かねぇからすっ転ばない様にはするがな。
そうこうしてるうちにレ級が視界に入って来る。
「武蔵!後どんぐらいでレ級と接触すんた!」
「あと二分も無いぜ相棒っ!」
この距離で二分掛からねぇのか……つう事はタイミングは一瞬だろうな。
俺は速度を落とさずに両手を前に広げてレ級が来るのを待った。
「ドケドケェーッ!!」
「来いやぁああーっ!!」
よし、思った通り直進して来たっ。
レ級を目の前まで引き付けると俺はその脇腹を両手でがっしりと掴み上げようとするが無情にもその腕は空を切る。
俺が捕まえようとしたその瞬間にレ級は空高く飛び跳ね、俺の頭上を易々と飛び越えていったのだ。
「マッテロ門長、アイツラヲ潰シタラ続キヲヤルゾ!」
「ちがっ、待てレ級!あいつらは敵じゃねぇ!!」
だがレ級は聞く耳など持たずに直進して行ってしまった。
不味い、兎に角追い掛けねぇと!
そう考え旋回しようと舵を切ったその瞬間、燃料が底を尽き再度足が動かなくなる。
「しまった!?レ級、止まるんだレ級っ!!」
俺は必死に呼び止めようとするも、既に聞こえていないのかレ級の姿が段々と小さくなって行く。
「くそっ、どうすりゃいいんだ。これじゃあヴェールヌイとの約束も守れねぇしレ級だってただじゃ済まねぇ……どうにかしねぇと!」
「ふむ、まだどうにかなるかも知れないぞ?門長、アレを見ろ」
「何だ武蔵、今はそれどころじゃ……あ?」
俺は苛立たしげに武蔵の指さす先を見ると上空を覆う無数の航空機の群れが俺の頭上を通り過ぎていた。
「これは一体……」
暫く呆気に取られていると今度は正面から俺を呼ぶ声が聞こえたので、俺は首を下げて正面に向き直る。
すると正面からエリレと空母の二人組が向かって来ていた。
「逃ゲラレチャッタネ!後は任セテ、俺トフラヲデ止メテクル!!」
「エリレ!待てっ、それは危険だ!」
「エリレノ事ハ私ガ護ルワ、ダカラ貴方ハソコデ指ヲ咥エテ待ッテナサイ」
「んだと空母こらぁ!!喧嘩売ってんのか!?良いぜ買ってやろうじゃねぇか!!」
だが空母は俺の言葉を気にも留めずただ横を通り抜けて行きやがった。
あのクソ空母がぁ~!どれだけ人の神経を逆撫ですれば気が済みやがるんだ!!
あ〜ムカつくぜ。あのクソ空母にもだが何よりも実際にあいつの言う通り指を咥えて待ってる事しか出来ねぇっつうのが一番ムカつくんだよちくしょうっ!!
「武蔵っ、それに妖精ども!どうにか動けるように出来ねぇのか!」
「それはむりだ、ねんりょうがなければどうにもならない」
「はらがへってはいくさはできぬぅ~」
「そういう事だ。後はあの二人を信じるしかなかろう」
くそっ……なんてザマだっ!足は動かねぇし主砲もねぇ。出来る事なんて腕を動かす位……ん?
そうかっ!足が使えなきゃ腕を使えば良いんだ!
「どうした!?何処をやられたんだ!」
「何処もやられてねぇよ」
俺は徐ろに前のめりに倒れ込むと海面でクロールの如く腕を動かし始めた。
見ろっ!これこそが俺が考えた燃料が切れた時の最終手段だっ!
「…………」
「…………」
「…………」
「…………動かねぇ。つかそもそも海面に当たって水をかけねぇ」
「……当たり前じゃないか、手や身体が海面に浮かなかったら転んだだけで沈んじゃうだろ?」
俺は暫く腕で水をかこうとしていたが、不意に頭上から声が聞こえてきた愛らしい声に俺は振り返り声の聞こえた方へ見上げる。
「ヴェ、響っ!?どうしてここに!」
「ヴェ……?ああ、まぁ誰と仲良くしようが門長の勝手だからね…………別に良いさ」
「い、いや。そうじゃなくてだな?まさか響がこんな所まで来てるとは思ってなかったからであって、仲良くしてたから出ちゃったと言うわけじゃ……」
「別に良いって言ってるだろ?何を言おうと関係ないさ……そんな事より早く戻るよ」
「ぐふっ、関係ないか…………って戻る?いや、ちょっと待ってくれ!直ぐにレ級を止めに行かねぇと……」
「その事なら心配は要らない。長門さん」
「お?」
俺は響が奴の名を呼ぶまで長門達基地に居た面々がすぐ近くまで集まっていた事に今の今まで気付いていなかったようだ。
「私と金剛、そして陸奥の三人がエリレ達に続きレ級flagshipを止める。その間に他の者は門長を工廠まで曳航し補給・修理をさせよ!」
「「了解!!」」
「おい長門、たった三人で止めるつもりか?」
「三人ではない、先行している二人を合わせれば五人だ。それに今さっき明石経由で呉の武蔵達と協力して止めることとなった」
「呉と?それは認められん。奴らからしたらレ級はどう捉えても敵になっちまう。そんな──」
レ級を沈めて解決なんてのは論外だ。
おれがそう口にしようとした時、長門が遮るように口を出してきた。
「それについても相談済みだ、安心しろ。それに燃料すらないそんな状態のお前に何が出来ると言うんだ」
「ぐっ…………」
レ級は簡単には止まらないだろう。
そうなればヴェールヌイ達呉の奴らにも被害が出る。
最悪仲間が沈みなどしたらそんな話が護られる筈がない。
だが、俺が行ける状態出ないのも事実だ。
少なくとも燃料を補給しない限りはな…………
「……分かったよ。ただ、燃料と弾薬の補給が済んだらすぐに戻るからな」
「ああ、それまでには止めてみせるさ」
「よし、じゃあ頼むぜ」
「ダー、それじゃあみんな行こう。気をつけてね長門さん、金剛さん、陸奥さん」
「あら、ありがとね響ちゃん。行ってくるわ」
「うむ、任せておけ。レ級の奴も呉の奴も全員まとめて連れ帰ってやるからな」
「ソーソー、帰ったら皆でパーティーデース!」
長門達と別れた俺は響達に縄で引かれながら基地を目指すのであった。
「頼むぞ……長門」
俺は響達には聞こえない位の声でそっと呟いた。
同じロリコンであるお前ならどうするべきか解ってるよな……。
頑張れロリコーン長門!負けるなロリコーン!
長門「喧嘩を売っているのなら買おうじゃないか」
スイマセンデシタナガトサマ>orz