響乱交狂曲   作:上新粉

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あかん、ペース上げて行かんと週一投稿が崩れてしまう~(゚ρヾ)ゴシゴシ


第七十八番

港湾との話し合いから三日、約束通りソ級と共にやって来たエリレと空母を引き取った俺は基地の面々を食堂へと集めて二人を紹介する事にした。

 

「吹雪に暁、それに俺と一緒だった長門達は憶えているだろうが二人は俺の命の恩人のエリレとその仲間の空母だ。訳あって今日から此処で暮らす事になったから仲良くやるんだぞ」

 

「レ級ellteダヨ!フラヲノ事ハフラヲデ、オレノ事ハエリレッテヨンデネッ!」

 

「お久しぶりです。いつぞやは助けて頂きましたからね。恩義には報いましょう」

 

「ま、まぁ困った時はお互い様よねっ」

 

エリレ達に対する周りの反応はまちまちだったが離島の時と較べれば随分空気が穏やかなのは気のせいじゃないだろう。

まあ離島が基地を襲ったリーダー格だったからというのもあるが、それでも俺は深海棲艦を敵視していた吹雪達のその変化を嬉しく思った。

 

「まぁ、基地の事で分からない事があったらこの中の誰にでも聞いてくれ」

 

「ワカッタ!」

 

「……仮ニモ深海棲艦ガ来タッテイウノニ誰モ警戒シナイノネ」

 

意外そうっつうか軽く呆れた様子で周囲を見回す空母の問いに対して摩耶が代表して答えた。

 

「アタシを含めた此処にいる奴等は深海棲艦は全て敵だなんて短絡的に考えちゃいねぇんだよ。現にアタシらは港湾達の助けがあるからこうしてやって行けてる訳だしな」

 

「成程、ダガ私達ガ味方ダト言ウ確証ハナイ」

 

「確証も何ももし敵ならそこの変態や吹雪達を助けたりなんてしねぇだろ」

 

「私達ガ貴女達ニ危害ヲ加エルトカ、若シクハ敵対組織カラノスパイダトカハ考エナイノ?」

 

俺達への疑いを未だ解こうとしない空母に痺れを切らしたエリレが空母の手を引っ張った。

 

「フラヲッ!コレカラオ世話ニナルノニソンナ意味ノナイ話デ溝ヲ作ッテチャダメダヨッ!」

 

「イヤ、意味ガナイワケジャナイ。ソレニ……マアイイワ。暫クノ間ダケドヨロシク」

 

「おうっ、よろしくな!」

 

「じゃあ金剛、二人に基地を案内してやれ。それと部屋も適当に決めとけよ」

 

「オーケー。それは構わないケド、ミスターはこの後どうするのデスカー?」

 

「俺はまだ話があるからな、つっても手が空いてる奴だけで構わねぇ。別用がある奴は此処で解散とする」

 

「そ、じゃあ私達は輸送護衛の予定についてフラワーさんと話してくるわ」

 

「あー、その事なら俺も帰って来たし後は俺が引き継ぐから安心していいぞ」

 

「その必要はないわっ」

 

暁達にも暫くの間苦労を掛けたからな、これからはゆっくり過ごして貰おう。

そう考えていた俺は続く暁達の言葉に瞬きする事も忘れ唖然としていた。

 

「私達でも出来る護衛任務は私達でやるって言ってるのよ」

 

「勿論私達では役不足だという任務もあるでしょうし。そういう時は門長さんにお任せしますが、それ以外は私達が行った方が効率も良いでしょう。何より貴方がなるべく基地に居る方が響や他の皆さんにとっても安全だという結論に至りましたから」

 

安全か……そういえばまだこいつ等に話して無かったか。だが、話した所で不安にさせるだけでどうにか出来る訳じゃねぇ。

それに吹雪達の練度はこの基地でも上位に入る高さだ。

無理さえしなきゃ問題ないだろうし、だからこそ俺が居ない間の代行を任せたんだ。

 

「……分かった、だが無理だけはすんなよ。お前達に何かあれば響を悲しませるし俺も正気を保てる自信はないからな」

 

「当然よ、あんたはどうでもいいけど響を悲しませるような事はしないわ。あんたと違ってね?」

 

「うぐぅ……な、なら良いんだ。じゃあ俺が必要なら後で教えてくれ」

 

「分かったわ、じゃあ行ってくるわね」

 

そう言って食堂を出ていく暁達を見送ってから俺は少し考えてからこう言った。

 

「やっぱいいや、今日は解散」

 

「えっ、門長……?」

 

「んな顔すんなって、また後でそっちに遊びに行くから待ってな響っ」

 

「う、うんっ。わかったよ」

 

「じゃあ後でな。おらっ、いつまで艤装付けてんだ長門、さっさと工廠行ってこい。それと明石、テメェも持ち場に帰れ」

 

俺はそれだけ言うとさっさと食堂を後にした。

 

「はっ?……っ!ああ、それもそうだな。明石も早く工廠に戻ったらどうだ?」

 

「えっとぉ……あっ!い、いつの間にかこんな時間ですね?それでは失礼致します」

 

「……何なんだよ一体」

 

「さあな、唯の気まぐれじゃないか?」

 

 

 

 

 

 

食堂を離れた俺は遠回りをしながら目的地を目指していた。

多少露骨なやり方だったがお陰で俺が到着した時には二人共工廠で箱に腰を掛けて待機していた。

 

「他は誰も居ない様だな」

 

「ああ。だがあまりに唐突過ぎて一瞬分からなかったぞ」

 

「そうですよ~、私も長門さんからパスが無ければ気付きませんでしたよ」

 

「それはお前が鈍いだけだろ」

 

「ちょ、それは酷くないですかぁ?」

 

明石の抗議を聞き流した俺は他に誰もいない事を確認すると、近くの箱を引き寄せて椅子代わりに座り早々と本題を切り出した。

 

「さて、今回お前らに手伝って貰いたいのは二つ。一つはタウイタウイの明石に協力してもらう方法とその連絡手段の相談。そしてもう一つはエリレ達を襲った艦隊の所属と目的だ」

 

「ふむ、その前に一ついいか?」

 

「なんだ?」

 

「恐らくそれは先程話そうと事だろうが響達に話すのをやめたのは何故だ?」

 

確かに長門の疑問はもっともだ。もしかしたら響達にも怪しまれたかも知んねぇな……まあ、今更だな。

 

「簡単に言えば吹雪達を不安にさせない為だ」

 

「吹雪達を?」

 

「そうだ、あいつらは今回危険な護衛任務を進んで引き受けてくれたのは俺の力を信頼しての事だ。だが、その俺が力が出せない事を知れば不安を生みその不安が事故に繋がりかねない。だから彼女達には知られない様にしたいんだ」

 

「……理由はそれだけなんだな?」

 

「それだけだ。馬鹿な事をするつもりは無いから心配すんな」

 

目が覚めたっつうのにこれ以上寝惚けた事を言うつもりはねぇ。

そんな俺の決意を察した長門は一息ついてから話を再び本題へと戻した。

 

「そうだな……向こうの協力が得られるのであれば連絡手段ならどうにかなるぞ」

 

「どうするつもりだ?」

 

「なに、不知火が持ってる例の無線機をあっちで一つ作ってもらうのだ」

 

「成程な……確かに作れるだろうしそれがあれば連絡はどうにかなりそうだが、最初の連絡はどうする?」

 

「なに、私が少し沖に出て水偵を飛ばせば四日程で帰って来れるさ」

 

つまり金剛がやってた見たく水上機に伝令役をやらせるっつう事か。

 

「よし、じゃあそれはお前に任せた」

 

「承知した。では明日にでも出るとしよう、っとそうだ。行く時は金剛を連れて行っても良いか?」

 

「分かった。ああそれと手紙の内容はそっちで頼めるか」

 

俺は交渉も文章も得意じゃねぇからな。

 

「ん、あぁ……解った。確かにお前が手紙を書く姿など想像も出来んからな」

 

「うっせ、兎に角任せたからな。で、後はエリレ達を襲った艦娘の事なんだが……」

 

「う~ん……正直皆目見当も付きませんね」

 

「うむ、我々が直接会った訳ではないからな。道中にヲ級達を見つけたのか、そもそも二人を目標としていたのか……」

 

「あとはその島に目的があって上陸の際に戦闘になった……なども考えられますが、やはり情報が皆無ですから」

 

あー、そりゃそうだよな。

海軍の事なら西村に聞ければ一番なんだが、流石にこっちから連絡を取るのは不味いか。

エリレ達が何が情報を持ってるか明日辺り聞いてみるかぁ…………。

 

「あっ、そういや……」

 

「ん、どうした?」

 

「いや、関係があるかは解んねぇんだけどよ。前にエリレ達が居た島へ資源を輸送した時にヴェールヌイに会った事を憶えてるか?」

 

「っ!?」

 

「島で?ああ、草陰からこっちを見てたヴェールヌイの事だな?」

 

「そうだ、お前と武蔵も見てるし恐らく見間違いや幻覚の類ではない筈だ。だが、その子はエリレ達とこっちに来ていないんだ」

 

「そうだな。多分海軍の艦娘に保護されたんじゃないか?」

 

「その可能性も十分考えられるが、もしかしたら──」

 

「とっ、門長さん!!その彼女の他に電は居ませんでしたかっ!?」

 

長門と俺の間に突如割って入ってきた明石が物凄い形相で俺を問い詰めて来る。

俺は苛立ちを覚えつつ明石を力ずくで引き剥がして箱に座らせた。

 

「電とは会ってねぇよ!……ったく、何なんだいきなり。」

 

「あ……す、すみません」

 

「で?何か心当たりでもあんのか」

 

「えっと……確証があるわけではないのですが、もしそうなら…………この基地にも来るかも知れません」

 

「は?エリレ達を狙ってるって事か?」

 

「いえ、もしレ級さん達を襲ったのが彼女達なら次の目的は恐らく私でしょう」

 

「一体どういう事なんだよ、分かるように話せ」

 

明石の言ってる事がいまいち理解できなかった俺は、神妙な面持ちで黙り込む明石へ話すように促した。

五分程の静寂ののち、明石は気を落ち着かせるように深呼吸してから、漸く話し始める。

 

「門長さんが島で見られたヴェールヌイとレ級さん達を襲った艦隊はもしかしたら………………呉第一鎮守府、私が所属している鎮守府の方達かも知れません」

 

「呉?何の為に……つっても海軍が深海棲艦を攻撃するのに理由なんてねぇか」

 

「まぁ、通常はそうですが。もし呉の艦娘でしたら行方不明となったヴェールヌイ達の救出が目的だったのかも知れません」

 

「なるほどな、それでそいつらがエリレ達に捕まってると勘違いしたってことか」

 

「その可能性は考えられます。そして……」

 

「ふむ、そうか。もしそうなら明石の救出に此処に来る可能性もあるという事か」

 

「……はい、ですので皆さんに迷惑が掛かってしまうかも知れません」

 

口篭る明石の言いたい事を察した長門が続け、それを肯定するように明石は答えた。

なるほどな、もしそうならこいつを助けに来るだけだろうし戦わずにするかも知んねぇ……相手が交渉に応じればな。

正直エリレを襲った事は赦せねぇがエリレと一緒に居れるって事でチャラにしてやるつもりだ。

 

「よし分かった。電も居たかどうかは明日エリレに聞いてみる事にして、もしそいつらが来た場合に戦わずに済む方法を考えるぞ」

 

「えっ!?」

 

「なんだよ、そんな戦いてぇのかよ」

 

「い、いえ……まさか門長さんからそんな提案が出るとは思わなかったもので」

 

「ふふっ」

 

ちっ、どいつもこいつも人の事を戦闘狂呼ばわりしやがって失礼な奴らだぜ。

 

「つか初めに充分に戦えねぇっつってんだろうが。いいから案だせ」

 

「くくっ、ああそうだな。戦わずに解決出来るのならそれに越した事は無い」

 

「ええ、それもそうですね」

 

その後度々話が脱線しながらも一応の対応策をまとめる事が出来たのであった。




正直花粉が酷くて集中力ががが……。
投稿日迄には落ち着いてくれてる事を切に願います。

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