響乱交狂曲   作:上新粉

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やっぱ門長視点書きにk……ゲフンゲフン!
さ、さぁさぁ本編へどうぞ~!(^ω^;);););)


第七十六番

響との再会を果たした俺は明石にも用がある事を思い出し明石の方へ振り向いて声をかけた。

 

「そうだ明石。幾つか用事を済ませたら直してくっから入渠の準備をしといてくれ。あ、それと正門前の砂浜にボートが転がってっからそれも直しといてくれ」

 

「へ?は、はい……ってボートが転がってるってどういう事ですか!?」

 

「あ?どうもこうもねぇよ。色々あって海岸に突っ込んだから直してくれっつってんだよ」

 

「色々……はぁ……」

 

「そういう事だ、じゃあちょっと行ってくるわ。またな電っ、響っ!」

 

「うんっ、またね」

 

「………………」

 

「じ、じゃあ……な?」

 

ゔ……戻ってきたというのに電の俺を見る目が痛い。

やはりあの時の俺の考えは見透かされてたのか?

俺は少々凹みながらも響達に一時の別れを告げ、部屋を後にした。

ま、何時までも引き摺っててもしゃあねぇし、きっと時が経てば電も分かってくれる筈だ。

兎に角今は先にやる事をやっちまわねぇとな。

俺は用事がある二人を探す為、建物内を歩き回り、やがて目的の一人が廊下で漂っているのを見つけると直ぐにそいつへ声を掛けた。

 

「おーい、砲雷長っ!」

 

「ん?あらおかえりなさい門長さん。ご無事そうで何よりです」

 

「ああ、中破したり右腕が吹っ飛んだりとか色々あったが何とかな」

 

「また腕を飛ばしたんですか、貴方も好きですねぇ」

 

「好きで飛ばしてる訳じゃねよ」

 

「はぁ、まぁでも今は平気そうですしもう解除しても平気ですかね~」

 

ん?ああ、そういや海流なんたらっつーのを頼んでたんだったっけか。

 

「いや、そのままの方が安全なら解除しないで貰いたいんだが」

 

「嫌です。疲れるんですよぉ」

 

「即答かよ……ちっ。まあ良いけどよ、響達は俺が守りゃいいだけだしな。つうかそれよりも、深海棲艦の修復を頼みてぇんだが出来そうか?」

 

「修復ですか、解体でなくて?」

 

「ああ、レ級を治して欲しいんだ」

 

「へぇ、別に出来ますよ~」

 

「そうかっ、そしたら今工廠に武蔵と居る筈だから治してやってくれ」

 

「あら、武蔵さんもいるんですね~。りょうか~い、ではでは~」

 

そう言うと妖精はふよふよと漂いながら壁をすり抜けて行った。

さて、後はあいつだけだが一体何処に居るんだか。

俺が周囲を見渡していると二人組の少女がこっちへ掛けてくるのが見えた。

 

「ん、あの二人は……」

 

「あーっ!やっぱり門長さんだ!おかえりー!!」

 

「竹っ!そんなに引っ張るんじゃない!」

 

「おー、やっぱり松と竹かっ。遂にその可愛い姿を見せてくれる気になったんだな!」

 

「へへへっ、改めてよろしくね~」

 

「別にお前の為に艤装を外している訳ではないっ!身体の負担を考えての決断だ」

 

松は近づく俺から離れるように二、三歩下がってそう答えた。

別にそんなに警戒しなくても何もするつもりはねぇ……つっても信じてくれなさそうだな。

響との距離が縮まって調子に乗ってた分、電や松にこうも立て続けに拒絶されると正直凹むなぁ……。

 

「なぁ……長門が何処に居るか知らないか?響達の部屋には居なかったんだが……」

 

気を取り直そうとは思いつつも予想よりダメージが大きかった為、俺は気分が上げられないまま二人に尋ねると、松に長門なら艤装を取りに工廠に向かったと教えて貰った。

 

「工廠か……まあ丁度良かった。ありがとな松、んじゃちょっと行ってくるわ」

 

「う、うむ…………」

 

松に礼を言いそのまま工廠へと歩き出す俺に、松は反射的に壁を背に俺の一挙一動を深く警戒していた。

う~む、そんな警戒されるような事は……した、のか?

解らん……が、まぁ…………課題は多いな。

 

「もぅ、ま~つ~?────」

 

「ゔっ……だが────」

 

二人はあの後何か話しをしていたが俺は聞き耳を立てる余裕も無く、数々の問題に頭を悩ませながらとぼとぼと工廠を目指し歩いて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 十分程して工廠へ到着した俺が中に入るとそこにはきょろきょろと何かを探している様子の黒髪の少女、長門(小)の姿があった。

艤装を取りに行ったっつうのにまだ小さいままと言う事は恐らく艤装を探してんだろう。

俺が声を掛けると長門(小)は目を輝かせてこっちに飛びついて来た。

 

「とながーーっ!!ありがとう、良く帰って来たっ!」

 

「あー…………あぁ、まあな」

 

意外なタイミングでの感謝の言葉に若干戸惑いつつも、俺は目の前の少女に当たり障りの無い返事で受け止めた。

歓迎される事に悪い気はしねぇが、長門から帰って来た事を此処まで感謝される理由がいまいち解らん。

 

「なぁ、どうしたんだ長門。俺がいない間に何かあったのか?」

 

「うんっ!色々あるがとにかく帰って来てくれてありがとうなんだ!」

 

「いや、その色々を詳しく聞きたいんだが……」

 

「色々は色々だっ!ありがとう門長!!」

 

あ~うん。すっげぇ懐かれてる感じで嬉しいんだが……このままじゃ埒が明かねぇな。

俺は一先ず艤装を着けるように長門(小)に伝えると、彼女はハッと思い出したかのように慌て始める。

 

「そうだっ!艤装をつけに工廠に来たのだが、艤装も明石も居なくてな!」

 

「明石?あいつならさっき執務室に……つか無線で連絡を取れば良いだろ」

 

俺がそういうと長門(小)は少し落ち込んだ様子で答えた。

 

「無線は艤装についてる……だから明石と連絡が取れない」

 

あ~確かに長門が離れた日にそんな事も話してた気が……。

 

「はぁ、だったら一人で行動すんなよな」

 

「うぅ~…………気を付ける」

 

……ったく、中身は長門のくせにその見た目でそういう仕草はずりぃぜ。

俺は目を伏してシュンとする長門(小)の頭を撫でつつ、無線で明石へと連絡を取り始めた。

 

「おー明石、今何処に居んだ?」

 

その直後、明石の喧しい喚き声が俺の耳元を劈いた。

 

『何処に居るじゃありませんよっ!なんですかあのボートの惨状はぁ!』

 

「ちっ、うっせぇなぁ。ちょっと全速力で海岸に突っ込んだだけだっつうの」

 

『全速力っ!!?一体どうしたらそんな事に…………はぁ、もういいです。兎に角あれを直す事は出来ませんので新しく作り直しますよ?』

 

「そうか、まあそれはどっちでもいい。それより長門が工廠で待ってるぞ」

 

『あっ!工廠にいらしてたのですね!了解です、直ぐに長門さんの艤装を持ってそちらに戻りますね』

 

そういうと明石は一方的に通信を切断しやがった。

俺は明石が艤装を持って直ぐに来る事を伝えると長門(小)は再び目をキラキラとさせ、元気な声でお礼を言った。

……あ~ちくしょう。見れば見る程この天使と長門が同一人物とは思えねぇんだよなぁ……つうかなんでこんなキラキラしてんだよっ!!あっちに居た時はもう少し落ち着いてなかったか!?

 

「あっ、長門ちゃん!探しましたよ~?」

 

「うぅ……明石、すまない」

 

ん?どうやら俺が虚像と現実のジレンマに悩まされている間に明石が長門の艤装を担いで工廠へと入って来ていたようだ。

 

「ってまて明石てめぇ、なに苛めてんだコラっ!」

 

「ええっ!?いやいや苛めてませんって!」

 

──って違う違う、待つのは俺だろうが。

良く考えてみろ……あの少女は長門、空想上の少女と言っても過言じゃない存在だ。

つまりあの少女を愛でると言う事は長門を愛でる事と同義。

それでも俺はあの少女を愛でると言うのか?

…………まぁ、幻想だろうが空想だろうが少女は少女で可愛いんだから仕方ない。

~証明終了~

 

「と言う訳で明石てめぇには後でその子を苛めた罰を受けて貰おう」

 

「え”っ……何がと言う訳なのかさっぱりなんですが…………」

 

「良いからさっさとそいつを長門に渡しな」

 

「へぇ、渡しますけどもぉ……」

 

そして明石から艤装を受け取った長門(小)はその姿を本来の物へと変貌させた。

 

「……………………」

 

「よし、これで話が出来るな……って、どうした長門。なんかあったか?」

 

「いや、なんでもない……ごほんっ。門長よ、良くぞ帰って来てくれた」

 

「まあな。つうか色々って何があったんだ?」

 

「わ、私が言ったのか?済まんが覚えがないな…………そ、それよりも私に話があるんじゃないのか?」

 

長門の不審な態度が妙に引っかかるが聞き出すのも面倒だと俺はさっさと話を切り出した。

暴走については応急的な処置のみで根本的な解決は出来なかった事。

俺や長門をこんな状態にした主犯格である阿部とかいう奴は既に海底棲姫に殺され、今は俺の唯一のダチである西村が横須賀第一鎮守府の提督をやっている事。

そして西村と話し合った結果、響を護り続ける為に世界平和を成し遂げる以外に方法は無いという結論に辿り着いた事。

俺が一通り話し終えると長門は険しい表情を見せながら重々しく口を開いた。

 

「門長よ、お前の気持ちの変化はとても喜ばしい事だ。それに本当に実現できれば響を護り続ける事も出来るだろう」

 

「ああ、俺が何時まで持つか分からねぇ以上他に方法は無いと思っ────」

 

「だがその方法には賛同出来ないな」

 

「……はっ?どういうつもりだ長門」

 

「勘違いするな、私とて平和を願っていない訳ではないし、響の幸せを第一に考えている。だがその響の気持ちを考えれば賛同など出来るはずも無い」

 

「響の気持ち……俺が考えねぇって言いてぇのか?」

 

俺は響の事を想ってるからこそこうして世界平和だなんて柄にもねぇことをやろうとしてんのにこいつは一体何が言いてぇ……。

だが、怪訝な目を向ける俺に対して長門は首をニ、三横に振ると、逆に俺を睨み返した。

 

「やはりお前は響の事を分かっていない。響が本当に望んでる事はなんだと思う?」

 

「響が本当に望んでる事?」

 

「ああ、それが解れば世界平和を成し遂げただけで響が幸せになれる訳では無い事も解るだろう?」

 

「響の幸せ…………」

 

その時俺の脳裏に浮かび上がったのはついさっき見た泣きじゃくりながら出迎えてくれた響の姿だった。

そうだ、俺はあの時響を不幸にしてしまう所だったと思ったんだ。

……確かに長門の言う通りだ。例え世界平和を成し遂げた所で俺が助かる訳じゃない。

そうしたらきっと響に後悔を残してしまうかもしれない…………それは本当に響にとって幸せな事か?

 

「いや、違う……それは俺の自己満足だ」

 

「門長…………」

 

「わりぃな長門、さっき言ったことは忘れてくれ。世界平和を諦めた訳じゃねぇが先にやらなきゃなんねぇ事が出来た」

 

「ふっ、そうか。それならば私も最大限尽力しよう」

 

そう言って長門は俺に右手を差し出した。

俺も右手を出し、返事の代わりにその右手を固く握り不敵に笑った。

ふと扉の開く音に気付き俺達が音のする方へ振り向く。

するとそこには妖精武蔵とレ級が入って来ていた。

 

「や~遅くなった、明石は居るか?」

 

「オー!此処ガ工廠ッテヤツカ!」

 

「え~っと、妖精……さんと……ってえぇっ!レ級じゃないですか!!?」

 

「褐色肌の妖精にレ級flagship……門長、二人ともお前の知り合いか?」

 

「ん?ああ、つかお前も知ってる奴だ。以前俺らと戦った離島の所のレ級とそこの妖精は武蔵だ」

 

「ふむ、やはりあの時のレ級…………って武蔵だと!?まさか横須賀の武蔵だというのか!!」

 

驚愕を隠せない長門に対して武蔵はいつもと変わらない様子で答えた。

 

「その通りだ、久しいな長門よ」

 

「なっ……なんと、本当に……無事だったのか」

 

「ふふん、まあな。理由は解らんが有難い限りだよ」

 

「あらあら、武蔵さんてばいつの間に妖精になったんですかねぇ?」

 

「うむ、気付いたらなっていたとし……か?」

 

「「!?」」

 

直後、流れるように会話に混じってきた存在にその場にいた全員の注意が武蔵の隣へ注がれる。

だが当の本人、つまり砲雷長は特に気にすることなく武蔵の隣からレ級の元へと近付く。

 

「アーッ!オマエアノ時ノチッコイノ!次ハギッタンギッタンニシテヤルカラ覚悟シロッ!」

 

「ふ~ん……まぁこれくらいなら五時間って所ですかね」

 

「無視スンナーッ!!」

 

「つかどっから湧いて来やがったんだよ」

 

「湧いたとは失礼な、普通に扉から入って来ましたよ。皆さんが気付かなかっただけでしょうに」

 

肩を竦め呆れた様に首を左右に振る妖精に怒りを覚えるも、実際に見ていない以上言い合ってもしょうがねぇし俺は話を変えた。

 

「ああそう、じゃあ何で俺よりも来るのが遅かったんだ?」

 

「ちょっとした野暮用ですよ。と言うかいつ修理するかまでは言われてませんし~?」

 

「……ちっ、確かにそうだな。じゃあ今から頼んだぞ」

 

「はいは~い」

 

「それじゃあ俺も直して……ってあ、そうだ明石には罰を受けて貰うんだったな」

 

「ええと、罰を受ける言われが無いと思うのですが……」

 

邪悪な笑みを浮かべる俺に明石は顔を引き攣らせながら答える。

たが俺はそんな事もお構い無しに明石に俺の身体の事を説明した上でこう告げた。

 

「っつう訳でお前には俺の体の問題解決に動いてもらうぜ。一応タウイタウイの明石と夕張にも協力を求めてみるが基本的にこの件はお前に一任する」

 

「魂の変異ですか……って、えぇっ!!私がですかっ!?」

 

「てめぇ以外に誰がいるっつうんだよ。ああ、あっちとの連絡手段は後で考えとく」

 

「ちょ、流石に荷が重過ぎると言うか無茶と言うか……」

 

「無茶だろうがどうにかしなきゃ大変な事になる問題だからな。何としても解決しなきゃならん」

 

「うへぇ……拒否権無いじゃないですかぁ」

 

もちろん簡単にどうにかなる問題じゃねぇが詳しくねぇ俺がやるよかこいつらに任せた方が可能性はある筈だ。

まあ俺は俺で何か方法が無いか探して見るつもりではあるが。

 

「他に方法があるなら考えるが当面はこれで行く。っつう訳で任したからな」

 

俺はそれだけ言い残すと工廠を離れ、入渠ドックへと向かった。

待っててくれ響。お前の為に必ずこの身体を何とかしてやるからな!

 




取り敢えず第二章はここまでとなります。
まあ章分けは結構適当なんですが(オイ

次章は久々に彼女達が登場致します!
ヒントは結構最初の方に登場した二人組です!
そもそも皆さんは覚えて居るのでしょうか……(汗)

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