響乱交狂曲   作:上新粉

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なんだか近頃、話の書き方が変な気がします。
もっと基礎から勉強したいと思う今日この頃……


第六十九番~母~

午後八時、入渠を終えた不知火がドックから出てくるのを見つけたアタシは不知火に声を掛けた。

 

「よっ」

 

「摩耶……どうも」

 

「おいおい待てって、飯用意してんだから食いに来いよ」

 

「いえ、不知火は大丈夫ですから」

 

そう言ってそそくさとその場を立ち去ろうとする不知火の腕を掴み引き止める。

 

「遠慮すんなって、今日はカレーだからすぐに食えるぜ?」

 

「カレー……いえっ、用事が有りますので失礼します」

 

「用事?金剛に連絡するのは明後日だろ?」

 

「あ、いえ……えと……別件が……」

 

「別件?飯食う暇もねぇくらい緊急なのか?」

 

「ええ、そう……です。ですから……」

 

そう答える不知火の様子は普段からは想像もつかないくらい狼狽えていて、嘘を吐いてるであろう事は誰の目にも明らかだった。

 

「なぁ、動揺を全く隠せてねぇぞ?」

 

「ばっ、馬鹿な!?そ、そんなはずは……」

 

「まあ本当に緊急の件があるっつうならアタシも手伝うし吹雪達にも手伝って貰う事だって出来るからよ、話してくれよ」

 

「ゔっ、それは…………すいません、別件なんて無いです」

 

「ん、そっか。じゃあちゃっちゃと飯行こうぜ」

 

「…………はい」

 

呆気なく陥落した不知火の手を引いてアタシは食堂へと足を運んだ。

夕飯の時間は既に終わり、松と竹にも部屋に戻って貰い食堂にはアタシと不知火の二人しか居ない状態となっている。

そんなのは勿論様子がおかしい不知火から話を聞く為だ。

因みに暁は作業が終わる前には戻って来てぷりぷり怒りながら積み降ろしをしてたから恐らく聞き出せてねぇんだろうな。

それはともかくとして、取り敢えず不知火には飯を食って落ち着いて貰おうと温めたカレーを差し出す。

 

「まずは飯にしようぜ?」

 

「…………戴きます」

 

椅子に座ったまま暫く微動だにしなかった不知火だったが耐えられなくなったのか遂にスプーンを手に取りカレーを口に運び始めた。

そんな不知火の様子を厨房から見ていたアタシは胸を撫で下ろし、不知火が食べ終えるまでの間そっと見守っていた。

 

 

 

 

 

 

「……ご馳走様です」

 

「おう、お粗末様」

 

カレーを食べ終えた不知火がコップの水を飲み干し一息吐いた所でアタシはピッチャーを手に厨房から出る。

そして不知火のコップに水を注ぎつつ早速本題を切り出す。

 

「なあ、今日の朝から様子が変だって暁と吹雪が心配してたぞ?」

 

「変……ですか。別に普通だと思いますが?」

 

「いやなぁ、何時もなら飯を断るだけであんなに取り乱さねぇだろ。そもそも断る理由も解んねぇしな」

 

「それは……その…………あれです」

 

「つーかそれだよそれ。いつもそんなに歯切れ悪くねぇだろ?」

 

「うっ……そう、でしょうか。いえ……ですが……」

 

ん~……焦れってぇなぁちくしょう……。

 

「あ〜もういい!」

 

「え?」

 

こんな不知火と長々と話すくらいなら無理矢理聞き出してやんよ!

アタシは背後から不知火の腰に手を廻しそのまま抱き抱える。

そして状況が理解出来ずに唖然とする不知火に対してアタシはこう告げた。

 

「お前が何を悩んでるか話すまでアタシも離さねぇからな」

 

「な、なにを言っているんですか。そんな事出来るはずが……」

 

「いーや、アタシはやるぜ」

 

他にいい方法が思いつかねぇしな。

 

「し、しかしそれでは任務に支障がでますし摩耶だって」

 

「どのみちそんな状態で出撃なんてさせらんねぇし金剛にはこのままでも伝えられんだろ?アタシの方なら今は松達が手伝ってくれてるし睦月達だって頼めば助けてくれるっつってたから問題ねぇ」

 

「そ、そうですか……ですが不知火に悩みは有りませんので時間の無駄だと思いますよ?」

 

ほっほぉ〜、そう来たか。

まだ話さないで済むとか思ってんのか?

じゃあこれならどうだ!

アタシは不知火に片腕を見せると一瞬だけ連装砲を展開して見せた。

 

「なっ…………!?」

 

「分かったか?アタシはお前を取り逃がす気もねぇし寝るつもりもねぇ。長期戦も覚悟の上だっつうことだ」

 

「で、ですが起きているにも限界がある筈です」

 

ちっ、流石に知ってるか。

アタシも明石から聞いたわけだしまあ海軍出身の不知火なら知ってても不思議じゃねぇか。

 

「まあそうだな、補給無しで三週間って所らしいが補給ありならどうだろうな?」

 

これについては明石も知らねぇっつってたし絶対にやるなって念を押された位だからきっと不知火も解らねぇはずだ。

 

「…………」

 

どうやらその予想は的中らしく不知火はそのまま暫く黙り込んでいた。

やってやったぜ!なんて得意気になっていたが暫くして熱が冷めると客観的に自分を見る事が出来る様になり、そして考えた。

流石にこれは強引過ぎじゃね?

反省したアタシは出来る限り柔らかい口調で諭す事にした。

 

「なあ不知火、自分の悩みを自分で解決しようとする姿勢は立派だとアタシは思う。けどな?自分一人で解決出来ないような時に周りに助けを求めるのも同じ位立派な事だと思うぜ?」

 

「助けを求めるのが…………立派?」

 

「ああそうだ。だって助けを求められるって事は仲間の事を気にかけてるって事だからな」

 

「不知火が……周りを気に掛けてないと?」

 

「アタシは不知火じゃねぇから其処までは解らねぇな……けど、お前が周りを頼らなきゃ周りが困ってもお前を頼れねぇだろ?」

 

「…………」

 

「今日の出撃だってもし暁がル級達に頼らずに一人でどうにかしようとしてたら大破じゃ済まなかったかも知れねぇんだぞ?」

 

「……不知火は助かるべきでなかった」

 

「は?それはどういう事なんだ?」

 

発言の意味が理解出来なかったアタシが詳細を訊ねると不知火は再び押し黙ってしまっていたが、やがて観念したようにぽつりぽつりと話し始めた。

 

「実は……先日何者かから無線機に連絡が入ってきました」

 

「無線機っつうと金剛と連絡を取ってる方か?」

 

「はい。ですがその者は一切暗号化せずに話し掛けて来ました」

 

「えっと?つまり傍受されるのを覚悟で不知火に通信を繋いできたって事か?」

 

だが不知火は首を横に振った。

 

「違うのか?」

 

「ええ、恐らく意図的に傍受させる事によって私の位置を特定しようという大淀側の魂胆でしょう」

 

「なるほどな。それで?そいつとは何を話したんだ?」

 

やっぱ話を長引かせる為の他愛もない話か?

いや、それだったらそもそも不知火が取り合わねぇ。

アタシは色々と推測してみたもののその答えは予想だにしないものだった。

 

「いえ、相手は私に名乗った後明石に代わってくれと言ってきました。なのでその時の私は深く考えずに明石に代わってしまいました」

 

「は?明石にか?つか名乗ったって……」

 

「そうです。確かタウイタウイ第六鎮守府秘書艦のヴェールヌイと言っていましたが今考えれば全て私に怪しまれずに通信を続ける手段だったのでしょう」

 

ちゃんと名乗る事で相手を信用させるか……あれ?なんかおかしくねぇか?

 

「なあ不知火。お前って今海軍中に狙われてるんだよな」

 

「はい、そうですがそれがどうかしましたか?」

 

「だったら海軍所属って事を名乗ったら逆に怪しまれるだろ」

 

「…………はっ!?」

 

不知火は暫く顎に手を当てて考えていたが漸くこの事実に行き着いたのか驚きを隠せないまま顔だけをこっち向けていた。

 

「そうでした……あの時気付いて居れば防げたと言うのになんて事をっ!」

 

「お、おいおいそうじゃねぇって。アタシが言いてぇのはそいつは別の用事があって連絡して来たんじゃねぇかって事だよ」

 

「別の……?」

 

「ああ。つか明石に代わったんならそいつと何の話をしたか聞けば良いじゃねぇか」

 

「しかし、万が一明石が内通者だったら話を合わせてくる可能性が……」

 

「あー、それは大丈夫だろ。そもそも明石は金剛が来る前から居た訳だしな」

 

「ですが可能性が無い訳では──」

 

「良いから行くぞ!アタシが大丈夫っつってんだから大丈夫だっつうの!」

 

アタシは不知火の話をぶった斬ると不知火を抱えたまま強引に工廠へと向かった。

真剣に悩んでる不知火には悪いがアタシは今回の件は不知火の危惧するような話じゃないっつう確信があるんだ。

正直明石が内通者だとか近くに明石がいるのを知ってるんだったらそんなまどろっこしい事しなくても特定すんのに時間は掛からねぇはずだからその線は無いと考えていいと思ってる。

と言っても不知火に話すつもりねぇけどな。

不知火にとって余計な不安材料になりかねない事を言う気はねぇよ。

 




語彙力云々よりも読みやすい文章の書き方を勉強したいです。

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