第二章は門長達の居ない基地での日常を描いていきます。
番外編的なお話ですので本編と直接関わる事は恐らく無いと思います。
……正直この章が一番大変な気がしてます( ̄▽ ̄;)
第六十六番~母~
「ん~っ……ふぅ、少し休憩にすっかぁ」
洗濯物を干し終えたアタシは大きくのびをしながら青空を眺め一息ついた。
松達が手伝いに来るまでまだ時間はあるしこんなに天気が良いんだ。少し位ゆっくりしたってバチは当たんねぇだろ。
そう思い中庭に設置されているベンチに頭の後ろで手を組んで仰向けに寝っ転がり軽く目を閉じる。
そういやあの変態野郎が響達を連れてタウイタウイに治療?に出てからもう三週間か……色々あったけど過ぎちまえばあっという間だったなぁ。
アタシはうとうとしながらこの三週間の事を思い返していた。
~~~~三週間前~~~~
門長達を見送った後、フラワーと内容や日程について説明を受けている不知火達遠征組以外の面々は各々が部屋へ戻ったり工廠へと歩き出したりしていた。
因みにアタシは昼飯の支度の為食堂へと向かっている所だ。
「さ~て、今日の飯はどうすっかなぁ」
ん~……肉じゃがは……夕飯にするかぁ……あ、そういやこの前北方棲姫が一緒に来た時に大量の秋刀魚を持ってきてくれたのがまだ残ってたな。
よし、昼は秋刀魚の塩焼きにでもすっか!
今日のメニューを決めたアタシが厨房へ入り料理支度を整えていると厨房の扉を叩く音が聞こえてきた。
「おー、開いてるぜ」
そう言って扉の方に目を向けると奥から松と竹の二人が入って来る所だった。
「失礼する、済まないが今日もよろしく頼む」
「摩耶さんよろしくねー!」
「おう!こっちこそよろしく頼むぜ。んじゃあそっちで準備して来いよ」
「は~い」
「……承知した」
さてと、奥で松達が着替えてるしアタシは今ある食材を確認しとくか。
ええ……と、あったあった。
ひい、ふう、みー…………よしっ、秋刀魚も人数分はあるし大丈夫だな。
「摩耶さ~ん、お待たせ!」
「ま、待たせて済まない……」
「お?思ったより早いじゃねーか」
「う、うむ……私から頼んだ事だ。あまり摩耶に迷惑を掛ける訳にはいかんからな」
「そんくらいの事迷惑だなんて思わねぇよ。けどよ、可愛い顔してんだから別に隠すような事なんてないと思うぜ?」
「まっ、まま摩耶までいうかぁっ!?わわわたしは断じて可愛くなんかっ!」
「まぁまぁ、落ち着けって。そんな取り乱すことでもねぇだろ?」
松がどんなに否定しようがこんな姿見せられちゃ誰だって同じ事を言うだろ。
顔を真っ赤にして狼狽える松を暫く宥めつつそんな事を考えていると、肩で息をしながらもようやく落ち着きを取り戻した松はじっとアタシの顔を見ていた。
「ん、どうした?」
「……摩耶は良いさ、隠す必要も無いくらい美人なんだから」
「は……?今なんて?」
松から帰って来た言葉が理解出来なかったアタシがもう一度聞き返すと、松は少しふてくされた様に答えた。
「摩耶は綺麗で女性らしいからそんなに自信が持てるんだろ」
「アタシが?女性らしい?」
松は何も間違った事は言っていないといった様子でコクリと頷いた。
いやいや、綺麗で女性らしいっつうのは西野提督とか陸奥みたいな奴を指す言葉で間違ってもアタシに使う様な言葉じゃねぇだろ?
アタシが反論の為口を開こうとした時、意外な所から追撃が入って来た。
「そーだよー?摩耶さん綺麗だし家事全般出来るしすっごい気が回るしとてもいいお嫁さんになれるんじゃないかなぁ?」
「へ……?な……な、なななななぁぁっ!?た、竹ぇ!!おおおお嫁さんってお、お前なぁっ!」
「あっははは~、摩耶さん顔真っ赤だよぉ?」
「う、うっせぇ!ひとをからかうんじゃねぇよ!」
「くくくっ……だが、竹の言う通りだと思うぞ?」
「ば、ばかやろうっ!……あぁ~もう、いいから始めんぞっ」
……ったく、余計な事言わなきゃ良かったぜ。そもそもアタシ等は艦娘だし、そうでなくともこんな場所じゃ相手なんか…………っていやいや、あいつは論外だろ!
アタシは余計な雑念を振り払うように頭を振ると松達に指示を出しながら昼飯の準備に取り掛かったのだった。
そうして十一時半過ぎには飯の支度が完了し、松達が机に料理を並べている間にアタシは使用した調理器具を洗っていた。
「よし、そろそろ皆を呼ぶぞ。艤装はどうする?」
「す、すまない。直ぐ着けてくる」
「私はいいかなー」
「良い訳無いだろ!早く来いっ!」
「えー?」
料理を並べ終えた後、松は渋る竹を引っ張って食堂の奥へと入っていった。
その間にアタシは無線を使い全員に飯が出来た事を伝えていると早速食堂の扉が勢い良く開かれた。
「秋刀魚だクマぁーーーーっ!!」
「いただきますぅー!」
「睦月ちゃん、それは気が早過ぎるわ?」
「摩耶さんこんにちわ~。ごめんねぇ?毎度騒がしくてさー」
「いいじゃねぇか、元気過ぎるくらいが丁度良いんだよ」
始めにやってきたのは球磨、睦月、如月、望月の四人だった。
普段はこれに卯月と夕月も加わり一層賑やかになる訳だが何でも相談事があるとかで今日は二人とも明石の所にいるらしい。
「折角早く来てもらってわりぃけど皆が集まるまでもうちょっと待っててくれよな」
「だ、大丈夫クマぁー……」
若干一名大丈夫じゃなさそうだが出来れば皆で一緒に食った方が美味いからな。
他の面子の到着を待っていると、食堂の奥から艤装を着けた松達が戻って来た。
「あれれ?松ちゃんに竹ちゃん、どうして厨房から?」
「まさかつまみ食いクマっ!?」
「違うわっ!……竹と二人で摩耶の手伝いをしていたのだ」
「あらぁ、偉いわねぇ二人とも。でもそうねぇ……あ、そうだ。私達にも何か手伝わせて貰えないかしら?」
「むむむ……睦月もお手伝いしますぅ!」
「はっ!それなら味見が出来るクマ!」
「いやいや、動機が邪だよ……まぁ、私もやれる事はやるよ~?」
「ありがとなお前ら、けど今は松達とアタシだけで十分やっていけてるから大丈夫だ。人手が必要な時が来たら改めて頼むぜ?」
「「はーいっ(クマーっ)」」
こいつ等の気持ちはすげぇ嬉しいが松の件がある以上頼むわけには行かねぇからな。
ま、十分やっていけてるってのも嘘じゃないけどよ。
そんなこんなで球磨達と雑談している内に全員が集まり正午前には揃って昼飯を食べ始めたのだった。
私の知らない世界、それが日常(錯乱)