響乱交狂曲   作:上新粉

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夏コミ……はぁ、もうあんな人混みには入りたくないですね(満身創痍)



第五十九番

響達と共に工廠に戻って来た俺は自分がやらかしたと思われる惨状を目にした。

見上げれば夜空の星が一望でき、周囲を見回せばそこら中の壁が崩れ落ちている。

そして何かを引きずった様な乾き切っていない赤いシミ、ヴェールヌイの話を聞く限り夕張のものなのだろう。

 

「……ヴェールヌイ、何か俺に手伝える事はあるか?」

 

だがヴェールヌイは俺の申し出に対して首を横に振って言った。

 

「その気持ちだけで充分さ。実際私達も明石さんと妖精さん達に任せるしか出来ないからね。それよりも……今は安定してる様だけど一応明石さんに調べて貰った方がいい」

 

「つっても今のあいつにそんな余裕は無ぇんじゃねえか?」

 

「そうだね……それなら伝えるだけ伝えておくよ」

 

「ああ、じゃあ悪い。俺は夕張んとこ行ってくる」

 

「分かった、夕張なら多分まだ病室に居ると思うけど場所は分かるかい?」

 

「大丈夫だ。それと頼んでばっかで悪いが響を入渠させてくれないか?」

 

「わ、私も一緒に夕張さんに謝りに行くよっ!」

 

あんな目に合っているのにまだ俺に付いてきてくれるのか……響。

響の心遣いは嬉しかったがせめてあの声の主が分かるまでは俺は響の傍に居るべきではない。

俺はしゃがんだまま響の頭を撫でながら諭す。

 

「ありがとな、でも俺のせいで響も怪我してるだろ?それに夕張に響が謝ってもあいつが困惑するだけだ。だから今だけは俺の言う事を聞いてくれないか」

 

「……うん、そう……だね」

 

響は気を落とすも渋々納得してくれた様だ。

そう……これでいい。後で金剛辺りにでも俺から響を遠ざける様に言っておこう。

そうして俺は響に背を向け夕張が居るであろう病室へ向かった。

 

 

 

 

 

病室に向かう途中、中庭のベンチに座る夕張の姿を見つけたので俺は中庭に出て夕張に声を掛ける。

 

「おい、もう出歩いて大丈夫なのか?」

 

「うぇっ!?とととととながさんっ!??ど、どうして?工廠で明石さんに診てもらっていたんじゃ!?」

 

「あいつなら忙しそうだったんでな、一段落着いたら調べて欲しいとヴェールヌイが明石に伝えてくれている」

 

「へ、へぇ〜。そっかぁ……」

 

未だに動揺している様子の夕張に此処にいた理由を尋ねる。

 

「お前こそこんな所でなにしてんだよ。怪我はどうした」

 

「えっ、と……私も艦娘だしあれぐらいなら気にする程じゃ無いわ?ただ…………」

 

先程迄の慌てた様子とは一転、夕張は酷く落ち込んだ様子で言葉を少しずつ紡ぐ。

 

「あの……本当に…………今日はごめんなさい」

 

「謝んなきゃなんねぇのは俺の方だ、お前が謝ることなんてねぇだろ」

 

しかし夕張は首を横に振って否定する。

 

「違うの、艤装の展開工程に入る前に明石さんが中止しようとしたの。今思えば明石さんはこうなる事を予感してたのかも知れない」

 

「そうか。だがやったって事は明石が大丈夫だと思ったんだろ?」

 

「ううん、中止しようとした明石さんに私が促してしまったの……『技術の発展に必要な事』なんて尤もらしい言葉を並べてね」

 

なるほど、そんなやり取りがあったから責任を感じてるのか。

 

「だからってお前が気に病むことじゃねぇよ。俺の意思で明石にやって貰った事だし、その結果暴走してお前や工廠をあんなにした挙げ句に響すら手に掛けようとしたのは間違いなく俺の身体だ。だから……こっちこそ……その……悪かった」

 

「…………っ!?」

 

俺頭を下げて謝った。

少しして頭を上げると夕張は目を丸くしたままこっちをみて固まっていた。

 

「…………なんだよ」

 

「へっ?ああとごめんっ。門長さんって人に頭を下げる様な印象が無かったからびっくりしちゃって……」

 

何なんだよ、響にも物凄い形相で見られたがそんなに意外か?案外頭下げてると思うんだけどな……

 

ーー響やヴェールヌイの様な駆逐艦にはなーー

 

長門か、ああまあ確かに考えてみればそうかもしれねぇな。演習の時も大和にと言うよりヴェールヌイに謝ってる感じだったしそもそも頭下げてはねぇな。

まああれはあいつもルール聞いてなかったみたいだしどっちもどっちって感じだったからなぁ。

 

ーー……ふっ、まあ悪い事ではないし別にいいのでは無いか?ーー

 

まあ、それもそうか。

 

「あ、あの……門長……さん?べ、別に悪気があった訳じゃ無くてその…………」

 

ふと気付くと夕張が不安そうに俺を見上げていた。

はぁ、またこのパターンか……

 

「あ〜、ちょっと考え事してただけだから気にすんな」

 

「ほ、ほんとに?」

 

「ああ……とにかく、伝えたい事はそれだけだ。じゃあな」

 

そうして俺は中庭を後に工廠へと戻って行くのだった。

 

 

 

突然聞こえた謎の声……もし明石に頼んでも解決出来なかったら俺は一体どうすればいい…………

 

 

 




門長が抱える爆弾を果たして明石は取り除く事が出来るのか!?
次回「門長視点ではありません。そしてこれはタイトルではありません」

ご期待下さい!!程々に!!

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