ジャマスルモノハスベテコワス……
「門長ぁつ!!なにをしてるんだよぉっ!!」
マタジャマガ……コロス……
「……ねぇ門長、私が分かるだろう?長門さん……ねぇ、聞こえてるでしょ!」
ナンダコイツハ……オマエハダレナンダ……ヒビ……キ?
「門長…………ほら、私の事がわか……って……?」
ガアッ、メザワリダッ!……コイツハ……コロスッ!
ーー目を醒ませ馬鹿者っ!貴様は今何をしているか解っているのかっ!?ーー
ナガ……ト…………グゥ……ウルサイ!ジャマスルモノハスベテコワス!!
ーー響を護るべき貴様が今誰を手に掛けようとしているのか良く見てみろっ!ーー
オレガ……ダレヲ……?ヒビキ……ウゥ……
ーーそうだ、響だ!貴様は今響を傷付けようとしているんだぞ!ーー
シラナイッ!チカヅクモノフレルモノスベテコワス!!
チリヒトツノコサナイッ!!
ダカラコイツモ────
「わ……わたしは大丈夫……だよ?」
ア……アア…………アアァァァァッ!!!!
ひび……き……
ひびきぃ…………
ひびきっ!!!
遂に主砲が轟音を響かせ放たれた……
黒煙が身を包み一寸先どころか自分の姿すら分からない。
目の前で拡がる炸裂音により聴覚も役に立たない。
硝煙の匂い以外を感じる事も出来ない。
それでも…………
それでもこの胸に抱える小さな温もりだけはしっかりと感じていた。
「ほら……大丈夫だった……よ?」
響は震える体を抑え顔を上げると俺に笑顔を作って見せた。
「響っ……俺は……すまん…………何があっても護るなんて言っておきながら……済まな……い」
そんな響に俺はただ謝る事しか出来なかった。
それでも響は俺を抱き締め返して言ってくれた。
「それでも門長は護ってくれた。それに…………初めて会った時ほど怖くは無かった……よ?」
「響……ひびきぃ…………っ!」
柄にも無く俺の眼から零れ落ちる涙が治まるまでの間、響は優しく微笑みながら背中を擦り続けてくれていた。
──sideヴェル──
二人の成り行きを見届け、安心している所に翔鶴さんから通信が入った。
『ヴェールヌイさん、こちらからでは詳細が確認出来ないのですが目標は現在どういった状況でしょうか』
ああ……翔鶴さん達には聞こえてないから仕方ないか。
私は通信を第一艦隊から第四艦隊に繋ぎ、作戦の完了を伝える。
「目標の無力化は成功したよ。作戦は完了、全員ご苦労だった。各自帰投を開始してくれ」
『『了解っ!!』』
さて、門長少佐も落ち着いたみたいだし話を聞きに行きますか。
「調子はどうだい?門長少佐」
彼等の元へ近付き軽く挨拶をすると彼は真剣な表情で半壊した工廠を見つめながら尋ねてきた。
「なぁ……
私は一瞬どう答えるべきか考えたが、嘘偽り無く答えることにした。
「そうだね。ただ中破してしまった夕張以外の皆は無事だからそこは安心していい」
「そうか……やはり暴れちまってたか……すまん」
そう言って彼は私に頭を下げた。
「いや、元はと言えばこちらが余計な事をしたせいなんだ。気に病まないでくれ」
私はそう言って彼を慰めるが響を手に掛けようとした事が相当堪えているのか彼は未だ浮かない顔をしている。
「門長少佐。ここまでの……記憶が途切れるまでの経緯を聞かせてくれないか?」
そんな彼に対して心苦しく思いながらも私が尋ねると暫くして彼は少しずつ話し始めてくれた。
「……艤装の展開を出来るようにするっつうんで明石の奴に言われて作業中は寝てたんだ。そしたら…………不意に聞いたことも無い様な声が俺に呼び掛けて気やがった……」
──スベテコワセチリモノコサズ──
それを聞いた途端に意識が途切れ次に気が付いた時には響に向けて引き金を引いていたという事らしい。
つまり長門以外の憎悪に塗れた存在が艤装の展開を切っ掛けに門長少佐の内側から表に出てきたか。
艤装本体がその存在という可能性も無くはないが現在門長少佐の意識がある状態で艤装が展開しているのを考えると可能性は低いかな。
後は…………
「ごめんな響、痛かっただろう?」
「大丈夫……前に電が言ってた様に私は長門さんも門長も信じてたから」
「響…………ありかとな」
まぁ、これはないだろう。
こういう事は後で明石さんに調べて貰う事にしよう。
「さぁ、取り敢えず鎮守府に戻ろうか」
「ああ…………中破させちまった夕張の奴にも謝んなきゃなんねぇしな」
「それはこちらの……まあ夕張も気に病んでるかも知れないから御見舞に言って貰えると有難いかな」
それと響、門長少佐の発言が余りにも意外だったとしてもそんなにも驚愕を顔に浮かべなくても……
流石に可哀想じゃないかな?と思いながら響の頭を撫でながら帰投するのであった。
友人のとある手伝いをしていたので……というのを口実にしていたら投稿がおそくなってしまい申し訳ありませんでした!
手伝っていたのは事実ですが書く時間は充分あったんですよねぇ……
とまあこんな不定期更新な作品ですが読んで下さる皆様の為にも失踪だけはしないようにしっかりとした形で完結させたいと考えておりますのでこれからもどうぞ宜しくお願い致します。