…………テ……セ……
どっからか声が聴こえる……長門か?いや、違うな。
……スベ…………コ……
あ?何言ってんだ、つかてめぇは誰だよ。
スベテ……コワセ……スベテヲ……コロセ……
なに訳わかんねぇこと……
コワセコロセコロセコロセコワセコワセコロセコワセコワセコワセコロセコロセコロセコワセコワセジャマスルモノヲチカヅクモノヲフレルモノヲスベテッ!!
ーーースベテコワセチリモノコサズーーー
ふぅ、後はこの工程を終えれば施工は完了ですね。
ただ……何でしょうこの言い知れぬ不安は。
何故だかやってはいけない事をしているような……
「ねえ夕張ちゃん。ホントに大丈夫かしら?」
「何を弱気になっているんですか!これは新しい技術の発展に必要な事何ですよ!?」
確かに夕張ちゃんの言う通り前例の無いこの施術を成功させれば確実に技術的発展に繋がるわ。
だけど……ううん、恐れていては進展はしないわね!
「ありがとう夕張ちゃん、それじゃあ艤装展開行くわよっ!」
私は最後のレバーを一気に下げた。
次の瞬間、門長さん体が光に包まれ徐々に艤装が象られていく。
しかし、その光が収まる前に事件が起きてしまった。
なんと門長さんが横になっている台が突如轟音と共に激しい爆炎に包まれたのです。
「くぅっ!?夕張ちゃんっ!大丈夫!?」
近くにいた夕張ちゃんに呼び掛けても返事が無い。
すぐに駆け寄ろうとしたけれど目の前の衝撃的な光景を前に足が竦んでしまった。
「あ……と、門長……さん?」
私がそう呼んだ戦艦棲姫の様な異形を背負ったその存在は私に見向きもせず一直線に歩き始めた。
その存在の進む先にはなんと最初の爆発で吹き飛ばされた夕張ちゃんが立ち上がろうとしている所でした。
「夕張ちゃんっ!!」
夕張ちゃんは最初ので中破している様だわ。
このままじゃ不味い!早く夕張ちゃんを助けないと……
でもどうやって!?私みたいなただの工作艦に出来る事なんて……
せめて足が動けば!お願い!動いて私の足!
こうしている今もあいつと夕張ちゃんの距離が縮まって行っているの!お願い……誰か…………
「ウラァーッ!!」
あいつが夕張ちゃんに手を伸ばしたその時、工廠の扉の方から聞き覚えのある掛け声と共にあいつ目掛けて砲弾が突き刺さる。
「あ……ヴェ……ヴェールヌイ……ッ!」
「大丈夫かい夕張。明石さんも下がって」
「ヴェル!ありがと。でもあれは……」
「分かってる、門長少佐だろ?支援要請はしてある、だから二人は離れてて」
「わ、分かったわ。行くわよ夕張ちゃん」
私はこの場をヴェールヌイに任せて傷付いた夕張ちゃんをおぶって安全な場所まで避難する事にしたわ。
ーside.ヴェルー
さて、明石と夕張や工廠いた艦娘・妖精を無事に避難させる事に成功したまではいいが……どうしたものか。
通常の門長少佐でさえ私達の連合艦隊とやり合える実力を持っているのにそれが艤装展開時に暴走したって?
冗談でも笑えないな。
幸いな事に兵装が使えないのか先程から近接戦闘しか仕掛けてこないので辛うじて避難させる時間は稼げたが……正直倒せる気がしないよ。
「くっ、これなら!」
奴の大振りな叩きつけに合わせて飛び退きながら魚雷を放り投げる。
魚雷は奴の懐で激しい爆発が起こるが、煙が晴れる前にすぐさま飛び掛かって来た。
「分かってたけど……やっぱり足止めにすらならないね」
奴から距離を置いた直後、翔鶴さんから無線が入った。
『こちら空母機動部隊旗艦翔鶴。ポイントαへ到達致しました』
『こちら水上打撃部隊旗艦榛名。ポイントβへ到達しましたっ!』
「了解した、直ぐにポイントγに向かう」
『ご健闘を祈ります。お気をつけて』
向こうの準備は出来たようだね、それじゃあ奴を案内しようじゃないか。
「こっちだよ、ついておいで」
私は工廠のドックへ飛び込みそのまま海へと出た。
奴も同じ様に飛び込み全力で追い掛けてくる。
追い付かれないように距離を保ちながらポイントγまで段々と近付いていく。
「こちらヴェールヌイ、後五分で目標がポイントγに到着するよ」
『こちら翔鶴、了解致しました』
『こちら榛名、了解ですっ!』
準備は出来てる、後は誘導するだけ。
しかし、とうやらそう上手くは行かないらしい。
先程まで一切動きを見せなかった奴の艤装が突然動き出した。
「なっ!?これは不味い……」
この距離で狙われれば避けようがないうえに戦艦の主砲が直撃すれば駆逐艦である自分など一溜りもないだろう。
一応女神はあるにはあるが、それだとポイントγまで奴を誘導する事が出来ない。
どうするか…………はぁ、仕方ない。
「こちらヴェールヌイ。ポイントγを私の現在位置に変更する。私は敢えて接近し少しでも奴の足を止める」
『ヴェールヌイさんっ!?そんな事は認められません!』
「大丈夫だよ翔鶴さん。私は女神を持っているし、予想以上に距離が稼げなかったんだ。これではポイントγに辿り着けずに女神を無意味にしてしまう」
翔鶴さんの反対を押し切ろうとするが彼女は一向に認めようとしなかった。
『現在位置をポイントγに変更するのは承知致しました。その前に目標の足止めをこちらで行いますのでその間に撤退して下さい』
「いや、奴は魚雷の一発二発じゃ止められないから火力は全て集中させてくれ」
『しかしっ!』
奴に気を配りつつ翔鶴さんをどうすれば理解させられるか考えていたせいで奴の後ろから近付いていく一つの反応に気付くのが遅れてしまっていた。
「離れるんだっ!!」
だが、その彼女は止まること無く奴に後ろから抱き着いた。
「門長ぁっ!!なにをしてるんだよぉっ!!」
「だ、だめだ響……今の奴は門長少佐じゃない……離れるんだっ」
「そんな事ないっ!……ねぇ門長、私が分かるだろう?長門さん……ねぇ、聞こえてるでしょ!」
響の呼び掛けに反応したのか奴は動きを止め響の方を振り向いた。
「門長…………ほら、私の事がわか……って……?」
だが、響の声は奴には届いていなかった。
奴は響の頭を鷲掴みにすると全ての主砲を向け始めたのだ。
「ウラァーッ!!」
私は叫びながら撃ち続けた。
奴の注意を惹き付ける為に。
しかし奴はこっちに見向きもせず掴み上げた響を睨み続けていた。
「わ……わたしは大丈夫……だよ?」
恐怖で震えた声で呟く響。
だがそんな事はお構い無しに遂に奴の主砲が轟音と共に放たれてしまった……
こういうの書くのってホント辛い……