あ、サブタイトルは未定です。
鎮守府に着いた俺達はリ級を牢へと入れる事なった。
ヴェールヌイ曰く海軍の施設内で深海棲艦を自由に歩かせるには問題が多すぎるらしい。
榛名が監視する中、リ級が収容された牢に響と共に牢に入り話し掛ける。
「おう、話は聞く気になったかよ」
「テキノテニハオチナイワ、ハヤクコロシナサイ」
「それが出来れば苦労してねぇよ」
「アナタナラタイハシタシンカイセイカンクライワケナイデショ?」
「そういう事じゃねぇ……あ〜……」
正直特にこれ以上こいつに話す事ねえな。
契約の事はこっちの話だしな。
俺はちらりと響の事を見やると、響は言いたい事があるらしくおずおずと口を開いた。
「あ……あの……
だがそのワードが出た途端、リ級は鋭い視線で響を睨みつけた。
「テキノイウコトヲウノミニスルツモリハナイノ……ムダナハナシヲシナイデクレル?」
「う、うぅ……ごめん……なさい」
ちっ、このアマ……いいぜ、死にたいなら俺が引導を渡してやるよ。
響を泣かせたリ級にトドメを刺そうと拳を振り上げるが、そこで突然身体が動かなくなった。
「ナニヨ、ヤルナラサッサトヤリナサイヨ」
「……よーし、いい度胸だ。待ってろよテメェ」
ーー待たんか馬鹿者がっ!気持ちは分かるが今は手を出せば本当に沈めてしまうぞ!ーー
ああ?だから沈めようとしてんだろうが!邪魔すんなっ!
ーーここでお前がリ級を沈めたら港湾からの供給が止まるぞーー
うっ……だがんなもんあいつらがやった事にすれば……
ーー響に罪を背負わせるのか?ーー
なっ!?誰もそんな事言ってねぇだろ!!
ーーだが此処でリ級を沈めれば響もこの先ずっとこの事を隠さなければならなくなるのだぞ?ーー
そ、れ……は…………くそっ、分かった。
だがそれじゃあ響が報われねぇ、奴に信じさせるにはどうすりゃいい。
ーー簡単だ、敵の言う事を受け容れないのなら真実を知っている奴の味方の所に連れてけばいいーー
味方?そんなん何処にいるんだよ。
ーー分からんが恐らく我々の基地近くにまだいるのではないか?ーー
基地か……じゃあ目的を終えたらこいつを連れてきゃいいんだな。
ーーそういう事だなーー
ああ、わかった。
「という訳でてめぇは俺らが戻る時に一緒についてきてもらうぞ」
「……ハ?ナニガトイウワケナノカサッパリナンダケド」
おっと、ついそのままの流れで話しちまったな。
俺は長門と話た内容を簡単にリ級に伝えた。
「──っつう事だ、離島の事を知りたきゃそっちで聞くんだな。じゃあ行くぞ響」
「え、っとうん!そういう事だから私達の用事が終わったら一緒に行こう、リ級さん!」
「…………クダラナイワ」
榛名に終わった事を告げ響を連れて牢を後にする。
「リ級を連れていく?」
「ああそうだ、勿論諸々が済んでからだけどな」
唖然とするヴェールヌイに俺はそう告げる。
頭を悩ませるヴェールヌイに続けて確認をした。
「ああ、それと可能ならリ級を修理してくれねえか?」
「へぇっ!?深海棲艦のかい?それは……少し厳しいかな」
まあ、当然っちゃあ当然だよな。
「分かった、んじゃあそれはこっちで何とかするわ」
あいつらが近くにいれば楽なんだが……確かめようが無いしな。
「そうして貰えると助かる。リ級の処遇についてはそちらで引き受けるという事で良いんだね?」
「ああ、話が早くて助かる。だが頼んでばかりなのも悪ぃな……なんか俺に手伝える事はねぇか?」
「え?う〜ん……気持ちは有難いけど今の所門長少佐に動いて貰う程の案件は無いかな」
ん?これは体良く断られたのか?
ーー門長にしては察しがいいな。普通に考えてお前の様な運用コストが極悪な奴を通常運用する訳には行かんからなーー
ま、そりゃそうか。
「わかった、まあなんかあったらいつでも呼んでくれ」
「そんなに気を遣わなくてもいいさ。前線基地壊滅の報告と鎮守府防衛の報酬とでも思ってくれればいい」
そう言ってヴェールヌイは薄く微笑んだ。
俺も笑みを返し、一言礼を伝えた後部屋を出ていった。
さて、後は俺の身体とリ級の修理だけか。
前者は待つしかないからどうでもいいが後者をどうするかだな……
いい案が浮かばず廊下をぶらぶらと歩いていると前から電が駆け寄って来るのが見えたので気持ちを切り替え電を出迎えた。
「おー!寂しかったか電ぁ!無事に帰ってきたぞー」
しかし、両手を大きく広げ受け入れ態勢を万全に整えた俺の股下を電は滑り込む様にくぐり抜けた。
それだけならまだよかったが滑り込む際に上げていた電の足が俺の主砲(意味深)に全力で衝突したのだ。
「響ちゃん!無事で良かったのですっ!良かったのですぅ〜!!」
「へ、あの……電?えっと、その……」
「ぐぅおぉぉぉぅ……い、電ぁ……」
呻き声を上げながらその場で身悶える俺には目もくれず電は響をひっしりと抱きしめていた。
「……っはぁ、危うく主砲がおしゃかになっちまう所だったぜ」
「ちっ、しぶといの奴なのです……あれ?門長さんその腕はどうしたのです?」
何か聞こえた気がしたけどきっと気のせいだろう。
「こ、これはなんか刀を持った深海棲艦にやられたんだ」
「はわぁ、痛そうなのです」
心配そうに俺の腕を見つめる電を他所に自前の主砲を押さえながら思っていた……こっちの方が被害が甚大であると。
「それはそうと響ちゃん、リ級さんとのお話はどうでしたか?」
俺に対して関心が薄いのは悲しかったが蒸し返して更に息子を痛めつけらる事を恐れた俺は成り行きを見守る事にした。
「それが……聞き入れて貰えなかったんだ。無駄話はするなって」
「ふ~ん、無駄話……ですか。それで、リ級さんは門長さんが沈めたんですか?」
「いや、基地に戻る時に連れてく為に今は鎮守府の地下牢に収容されてる」
「はわわ?沈めて無いのですか……ちょっと用事を思い出したのです」
その瞬間俺は気付いた、電が雰囲気が変わっている事に。これは俺が響を遠ざけようとした時と同じだ。
此処で行かせてはならない!
俺は隠す気のない露骨な言い回しで歩き出す電の肩を掴んで呼び止める。
「何ですか門長さん?電は忙しいのです」
あの時の電と今の電が重なり嫌な汗が流れるが、俺は至って冷静を装いながら長門に言われた事と同じ言葉を電へと伝えた。
「──だから一旦基地に連れていく。その後はリ級と港湾達に任せるつもりだ」
電は苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべていたが響に重荷を背負わせたくないという共通の思いで何とかその矛を収めて貰った。
「分かったのです、それじゃあ電は響ちゃんと部屋に戻っているのです」
そう言うと電は響の手を取り来た道を戻っていった。
ホッと一息ついた後、俺も特にやることも無かったので暫く鎮守府内をぶらぶらしてから部屋へと帰ったのだった。
結局その日は特にいい案が浮かぶ事はなかった。
もう電ちゃんが門長に対して取り繕う気が無いよぉ……
(´;ω;`)