響から事の顛末を聞かされたリ級は押し黙ったままわなわなと肩を震わせていた。
「謝って赦される事じゃないのは分かってる……だけど、出来るなら私に償わせて欲しい」
俺は今にも飛び掛りそうなリ級を警戒しながらも響の意思を汲み返答を待っていた。
だが、リ級は飛び掛る事も答える事も無く突然その場に崩れた。
「ソンナコト……ウソヨ…………シンジナイワッ!」
「信じる信じないは勝手だが響の言ったことは全て本当だ。現場にいた奴に聞けば解る事だろう」
「バカイワナイデッ!ミトメナイ……ミトメラレナイノヨ……」
リ級はゆっくりと立ち上がり再び砲門を俺達に向け始める。
ちっ、これ以上は聞く耳持たねぇか。だったら力ずくで黙らせるだけだ。
「響、下がってろ」
「でも……」
「どのみちあいつは話が聞ける状況じゃねぇ、説得は後だ」
「…………うん」
響を納得させ後ろに下がらせると、リ級に向けて両手の五十一センチ連装砲を構える。
「オマエタチヲタオシテリトウヲトリカエスッ!シズメェッ!!」
「俺達を倒しても離島は帰って来ねぇんだよっ!!」
「ウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイッ!!」
リ級が放つ一斉射を連装砲を前に構えて弾き、一気に近づく。
何やら妖精が中で騒いでいるが今は気にしない。
続けて放たれた魚雷は避けずに真っ直ぐに突っ切る事で響に流れ弾が行くのを防ぐ。
「シズメシズメシズメシズメェェッ!!!」
更に近付き手が届く距離まで来た所でリ級は我武者羅に右腕の艤装を振り下ろした。
「生きてたら少し冷静になって話を聞けよっ!」
「とながさんもはなしきかないですけどね〜」
「ハナセッ!──ナッ!?」
俺は左腕でリ級の右腕を受け止め右腕に力を込める。
そして渾身の力でリ級の脇腹目掛けて振り抜こうとしたが、リ級の背後の海中から覚えのある殺気を感じた俺は反射的にリ級の右腕を引っ張っていた。
「ほう?良く反応したな」
直後、一本の刀がリ級の胸と俺の肩を貫いた。
「カ、ハッ!?」
「ぐっ……てめぇ……
「いかにも、だが標的はお前では無い」
そういって黒髪がクソなげぇ女は突き入れた刀を九十度捻った。
俺じゃない、つまりリ級かっ!
「っと、そうは行かねぇよっ!」
俺はすぐさま後ろに飛び退き長黒髪アマの右薙からリ級を離す。
「何故そいつを庇う。貴様らの敵だろう」
「まあな、だが依頼主との契約なんでな。敵だろうが殺す訳には行かねえんだよ」
それに響も負い目に感じてるしな。
此処でこいつを死なせれば響を後悔させちまう。
「それでもやるっつうんなら相手になるぜ?」
「……いや、止めておこう。どうせそいつはもう持たん。下手に留まって海軍所属の者に見られる様な愚行を犯すつもりは無い」
「お?まさかビビってんのかよ」
「と、門長っ!」
響が止めようとする理由は分かってる。
だがまともにこいつらと相対出来るのは今の内なんだ。
だからこそ一人でも多く奴らを沈めなければならねぇ。
響を、そして電や基地の松達を守る為にも……。
「安い挑発だ、生憎貴様の事はあの方に一任してある。私が出る幕ではない、さらばだ」
「逃がすかよっ!」
長黒髪アマに掴み掛かろうと右腕を伸ばすが……
「今のお前では私に触れる事すら叶わぬ」
「はっ……?」
気づいた時には肘から先が跡形も無く消え去っていた。
そして状況が飲み込めず惚けているうちに長黒髪アマは海底へと消えて行った。
「何が……起きた?」
「門長!門長っ!早くリ級さんを助けないと!」
奴が消えた後も暫く惚けていたが、響の呼び掛けによって漸く我に返った。
「お、おう……とにかくヴェールヌイ達の所まで戻るか」
「うんっ!急ごう!」
俺は響に促されるままに引き上げて行った。
あのアマ……以前やり合った改レ級とはあからさまに格が違った。
あんなのに攻めてこられた時、本当に響達を護れるのか?
ーーこれからの事を考えるのなら私はこの身体を離れない方がいいのかも知れんな……ーー
その手段は論外だ、響の気持ちを裏切るつもりか?
ーーしかしだな……ーー
他にも方法はあるはずだ。それに必ずしも戦わなければならないとも限らねぇだろ。
ーー…………うむ、そうだな。済まなかったーー
ーー(だが、保険は掛けさせてもらおう)ーー
「門長少佐、お疲れ──ってその右腕はどうしたんだいっ!?」
「ああ、これはな────」
ヴェールヌイ達と合流した俺達は先程の出来事を説明し、リ級を助けられないかを尋ねた。
「刀を持った長い黒髪の深海棲艦……鳳翔さんの報告にあった異常な速度で動き回る黒い影と言うのはそいつの事だったのか……」
「黒い影?なんかあったのか」
「ああ、相手をしていた深海棲艦がその正体不明の黒い影に次々と沈められていたんだ──っとそんな事よりリ級の事だったね。利根さん、応急修理要員を呼んでくれるかい?」
「それは構わぬが……本当に助けても大丈夫かのう?」
「大丈夫さ、女神を使うわけじゃ無いからね」
「うむぅ……」
どうやらツインテジジイこと利根とやらが渋りながらも艤装から応急修理要員を呼び出しリ級の修理を始めたようだ。
リ級の方はどうやら大丈夫そうだが今の話を聞くに他の奴らは全滅だろうな。
ったく、ままならねぇもんだな。
「どうやら終わった様じゃな」
「了解。それでは皆作戦完了だ、帰投しよう」
「「了解っ!!」」
横槍が入ったせいで完璧とは言えないが、取り敢えずは響が無事なら万事オーケーだな!
その後は何事もなく帰投を果たした俺は波止場に着いてから初めて金剛が後衛にいた事を知るが、普通にどうでも良かった。
金剛「ノォーッ!?どうしてワタシがこんなにもエアーなのデスカー!?」
上新粉「いや、メインヒロインは響ちゃんなのに響ちゃんが目立たないのは金剛さんのせいかなって?」
金剛「バッドアンサーデース!ビッキーが目立たないのはユーとフリーダムなミスターのせいネー!」
上新粉「え〜?それはユーちゃんが可愛そうだよ〜」
金剛「お前の事ダヨッ!このファッ〇ンボーイッ!!」
上新粉「ちょっ!?落ち着いて下さい金剛さん口悪くなってる!大丈夫ですって、今後出番が出てきますから(きっと)!」
金剛「……リアリィですカー?」
上新粉「コクコク」
金剛「嘘吐いたらノーなんだからねっ!」
上新粉♪~ <(゚ε゚)>
金剛「