「えー、それでは被弾箇所によって艤装の性能を一時的に低下させる電磁波を発生させる弾頭を使用しての演習となりますっ!」
「待ってくれ明石、あの野郎にその演習弾が効くのかよ?」
「あ?俺の強さに怖じ気づいたか?」
まあ俺もまさか魚雷二発受けてピンピンしてるとは思わなかったけどな......心に甚大な損害を受けたが。
「んなわけあるかっ!演習弾が効かないなら実弾を使うまでよっ!」
「まあまあ、それについては確認済みですのでご安心を。」
え?いつ確認したんだ。
「なのですっ!」
「ちょっ電!?」
「です?」
電?ああ、寝起きにご免なさいなのですって言いながら頭撃たれたのはそういうことだったのか......電にやらせるとは考えたじゃねぇか明石......覚えてろよ?
「いやぁ、ほら公平を期すために仕方無くですね......って声......届いてます?」
明石は後で
「ええ......っと......兎に角先に相手を行動不能にした方が勝利です!」
「うっし!摩耶さまの実力見くびんなよ変態野郎っ!」
「ぶっ潰してやるから覚悟しろよ猿女が。」
意気込んだのはいいが二十キロ先とか遠いな......近付くのめんどくせぇ......こんなことしてないで早く響とイチャイチャするにはどうすればいいか考えなければ。下手したら深海棲艦以上に嫌われてそうだからな......自分で言って凹んだわ。
吊り橋効果とかも一切無いしどうすんだよほんと!
吊り橋......あ、まさか俺が吊り橋なのか?じゃあこのまま電と響禁断の愛が............それはそれでアリだがそこに俺が入れないのは悲しすぎるっ!
「門長さん?」
「んあ?どうした。」
俺は妖精に呼ばれて意識をもとの世界へ戻した。
「既に撃たれてるの気づいてます?」
「あ......そういやわずかに動きにくい気がする。」
「直撃1、至近弾10受けても気付かないなんてある意味凄い集中力ですね。」
マジか......一発直撃してんのかよ。違う意味で大丈夫か俺。
「摩耶は何処にいるんだ?」
「まだ視認は出来ませんので電探を使うといいですよ。」
電探?そんなの持ってたか?響の連装砲しか無かった気がしたが......
「うぷぷ......電ちゃんが朝の砲撃前に頭に着けてましたよ?」
何で笑いを堪えてるんだ?
妖精の様子に疑問を抱きながら頭に着いている電探とやらに触れる......おい。
「......これはなんだ?」
「くくくっ......電探ですよ?
「......アイツだな?」
男の俺にカチューシャなんか着けさせやがって......
「本当に半☆生したいらしいな明石ぃっ!」
俺は勢いのまま電探をへし折った。
「取り敢えず突っ込んで叩き伏せればいいんだ、いくぞおらぁっ!」
「脳筋な思考回路ですねぇ......まあ良いですけど。」
次々に降り注ぐ砲弾が直撃しようと俺は構わず突き進んだ。
「ったく、漸く見えてきたぜ。」
「回避せず直進とか......脳筋ここに極まりですね。」
「うるせぇ、装備がねぇんだから仕方無いだろ。」
おしっ!一気に距離を詰めるか。
全速力を出しみるみるうちに距離が縮まっていく。
「このクソがぁっ!くたばれぇっ!!」
摩耶の八発の魚雷が全て俺を捉える。
「これは回避しないと洒落にならないですよ?」
「全然曲がれん、無理だっ!」
曲がろうとしてもゆっくりとしか曲がらず回避出来るような状態ではなかった。
直後計八回もの爆発音が響き渡る。
「これが摩耶さまの実力だぜっ!思いしったか!」
「おお~、低練度とは思えない精度ですねぇ。」
「ハラショー」
「凄いのです摩耶さん!」
「戦場で油断か?」
水飛沫から飛び出した俺は小破に満たないダメージを負いながら摩耶の首もとを掴み上げる。
「ぐっ......くそったれがぁっ!」
摩耶が何度至近距離で撃とうが構わずに連装砲を構える。
「残念だったなぁ?猿女ぁ......」
引き金を引こうとしたときに俺は大変なことに気付いてしまった。
こんな悪役みたいな勝ち方見せ付けたら響との溝がチャレンジャー海淵レベルに深まってしまうのではないか?
「............やめだ。」
「あぁ!?」
俺は摩耶を離し帰投を開始する。
「ちょっと待てよっ!情けでも掛けたつもりかっ!?」
「あ?喧嘩で女に勝とうがなんの自慢にもならねぇことを思い出したからやめんだよ。」
「はぁ!?」
「だが明石、てめぇは後で工廠な?」
「あ、あはは......新しい装備の開発でしょうか?」
「それだけで済むかはてめぇ次第だな。」
「......き、肝に命じて置きます。」
「ふっざけるなっ!!」
突如背中から軽い衝撃が走る。恐らく俺に向けて撃ったんだろう。
「あんだよ。」
「逃げるなんて赦さねえ......決着を着けさせろ!」
何だこいつ、そんなに俺を悪人にさせたいのか。
「決着なんてついたようなもんだろ、てめぇがどんなに撃とうが俺を沈める事は出来ねぇ事は分かっただろ。」
「だ、だけどアタシはまだ無傷だずがっ!!?」
一向に引こうとしない摩耶の額に主砲を一発撃ち込んだ。
「ぐぅっ......きたねぇぞてめぇ!」
「明石、今の俺らの損害はどうなってる。」
「ええと......門長さんが10%、摩耶さんが30%ですね。」
「はあ!演習弾は効果あるんじゃねえのかよ!?」
摩耶が明石に文句を言うが明石は冷静に返す。
「ええ、効果は有りますよ。ただ門長さんの耐久と装甲が異常なだけです。」
「は?」
「演習前に調べさせて頂いたのですが耐久だけで言えば戦艦水鬼に匹敵するレベルなんですよ。だから恐らく摩耶さんが全弾命中させても門長さんを沈める事は出来なかったでしょう。」
いやぁ、俺も人間じゃないどころか深海棲艦と比較されるとは思わなかったわ。
......もしや本当に深海棲艦だったりして。
「な、なんでそれを先に言わねぇんだ!」
「聞かれてませんし戦術的勝利は取れますので問題はないかと?」
流石は俺にあんなことをしでかすだけはあるな、悪びれもなく言いやがる。
「俺だって逃げ腰の奴を追いかけるなんてクソつまんねぇことしたくねぇしな。」
そんなことする位だったら逃げ回る響を追い掛けてる方がずっと楽しいわ。
「......クソが......」
摩耶は漸く単装砲を下ろし帰路へと着いた。
「さて......何か申し開きはあるか?」
「あの......流石の私も逆さ吊りのままでは開発出来ませんよ?」
「反省の色が見えないなぁ......やっぱ半☆生にすっか?」
「あれぇ......おかしいですね。なんか物騒に聴こえるんですが......」
俺は逆さの明石の腹部に連装砲を押し当てる。
「ごめんなさいごめんなさいっ!ただの出来心だったんですよぉ!」
「......はぁ、まあ今回は許してやるよ。」
「本当ですか!?」
「ああ、ただし条件がある。」
「ま、またですか......?」
「あ?半☆生の方が良いのか?」
引き金に指をかける。
「ちょちょっと!?いやですね~冗談ですって!」
冗談には聞こえなかったがまあいいとしよう。
「それで条件というのはだな......」
俺は計画を明石に伝えた。
「えぇ......四十六センチ三連装砲を四基ですか......アームも砲座もないのに一体何処に装備するんです?」
「そうだな、取り回しを良くしたいから両腕とこれみたく手持ちで作れ。」
「えぇっ!?世界最大級の艦砲を手持ちとか正気ですか!」
「世界最大つっても結局艦娘が装備出来るサイズに縮小してんだろ?」
「だからって手に持てるサイズでも反動でもありませんよ......」
「んなのはやってみなければ分かんねぇだろうが。」
「でっ、ですが!」
ああもうめんどくせぇな。
俺は連装砲で明石の腹を小突きながら続ける。
「使えるかなんてどうでもいい、聞いてるのはお前が作るのか此処で半☆生するのどっちが良いかってことなんだよ。」
「はあ......作りますけどそもそも艦娘にそんな使い方が出来る方は居ませんから門長さんが使えなくてもも文句言わないでくださいよ?」
「わーったよ。あ、それとまともな電探もな。」
「え、渡したじゃないですか?」
すっとぼける明石へ模擬弾を一発撃ち込む。
「うぐっ!......ちょっ......ほんとに撃つこと無いじゃないですか......冗談なのに......」
「一発で済ませたんだ、有り難く思うんだな。」
「あんまりこんなことしてると響達に嫌われますよ?」
「よ、余計なお世話だっ!じゃ、じゃあ任せたからなっ!」
確かに工廠に長居し過ぎたな、それに今の状況を響達に見られたらかなり不味い。
兎に角ここは一先ず戦略的撤退しかない!
「え、ちょっ!?流石にこのまま放置は勘弁してくださいよぉ~!」
明石が後ろでなにか言っているが俺は急ぎ響の元へ戻らねばならないため気にしないことにした。
「待ってろひびきぃーっ!お兄ちゃんがいま戻るからなぁー!」
「はぁ......もう帰りたい......あ、工廠妖精さん。私を吊るしてるウィンチ下げて貰えます?」
「ま、それはそれとして。手持ち型の大和砲なんて面白いわねっ!鎮守府に戻ったら武蔵さんにも使って貰おうかしら?」
地面へと降ろされた明石は立ち上がると意気揚々と開発を始めるのであった。
あれ......おかしいな?
門長の耐久が気づいたら予定の倍以上になってる......
まあいっか(すっとぼけ
久々に動いたら筋肉痛が酷くて携帯持つのが辛い。