あ、今回は後書きはありません(キリッ
べ、別に面倒な訳じゃないんだからねッ////
鎮守府近海へと展開した俺等を待ち受けていたのは止むことを知らぬ大小様々な砲弾の嵐だった。
『これ以上接近するのは困難ですね、この辺りで一度応戦致しましょう!』
榛名の提案にヴェールヌイは頷き、すぐさま全体に指示を出し始める。
そんな中、俺は響を背に守りながら歩を進めていた。
『門長少佐っ!?今行くのは危険過ぎるっ!』
「大丈夫だ、響には至近弾一発たりとも当てさせやしねぇよっ!」
『そんな……幾ら何でも無茶だ。一旦敵の戦力を削ってからでも……』
なおも静止を促すヴェールヌイに大丈夫とだけ伝えると会話を一方的に終わらせ正面にいるであろうリ級改flagshipを見据える。
「ああ、何があろうが俺は響を護るだけだ」
俺と響目掛けて飛んでくる砲弾をバットに見立てた連装砲で次々と弾いていく。
「なるほど、確かに悪くねぇな」
補給中に大和から演習時の話を強制的に聞かされていた時は鬱陶しい奴だと思ってたが、そのお陰でいま響を護れている事だけは感謝してやろう。
「門長、魚雷が接近してるよっ!」
響の声で俺はふと下を見ると前方から百を超える魚雷が迫ってきていた。
と言ってもヴェールヌイ達の様に全てが一点に向かっている訳ではないので全てが当たる事はない。
俺一人なら構わず突っ込むが、それだと響を巻き込みかねないか。
「なら……響っ!こっち来い!」
「えっ!?あ、うん!」
俺は響を呼び寄せるとその手を取ってそのまま抱き上げた。
「ひゃっ!?ちょ、なんなんだいっ!??」
慌てふためく響を抱き上げたまま両脚に力を込め、海面を大きく離れていった。
「ぴゃぁぁぁぁーっ!!!?」
魚雷の群れを眼下に収めながら悠々と飛び越えていく。
数秒して無事着水した俺は軽く放心状態の響を背中に背負い突き進んで行く。
魚雷は回避できたものの前に突出しているからか、はたまた俺の存在に気が付いたからかは不明だが砲撃の勢いは段々と増していった。
「ちぃっ……流石の猛攻撃だなちくしょうっ!」
どんなに動かせても俺の腕は二本しかねぇんだよっ!
今はまだ響に怪我はねぇがこれ以上進むのは流石に骨が折れるぜ。
火力を減らそうにも響を護りながら反撃出来るほど余裕も無ぇと来たもんだからどうにもならねぇ。
足止めをくらい苛立ちを覚えているとヴェールヌイから再び通信が入った。
『門長少佐、無事かい?』
「ああ、俺も響も大した損傷はねぇ」
『それは何よりだ。どうやら敵の本隊はそっちに狙いをさだめたらしい。現在敵戦力の無力化に務めているから済まないがもう暫く堪えて欲しい』
そうか、こっちに集中してるって事はヴェールヌイ達は一方的に攻めれるのか。
だったら
「響、もう動けるか?」
「えっ、と……うん、大丈夫だよ」
俺は響をゆっくり降ろすと、ヴェールヌイへ伝える。
「わかった、そしたらこっちは任せろ」
『済まない、可能な限り急ぐから進軍はそっちで判断してくれ』
「おうっ」
ヴェールヌイとの通信を終え、響を後ろに下げた俺は引き続き無数の砲弾を弾いていく。
当然全ては弾けないがそこは自身の装甲でゴリ押していった。
そうして防戦を続けること十分弱。
深海棲艦の猛攻は瞬く間にその勢いを失っていった。
「やるじゃねぇか」
「すごい……あれだけの数の深海棲艦を十分も掛からずに制圧出来るなんて……」
『スパスィーバ、我々も伊達や酔狂で鎮守府を背負っている訳じゃないからね』
ーーま、演習で体験した練度の高さを考えればこの結果も頷けるものだーー
確かにな……無効試合になったとはいえあのまま続けてたらどうなってたかは分かんなかったな。
そんな事はともかく、ヴェールヌイが道を開いてくれたんだ。
さっさと
「さんきゅな。んじゃ、俺達は行ってくるぜ」
『了解。ただリ級改flagshipには気を付けた方がいい』
「分かってる、この艦隊をまとめてたボスだからな」
『いや、鳳翔さんの話では普通の深海棲艦とは明らかに異なる挙動で回避行動を取っていたらしい。そのせいで奴だけは未だ損傷はないんだ』
異なる挙動で回避?奴も跳ねたりするって事か…………面白ぇっ!
ーー話し合いじゃなかったのかーー
あ……わぁってる、話し合いが上手くいかなかった時の事だよ。
ーーふぅん?ならいいがーー
訝しげに答える長門から意識を逸らし、ヴェールヌイへ返答をする。
「分かった、注意しておく」
『うん、それじゃあ気を付けて』
通信終了後、未だ僅かに飛んでくる砲弾を弾きながらリ級の元へと進んでいった。
「アナタガトナガネ?」
そうして十数分程進軍し、漸くリ級改flagshipが視界へと入って来た所で奴の方から呼び掛けてきたのだった。
「ああそうだ。そういうテメェは離島の部下か?」
「ブカ……エエ、ソウネ。ワタシハアノコノサイショノブカ……」
最初の部下か……やはり離島とは親しかったんだろうか。
ーーとなると目の前のリ級はお前が大破させた奴の可能性が高いなーー
なるほど……そうだな。幸いすぐに事を起こすつもりは無さそうだし少し話してみるか。
俺は近づきながらリ級に質問を投げかける。
「なあ、俺が聞いた話だとお前は艦娘の水雷戦隊に撃沈された筈なんだがどうやって生き延びたんだ?」
「ソレイジョウチカヅクナッ!……アア、アノトキノクチクカンドモネ。アンナノハギョライノキバクニアワセテカイチュウニテッタイシタダケヨ」
どうやらその時のリ級で間違いないらしい。
それにしても海中に潜れるのは便利そうだな。
ーー深海棲艦と潜水艦だけの特権だなーー
羨んでも仕方ねぇ。それより、生きてたなら離島に伝えれば万事解決だったんじゃねぇか?
そう考えた直後、リ級の方から憎しみと共に答えを伝えて来た。
「タダ、キズガフカクマトモニコウコウデキナクナッタワタシハ、キズガイエルマデカイチュウヲタダヨッテイタワ」
「そうか、それで連絡も取れなかったのか」
「ソウヨ。ソシテウゴケルヨウニナッタワタシヲマッテイタノハリトウデハナク、イキショウチンシタブカタチダケダッタワ」
「そうか、そいつらから話を聞いたのか?」
「……キイタワ、アナタガリトウヲサラッテカンキンシワタシタチニヨウキュウヲノマセヨウトシテルッテコトヲネッ!」
「まてっ!他には聞いてないのか!?」
リ級は全砲門を俺に向けて要求する。
「アトハリトウニキクワ、サッサトリトウヲカイホウシナサイ」
「なっ、まさか……」
マジか、まだ離島が沈んだ事は知らねぇってのかよ……。
ーー敵対してる相手からこの事実を伝えても果たして信じるかどうかーー
火に油を注ぐだけだろうな……残念だが話し合いで解決は無理か。
俺が話し合いだけでの解決を諦めて戦闘態勢を取ろうとしたその時、後ろから響が飛び出し俺とリ級の前に割って入った。
「響っ!?」
「……クチクカンガナンノヨウナノ。ワタシトヤルツモリ?」
「危ないからさが────」
「門長は黙っててっ!」
あまりの気迫に俺は思わず押し黙ってしまった。
リ級が睨みつける中、響は突如頭を下げて言った。
「リ級さん、ごめんなさいっ!」
「……ナニ?ユルシヲコウノナラサッサトリトウヲカイホウシナサイ」
「あのっ、これから話すことは全部事実だから……信じて欲しい」
「響っ!それは──っ!」
「黙ってて!!」
響が言わんとしてる事に気付いた俺は止めようとするも再度一蹴されてしまった。
「門長の危惧してる事は分かってる……でも、ちゃんと伝えなきゃ」