せめて週一投稿に戻したいのに戻せない(;Д;)(;Д;)
大人響は俺達を応接室のソファーに座る様に促した後、給湯室と思われる小部屋の奥へと入って行った。
暫く待っているとお盆の上に湯呑みを人数分乗せて戻って来た大人響は湯呑みを全員に配ると隣にいた巫女服の様な恰好の女と共に対面のソファーに腰を下ろし、落ち着いた口調で話し始めた。
「さて、先ずは自己紹介からしよう。私はここタウイタウイ第六鎮守府の秘書艦を務めているヴェールヌイだ。よろしく」
「おうっ、宜しくなヴェールヌイ」
ヴェールヌイか……そういや前に武蔵がそう呼んでたな。
「そして私の左に居るのが第一艦隊旗艦、金剛型三番艦の榛名だ。」
「榛名です、よろしくお願い致します」
「おう」
ーーおい、露骨に態度を変えるんじゃないーー
別に興味がねぇから適当に流しただけだ。
ーーおまえという奴は……ーー
「あ、あの……榛名は何か気に障るような事をしてしまいましたのでしょうか」
「オーッ!ソーリー榛名、ミスターはこれが通常運航なので気にしないで貰えると助かるネー」
「それなら良いのですが……もし榛名に至らぬ点があれば遠慮なく仰って頂けますでしょうか」
「ドントウォーリー、こっちこそアポなしの訪問で申し訳ないデース」
「結果的に被害は出てないんだ、問題は無いさ」
くぅっ、こっちから航空機へ攻撃してると言うのになんていい子なんだ!流石は響と撫でてやりたいところだぁっ──とこっちの自己紹介はまだだったな。
「んじゃあこっちも自己紹介させてもらおう。俺の名は門長和大、元少佐だ」
「なるほど、やっぱり君が門長少佐だったんだね。噂は海軍中に伝わっているよ」
おお、いつの間にか有名人だな俺。
ーーまあ、十中八九指名手配だろうがなーー
うっせ、お前も共犯だろうがっ。
ーーむぅ、それを言われると痛いなーー
「ま、まあ噂は所詮噂だ。俺はあっちの基地で静かに暮らしてるだけだぜ?」
「あれで静かならソロモン海戦は物音一つ聞こえない戦場になってしまうよ」
「ま、まあそう言えなくもない……か?それはさておき他の三人は恐らく知ってると思うが手前から響と電とルー豆柴だ」
「ヘーイミスター、またその呼び名ですカー?」
響の冷静な突っ込みに耐えルー語使いをスルーした俺は紹介を続ける事にした。
「……舞鶴第八鎮守府所属、響……だよ」
「舞鶴第八?そこは確か──」
「榛名っ!」
「はっ、はい!?」
何か疑問を口にしようとした巫女服の女にヴェールヌイは突き刺すような鋭い声で窘めた。
「その発言は配慮に欠けるよ」
「そ、そうでした!響さん、誠に申し訳ございません。榛名、この身を持って償わせて頂きますっ!!」
「だっ、大丈夫だから!私は大丈夫だから落ち着いて榛名さんっ!?」
女は窓から身を乗り出そうとしていたが響とヴェールヌイに引き戻され漸く落ち着いた様だった。
つうか艦娘なら三階から落ちても平気じゃねぇか?
「ごめんなさい、取り乱してしまいました……」
「いや、大丈夫。無事で良かったよ」
「榛名さん、貴女は第一艦隊なんだから突破的な行動は控えてくれないかい?」
「面目御座いません、反省致します……」
「エーと……自己紹介の続きをしてもオーケーですカー?」
「失礼、それじゃあ改めてお願い出来るかい?」
「オーケー、ワタシは横──」
「私は中部海域の前線基地で建造された電です。よろしくなのですっ!」
「よろしく……電」
「なんかワタシの紹介が飛ばされた気がするネー……」
「あ?今さっきしただろ。んじゃあ早速幾つか伝えなきゃならん事と頼みたい事があるんだが聞いてもらえるか?」
「聞くのは構わないが希望に応えられるかは分からない、それでも良いかい?」
「ああ、構わない。といっても一つは俺じゃなく海軍の問題だからそれは聞き入れてくれないと困るんだけどな」
俺は少し温くなったお茶を飲み干してから、一つ目の依頼を持ち掛ける。
先ずは頼まれていた夕月達の件について俺は金剛の補足を挟みながら事細かに説明した。
「そんな事が……分かった、伝えてくれて有難う。その件については本土に報告して防護服も送って貰うことにするよ」
「よし、じゃあそれで頼む。んでもう一つだが……俺からすればこっちが本題だ」
「……なんだい?」
「単刀直入に聞こう。ズバリ近代化改修された長門を引き剥がして元の身体に戻して欲しいんだが出来るか?」
と聞いてみたものの、実際工作艦や工廠の妖精に聞いた方が早いのは事実だろう。
俺の問いにやはり額に手を当て悩んでいたヴェールヌイだったがやがて辿り着いたのかこちらを向き直り一つの答えを見出した。
「詳しくは明石さんや夕張に聞いて見なければ分からない。けど……」
「けど?」
「いや、もし出来たとしてもそれに掛かる時間や資材を考えると私が決める訳には行かないんだ。その件については今夜司令官に確認を取ってみるよ」
「ああ、頼んだぜ」
「ホワッツ?ここのテートクは異世界から指示を送っているのでは無いのですか?」
そう言えば……俺は完全に忘れていたが異世界とは連絡が取れないんだったか。
金剛から疑問を投げ掛けられたヴェールヌイは意外そうに愛らしい瞳を丸くしていたが直ぐに我に返り答えを返した。
「ああ、そうだね。司令官からは指示が届くだけでこちらから連絡を取ることは出来ない。その事はこの鎮守府でもごく少数しか知らない事実なんだけど海軍では知れ渡っている事なのかな」
「そうですネ。大本営でも機密事項に指定されてますガ、残念ながら人の口に戸は立てられないのはいつの世も同じなのデース」
「それもそうか、なら隠しても仕方ない。実際はその事実を知っている一部の艦娘で話し合って決めるつもりだよ」
「オー、そうでしたか」
ふ〜ん……良くわからんがそんな隠さなきゃならん事か?
ーーそうだな、何処に居るかも分からぬ者からの命令では不安も不満も出るのだろうーー
そりゃそうか、考えるまでも無かったな。
「さて、話はまとまり次第伝えさせて貰うよ。それまでは寮の空き部屋で済まないが待機していてくれるかい」
「おう、いい返事を期待してるぜ?」
「それはこちらにとって釣り合うだけのメリットを見い出せればと言ったところだね。榛名さん、彼等を航巡寮の空き部屋に」
「畏まりましたっ!皆様、榛名に付いてきてください」
そうして俺達は榛名に案内されるまま航巡寮とやらへ向かったのだった。
メリットか……連装砲一基とかじゃダメかねぇ。
────二一〇〇 執務室────
「どうだい明石さん?」
「そうですねぇ……その長門さんの自我が残っているのであれば理論上可能だとは思いますが……」
「何か問題があるのかい」
「はい、これは今進めてるプロジェクトでの課題でもあるのですが……たとえ取り出せても留めておく術が無いんですよ」
「そうか……司令官の時はそれぞれ肉体という器があったから出来たのか」
「あれ?でも長門さんなら艤装に移せるんじゃ無いですか?」
「夕張ちゃん、残念だけれどそれも無理だわ。魂が艤装としてこの世界に顕現しているからそこに別の魂を載せることは出来ないの。提督が重巡利根の艤装を着けても水上に立てなかったのは恐らくこれが理由だったと思うわ」
「そうですか……となると今は帰って貰うしか無いわね」
「そうね、本当は彼の身体を隅々まで調べ尽くしたいのだけれど……」
「身体中弄り回した挙げ句出来ないなんて言ったら暴れ出しかねないからねぇ」
「ああ、何処まで事実かは分からないが舞鶴第八鎮守府を壊滅させたという噂だからね。敵対する訳には行かないし、今回は──」
『なあ、話は少し戻るけどちょっと気になったことがあるんだ』
「司令官?どうしたんだい」
『いや、さっき明石が取り出した魂を留めておけないって言ってたじゃない?』
「ええ、そう言いましたよ。それかどうかしました?」
『だったら建造ってどうやってるのかなぁって思った訳なんだけど』
「建造ですか?それは簡単ですよ。使用した資材に魂を…………それだっ!!」
『????』
「あ、明石さん?何か分かったのかい?」
「はいっ!提督のお陰で大きな課題の一つが解決しました!!」
『そ、それは良かった』
「早速ですが提督っ!今日訪問された門長さんの依頼を受けようと思いますので資材を利用しても宜しいでしょうかっ?」
『お、おうわかった。枯渇はさせないでね?』
「善処しますっ!さあヴェールヌイ、夕張ちゃん行くわよっ!」
「はいっ!明石さんっ!」
「わかった、そしたら呼んでくるから工廠で待っていて欲しい」
「分かったわヴェル!明石さーん!工廠に行きますよぉっ!」
「……はぁ、急に呼び出してしまって済まなかったね司令官」
『いんや、大丈夫。寧ろ何時でも呼んで欲しいくらいだ』
「……スパスィーバ。それじゃあ私も行くよ、お疲れ司令官」
『ああ、お疲れ様』
あ"あ"〜ヴェルとにゃんにゃんしたいんじゃ〜(*゚∀゚)