無事帰ってきてまいりましたので投稿を再開致したいと思います。
期間がいてしまったためリハビリも兼ねてますので雰囲気が変わっていたり短めで話の進みもアレですがそれでも暖かく見守っていただけると嬉しいです。
第四十六番
明石達から見送られながら基地を出てから四日、何度か深海棲艦の襲撃を受けたものの特に苦戦する事なく俺達はタウイタウイへ向けて航行していた。
「それにしても、50ノットで航行する20インチ連装砲を積んだバトルシップなんてクレイジーにも程があるネー」
「んなもん俺じゃなくてボート作った奴に言えよ」
目的地へは俺の燃費の悪さでは例の非常用を使っても往復が出来ない距離にある為、基地に来る時に使ったボートを使っているのだが幸いな事に主砲を持ったまま乗る事が出来たからこいつのいうクレイジーなバトルシップになっているだけだ。
因みに響も一緒に乗らないかと誘ったが一蹴されてしまったのはここだけの話。
「にしても遠すぎねぇかタウイタウイとやらは。流石に同じ景色ばかりで飽きてきたぜ」
「舞鶴は更に先だけどね」
「ゔっ…………それは、そうだよな……すまん」
響から冷めた視線でその話を出されては俺に反論の余地などなくただ黙る事しか出来なかった。
「ま、まあプロブレムがナッシングなのはいい事ネ?」
金剛がフォローしようとしていると突如奴が不知火から渡された通信機から耳に響くような高い音がなり始める。
「金剛さん、通信機がなってるよ」
「オーケー、今とりマース」
『金剛さん、報告の時間です』
「ちょっ!誰だそいつは!?」
金剛が通信を起動させると野太いオッサンの様な声が聞こえて来たが、金剛は元々知らされていたのか気にする様子もなく返答していた。
「了解ネー、そっちはノープロブレムですカー?」
『残念ながらそちらからは暗号化されて何を言っているかは解りませんので切ります。頼みましたよ』
そう言って暫定オッサンは一方的に通信を切った。
怪訝そうな顔で金剛を見る俺と響に金剛は声の主が変声器を使った不知火である事を教えた。
「という事で少し報告してきマース」
そう言って金剛は少し離れて行った。
そして響も電と話しているので必然的に一人となった俺は仕方なくこの後の事を考えてみた。
先ずはあっちの司令官に南方前線基地の報告と防護服の支給をしてもらう訳だが……
相手は海軍だろ?今更あれだが俺が居て本当に手を貸してくれると思うか?
ーー普通は無いだろうな、そもそもDRCSで運営している鎮守府ならこの世界から話を聞いてもらう術は無いはずだーー
ああ、司令官が居ないんだったか?
ーー正確にはこの世界には居ないだけだがなーー
艦娘に戦わせといて自分だけ安全な所にいるって事か……気に入らねぇな。
ーーだが話では金と権力が関わらない分提督の居る鎮守府より待遇がいい所もあると聞いているぞ?ーー
ふ〜ん、タダ働きなのかそいつらは。
ーーその辺は解らないが恐らくこちらの通貨は向こうでは使えないのではないか?ーー
なる程、つまり何の為に提督をやってるか解らない胡散臭い奴らって訳か。
そんな奴らに状況を伝えてもどうにかなるとは思えねぇな。
ーーだが目的の艦娘がそこに居るのだから仕方あるまい──っと、どうやら手厚い歓迎の様だなーー
ふと意識を電探に移すと四十機程の艦載機の大隊が俺達目掛けて飛んできている所であった。
「ちっ面倒だ、全部落とすか」
「えっ!?ちょっストォップ!!」
俺は三式弾に換装しすぐ様大隊へ向けて二発放ってやった。
「これでよしっ」
「ノォォーーッ!!全く良く有りまセーン!バッド過ぎるネー!」
さっきから喧しい金剛を尻目に煙が晴れるのを待っていたが驚く事に先に落としたはずの大隊の全てが煙の中から飛び出してきたのだ。
「あ?どうなってんだ」
「さんしきだんでいっきもおとせないなんてひどいうでですねぇ」
「はぁ?こんなもん適当に撃っても当たんじゃねえのかよっ」
だが妖精は何も分かっていないとでも言う様に肩を竦ませて答えた。
「そんなんでおちるのはしんまいようせいくらいです」
んだよ、そういう事ならさっさと言えっつうんだ。
俺は気を取り直して連装砲を構える。
「んじゃあ後は任せた」
「もうせんせんをりだつしてるのでむりです」
妖精が指差す先を見ると大隊は三方向に散ってる所であった。
「オーマイガ……アレが鎮守府からだったらどうするんデスカ」
「いや、戦闘機が来たら落とすのは普通だろ?」
「だからって……こんなの宣戦布告しているようなものネー……」
あ、それもそうか。
ーー済まない、少しばかり早とちりしてしまったようだーー
まあやっちまったものは仕方ねぇし取り敢えず先に進むか。
気を取り直して進んだのはいいが予想通り厳戒態勢にて出迎えられる事となった。
「連合艦隊か……ま、そうなるわな。金剛、響達を連れて下がってろ」
「ノォーッ!?ミスター門長!この状況どうするつもりですカーッ!?」
俺は通信機越しに喚き散らす金剛を気に留めずに歩を進めていく。
策?んなもんあるわけねぇだろ、旗艦に直接話に行くだけだ。
もちろん反撃はするけどなっ!
意気揚々と両腕の連装砲を構えながら近づいていくが一向に相手から攻撃が来ることは無く、やがて旗艦と思われる一人の少女の元まで辿り着いた俺は驚愕を浮かべる。
「此処まで撃って来ないなんてね、戦闘の意思は無いと取るか余裕の表れと取るかは悩み処だけど──」
「な……なん……だと?」
「まあどちらにしろ私達では束になっても勝てないだろうしこちらとしては友好的であることを──ってなんだい?私の顔に何かついているかな」
ひび……き?ま、まて……抑えるんだ俺……
ーーそ、そうだ。今は響が見ている、此処で変なことをすれば貴様だけの問題ではすまぬぞっーー
んなもん知らんが折角上がってきた株をみすみす暴落させるつもりはないっ…………だがっ、目の前の少女も改装しているとはいえ間違いなく響じゃないかっ!
ーーい、いや。確かにそうだが落ち着け門長っ!今ここで間違いを犯せば協力を得られないだけでなく両方の響から軽蔑される人生となるぞ!それでもいいのかっ!?ーー
ぐっ……そ、それは……いやだ!
ーーならば落ち着けっ!今は耐えるのだーー
…………ああそうだな、助かったぜ長門。
ーーなに、私とて一人では冷静になれなかったさーー
ふっ、やはり同志という訳か。
ーーう、うるさいっ。そんなことより早く答えんと疑いの目で見られているぞーー
おまっ、そういうのは先に言え先にっ!
「い、いやぁてっきり迎撃が来るもんだと思ってたから拍子抜けしちまってな」
「なるほど……まあ無用な戦闘は無いに越した事は無いからね、ちょうど良かったよ」
「あ、ああそうだな。俺等も頼み事が有って来ただけで闘いに来たわけじゃねえんだ」
「頼み?まあ立ち話も何だし中でゆっくり話そうじゃないか」
そう言うと目の前の大人びた響はおもむろに無線機を持ち出し他の仲間へ警戒解除を命じた。
「よし、そしたらそちらの金剛さん達も呼んできて貰えるかい?」
「おう、わかった」
金剛と連絡を取り無事に合流した俺達は大人響の案内でタウイタウイ泊地第六鎮守府へ足を踏み入れたのだった。
次話近日公開予定!
天これも近日公開予定!
5/10 セリフを一部修正しました。