響乱交狂曲   作:上新粉

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第四番

 暴力女にポーカーで完全敗北を喫した俺は奴を打ち負かす方法を編み出すために島の海岸沿いを散歩していた。

 

「俺の得意分野なら余裕だったのにな。」

 

自分で呟いた直後にふと考える。

俺の得意分野ってなんだ......?

ことゲームに限っていえば今まで誰にも勝ったこと無いな......力比べ位か。

 

「って女相手に力比べで勝ってもなんの自慢にもなりゃしねぇっ!!」

 

やはり奴のホームグラウンドで勝ってこそだろう。

となると砲戦か、しかしボートが大破したら俺の移動手段が無くなるし奴を沈めたら響達との溝が更に深まってしまいそうだ。

 

「何か響の俺に対する好感度が上がる方法であの女に一泡吹かせる事は出来ないか......ん?」

 

何か打ち上げられてる奴が居るな。

近付いて見ると桃色の髪をしたクレーンのようなものを着けた女が流れ着いていた。

 

「少女じゃねえのか......」

 

気にせず通り過ぎようとした所で頭に何か引っ掛かるものを感じた。

確か......工廠にいて......クレーン......もしや!

こいつなら何とかしてくれるかもしれないっ!

 

「おい、起きろ。お前工作艦だろ?俺を海上で動けるようにしてくれよ。」

 

何度揺すっても起きねぇなこいつ、死んでんのか?

ん......取り敢えず呼吸はあるようだしドックに放り投げとくか。

 

俺はピンク女を担ぎ上げるとドックを探し始めた。

そういやドックって何処にあるんだ?

取り敢えず工廠で妖精に聞けばいいか。

工廠へ向かうと妖精の他に何故か暴力女も居やがった。

 

「なんでお前ぇが此処にいんだよ。」

 

「あぁ?そんなのアタシの勝手だろ......って......またやりやがったのかてめぇっ!?」

 

「またってなんだよ、なにもしてねーだろうが!」

 

「どうみても拉致ってきてるじゃねぇか!」

 

摩耶が指差す方を向くとそこには俺が担ぐピンク女の姿がある。

 

「あ、ちっげぇよバーカ。海岸でくたばってたから拾ってきたんだよ、そうそうドックは何処にあるんだ?」

 

「どっくならここをでてさんぼんめのじゅうじろをみぎに......」

 

「アタシが連れてってやるからかせ!」

 

なんだいきなり?別に誰が連れてったってかわんねぇだろ。

 

「断る。」

 

「いいから渡せっつってんだよこの変態野郎がっ!」

 

「なんだてめぇ、喧嘩売ってんのか?」

 

「とながさん、まやさんにわたしてほしいのです。」

 

なに!?妖精まで奴の味方をするのかっ!

 

「俺がこの女に何かするとでも思ってんのか!」

 

「ちがうよぉ、どっくはおふろだからおんなのこどうしのほうがいいんだよぉ。」

 

なんだ、そういうことかよ。

まあ風呂だろうがそのまま放り込んで置けば良いだろうとか思うがまあ別に他意がないなら俺も楽ができるしいいか。

 

「ほらよ、じゃあ任せたわ。」

 

「あ、おいっ!怪我人を投げる奴があるか!」

 

「そいつが治ったら覚悟しろよ摩耶ぁ。」

 

俺は奴にそれだけいい放つと工廠を出ていった。

 

「なんだあいつ......きもちわりぃな。」

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 「ヴェールヌイっ!電っ!!」

 

あ、あれ?ここは......入渠施設......?

確かヴェールヌイ達の泊地修理中に深海棲艦に襲われて......

 

「お、目覚めたようだな?」

 

「摩耶......さん?貴女が助けてくれたのですか?」

 

「いいや、門長っつう変態野郎があんたを拾ってきたんだ。」

 

「へ、変態っ!?わっ、私に何か!」

 

意識がないことを良いことに汚されちゃったの!?

私が自分の身体を確認していると摩耶さんは苦笑いをしながら続けた。

 

「あ~、それは大丈夫だろ。変態つっても小さな子供にしか興味がないみたいだからな。」

 

「は、はあ......」

 

それはそれでなんか複雑なんだけど......

 

「ま、服は籠に入ってるから治ったら顔合わせ位はしてやりな。」

 

「は、はいっ!」

 

そういうと摩耶さんはドックを出ていった。

ヴェールヌイ達は此処にいるのかな......無事だと良いのだけれど。

修理が完了し篭の中の服に着替えると門長さんを探しに歩き始めた。

 

「提督なら執務室に居ますかね?」

 

私は勝手知ったる我が家の様に一直線に執務室を目指す。

まあ、鎮守府の構造は基本的に同じだし建築に携わっていた明石達(わたしたち)なら我が家みたいな物よね。

 

「到着っと。」

 

私は大きく深呼吸するとゆっくりと扉をノックする。

 

「どうぞなのです。」

 

(この声は......電!?)

 

すぐにでも開けたくなる気持ちを抑えながら返事を返しゆっくりと扉を開く。

 

「失礼しますっ!」

 

扉の先には電と響しか居なかった。

 

「明石さん、初めましてなのです。」

 

「............初めまして。」

 

「へ?ああはいっ!初めまして、工作艦明石ですっ!」

 

まあ......そう、だよね。皆同じところに流れ着くなんて都合の良いことは起こらないよね。

 

「あ、あの......摩耶さんから話は伺っているのです。確かに私達は明石さんの所にいる電達ではないのです。ですがそっちの電達もきっと大丈夫なのですっ!」

 

精一杯私を励まそうとしてくれる彼女がどうしても重なってしまい涙を見せないように電をぎゅっと抱き締めた。

 

「......そうだよね......皆大丈夫だよね。」

 

「はいなのです。」

 

暫く抱き締めているとにわかに廊下が騒がしくなり始めた。

そして執務室の扉が勢い良く開け放たれる。

 

「ここかぁっ!?」

 

「へぇっ!?」

 

思わず振り向くと白い軍服に身を包んだガタイのいい男性と目があってしまった。

 

「おい、うちの子に何抱きついてんだぁ?」

 

私の右肩を掴む手に力が入ってて痛いんですが......

そんなことはお構い無しに私に向かって悪どい笑顔を振り撒くこの人は何なんですかぁ~!?

 

「ええっと......門長さん......ですか?」

 

「ああそうだ、俺は優しいから期待に応えてくれたら今回のことは目を瞑ってやろう。」

 

「き、期待に?」

 

「ああ、俺を艦娘みたく海上を走れるようにしろ。」

 

「「......はい?」」

 

その場にいた全員がハモりましたよ。

 

「なんだよ、出来るだろ?」

 

しかもこの人素で言ってますよっ!?

一体どうしたらいいんですかこの状況!?

私が返答に困っていると摩耶さんが真っ向から彼の事を馬鹿にし始めました。

 

「兵装が使えるからって海上を走れる訳ねぇじゃんか!?」

 

「てめぇは黙ってろっ!俺はこのピンク女に聞いてんだ!」

 

私でも流石に......ってあれ?

 

「もうちょっと頭が良くなってから出直してきなっ!」

 

「きゃあきゃあうるせぇんだよ猿女がっ!艤装みたいの着ければ行けるかも知れねぇだろ!」

 

兵装が......使える?

 

「あぁ?なんだやんのか、海の藻屑にすんぞっ!」

 

「やってやろうじゃねぇか、表でな猿女!」

 

「ちょちょちょっとまってくださいっ!!」

 

「「あ"あ"!?」」

 

「ひぃっ!?あ、あの......艦娘の兵装が使えるって本当ですか?」

 

「ああ、兵装位普通使えるだろ?」

 

「いや、普通じゃありませんよっ!艦娘しか扱えない艤装をなんで使えるんですか!?」

 

「あ、そう。じゃあ俺も艦娘なんじゃね?」

 

「てめぇみたいなのが艦娘な訳ねぇだろっ!深海棲艦だ深海棲艦っ!」

 

「......そうですねぇ、その可能性もありますが少なくとも人間が扱える代物ではないんですよ。」

 

でも......艦娘にも深海棲艦にも男性型なんて聞いたことないのよねぇ。

それともいつの間にか人が使える兵装が開発され......ても仕方無い気がするのだけれど......あ!

 

「そうですっ!試しに門長さんに海面に立って貰えば良いじゃないですか!」

 

「よーし、いっちょやるか!響、電一緒に来るか?」

 

「......いやだ。」

 

「行くのですっ!」

 

「電!?」

 

響ちゃん凄い嫌がり様、あの人にそんなに酷い目に遭わされたのかな............それならちょっと赦せないな。

 

「......なのです。」

 

「う......分かった。」

 

あら?電がいつの間にか響を説得してる。

一体どうやって説得したのかしら......

 

「二人とも見に行くのです。」

 

「お、おおっ!そうかそうか!じゃあさっそく行こうか!!」

 

意気揚々と部屋を出ていく門長さんに付いていく様に

私達も部屋を後にしました。

 

「いっくぜぇっ!」

 

あの人は確信もないのになんで躊躇無く飛び込めるのでしょうか......

 

「っしゃあ浮いたぞっ!!どーだ猿女ぁ!」

 

「なあ明石......あいつは人間じゃ無いんだな?」

 

「えっ!?ええと......恐らくは。」

 

ま、摩耶さん!?目が怖いですよ?いきなり艤装を展開しだしてどうするつもりですかぁっ!!?

 

「くたばりやがれぇっ!!」

 

「ウラァッ!!」

 

ええっ!!響ちゃんまで雷撃始めちゃったの!?

摩耶さんの砲弾が門長さんの頭部に命中し、続いて響の魚雷が二本直撃した。

 

「お、おお......マジで沈んだんじゃねぇか?」

 

響から雷撃の援護が来るとは考えていなかった摩耶さんは唖然としてました。

まさか電あなた......響を連れ出した理由って......

 

「いってえぇ!!」

 

え......うそ......?

 

「信じられない......」

 

「マジかよ......」

 

水飛沫が収まると中から小破すらしていない門長さんがこっちに向かってきている所でした。

 

「おいおい、不意打ちたぁやってくれるなぁ摩耶ぁ......」

 

「な、なんだよやんのかぁ!?」

 

あ、摩耶さんテンパッてますね。

響は......ああ完全に怯えて電の後ろに隠れちゃってますか。このままだとちょっと不味そうかも......

 

「門長さんっ!」

 

「あ?後にしろ。俺はこの女とケリ着けねぇといけないんだ。」

 

「ああああのですねっ!しぇ、折角同じ島で生活しているんでしゅから平和的に演習で決着を着けましょう!」

 

あ、あれ?私なんでこんな噛み噛みなんだろう。

 

「......元々はそうするつもりだったしいいか。」

 

「でしゅ、でしたら私が準備しておきますので明日演習を行いましょう!」

 

演習という形で一旦その場は落ち着かせ私達は屋内へと戻っていった。

はぁ......早く二人を見つけて帰りたいけどこの人たちも暫くは放って置けないなぁ......

 




明石をいつ出そうか迷っておりましたが出さないと普通の砲戦が何時まで経っても出来ないので予定より早く登場してもらいました。
此処では主に仲裁役兼工作艦みたいな感じになるかなぁ(未定)
泣き落としは何度も使うと只の泣き虫な子になっちゃいますからw
その意味でも明石は早めに出すべきだと判断しました。

次回、リベンジャー門長!栄光は誰の手に!

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