響乱交狂曲   作:上新粉

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摩耶「おい……母ってなんだよ」

俺「え?じゃあ給食のおば──」

摩耶「あ"?」

俺「イエ、ナンデモナイデス……」

摩耶「つか母親ならアタシより合ってる人がいんだろ」

俺「まあ、ここでは無い何処かへ行けばいるんじゃないですかねぇ?(o´艸`)」

摩耶「はぁ……もういいわ」

俺「ひっ!?…………あれ?無事だ」

不知火・暁・吹雪・ブロ「と思っていたのか?」


第四十五番〜母〜

地下室での話し合いの結果、門長・金剛・響・電の四人がタウイタウイ泊地に行く事になった。

他の仕事の割り振りに所々揉めたもののまあ無事に話は纏まったわけだ。

んでアタシはというと……まあ、いつも通り飯の用意とチビ共の世話って所だな。

別にアタシだって出撃や遠征をしたくない訳じゃねぇぜ?

ただこんな所でこんな状況じゃあアタシや松達みたいな練度じゃ出掛けらんねぇし、そもそも意味がねぇからな。

だからこうして今も飯の支度をしながらのんびりと暮らしてるわけだ。

それにここなら一々動き回らなくてもほぼ全員に会えるしなっ。

 

「ヘーイ、マヤー?私もヘルプしマァックショォンッ!」

 

────っと、早速来たみたいだな。

 

「手伝ってくれんのはありがてぇけどよ、大丈夫か?」

 

「ソーリー、ノープロブレムネー。きっと誰かがワタシのトークをしてるだけデース」

 

「なるほどな……じゃあワリィけど人数分の食器を出しといてくれ」

 

「オーケー!」

 

金剛意気揚々と食器棚に向かったが直ぐに戻って来ると困った様に肩を竦めていた。

 

「おう、どした?」

 

「ええとマヤ……ここには今何人いるのですカ?」

 

どうやらここの住人の数を把握していなかったみたいだな。

そんなんでスパイがつとまるのかよとか一瞬思ったけどまあそもそも戦艦の本分じゃねぇし仕方ねぇよな。

それはそうと今は確かアタシ含めて二十人居たはず。

その内、門長がドックで陸奥は食材を除染して西野と一緒に下で食ってるし、フラワーも組織の配給があるから要らないっつってたな。

後は…………あ、そういやイクが居たのを忘れてた。

えーと、つまり十七人分用意すれば良いわけだ。

 

「普通の皿を十七枚持ってきてくれ」

 

「オッケーッ!まっかせるネー!」

 

金剛は気合いの入った返事をして再び食器棚へと向かって行った。

さて、こっちもちゃっちゃと始めっかな!

金剛に手伝って貰いながら夕飯の支度を進めていると腹を空かせたのか松と竹が食堂に顔を覗かせていた。

 

「どーした?飯ならもう少しかかるぞ?」

 

「んーとねー、松が手伝いたいんだってぇ」

 

「なん、なんでお前がいうんだっ!」

 

竹が入口から松を引き剥がしながら答え、松が必死に抵抗しながら文句を言っている。

 

「まあ、手伝ってくれんのはありがてぇけど別に気を使わなくても良いんだぜ」

 

「いや、誇りある松型のネームシップとしていつまでもタダ飯食らいでいる訳には行かないのだ。私に是非とも手伝わせて頂きたい」

 

「ふ〜ん?にしては今更な気がしなくもねぇが……なんかあったのか?」

 

「そ、それは……だな……」

 

「それは?」

 

「その……………………」

 

「…………」

 

「なんていうか…………あれだ……」

 

……焦れってぇな。

 

「もういい、竹っ!」

 

いつまで経っても話し始めようとしない松に痺れを切らしたアタシは事情を知ってるであろう竹に話を振った。

 

「はいは〜い」

 

「ちょっと待ってくれ!?これは私の問題なんだっ」

 

止めようとする松を放置し、竹は簡潔に話してくれた。

 

「なるほどな。つまりそのままじゃ細かい作業が出来ないけど素顔を見せるのは恥ずかしいから言い出せずにいたっつうわけか」

 

「…………うむ」

 

「そういう事だね」

 

あ〜……確かに飯の時は口の部分だけ開けてたけど箸とかスプーンとかは持ちにくそうだったなぁ。

 

「おっし分かった!だったら少しずつ慣らしていくかっ!」

 

「おっけー!」

 

「うぅ……」

 

んじゃあ取り敢えず金剛には席を外してもらうか。

 

「おーい、金剛ぉ!」

 

「どうしましたカーって、オー!マツにタケじゃないデスカー!ディナーにはまだ早いですヨー?」

 

「やっほー金剛さん。そういえば出発は明日って門長さんが言ってたけど支度は大丈夫?」

 

「へっ、明日出んのか?」

 

「いやいや流石にインポッシブルでショウ?」

 

また直さずに出掛けるつもりかと思ったが竹が言うにはどうやらそういうことではないらしい。

 

「なんかねぇ、陸奥さんが壊滅した南方基地から持ってきた高速修復材を使うんだってさ」

 

へぇ、そんな事があったのか。

金剛も予定が一気に前倒しなって焦ってるみたいだし丁度いいや。

 

「サンキューな金剛。こっちは松達が来てくれたし後は自分の事をやってきな」

 

「ソーリーマヤ、ワタシはこれで失礼させて貰いマース!」

 

そう言い残すと金剛は足早に食堂を去っていった。

それにしても……

 

「なあ、もしかして金剛しか居ないの知ってたのか?」

 

「まあね、いつも摩耶さんを手伝ってる人で私達より先に地下室を出てったのは金剛さんだけだったからね」

 

変にタイミングが良すぎると思ったがそういう事か。

竹も松の為に最初からこういう状況を作ろうとしてた訳か。

まあ何にせよ状況は整った。

後は外から見えないように受取口のシャッターを降ろして扉に立ち入り禁止の看板でもおけば大丈夫だな。

 

「よぉし、こんなもんだなっ!」

 

「わざわざ済まない、迷惑を掛けるな」

 

「なぁに、気にすんなっ。取り敢えず簡単な事からやって貰うからさっさと外しちまいな」

 

「りょうかいっ!」

 

「わ、わかった……」

 

松達に空いてるスペースで艤装?を外す様に促しアタシは沸騰しはじめた寸胴の火を弱め灰汁を取り始める。

 

ん〜、手伝ってもらうっつってもそんなにやる事残ってねぇんだよなぁ。

後は灰汁取りながら野菜が柔らかくなるまで煮込んでルーを入れるだけだし、飯ももう炊いてるしなぁ……。

あ、そうか。アタシが下に食材を渡してる間に寸胴を見ててもらえば良いのか。

後は台所の片づけとかだな。

 

「うぅ……せめて頭部だけは……」

 

「私が出すんだから一緒一緒っ!」

 

「そういうことじゃ──ってああっ!?」

 

「摩耶さーんっ!準備出来たよぉー!」

 

「お?じゃあ早速……って、おおう」

 

 

【挿絵表示】

 

 

準備が出来たみたいだから早速手伝って貰おうと思って竹達のいる方を見るとそこには睦月型よりも幼い容姿をした愛くるしい二人の少女がそれぞれ違った表情を見せながら立っていた。

松の性格からは想像出来なかった幼い顔立ちにも驚いたが、それ以上に二人が余りにも似過ぎている事にアタシは驚きを隠せないでいた。

 

アタシにも姉妹艦の記憶はあるが鳥海はアタシと違って頭脳派なイメージ(あくまでイメージだけどな)だし、姉ちゃん達にいたってはもう色々とデカいし寧ろ似てる所の方が少ない位だ。

 

っていかんいかん、あんまり凝視してたら松を不安にさせちまうな。

 

「よしっ、よく頑張った。それじゃあ早速手伝って貰うぜ」

 

「おっけー!」

 

「……任せてくれ」

 

「おし、じゃあアタシはこの後ちょっと下に食材を届けてくっからその間にやってて貰いたいことを教えるぜ」

 

そうして松には台所の片付けを。

竹には寸胴を見てもらい何かあったら連絡する様に伝えると、アタシは食材を持って地下室へ足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

「それじゃあアタシはそろそろ戻るぜ」

 

「いつもお手数をお掛けしてすみません。私も何かお手伝い出来れば良いのですが……」

 

「殆どあの変態のせいなんだからアンタらが気に病む事じゃねぇよ」

 

「いえ、ですが……」

 

う〜ん……アタシはいつも通り食材を渡しに来てるだけなんだが、どうやらここの提督は何も出来ないのが悪とでも思ってるみたいなんだよなぁ。

何か頼める仕事があれば楽なんだけどな……。

 

「ん〜……じゃあ代わりにアタシらに知恵を貸してくれないか?」

 

「知恵……ですか?」

 

「おう、例えば今うちで使える食材がこんなもんなんだけどよぉ。これで作れる料理を思い付いたらアタシに教えて欲しいんだ」

 

アタシはここで手に入る食材のメモを西野提督へ渡した。

 

「この中でですね……はい、思い付いたらお伝えします」

 

「おうっ、ここには人が居ないからどうしても知識が偏っちまうんだ。だから他にもアンタの意見を聞かしてもらう事が在るだろうからそん時は頼むぜ?」

 

「……はい、ありがとうございます」

 

「ん、それじゃあな」

 

あ"〜……流石に露骨過ぎたか?

まぁ、事実献立がマンネリ化してるし嘘を言ってる訳じゃねぇしまあいいかっ。

 

食材を渡し終えたアタシはもうじき飯が出来上がる事を伝えながら食堂へと戻り始めた。

けれど、響と電からの返事が帰ってこなかったのが気になったアタシは通り道にある執務室の前に止まりノックをする。

 

「おーい、響ぃ〜電ぁ〜飯だぞー?」

 

……返事が無い、いねぇのか?

扉を開き中へ入るが部屋は真っ暗だった。

二人を捜しながら奥の部屋へのドアノブに手を掛ける。

 

「ここに居なきゃ他を当たるか……」

 

そう考えつつも扉を開くとそこには仲睦まじく一つの布団に寄り添って小さな寝息を立てる二人の姿があった。

 

「ふぅ……しゃーねぇな、朝飯はちゃんと来いよ」

 

聞こえていないことは知りつつもアタシは一声掛けてから扉を静かに閉め、再び食堂をめざすのだった。

 

 




摩耶「まだまだ続くから見てくれよなっ」

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