響乱交狂曲   作:上新粉

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週に一二回と言ったな、あれは嘘だ。
いえ、なんでもないです。
相変わらずの不定期更新ですがどうぞ、よろしくお願い致します。
因みにサブタイトル右の文字はフィーリングで決めてます。

電「私はどうしてそのままなのです?」

俺「え?他のが良かった?他だと『黒』とか『闇』になっちゃうけどいい?」

電「…………」

俺「ははは……な、なーんてね?」

電「…………はぁ、出来れば沈めたくなかったのDEATH!!!」


ーFATALITYー


第四十五番〜凛〜

私不知火は今非常に困っている。

それは私が門長和大の動向を定期的に明石に報告しなければ私の所在が大淀に伝わってしまうかもしれないからだ。

つまり、私がここにいる為には門長和大を監視し続けなければならないという事になる。

だが気が付けば彼と同行する事は叶わず、それ所かどういう訳か深海棲艦の輸送任務を手伝う事になっていた。

勿論この任務は横須賀(むこう)の明石には話してはならない。海軍に漏れたことが深海棲艦に伝わればこの基地の補給手段が無くなってしまうからだ。

 

「くっ……これは……不知火の落ち度……?」

 

私だって必死に食い下がった。

しかし基地の存続を秤に掛けられてはどうにもならないじゃないっ!?

……とにかく、次の報告までに横須賀(むこう)の明石が納得する策を考えなければなりませんね。

金剛に代わりに報告をして貰うのが簡単ですが他人のうっかりで基地ごと壊滅なんてごめんです。

特に彼女は練度の割に抜けてますからね。

まずは工廠に行って────ってあれは。

 

工廠へ歩き出そうとした私の向かいから潜水艦伊十九がなにやらご機嫌にスキップをしながらやって来ました。

 

確か彼女はあの男がここに来た頃に建造されるもつい最近まで門長どころか摩耶の記憶にすら残さずに瀕死の門長を幾度と無く救ったという話らしい。

…………それが本当なら実績は充分ですが、正直信じ難い話ね。

止めておきましよう。

 

「ふんふ〜んっ。あ、こんばんはなのねっ!」

 

「こんばんは、には少し早い気もしますがどうも伊十九さん」

 

「堅苦しいのっ!もっと気楽にイクって呼んで欲しいのねぇ〜?」

 

少し鬱陶しいのでさっさと話を切り上げて工廠へ向いましょう。

 

「承知しました。では、私は先を急ぎますのでこれで」

 

「えっ?あ、うん。またなのねっ!」

 

切り方が雑でしたが、まあいいです。

 

特に気にすることなく伊十九さんに別れを告げてから私は工廠に向かいました。

 

 

 

 

工廠には明石の他に今回私と同じ任務に着いた吹雪と暁が愚痴を言いながらも艤装の整備に勤しんでいた。

 

「全くもうっ!私だって響と一緒にいたかったのにぃー!」

 

「いつまで言ってるんですか……まあ、艦娘である私達が深海棲艦の手伝いなんて納得出来る話ではありませんが」

 

「私達が生きる為には仕方ないこと。二人共割り切るのね」

 

私は二人に言い聞かせるようにしながら明石の所へ向かって行く。

 

「不知火さん、貴女だって異を唱えていたじゃないですかっ」

 

「そうよっ!なに自分だけ割り切った様なこと言ってんのよっ!」

 

ええ、言いましたとも。

だがそれは私の任務に支障をきたすからであって深海棲艦だからどうとかいう話では無いのだ。

 

「私は反対したのは私に課せられた任務を遂行する為よ」

 

「で、でも結局こっちに居るじゃない」

 

「……理由は貴女達も分かってるでしょ?」

 

「それは…………まぁ」

 

猛反対していた私達三人が引き下がらざる得なかった理由は簡単だ。

胃袋を掴まれたと言うと言い方が悪いが、要は毎日食事を作ってくれている摩耶さんに頭を下げて頼まれてしまっては断れる筈がありません。

食事とは私達に取って言わば娯楽の様なものであり、それが失われるというのは愛煙家が住んでる国が突然完全禁煙になるのと同意義なのですから。

 

「だから私は任務を果たす手段を考えているのです」

 

「ふ、ふぅん?任務も良いけど艤装の整備位はしっかりとやっときなさいよねっ!」

 

「そんな事は百も承知よ」

 

生き残る為に任務を果たす方法を考えているのにそのせいで他を疎かにして結果沈みましたなんて本末転倒もいいとこですから。

けれど私には先に明石に聞いておかなければいけない事がある。

 

私は暁達の前を通り過ぎ、明石の元を訪ねた。

 

「あら、どうしたの不知火」

 

「明石、出来なければ良いのですがこれを……」

 

「こちらがどうしたのですか?」

 

私は明石に通信機を渡し話を続ける。

 

「こちらの解析と複製を5日以内に出来ますか?」

 

「え"っ!?これをですか?」

 

あからさまに苦い顔をする明石を見て把握する、やはり無理な話かと……。

 

「う〜ん……そうですねぇ……」

 

「出来ませんか……いえ、無理を言ってすみません。他の方法を考えてみます」

 

「あ、待ってくださいっ!」

 

時間が無いため明石にひとこと言い、他の方法を探すべく工廠を立ち去ろうとした所で明石に呼び止められた。

 

「なんでしょう?」

 

「その通信機、六時間だけ貸していただけませんか?」

 

「ですが複製は出来ないのでは?」

 

なら余計な時間は使いたくないのですが……。

 

「いえ、向こうの暗号パターンが分からないので横須賀の明石とは通話が出来ませんが複製自体は出来るかも知れませんよ?」

 

それでは複製する意味が無いのでは…………いやまて、考えるのよ不知火。

 

「明石、横須賀とは通話出来ないということは複製した物は何処と通話出来るのですか?」

 

「えっ?そりゃあこれと……ですが」

 

いいっ!つまりこの通信機と複製した通信機は通話が出来て尚且つ大元の通信機は横須賀の明石と通話が出来るっ!

……落ち着くのよ不知火、まだ確認が足りないわ。

 

「そう、それじゃその二つはどれ位まで繋がるのかしら?」

 

「ま、まあ……複製なんであっちの明石が言ってる事が本当なら艦娘の通信機や通信塔を経由するんで理論上何処にでも届くようになるかと」

 

イエスッ!!完璧だわ、これで問題はほぼ解決されたわね。

 

「分かりました、それでは改めて複製をお願い出来ますか?」

 

「はい、勿論です!」

 

ああそう、念には念を入れておかなければね。

 

「それともう一つ、複製の方に出来れば変声機能を付けてくれませんか?」

 

「複製の方にですね?了解しました」

 

「ありがとうございます」

 

『おーい、不知火。飯が出来上がるぜ』

 

っ!?なんと、もうそんな時間でしたか。

気付けば暁達も居なくなってましたね。

 

「了解です。直ぐに向かいます」

 

さて、このまま明石を放って私達だけで頂くのも忍び無いので摩耶さんに言ってこっちで一緒に頂くことにしましょうか。

 

「それでは明石、私は一度失礼します」

 

「は〜い」

 

既に集中しているのか生返事で答える明石に背を向け、私は一人食堂へ足を運んだ。

 

「本日の夕飯はカレーですか。ふぅ、楽しみね」

 




まだまだ続くのですっ!


上新粉さんへのおしおきもまだまだ続くのです。

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