一時的なスランプのようなものに襲われ二、三日前まで一文字も進まず危うく投げ出す所でした(;´Д`)
「読者が居なければ即失(踪)だった」みたいな感じです(笑)
ですのでこんな所まで読んで下さっている皆様にこの場を借りて改めてお礼を申し上げます。
みんなありがとぉー♪(アイドル軽巡風)
「私ならここの安全を一時的に確保するくらいわけありませんよ?」
妖精は得意げにそう語りながら俺の肩へ降り立つ。
俺は訝しみながらもこいつの案を聞いてみることにした。
「簡単ですよ?要はここに誰も来させなければ良いだけなんですから」
「それが出来りゃ苦労しねぇだろうが」
「もちろん貴方達には出来ませんよ、それは妖精のなせる技ですもの」
妖精のなせる技だぁ?一体なにをしようっていうんだこいつは。
「つか、んなこと出来んなら最初からやっとけよっ!!」
「頼まれてませんからぁ?」
こいつクッソむかつく……誰かこいつを消す方法を見つけろっ!
「とまあそれは冗談ですが、流れに身を任せるのを好む存在としてそこまで手を貸すわけにも行かないんですよ」
「あ?そういや前に聞いたときにもちょっと思ったが常に艦娘と一緒に居るのに今更じゃねぇか?」
それに確か深海棲艦の艦載機には妖精が乗ってないっつってたしな。
だが、妖精は俺の疑問に何食わぬ顔で答えた。
「妖精にだって個性がありますからね。放っておいたら絶滅してしまうようなか弱い艦娘や人類を護りたいと思う子もいるでしょう」
「か弱い?人間はともかく艦娘もか?」
「そうですよ?彼女達は成長するのに長い時間を要しますし、例えどんなに成長したところで姫や上位個体とは圧倒的な性能差が存在してますからね。一部の妖精達が艤装を使いやすく補助して簡単に沈まないよう保護して今の現状を維持できてるんですよ」
「なるほどな。てことはそう思わない奴も居るのか?」
今の話からするに艦娘に手助けしてる奴が全てでは無いのだろう。
寧ろ深海棲艦の手助けをする奴やどちらにも付かない奴の方が多いのかもしれない。
そんな俺の意図を察したのか、それともこの言葉を待っていたのか妖精はにやりと口元を歪ませる。
「そうですね。今回は深海棲艦側の子が使っている力の一つ、
「は…………海流操作?」
妖精がドヤ顔でこっちを見てくるが俺には一体何を言っているのかはさっぱりだった。
そんな俺の反応がいまいちだったのか明らかにテンションを下げながら皮肉を言い始める。
「へっ?ああ、誘拐犯の貴方には解りませんでしたか……」
「ちょっ、その言い方はやめろっ」
否定できねぇしこれでもほんの少し位は気にしてんだっつうの!
だがそんな事お構いなしに妖精は説明を続ける。
「まあ誘拐犯で強盗犯かつ殺人鬼な貴方にもわかるように言うなら目的地に着きにくくするための妨害ですよ。名前のとおり海流が変わるんで条件を満たさないと辿り着けないように出来るんですよ」
「おいやめろ俺が極悪人みたいじゃねぇかっ!」
「え?全部事実じゃないですかぁ」
いや待て、殺人なんてしてねぇぞ?
ーー宇和を殺ってるではないかーー
あ……あれも殺人か?まあ、そうか……
「まあまあ、そんな気にしないで下さい」
「つーか強盗は唆したてめぇも共犯だろうがっ!」
「人間が決めた法律なんて知りませんねぇ?」
「こいつ……っ!」
「まあぶっちゃけこっちは大丈夫なんで行ってきちゃって良いですよ〜」
非常に腹立たしいが……夕月達との約束も果たせるしうまく行けば長門も俺から出ていく。一石二鳥なこのチャンスを逃す手は無いか。
「分かった、んじゃあここは任せたぞ。それとこのことは他言無用な」
「はいは~い、他言無用の理由は知りませんが任されましたよぉ~」
妖精は俺の兵装を操作できる他の妖精を呼んでくると言い残して壁をすり抜け消えていった。
……よし、これで事実を知る者は俺等とあいつだけだ。
ーーいったい何を企んでいるんだ?ーー
分からんか?あいつがどれだけ信用できるか分からないが響からしたらきっと俺より妖精の方が信用が高いだろう。
ーー自分で言うのは辛くないか?ーー
辛ぇよっ!……けどおそらく事実だ。
だからあいつがここは安全だと言ったら響が俺に付いていく意味が全く無くなってしまう。
しかしっ、さっきも言ったがあいつの言う事がどれだけ信用できるか解らない。
ーーなるほどな、それで響を連れ出すために妖精を口止めしたのかーー
ああ、それに響と距離を縮めるチャンスでもあるしなっ!
ーーふっ……そうか。なら頑張るといいーー
当然だ──っと誰か来たようだな。
「お帰りなさい、無事に帰って来てくれて何よりなのです」
階段の方を振り向くと天使の微笑みが俺の帰還を祝福してくれていた。
「おおっ!お陰で戻ってこれたぜ、ありがとな電!」
「へ?いえ、私はイクさんにお願いしただけで助けたのはイクさんなのです」
「それでも電が俺を気にかけてくれなきゃ俺は今ここに居なかった訳だからな。やっぱり電のお陰だ」
「それは……どういたしましてなのです」
くぅ〜っ!響の姉妹だけあってやっぱり可愛いなっ!
ーーそれには同意するが肝心の響が来ていないなーー
ん?隠れてるだけとかじゃないのか?
俺は辺りを見回して見るが確かに響の姿は何処にも無かった。
てっきり電と一緒だと思ったんだが……。
「なあ電、今日は響は一緒じゃないのか?」
俺が尋ねると先程までとは打って変わって酷く落ち込んだ様子で答えてくれた。
「……響ちゃんは会いたくないって言っているのです」
「なん…………だとっ……?」
俺はいつの間に響に嫌われる様な事をしたというんだ……。
出る前は顔を見せてくれてたし俺が居ない間に何かあったのか、それとも俺の記憶が不鮮明な間に何かあったのか。
もし後者なら修復不可能な溝が形成されているかも知れん。
俺は電に確認して見ることにした。
「な、なあ電。実は昨日の途中から記憶があやふや何だが、もしかしてその間に俺は響に何かしてしまったのか?」
しかし電は首を振って否定する。
そしてあの時響達の方で何があったのかを電から聞かされることとなった。
「門長さん、今回の全体の被害は聞いていますか?」
「いや、一応入渠ドックの利用状況は聞いたが全部かは分からねぇな」
「そう……ですか。実は私達
「そうか、となるとあいつらか……」
「はい、一緒に戦ってくれた深海棲艦の皆さんは……」
そうか、それは港湾や離島には悪い事をしたな。
「分かった。それは被害の確認も含め後で俺から港湾と離島と話してみる」
「その事なのですが……」
しかし電はとても云いにくそうに言葉を続ける。
「離島棲姫さんはもう居ないのです……」
「いない?自分の拠点に帰ったのか?」
「いえ……離島棲姫さんは沈んでしまったのです。」
なっ!?まさかあいつに!…………いや、違う。
「俺の……せいだ」
俺が護ってやるって無理やり連れてきたっつうのに何も出来てねぇじゃねえかっ!
くそっ……それどころか一歩間違えりゃ響を失っていた場面だって幾つもあった。
なのに俺が何も学習しねぇから離島は死んだ。
響が俺を軽蔑するのも考えりゃ当然な話だったんだ。
こんな護ってる気になってるだけの自己満野郎の所になんかいたらいずれ響も…………それなら……
「電、俺はこれからタウイタウイ泊地に行ってくる。そこでお前達保護して貰えるように頼んでくるから、俺が戻ったら皆で向こうに移ってもらう。手間は掛かるがそっちの方が良いだろう」
あっちなら余計な事に巻き込まれることも少ないだろうし、きっと助け合える仲間が出来るだろう。
「だから他の奴にも────」
「門長さんっ」
だが電は俺の言葉を遮り俯いたまま一歩一歩あゆみ寄ってくる。
そのただならぬ雰囲気に思わず後ずさりしそうになった次の瞬間、俺の息子が緊急警報を発信した。
「〜〜〜〜ッッ!!?」
何が起きたのか理解が追い付いていない俺に電は声を張り上げる。
「ざっけんななのですっ!響ちゃん達を散々振り回しておいて守れないからどっか行け?いい加減にしやがれなのですっ」
「い、電……確かに勝手な言い分だしそれで今までの事がチャラになるとも思ってはない。だが……っ!」
響が俺から解放されることで幸せになれるのなら──
そう口にしようとした時、俺の息子が再び蹴り飛ばされ言葉は無理矢理中断させられた。
「言い訳なんか聞きたくないのです。男なら一度決めた事は貫き通しやがれなのです!」
「うぐぉ…………だが、それでも俺が一番に望むのは響の幸せなんだ」
「知っているのです。でも金剛さんの話が本当なら響ちゃんは既に解体されていた筈なのです。どういった経緯があろうと助けた以上途中で投げ出すのは無責任なのです」
「しかし……俺といても幸せになれない所かいずれ響まで……」
「…………そうですか。電は門長さんみたいに諦めは良くないので響ちゃんと
そういうと電は錨を展開し頭上へと掲げる。
「いな……づま?じ、冗談だろ?」
「電は冗談が得意では無いのです。向こうに行って海軍を相手にするより門長さん一人を処理する方が簡単なのです」
冗談である事を期待するも電の目は全く笑っていなかった。
激痛が未だ続き、この場から逃れる事も叶わないまま早くもその時は訪れた。
「門長さんの事はタウイタウイに行ったって伝えておくのです」
「ま、まて電!」
「さよならなのです」
電は俺の呼び掛けに応じる事なく錨を振り下ろした。
「駄目だ電ぁっ!!」
……………………振り下ろされた錨は俺の股間数センチ手前の床を打ち砕く。
生きてきた中で最高の恐怖を味わい俺は足が竦んでしまいまともに動けないでいた。
「……響ちゃん、何が駄目なのです?」
「そ、それは……い、電にこんな事して欲しくない……から」
「私の事を思ってくれるのは嬉しいのです。だけど私は自分の事よりも響ちゃんの幸せを見届ける事を優先するのです」
電は床から錨を引き抜くと再び振り上げる。
「そ、それにそいつの中には長門さんがいるかも知れないから……」
「別にすぐに殺す訳じゃ無いので安心して欲しいのです。まだ止める理由はありますか?」
「それは…………」
響は電に反論出来ずに押し黙ってしまった。
だが、それも当然な話だ。
響が俺自身を好いてくれる様なことは何一つ出来ていない。
いや、たとえあったとしてもそれは長門に対する感情になっているだろう。
結局俺は最初から響にとって恐怖の対象でしかないんだ。
それなら最後にすっぱりと切り捨てて俺を諦めさせてくれ。
「響……前にも聞いたかも知れないがもう一度聞かせてくれ。」
「…………なんだい?」
「俺の事を……どう思ってる?」
「私は…………」
今にも泣き出しそうな響はなんとか声をひり出しながら続ける。
「お前が…………嫌い……だっ……た」
「ひび……き?」
「だけど……分からない……分からないけどっ…………いなくなるのは……嫌……なんだ」
「長門さんと関係ないとしてもですか?」
「それは……分からない。けれど、優しくしてくれたのは……守ってくれたのは……長門さんだけじゃない……気もするんだ」
響……俺の事を見てくれるのか……。
ーー良かったじゃないか。お前のやって来たことは無駄じゃなかったなーー
「だから……電……」
響は錨を掲げる電の手を取りゆっくりと下ろす。
それを見た電は一息つくとまるで憑き物が落ちたかのようにいつもの笑顔を見せ、空いた手で響の頭を撫でた。
「よく出来ました、なのです」
「……はい?」
「へ?どういう……」
「はい、嘘をついている響ちゃんに自分の気持ちを認めるお手伝いをしてあげたのですっ」
「それってつまり……」
「本気で俺を殺そうとした訳じゃない……のか?」
「ふふ、電に門長さんを撃沈させる火力は無いのです」
なんだ、そうだったのか……。
マジで死を覚悟した瞬間だったぞ。
「でも、もし今回みたいに途中で投げだすのなら……その時は電の本気を見せるのです」
電と目が合った瞬間、俺は凍てつくような寒気に襲われた。
そして確信した。あれは演技でも何でもない、響の一言で俺の死は決定的なものとなっていたという事を。
「お、おう……分かってる」
そうだ、響が俺を少しでも必要としてくれてる事が分かった。
なら俺から離れる理由なんか何一つ無いっ!
「響っ!」
「なっ!なに……?」
「これから長門の具現化の為にタウイタウイ泊地へ向かう。だから響にもついてきて欲しい」
俺はそう言って響に右手を差し出すと、響は暫し躊躇ったがやがてゆっくりと俺の手を取り応えた。
「…………ダー」
今後仕事の方が忙しくなってくるので今回位の一、二週間に一回投稿出来るかのペースになるかと思いますが失踪すると電ちゃんに襲われそう(R-18G)だから失踪は有り得ません。
ですので気長にお待ち頂ければ幸いです。