響乱交狂曲   作:上新粉

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〜今日のとなが〜
残り耐久 5/????(近日公開予定)
応急修理(12時間)により耐久が4回復しました。

さあ本編本編!



第四十三番

翌朝、診察台の上でタオルケットが掛かった状態で目を覚ました俺は台にもたれ掛かるように眠る明石にタオルケットを放り投げて一人食堂へと足を運んだ。

だが、昼飯時の過ぎた食堂には後片付けを行う摩耶と金剛しか居なかった。

 

「んだよ、てめぇらだけか……」

 

「オー、グッドアフタヌーンミスター…………ホワァァァッツ!!!?」

 

「どーした?蜚蠊でも出たか────ってなんだ、蜚蠊よりしぶてぇ奴が帰ってきたのか」

 

「うっせぇ、んなことより全員執務室に呼んどけよ」

 

「ホワイ……これはミスターのゴーストですカ……?」

 

「なんだてめぇ……そんなに俺が生きてちゃ悪ぃか」

 

「ノ、ノー!そういう訳じゃ無いデース、デスガ……」

 

煮えきらない感じが苛つくが奴の口を割るのは何時でも出来る。

そんな事より今は響に会いに行くのが先だ。

 

「まあいい、とにかく執務室だからな」

 

俺はすぐさま響の待つ部屋へ向おうと歩き出す。

だが、猿女は食器を仕舞いながら俺を呼び止めやがった。

 

「待った、全員集合だろ?だったら執務室じゃなくて地下で待ってな」

 

「何で地下に行かなきゃならねぇんだよ、俺はこれから響と感動の再会を果たしに行くんだよ」

 

「全員集合なら地下の隔離部屋に行かなきゃ出来ねぇよ」

 

「隔離?誰を」

 

「西野っつう提督だよ、放射能だか何だかで人間が外に出るのは危ねーんだとよ」

 

西野…………あ、そういや陸奥はどうしたんだっけ?

 

ーー陸奥なら昨日お前が戻って来るのを窓から見ていたぞーー

 

居たのか長門、つうか良く見えたなそんなの。俺は全く見えなかったぞ?

 

ーー戦艦は総じて目が良いんだ、まあお前の場合は周りを見てないだけだがなーー

 

うるせぇ……まあ、無事ならいいか。

 

「おーい、夕月達と来た女の事だぞ。覚えてねーのか?」

 

「ん、ああ。そんぐらいしってる。だが別にそいつは居なくてもいいから執務室集合でいいだろ」

 

「んなこと言ったって今後どうするかも話し合うんだろ?アタシらはともかく球磨達がどう動くかは提督が決める事じゃねぇか?」

 

「それは夕月達が一人一人決めることだろ?」

 

「そういう訳にも行かねーよ。本来艦娘っつーのは個人の主義主張があろうと原則提督の意見は絶対らしいからな」

 

なんだそれ、気に入らねぇな…………いや、待てよ。本当にそうなのか?

 

「初っ端にテメェから飛び蹴りを受けた気がするんだが普通に考えれば反逆だろあれ」

 

「さあな、それはてめぇが提督じゃねぇからだろ?」

 

「提督かどうかの差がさっぱり分からねぇが…………まあしかたねぇ、んじゃ下に行ってるぜ」

 

「おう、またな」

 

摩耶と金剛に別れを告げ俺は一足先に地下に……行く前に執務室を覗きに行ったが中には誰も居なかったので仕方なく真っ直ぐ地下に向かう事にした。

 

 

 

 

地下室は装飾などは一切無く、降りてすぐ目の前にでかい鉄の扉がその存在を主張しているだけだった。

扉に付けられたスイッチを押し扉を開くと奥には更に扉が存在し、中に入ると後ろの扉が閉まり音声ガイダンスが流れる。

 

『着用している衣類をこちらにお入れ下さい』

 

服を脱ぎ指示された場所へ放り投げる。

 

『衣類の汚染内容を解析中....』

 

『続いて生体情報と汚染内容を解析します』

 

素っ裸のまま待たされる事十五分、解析が完了したのか再び機械が動き出す。

 

『検知内容、放射能汚染。属性──人…………訂正、属性──艦娘?』

 

『艦娘用除染シークエンスに移行、目を瞑り両腕を広げて待機して下さい』

 

「それでいいのか機械……」

 

俺は指示通りに両腕を広げながら目の前の機械に一抹の不安を覚えるが、機械はそんな事お構い無しに着々と作業を進めていく。

 

『洗浄を開始します』

 

開始の合図と共に足場がゆっくりと回り始め、周囲から叩き付ける様な勢いで液体が吹き掛けられていく。

 

『第二工程へ移行します』

 

上から大量のお湯で洗い流すと再び全身に液体を吹き掛けていく。

 

『最終工程へ移行します』

 

再びお湯を掛けられ全身に液体を吹き掛けられる。

そしてお湯で流しブザーと共に扉が開かれた。

扉の奥は更衣室となっていて、俺は用意されたバスタオルで身体を拭き洗浄された衣類に身を纏い漸く中に入ることが出来た。

 

「門長さんっ!」

 

俺が部屋に入るや否や目の前に現れた西野が突然頭を下げた。

 

「陸奥を……そして私達を助けてくれて本当にっ…………ありがとう」

 

「私達を守ってくれてありがとう」

 

「お前が居なければ我々は今頃水底に沈んでいただろう」

 

「如月達のお願い聞いてくれてありがとう」

 

「みんなを助けてくれてありがとうっ!」

 

「まあ、素直に助かったよ〜……あ、ありがとね」

 

「感謝はしてるぴょん。でもいつかリベンジしてやるから覚悟してるぴょんっ!」

 

「………………助かったクマ」

 

続いて陸奥が頭を下げるとそれに続き夕月達も一斉に頭を下げてそれぞれ感謝の言葉を述べた。

 

「俺は別に響を守る為に動いているだけで礼なんて言われる筋合いはねぇよ」

 

「それでも私達が助けられた事は事実です」

 

くそっ、やりにくいな……。

 

人生でここまで感謝された記憶が無い俺はいたたまれなくなり話を替えようと一足先に本題を切り出す。

 

「んなことより、お前らはこれからどうするつもりなんだよ」

 

「私達ですか?そう…………ですね。何とかして報告に戻らないと行けないのですが……」

 

「報告?俺らの事か」

 

「あっ、いえ!南方前線基地が壊滅した事を伝えるだけです」

 

「ふーん、なら金剛に伝えてもらえば良いじゃねぇか」

 

あいつに伝えさせれば良いと思ったがその意見は陸奥によって棄却された。

 

「金剛さんの報告の経由地としてうちの基地が使われていたから残念だけれどそれは出来ないわ」

 

「だから我々でタウイタウイ泊地まで向かい報告し防護服を借りに行こうと考えているんだが……」

 

「何度も言ってるでしょ夕月、情報が無い状況で無闇に動くのは危険なのよ」

 

「それは分かっているが動かなければどうにもならないのも確かだ」

 

「それでも貴女達の司令官として無謀な出撃はさせられないわっ」

 

「そんな事言ったって我々が行かなければ司令官はずっとこの部屋から出られないじゃないか!」

 

言い争う夕月と西野を余所に俺は何か忘れているような気がして、それが何かを思い出そうとしていた。

 

報告……海軍…………情報…………あ、そういえば奴がいたな。

 

「だったら不知火を通じて────」

 

「ヘーイッ!それならグッドなプランがあるデースッ!!」

 

俺の言葉を遮る様に言葉を被せて来やがったのは連絡が取れない役立たずな上に素っ裸の変態と化したルー豆柴であった。

 

「「こ、金剛さんっ!?」」

 

「まずはその見苦しいモン仕舞ってから出直して来やがれっ!」

 

俺はすかさず顔面を掴み露出狂を更衣室へと押し戻す。

 

「へ……?ノ、ノォーーッッ!!こここれは違うのデース!!見たらノーなのヨォー!」

 

「だったら見せんなボォケッ!」

 

更衣室へ放り込み扉を閉め夕月達の方へ向き直ると二人の言い争いは止み静寂が部屋を包み込んでいた。

その数分後、今度は服を着てきた金剛は赤面したままおずおすと部屋へ入って来た。

 

「ソ、ソーリー……忘れて貰えると有難いネー」

 

「思い出したら許さないっぴょん」

 

「あ、ああ……わかってる」

 

「そんなもんどうでもいい。それよりもグッドなプランっつうのはなんだ」

 

「それは逆に凹みマス……まあ良いケドネ。ワタシのプランはとってもシンプルネー、ミスターと私でタウイタウイ泊地に報告に行けばいいのデース」

 

なるほど、確かに夕月達に危険が及ばない一見良い案にも見える……

 

「だが、そこに俺が行く意味は無い。指名手配犯舐めんなよ?」

 

「確かに報告だけならミスターが来る必要はありまセーン。ですが長門、そこに貴女を救い出す可能性があるのデース!」

 

可能性か……果たしてそんな可能性が本当にあるのかどうか。

 

ーーそれは分からないが、そもそも不可能だと思っていた事だ。僅かでも可能性があるというのならそれを信じてみたいと思う。だが……ーー

 

ああ、分かってる。()()()()()()()()()()()

 

「良いだろう、行ってやるよ」

 

「本当ですカッ!?」

 

「ああ、但し響も連れて行く。それだけは譲れねぇ」

 

「オ、オーケー。ワタシからも伝えておきまショウ」

 

「つーわけだ、報告と防護服は俺達にまかして待っているといい」

 

「い、いや!これは我々の問題だ。これ以上迷惑をかける訳にはっ……」

 

俺は余計な遠慮を見せる夕月の腋を抱えて高く持ち上げその場で廻りながら話を続ける。

 

「だったらこの女を見捨ててうちに来るか?そしたら連れてってやるよ」

 

「な、なぁっ!?そんな事出来るわけっ!」

 

「だろ?だったらお前らはここでこの女を守ってな。ここだって安全じゃねぇのは分かってんだろ?」

 

「う……むぅ……」

 

回転を止めゆっくりと夕月を床に降ろす。

目を廻しふらついてる姿に思わず頬が緩むが、それに気付かれないように後ろを振り向く。

 

「ま、まあそれにこれは単に利害の一致だから別に気にすんな」

 

「ありがとう門長」

 

「本当に何から何までありがとうございます」

 

「そんじゃ、修復完了次第行ってくっから此処の事は頼んだぜ」

 

最後に一声かけ、俺は後ろ手で右手を降りながら部屋を出た。

 

一先ず俺のやる事は決まった。後は仕事の方の折り合いと現状の把握か……

 

ーー後は此処に残る者達の安全確保もどうにかしたいものだがーー

 

安全確保ねぇ……真面目な話昨日の奴らに攻めて来られたら対処しようがねぇよな。

 

ーーやはり我々が此処を離れるのは危険かーー

 

ああ、残念だが策が無い事にはな。

 

諦める方向で話が進みながら二重扉を抜けると目の前には何時の間にか居なくなっていた妖精が宙を漂いこっちを見てこう言った。

 

 

──私が手伝って上げましょうか?──

 

 

 

 

 




あれ、響が登場してない……どうしてこうなったっ!!
次回に持ち越しとは……辛い。

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