アンケートに答えて下さったおもちゃんさん、片栗虎さんありがとうございました!
それでは本編をどうぞ!
明石さんが戻って来てから一週間ちょっとがたった。
それは私が日課となった自主訓練に併せて周囲の警戒をしていた時の事だった。
私の電探が北東二十キロ先にいる艦艇を捉えたのだ。
「北東二十キロ先から一つの反応がこっちに向かって来てるよっ!」
まさかと思いながらも私は急いで全員に伝えるため通信を飛ばした。
「オーケー、直ぐに水偵を飛ばすネー。戦闘準備は済ませておいて下サイネー!」
報告を聞いた金剛さんか直ぐに水偵を飛ばしてくれたけど、程なくして再び入ってきた金剛さんの声は明らかに動揺していた。
まさかと思い金剛さんに確認してみた所、アレが見た事も無い深海棲艦だと重い口ぶりで答えた。
水偵は落とされてしまったらしく、姿を確認することは出来ないがきっと例の深海棲艦に違いないとの事だ。
直ぐに皆も来てくれるみたいだけど、あの男ですら相手にならない程の深海棲艦に私達だけで本当に勝てるのだろうか。
考えただけで私は全身が恐怖に包まれ震えが止まらなくなっていた。
そんな化物から離島棲姫を護る?私がっ!?
出来るはずがない……呆気なく沈められるだけだ。
そんな私の事を岩場に腰掛け見ていた離島棲姫が嘲笑いながら言った。
「モウ逃ゲタラァ?オマエノ慕ッテイル長門トヤラダッテ同ジ状況ナラドウセ逃ゲ出スワヨ」
長門さんが逃げ出す?あの人はそんな事しないっ。
状況を判断して撤退する事はあっても長門さんが守るべき者を見捨てて逃げ出すなんて有り得ないっ!
……なら私だってその意思を継ぐと決めた以上、見捨てて逃げる訳にはいかないっ。
私は……私は長門さんの様な心の強い艦娘になりたいからっ!
「私は逃げない……長門さんの意思を守る為に……」
「アッソ……艦娘ッテノハ馬鹿バカリナノカシラ?」
離島棲姫は呆れた視線を私に向けたまま航空機を発進させていた。
そしてその航空機は迷う事なく一直線に私の方へ向かって来ている。
私は反射的に避けようとして躓いてしまった。
だけど、意外にも航空機は目の前で急旋回すると私の左上空で激しい爆発と共に粉々に砕け散っていた。
「逃ゲナイノナラ戦ワナキャ死ヌダケヨ?」
「え……?あ、うん…………ありがとう」
何が起こったのかは理解出来なかったが多分離島棲姫が私を助けてくれたのだろう。
……そうだ、もう戦いは始まっているんだ。
なら惚けている場合じゃないっ!
私は離島棲姫にお礼を述べた後、直ぐに気持ちを切り替え敵の攻撃に備え機銃を構えた。
「響、大丈夫かっ!」
間もなくしてみんなが港に集まって来た。
摩耶さん達に南方基地の皆、フラワーさんの組織と離島棲姫の組織の深海棲艦達。
皆で力を合わせればきっと何とかなるっ!
そう思えた……でも…………奴は紛れも無く怪物だった。
開戦から僅か一時間、私達の連合艦隊は無惨にも壊滅寸前の危機に瀕していた。
初めに奴に一番近かった深海棲艦達は艦砲とは思えない速度で止めどなく鳴り続ける砲撃音と共に次々と沈んでいった。
次にそこら中から雷撃による爆音が聞こえると同時に深海棲艦の殆どはやられてしまった。
そして残った深海棲艦達も相手の誘導噴進弾に悉く撃ち抜かれ海中へ消えていった。
勿論私達だって何もしなかった訳じゃない。
全員一つの目標に狙いを定め全力攻撃を仕掛けたんだ。空母だっていたし離島棲姫だって力を貸してくれた。
それでも奴の機動力の前では至近弾一つ与えることが出来なかったんだ……。
そうして私達はどうしようもないくらい一方的に追い込まれてしまった。
だけど奴は私達に止めを刺さずに近付いてきたのだ。
「ナァーンダ、アイツガイナインジャ張合イガナイナァ。ネェ、門長ッテ今何処ニイルカ知ッテル?」
目の前までやって来た深海棲艦は軽巡棲姫に似ているがその威圧感と艤装は軽巡棲姫のそれとは比べ物にならなかった。
「ネェ、何処ニイルカッテ聞イテルンダケドォ」
私はそんな深海棲艦に門長の場所を聞かれていたが、蛇に睨まれた蛙の様に竦み上がってしまい声を出すことすら出来ないでいた。
「チュークヲ怒ラセテモイイコトナインダゾォ?」
「あ……や…………たすっ……けて……!」
不満そうに奴が右手の回転式機関銃の様な主砲を私に向けた瞬間、目の前が突如爆煙に包まれた。
「フ……フフフ……爆撃機ニヨル連続特攻……流石ノ規格外モ無事ジャ済マナイデショ--ッウ!?」
離島棲姫の爆撃機六十機による特攻は主砲を一基破壊する事に成功したが本体にはダメージは通らなかったらしい。
「モウッ!オハナシ中ナンダカラ静カニシテヨネッ!」
そう言って奴は離島棲姫に向けて残った主砲を放ち始めた。
「ウグゥッ……バカナ……」
「や…やめ……ろ」
しかし奴は止めること無く撃ち続けた。
離島棲姫の艤装に次々と穴が空いていき腕、足、やがて下半身が千切れるまで奴は撃ち続けた。
「ウッ……カハァッ!?……ッ……リ級…………マタ……貴女ト……」
「いや……いやだ…………やめて……」
そして奴は止めとばかりに離島の頭部を撃ち抜くと再び向き直り私の身体へ砲身を押し当てた。
「フゥ……ソレジャア教エテクレナイ?門長ノ居場所」
「っ……し、知らない……」
今あいつは消息を絶っている、だから私は正直に答えたけれど……。
「ウッソダァ、チューク騙サレナイゾォ?」
「うぐぁ……っひぃ……」
私の答えが気に入らなかったらしく主砲で私の左足を撃ち抜く。
「ノー……響を……放すデース……」
「っ……待ってください……金剛……さん」
助けて欲しい……何で不知火さんが金剛さんを止めるのかが分からない。
私がどうなろうと知ったことではないのかも知れない。
きっとここでこいつに殺されるなら助けるだけ無駄だということかも知れない。
後向きな考えばかり浮かんできて、気付いたら涙が止まらなくなっていた。
「泣イテチャ分カラナイヨォ……エイッ!」
「いやああぁぁぁっっ!!…………ひっぐ……い……痛い……やだっ……やだよぉ……」
痛みと絶望でただ泣き喚いていた私に痺れを切らした深海棲艦が遂に止めを刺そうと私の頭に砲塔を向けた。
全身の組織が死を感じたその時、突然無線の向こうから聞き覚えのある声が入ってきた。
『おイ…………響になにしヤガったテメェ……』
「と…………な……が……?」
「ンー?アハッ!ソッチカラ来テクレルナンテヤッサシー!」
『うるせェ……神だろうガなんだろうガ響に手を出した奴ハ殺ス』
「コワーイ!デモ貴方ニ私ガ倒セルカナァ?」
門長を見つけた深海棲艦は砲を下げ、私を放すと愉しそうに門長の方へ走り出していった。
た、助かった……けど。
護れなかった……これじゃあ長門さんに顔向け出来ないよ……。
離島棲姫が居た場所を見つめながら意気消沈している私に金剛さんがふらつきながらも近付き、優しく私を抱き締めて慰めてくれた。
「大丈夫ヨ響……離島棲姫は守れませんでしたがユーが生きている事が長門にとって最も重要なリザルトなのデース」
「金剛……さん」
「響、私はあの時彼が戻って来たことに気付いていたから後は賭けるしか無かった……とはいえ、助けに行けなかったのは悪かったわ」
「不知火さん……」
少し落ち着いた今なら不知火さんが金剛さんを止めた理由が分かる。
あれ以外に私が助かる方法はなかった……だから金剛さんが動いても無駄死にしてたかも知れない。
……兎に角今は生きている事に感謝しよう。
「さあ、後はミスターに頼みまショウ。歩けますか?」
「私は大丈--っ!」
立ち上がろうと力を入るが、左足に力が入らず尻餅をついてしまった。
「ノー、無理は禁物ネー。よいしょっと……カモーン響?」
「…………ありがとう」
「ノープロブレムデース、さあみんなでお風呂にレッツゴーッ!!」
私は金剛さんに背負われボロボロになった身体を治しに私達は入渠ドックに向かっていると、突然の爆発音が建物中に響き渡った。
私は慌てて周囲を見渡すとあの深海棲艦が向かった方角で巨大なきのこ雲が……。
「……門長……長門さん……
私は呟き、そして直ぐに自分に問い掛けた。
なぜ私はあの男の心配までしているのかと。
だけど納得のいく答えなんて見つからず、結局あいつの中に長門さんがいる可能性があるからだと自分に言い聞かせる事で考えを打ち切った。
もっと活かせたら良かったんですが……技術不足ですね・・・(・∀・i)タラー・・・