響乱交狂曲   作:上新粉

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アンケートの結果2番と4番が同票だった為、新しい試みもやって見たいと思い今回は4番の同時間軸の二つの視点を二話に分けて書く事に決まりました!
アンケートにお答え頂きありがとうございました!!

それでは本編をどうぞ!


第四十番 〜狂〜

遅っせぇ……後どれだけ掛かるんだよ。

こうしている間にも響に何かあったらと考えるだけで身体がねじ切れそうだちくしょう!

 

「おい妖精!まだつかねぇのかっ!」

 

「さっきも言ったじゃないですか。後三時間もしないうちに着くって言ってからまだ十分しか経ってないですよ?」

 

くっそ、せめて響達の状況が分かれば……ってそうか!偵察機を飛ばして確認すれば良いだけじゃねぇか。

 

俺は直ぐ様陸奥に偵察機を飛ばすよう命令した。

陸奥は了承し偵察機を飛ばしたが、十分後に陸奥から返ってきたのは全機撃墜されたという知らせだった。

 

「ちっ、使えねぇな」

 

「あら、そんな言い方しなくてもいいじゃない--ってそれどころかじゃないわよっ!私達の所に来た深海棲艦がこっちに向かって来ているわ」

 

「レ級flagshipの成体の事ですね」

 

「だからあれはレ級じゃねぇ!!」

 

「面倒くさいですねっ、じゃあ改レ級flagshipっていう別個体ですよっ!」

 

つまり名字が同じだけって事か……まあそれなら良いだろう。

 

「んで、そいつがこっちに来てるわけか」

 

「ええ、もう見つかってるなら逃げられないわよ?」

 

隠れられる島でもあれば良かったが生憎そんな島は近くには無いしな。

戦うしかないが勝ち目が無いのがどうにもならねぇな。

 

-勝てる可能性ならあるぜ?-

 

武蔵か……本気で言ってんのか?敵は規格外でこっちは両腕は使えねぇし大破状態だぞ。

 

-無論本気だとも。門長、お前に私の魂をくれてやろう-

 

いや、要らねぇ……つかもう既に改修されてんじゃねぇか。

 

-まあそういうな門長よ。それに確かに改修はされているが、それらは所詮我々の一部に過ぎない。だから我々はこうして自我を持ってるわけだが……-

 

--まてっ!そんな事をしたらお前の自我も記憶も無くなってしまうではないか!それでも良いのか武蔵!--

 

-長門、お前さんは不本意に改修されたらしいが私は元より覚悟の上でここにいるんだぜ?-

 

--だがっ!--

 

うるせぇっ!人の頭ん中で勝手に話を進めんじゃねえ!

ったく……んで?改修すれば奴に勝てんのか?

 

-それは分からん、だけど今のままじゃ確実に死ぬぜ?-

 

--だったらあの時みたく延命させれば!--

 

-今の状況を考えればそれは愚策だ、あの時運良く近くに助けられる奴がいたし敵も油断してさっさと帰っていたから助かっただけだ-

 

--それなら陸奥が--

 

-奴が瀕死の門長と陸奥を逃がすと思うか?ー

 

--くっ…………--

 

-という事だ、お前さん達とこうやって話せなくなるのはちと寂しいが死んでしまっては元も子も無いしな。それに艦載機が出ていない分先日よりは幾分かは可能性があると思ってるぜ?-

 

--武蔵……--

 

-あまり時間もない。さらばだ門長、長門-

 

確かに俺はこんな所で死ぬ訳には行かねぇからな、使わしてもらうぜ。

…………()()()武蔵。

 

-ほぅ……クックッ……ああ、また会えるのを楽しみにしてるぞ-

 

俺は楽しみでも何でもねぇよ。

 

俺は何も考えずに発してしまった言葉を否定する様に毒づくが、あの言葉を最後に武蔵から返事が帰ってくることは無かった。

それと同時に俺の身体は光を放ち始め、徐々にその姿を変えていった。

初めに身体中の傷が無くなり、腕が動くようになった。

続いてズボンの破れも治り、上着は……無くなった。

腰にはサラシが巻かれ両腕には今は亡き四十六センチ三連装砲よりデカイ連装砲が付けられていた。

 

「なるほど、これなら行けるか?」

 

「え……と、門長さん?服は一体どうしたのよ」

 

「あ?消えたな。まあ改装すれば格好が変わるヤツなんて他にも居るだろ?そんなもんだ」

 

陸奥の話を適当に返しながら自分の状態を確認する。

 

先程と比べれば体調も万全だし恐らく強さも比べ物にならないだろう……が、相手が相手だ。油断は出来ねぇ。

 

電探を使い空を確認するが未だに艦載機が向かってくる反応は無い。

相手の考えは分からないが俺は陸奥を迂回させ今の内に砲撃が届く距離まで接近する事にした。

 

接近すること三十分、艤装に付いている通信機から突如奴の声が聞こえて来やがった。

 

『ヤハリ生キテイタカ門長ァッ!!』

 

「なんだぁ?まるで知ってたかみたいな口ぶりじゃねぇかおい」

 

『当然ダッ!俺様ノ左腕ヲ壊シタヤツガアノ程度デクタバルワケネーダロッ!』

 

流石にそれはさっきまでの俺を買い被りすぎだぜ。

自分がどうして助かったかも分かってねえからな!

にしても、奴が少しでも油断していればと思ったがそうそう上手くは行かねぇか。

 

ならばと俺は更に改レ級との距離を詰める。

 

「近付いても勝機は薄いですよ?」

 

「無いよりはマシだ」

 

妖精の忠告は充分承知している。

それでもこっちからの砲撃がほぼ確実に当たらないのなら、一方的に撃たれる前に近付くしかないのが現状だ。

だから俺は奴が接近戦に持ち込んでくれることに賭けるだけだ。

 

更に近付く事十分、俺の期待通り奴はその手で俺を確実に沈めるため接近戦を選んだ。

道中砲撃を一切してこなかった事から冷静さを欠いてるのだろう……ならばと俺は敢えて大振りに右腕を振りかぶった。

 

「ンナノロマナパンチガ当タルカヨッ!!」

 

改レ級は当然の様に俺の拳を避け俺の鳩尾を正確に打ち込んで来る。

しかし、あの時の俺とは違い奴の攻撃に反応出来るようになっていた。

俺は身体を少しだけ動かす事によって急所への直撃を避ける。

 

「ぐっ……効かねぇなぁ」

 

「チッ、小賢シイコトシヤガッテ」

 

それが気に入らなかったのか改レ級は今度は空いた尻尾を使い俺に食らいつこうとして来た。

 

「勝つ為に手段を選んでられる余裕はこっちにはねぇんだよぉっ!!」

 

俺は口を大きく開いた尻尾へと連装砲を付けたままの右腕を思い切りぶち込む。

そして残った左腕で尻尾をがっちりと固定した。

 

「グガァッ!!ナ……ナニシヤガルテメェ……」

 

「勿論てめぇの足を止めて鉛弾をぶち込む為だ」

 

尻尾を捕えられ海面に叩き付けられた改レ級は俺の腕を振りほどこうと必死に尻尾を動かそうとしたり腕を噛みちぎろうとしていたが、驚いた事に地力で俺が勝っているらしく奴は俺の腕から逃れる事は叶わないでいた。

そうしている間に、全砲門を構え終えた俺は右腕以外の連装砲を躊躇うことなく撃ち放った。

 

「ウグゥ……テメェ……イイ気ニナルナヨ……」

 

「次だ!」

 

改レ級の言う事に聞く耳など持たず再装填を終えると再び奴に無数の鉛弾を浴びせる。

 

「クッソガ……コロス……殺シテヤルッ!!」

 

「俺は先を急ぐんだよ、さっさと死ね。次!」

 

三射目、四射目と俺は奴が弱るまで続けた。

やがて改レ級の抵抗が無くなって来たので、とどめとして最後に右腕の連装砲に装填された三式弾を放ち腕を引き抜いた。

 

「グッ……ガァアッ!?コノ俺様ガ……テメェナンカニ……」

 

尻尾の弾薬庫に引火し魚雷諸共尻尾を消し飛ばし、果ては格納庫にまで延焼したのか大量の艦載機がそのフードの中で繰り返し爆炎を上げていた。

 

「門長さん、あれは……倒し……たの?」

 

「ああ、先を急ぐぞ」

 

合流した陸奥の問いに軽く答え響達の元へ向おうととした時、突然背中に衝撃が走った。

 

「ヘッ……油断シタナ門長……」

 

「門長さんっ!?」

 

「な……に?」

 

振り向くと身体の半分以上が欠損し、およそ生きているとは思えない姿となった改レ級が骨すら見えているような右腕で俺の腹を貫いていた。

 

「テメェハココデ死ヌ……テメェノ仲間モ既ニチュークノ奴ガ始末シテイルダロ…………ヒヒッ、テメェラハモウオワリナンダヨッ」

 

『…………すっ……けて……』

 

『モ…………シ中ナンダ……ニシテヨ……』

 

今の声は響……それとこいつらの仲間か?通信機から……いや、それよりも響を助けに行かねぇと……このままだと響が……響が……

 

----死ぬ?----

 

っ……ざけんなっ!んなこと認められるかっ!!

 

俺は自分の下らない考えを否定するかのように改レ級の上半身を背部の主砲で弾き飛ばし先を急ごうとする。

しかしそんな俺の意思に反して俺の足は進む事を拒むかの如く膝から崩れ落ちた。

 

「ぐぅ……っ……どうなってやがんだおい!」

 

「それはそうよ、そんな重症(からだ)でまともに動ける訳無いでしょ」

 

陸奥は俺に肩を貸しつつ穴の空いた腹を指差して答えた。

原因は分かった、だからと言ってこんな所で立ち止まっている訳には行かねぇ。

 

「陸奥、妖精の案内通りに進んでくれ」

 

「え、ええ。分かったわ……でもどうするつもり?」

 

陸奥の問い掛けに俺は何も答えない。

何としても響は助けるとして、奴を倒すにはどうすればいい。

改レ級より弱ければまだどうにかなるかもしれねぇがもし奴以上なら……

 

結局何も浮かばず足だけを進めているとさっきからノイズを放っていた通信機が再び繋がった……と同時に響いた発砲音が俺の鼓膜を僅かに震わせた。

 

『いやああぁぁぁっっ!!』

 

だがその発砲音に紛れて彼女の悲鳴があったのを俺は聞き逃さなかった。

 

『…………ひっぐ……い……痛い……やだっ……やだよぉ……』

 

「おイ…………響になにしヤガったテメェ……」

 

あいつ……響を傷付けやがったな…………赦さねェ……強さなんか関係ねぇ……テメェらはタダじゃ殺さねえからナ。

 

『ンー?アハッ!ソッチカラ来テクレルナンテヤッサシー!』

 

奴の調子ニ乗った口調ガ俺の怒りを更に加速させル。

 

「うるせェ……神だろうガなんだろうガ響に手を出した奴ハ殺ス」

 

『キャアコワ〜イ!デモ貴方ニ私ガ倒セルカナァ?』

 

アイツが響を泣かセ響を傷つけ響をコロソウとしやがっタ、ナのにあイツはタノシそうはしゃいデやがル……ころす……--コロス--

 

「と、門長さん?貴方また姿が……それにその艤装は……」

 

「あら、追い出されてしまいましたか」

 

俺の殺意ニ呼応スル様に艤装が姿ヲ変えテイく。

腹ノ穴は塞ガリ全体が黒ク染まル。

背中には俺の身長ノ倍はあるデアロウ巨大な異形があリ、そしてソノ両肩には腕に持っていル連装砲と同じ大キサノ連装砲が二基ずつ、それと副砲ガ幾つも並ンデイる。

その姿は見るモノガ見ればひと目でワカル程に深海棲艦と化しているダロウ。

 

ダガ、姿ガ変わロウガ妖精ガ居ナカロうがヤル事ハ変わらネェ……奴ラヲ殺ス。

 

陸奥カラ腕ヲ離シ一人向カウ。

 

「門長さん……」

 

「今行っても巻き込まれるだけですよ」

 

少し進ムト砲弾ガ止マナイ雨ノヨウに降リ注グガ、ソノ程度ノ砲撃ナド歯牙ニモカケずニタダ突キ進ム。

 

「ウソォ!?カッタァ〜イ!ジャアコレナラドウカナァ?」

 

続イテ奴ハ艦載機ヨリモ早イ魚雷ヲ一斉ニバラ撒クガ、自分ニ当タル物ダケヲ副砲デ正確ニ撃チ抜キ爆破サセル。

 

「スッゴォ〜イッ!チュークビックリィ!」

 

余裕ヲ見セル深海棲艦ニ今度ハコッチカラ攻メル。

 

「シ……ネ……」

 

「ワタシニソンナ砲撃ハアッタラナイゾォ?」

 

軽々ト避ケテイクガ構ワズニ撃チ続ケナガラ接近シテイク。

ソシテ奴トノ距離ガ四キロヲ切ッタ時、俺ガ水平ニ放ッタ内ノ一発ガ奴の右腕ヲ捕ラエタ。

 

「キャアッ!イッタァ……マズッタナァ」

 

奴ノ動キガ一瞬止マッタノヲ見計ライ、両腕両足ヲ主砲デ吹キ飛バス。

 

「ウゥッ……ウソッ、ソンナ……チュークガ負ケルノ!?」

 

両腕両足ヲ失イ動揺スル深海棲艦ノ頭ヲ掴ミ上ゲ左腕ノ主砲ヲ突キ付ケル。

 

「今スグテメェノ仲間ヲ呼ベ、全員俺ガコロス」

 

「ウグッ……良イノカナァ?ソンナ事シテモ返リ討チダヨ」

 

「良イカラ呼ベ」

 

右手デ吊ルシタ奴ノ胴体ヲ左腕ノ主砲デ殴打シタ。

 

「ウヴゥ…………残念……ダケド呼ベナイヨ、()()()()()()()()()

 

「ア"ア"?」

 

直後、目ノ前ヲ圧倒的ナ熱量ト光ニ包マレタ。

記憶ニアルコノ光景、アノ時ノ奴カ……

暫クシテ視界が白カラ灰色ニ変ワッタソノ先ノ俺ノ手ニハ先程ノ深海棲艦ノ髪ノ毛、更ニ向コウニハアノ噴進砲ヲ放ッタト思ワレル深海棲艦ガコッチヲ観察シテイタ。

 

「アレ?ホントニ生キテル!?ヤルジャンアンタ!」

 

「次ハテメェダ……覚悟シロ」

 

 

 




いやぁ大変でした(;^ω^)
ただ書き方としては上手く書ければ良いんじゃないかなぁとは思いましたね。
読み手としてはどう何でしょう?アンケートは怖いんで取りませんがw

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