「摩耶さん、ご馳走様」
「ごちそう様なのです」
「ご馳走様」
「ごちそーさまー!」
「ご馳走様です、摩耶さん」
「美味しかったわ、ごちそうさまっ」
「ご馳走様でした」
「おう、お粗末様。今日もあいつらはいるけど攻撃すんじゃねぇぞ」
「「はーい」」
朝食を終えた私は姉さんと一緒に工廠へ
「明石さん、頼んでた物は出来たかい?」
「あら響ちゃん、勿論出来てるわよ?」
そう言って明石さんは奥からある装備を持って来てくれた。
「はい!これが
私は明石さんから新装備を受け取りまじまじと眺める。
「……なんで猫耳にしたんだい」
「嫌ですねぇ、猫耳ではなく狐耳ですよ?」
明石さんはよく分からない所を訂正するがそんな事はどうでもよかった。
「これは……私にはちょっと」
「え〜、付けてみましょうよ。似合いますって絶対!」
「そうそう、折角明石さんが作ってくれたんだから装備しなきゃ!」
「それは…………そうだけど」
流石に恥ずかしい……。
「そ、それにほら!恥ずかしかったら帽子で隠せば良いじゃないっ」
「……うん、分かった」
姉さんに諭され私は渋々新装備を装着する事にした。
「や、やっぱり私にはこういうのは似合わないだろう?」
「そんな事無いわ!とても似合ってるわ!(きゃあああ!みみがぴくぴくしてるぅ!撫で回したい……怒るかしら?)」
「良いじゃないですか!バッチリですよ!」
「どうしたんだい姉さん?目が怖い……」
「え?ああいえ何でも無いのよ……って明石さん!響を撮るのは禁止よっ!」
「いやいや、これは試作品の経過観察の為に撮ってるだけですって。あ、暁さんも現像したら要ります?」
「そういう事じゃないでしょ!……後で見繕ってくれる?」
「姉さん……?あの……訓練に」
「へっ!?そ、そうね。早速訓練に行くわよ」
「戻ったら感想聴かせて下さいね!」
「……分かった、ありがとう明石さん」
不満が無いといったら嘘になるけど、無理を聞いてを作ってくれたんだからこれ位は我慢しなくちゃ。
それに……姉さんに褒められるのは、嫌いじゃない。
「さ、行くわよ響っ!」
「えっ!?ちょっと!」
そう言うと姉さんは惚けていた私の手を引いて海辺へと駆け出していった。
「ごめんなさい、少し遅くなっちゃったわ」
「いえ、不知火達も今来たと……」
「あれ?響、随分可愛いカチューシャ付けてるね!」
「これは……気にしないでくれないか」
「何で?すっごい似合ってるよ?」
「いや……その」
「すっごい可愛いよ響っ!」
「響ちゃん可愛いのですっ」
「…………」
うぅ……これはなんて拷問なんだ……顔から火が出そうだ。
「おい、それ位にしないか。響を困らせる為に集まった訳じゃ無いだろう」
「松……!」
その瞬間、松が女神の様に輝いて見えた。
「あっ!松妬いてるんだ〜。大丈夫だよぉ松もとっても可愛いって!」
「なっ、どうしてそうなる!というかお前が言うんじゃない、お前も同じようなもんだろうがっ」
「あ、でも明石さんが松ちゃんの素顔はとっても可愛いかったって言っていたのですっ!」
「明石の奴余計な事を……ええい!とにかく訓練を始めるぞ訓練を」
「松の言う通りだよ。早く訓練を始めよう」
これ以上松に飛び火する前に私は本来の目的である訓練に移ろうと姉さんの袖を引っ張り海へ出ていった。
「もうちょっと松を弄りたかったかなぁ」
「くだらん事を言っていないで行くぞ竹」
「不知火さん?皆行ってしまったのてすよ?」
「……っは!?し、不知火に落ち度はありませんっ」
「?」
「あ、いえ……何でもないわ、行きましょう」
「ねえ響、電探の使い勝手はどうかしら?」
姉さんに訊ねられ私は電探を起動してみた。
「うん、問題ないよ。ただ索敵距離が私には広すぎるかな」
「それもそのはずです。それは不知火が掛けてきた
「ふ〜ん、因みに性能はどんな感じなの?」
「えと……索敵距離は三十五キロ、水中索敵距離が十キロかな」
「え、それ何処の戦艦装備よ」
「いや、ここまでの物を頼んだつもりは無かったんだけど……」
「いいじゃないですか、
まあ、確かに精度が良ければ撤退もしやすいけれど……
索敵距離が五十キロもある電探って……何の為に作ったんだろう。
「なるほどな……よし、響の新装備の確認も終えたし早く訓練を始めよう!」
「松はせっかちさんだなぁ、焦らなくても訓練は逃げたりしないよ?」
「馬鹿者っ!敵はいつ現れるか分からんのだ、そんな事では敵を目の前にしてなす術なくやられてしまうぞ!」
「松の言う事は最もですが、肩肘張りっぱなしではいざという時に疲れてしまいますよ?」
「……不知火、流石の私もお前には言われたくないな」
「?不知火は何時でも自然体ですがなにか?」
「それが自然体だってぇ!?私は認めんぞっ!」
松達の掛け合いを姉さんや電と眺めていたけれど、私は今日も吹雪さんの姿が無いことを寂しく思っていた。
「ん?どうしたの響、何かやな事でもあった?」
「姉さん……吹雪さんは私を恨んでるのかな」
「へ?どうしてそう思ったの?」
「だって、吹雪さんは訓練に来てくれないし……それに私がもっと前に解体されていれば司令官も仲間も失わずに済んだかも知れない」
勿論あの男が他の駆逐艦を拐ってた可能性もあるけど……もし長門さんが私を助ける為に連れ出したのだとしたら……。
「響、顔を上げなさい」
「姉……さん?」
姉さんは普段とは違う強めの口調で私を呼んだ。
私は恐る恐る顔を上げると、突然両頬をつまみ上げられた。
「ね、ねぇふぁん!?」
「なに訳わかんない事言ってんのよっ!この口が悪いのねっ、えいっ!やぁっ!」
「いひゃい!いひゃいっふぇねぇふぁん!」
「口答え禁止!貴女ね、冗談でも言って良い事と悪い事があるわ!!」
「わ、わらひはじょうらんなんふぇ」
「尚悪いっ!」
「ひっふぁらないふぇ〜!」
「響……わかるでしょ」
不意に姉さんの手が私の頬を離れていった。
「姉……さん?」
「私もこの体になって知ったわ、姉妹を失う辛さを……だから、自分が居なけれはなんて言わないで頂戴」
「……だったら、あの時私達を一方的に攻撃したんだいっ!」
確かに姉さんが来てくれたらどうにかなる訳じゃ無かったかもしれないけど……でも。
「だからこそ行けなかったのよ……私までそっちに行ってしまったら鎮守府で待ってる雷達にこれ以上辛い思いをさせてしまうじゃない」
「姉さんも結局は私より雷達の方が大事なんじゃないか」
「私にとって皆大切な妹なの!どっちが大事かなんて比べられるわけ無いじゃないっ!!」
「姉さん……」
「本当はあの時一緒に来て欲しかった……でも、此処にも大切な仲間がいるんじゃ無理に連れ戻せないじゃない。それでも大切な妹を放ってなんておけないわ……だから司令官の馬鹿な進軍命令にも何も言わずに参加したの、雷達も連れてね」
私は勘違いをしていたのかも知れない。
姉さんは私を沈める事に謝っていたのだと思っていた。
だけどあれは私と一緒に居られない事に謝っていたんだ。
「でも私は……雷達は護れなかったわ……ごめん……ね……ひびきぃ……」
先程まで気丈に振舞っていた姉さんは私に謝ると糸が切れたように泣き崩れてしまった。
「ど、どうした暁!」
「何かありましたか?」
声を聞いた松達が心配そうに姉さんの元へ駆け寄ってきた。
「だ、だい……じょうぶ……ひっぐ……よ……な、ないでなんがいないわっ!」
「いや、どうみてもない……」
「まつうっしゃいっ!ズズッ……ひびき、良いこと?吹雪は貴女の事を恨んでなんかいないわ。だだ、ここの皆とどう付き合って行けばいいかわからないだけ。だから次そんな事言ったら許さないんだからっ!」
「う、うん。分かったよ姉さん」
「二人共大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ」
「問題ないわっ」
「解りました、今日は二組に別れて対抗演習を行いましょう」
「演習か、我々の腕の見せ所だな。行くぞ竹っ!」
「今回はお二人には別れて頂きます」
「なっ、なん……だと?」
「確かにあなた達の連携は低練度とは思えない程に洗練されたものですが、艦隊戦は基本的に六人一組で行うものよ。だから他の仲間との連携も出来るようにしなさい」
「む、一理あるな……了解した」
「響、あなたは…………ハァ、まあいいでしょう。それでは私の方は松と電。そっちは旗艦暁に響と竹の三対三の対抗演習を始めます」
不知火さんがこちらを見て何故ため息を吐いたのかが解らずに姉さんを見ると私の手が姉さんの袖をしっかりと握っていた事に気づいた。
「あ……いや、これはそういうわけじゃ……」
「別に構いません、そこまで練度に差がある訳でもありませんし。但し、例え演習でも不知火は負ける気はありませんので」
「スタンドプレーはやめなさいよねっ!」
「当たり前です、そちらこそ一人で突っ込んで来ないように」
「突っ込まないわよっ!」
「では、位置に着いたら連絡します」
不知火さん達と別れた私達も開始位置へと移動を始めた…………忍び寄る不穏な気配には気付けるはずもなく。
非日常も続ければ日常と化すっ!(暴論)
次回!!
美少女だらけの対抗演習!前作ぶりにまともな艦隊戦となるかっ!?