響乱交狂曲   作:上新粉

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響と過ごすハートフルなストーリーも書きたいなぁ


第二十九番

 食堂を飛び出した響は一人基地裏の海岸を歩いていた。

 

「……やっぱり信じられないよ、あんな乱暴で自分勝手な男に長門さんの魂が宿っているなんて」

 

いつでも自分を守ってくれた長門さんだったら誘拐なんかしないし、仲間に酷い事をしたりなんかしないはずだ。

そう考える響にとって、彼女(長門さん)(門長)はあまりにもかけ離れた存在であり納得など出来る筈が無かった。

 

「ア、アノッ!アナタハソコノ基地ノ艦娘デスカ!?」

 

長門と過ごした日々を思い出して泣きそうになっていると突如誰かの呼び声が耳に入って来た。

響は涙を拭い声のする沖の方へ振り向くと、見たことのない位大きなワ級が此方へ向かって来ていた。

 

「深海棲艦っ!?ど、どうしよう……やっつけないと」

 

「マ、待ッテ下サイッ!私ニ戦闘ノ意思ハアリマセン!」

 

艤装を展開しようとする響に対してワ級は武装解除したまま慌てて両腕を振り上げる。

武装解除したまま近づいてくるワ級を警戒しながら響は訊ねた。

 

「お前はなんだ、何しに来たっ!」

 

「ワタシハ門長サンヘ報酬ノ運搬ヲ任サレテイルフラワート言イマス、ッテソレ所ジャナインデス!門長サン達ニ伝エテ急ギココヲ離レテ下サイ!!」

 

「えっ?」

 

響にとって深海棲艦が武装解除して近づいてくる事も、ましてや避難勧告をしてくる事も今まで経験した事の無い体験だった為に理解が追い付いていなかった。

その為、遥か向こうから押し寄せるエンジンの音に気が付くのが遅れてしまった。

 

「逃ゲテ下サイッ!!」

 

「爆撃機っ!?いつの間に……!」

 

目の前の空を覆い尽くすように百を超える爆撃機の編隊が次々と爆撃を始めており、響の周りも次々と爆風に晒されていた。

 

「被弾!?いやだ……沈みたくないよ……」

 

響は無我夢中で撃ち続けるが彼女の練度では相手の爆撃機に掠りすらせず、響の装甲は一方的に削られていった。

 

「うぅ……ながとぉ……」

 

「大丈夫デス、門長サンハ必ズキマス。ソシテ……ソレマデハワタシガアナタヲ護リマスカラ」

 

何とか響と合流したフラワーは、響を背中に匿いながら単装砲と機銃を駆使して爆撃機を少しずつ墜としていった。

 

「な……んで……?敵なの……に」

 

「門長サンノ所ノ艦娘サンデショウ?私達ノ同志デアル彼ノ仲間ハ私達ノ仲間モ同然デス。仲間ヲ庇ウノハ艦娘モ深海棲艦モ同ジデスヨ?」

 

そんな彼女も所詮は補給艦であり、響を庇いながらの戦闘は直ぐに限界を迎えた。

 

「ウグゥッ……中破シテシマイマシタカ、コノママデハ……」

 

このままでは響諸共やられてしまうかと思われた……その時。

フラワーと響へ向かっていた爆撃機が突如煙を上げて次々と墜落していった。

 

「へっ、この程度なら防空巡洋艦たるこの摩耶様の相手じゃねぇな!!」

 

「摩耶さん!?」

 

響が振り向くと、岩場の上に立ち機銃を構える摩耶の姿があった。

摩耶を目標に捉えた爆撃機達は物量に任せ一気に摩耶の方へ押し寄せた。

 

「摩耶さん危ないっ!」

 

練度だけでいえば響よりも低い摩耶では幾ら防空巡洋艦であってもあれだけの数相手には手の打ちようが無い。

しかし摩耶は余裕の表情を崩さずに爆撃機を見据えていた。

 

「おっし、今だっ!!」

 

そして摩耶の合図と共に轟音が響き渡った。と同時に百近く飛んでいた爆撃機は跡形もなく消え去っていた。

 

「三式……弾?」

 

「ひびきぃっ!大丈夫か!?」

 

岩場の下から出てきた門長は一目散に響の元へと走った。

 

「門長サン、申シ訳アリマセン……ワタシガ不甲斐無イセイデ彼女ニ怪我ヲ負ワセテ……」

 

責任を感じたフラワーが門長に謝ろうとするも、門長の雰囲気が一変した事に気付いたフラワーは思わず言葉を詰まらせてしまった。

 

「……あそこの奴らだな」

 

「ハ、ハイッ!」

 

「そうか……摩耶」

 

「おう、なんだ?」

 

「響とワ級を入渠ドックに」

 

「おう、わかった……」

 

摩耶は響を背負い、フラワーと一緒に入渠ドックへと向かった。

 

「ミスター門長?ソロでファイトするつもりデスカー?」

 

「ああ、お前らは此処で敵航空機の迎撃だ。俺は敵の親玉に響に手を出した事をあの世で後悔させて来る」

 

敵別働隊の撃墜に当たっていた金剛達に指示を出すと門長は単騎で敵空母機動部隊へと突貫しに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「またか……三式弾用意」

 

ありったけの憎悪を込めて鬱陶しい爆撃機(ハエ共)を蹴散らしながら徐々に距離を詰めていく。

 

「一人いれば十分だ」

 

敵機動部隊との距離が三十キロを切った所で俺は徹甲弾へ切り替え、敵艦隊へ向けて砲撃を開始した。

四十秒おきに爆音を轟かせながら電探を起動させる。

 

「撃破二、目標は残り三か」

 

敵艦艇を二隻沈めた所で俺は更に速度を上げ、一気に距離を縮めていった。

途中迫りくる砲弾を避け更に二隻を沈め、遂に敵機動部隊が見える距離まで到達した。

 

「クッ、ウワサドウリノバケモノメ!ドウホウノカタキハトラセテモラウゾ」

 

左目に蒼い炎が揺らめく空母が帽子から艦載機を発艦させようとしたタイミングを狙って帽子に目掛けて三式弾を撃ち込んだ。

 

「グゥッ……グガッ!?」

 

発艦口の目の前で炸裂した三式弾は帽子の中の航空機や航空燃料なんかに誘爆し、激しい爆煙と共に上半身を失った空母は海の中へ消えて行った。

 

「さあ、後はお前だけだ」

 

「ハハ、マサニバケモノダナ」

 

俺は戦意を失った雷巡の額に砲口を向けて問い詰めた。

 

「てめぇらの親玉は何処にいる」

 

「…………」

 

「答えろ、さもなくば殺す」

 

「……フフフ、ドウセハナシタトコロデワタシハコロサレルノダロウ?」

 

「返答次第だ」

 

「マアイイ、ワレワレノヤクメハハタサレタ」

 

「どういう事だ」

 

「ソウソウワレワレノボスニツイテダッタカナ?アノカタハリトウノヒメ、チュウブカイイキノイチブヲオサメテイル」

 

「離島……そいつは何処に居る」

 

「サアネ、ワタシノヨウナゼンセンノヘイシゴトキガシッテイルハズナイダロ?」

 

「そうか、ならば死ね」

 

俺は躊躇なく引き金を引き雷巡の頭は跡形も無く消し飛んでいった。

 

「港湾の奴なら何かしら知ってるだろう」

 

敵を殲滅した俺は補給の為、一度基地へと帰投した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ハートフルってなんなんでしょうねぇ?

修正:
チ級とヲ級のセリフから漢字を外しました。

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