響乱交狂曲   作:上新粉

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ね、ねむい......あまり徹夜はするものではないな。
この話には未実装艦が登場しますので注意喚起しておきます。(レ 次回からは表示しない)

追記:夕月の挿絵を追加しました。
気が向いたら見てくれると嬉しいです。


第二番

 翌朝、俺は工廠へ行くと妖精達に狩りの道具を作れないか聞いてみた。

 

「つくろうにもしざいがないです。」

 

「やっぱそうか......どっかから持ってこないといけないわけか。」

 

「ちかくのしまにねんりょうならわいてますよ?」

 

「お、燃料が近くにあるのは有り難いな。」

 

ボーキサイトとか言うのは良いとして後は弾薬と鋼材か......

 

「そもそも弾薬とかどこでてに入れればいいんだ......」

 

「つうじょうはだいほんえいからしきゅうされるぶんとごえいにんむなんかのほうしゅうでにゅうしゅしてます。」

 

「このへんに仕事なんてくるか?」

 

「このへんにはしんかいせいかんしかいないねぇ。」

 

「......深海棲艦に補給艦が居なかったか?」

 

「わきゅうがいるよぉ?」

 

深海棲艦からなら問題ない......か?

 

「ワ級......いけるか?」

 

「いまのめんばーじゃきついのです。」

 

「せめてせんかんのしゅほうがないとねぇ。」

 

「駄目か......」

 

じゃあ敵の駆逐艦を拿捕して......動きを封じる方法がないか......

 

「だあもう解らん!どうすりゃいいんだっ!」

 

「いい方法がありますよ?」

 

一人の妖精が不敵な笑みを浮かべ提案してきた。

 

「......なんだ」

 

俺はそのあまりにもおぞましい雰囲気に思わず息をのむ。

 

「ここに対艦娘用の麻酔弾が20発あります。そして翌日一○○○に南方海域前線基地に艦娘が護衛する輸送船団が到着します。」

 

その妖精は不敵な笑みを崩さずこっちを見ている。

後はわかるだろとでも云うように......

 

「俺にこれ以上罪を重ねろと?」

 

「いい人ぶってたら彼女達を護っていくなんて出来ませんよ?」

 

「ぐ......」

 

いい奴ぶるつもりはないが響達にこれ以上嫌われる様なことはしたくない............だが.....。

 

「俺が彼女達をここへ連れてきてしまった以上彼女達の生活の安定が最優先だ。」

 

「覚悟は決まりましたね、では私がついていってあげましょう。」

 

妖精は俺が持っている連装砲へと跳び移ると溶けるように姿を消した。

 

 

 

 

 「あ、門長さんお早うなのです!」

 

電ちゃんは既に起きて身なりを整えてソファーに腰掛けていた。

響は起きたばかりなのか髪もボサボサで寝惚け眼ながらもしっかりと俺に敵意を向けている。

 

「おはよう響、電、今日も可愛いなお前らは。」

 

「......。」

 

「?」

 

うっし!気合い入った!

 

「じゃあちょっと出掛けてくるわ。」

 

「何処に行くのですか?」

 

「お?ああ遠征だよ遠征。明後日の昼前には戻るから待っててくれ。」

 

「遠征なら私達が行けるのです。」

 

「あー......これは危険な任務だからね。二人を危険な目に会わせたくはないんだ。」

 

まあ嘘は言ってないよな。

 

「それなら門長さんの方が危険じゃないですか?」

 

ん、今のは俺の身を案じてくれたんだよね?ちょっと違う意味に聞こえたのはきっと俺の心が汚れてるせいだろう......

 

「大丈夫、無理だと判断したらすぐに撤退する。」

 

「ですが............分かったのです。」

 

「よし、いい子だ。」

 

そう言って電の頭を撫でようとした俺の右手は響の手刀によってはたき落とされた。

 

「電に触れるなっ!」

 

「響ちゃん?」

 

くっ......地味に痛いしこれ以上無理に触ろうとしても響に嫌われていく一方なので今回も諦めることにした。

 

「じゃ、飯とかは一応木の実や果実と後は何故か鎮守府内に菜園が有ったから好きに使ってくれ。」

 

「了解なのですっ!」

 

俺は二人に手を振りながら部屋を後にした。

 

「ボートの燃料を補給してから行きましょうか。」

 

「そういや燃料も加工が必要だよな。」

 

「そこは私が現地で加工するので問題ありませんよ。」

 

向こうに加工施設でもあるのか?

妖精に案内されるままに向かうと施設も何もなくただ原油が湧き出ているだけだった。

 

「なあ......ほんとに此処で加工出来んのか?」

 

「勿論です、そのための私ですから。」

 

すると妖精は何処からかパイプを取りだし両端を原油とボートの燃料タンクへ繋ぎ、みるみるうちにパイプの中を原油が通り抜けていく。

 

「......これ原油がそのまま入ってないか?」

 

「このパイプの中で加工してますから。」

 

なんだその便利道具......まあどうでもいいか。

 

「補給完了です、行きますよ。」

 

「ああ、行くか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝○九○○南方海域前線基地近海。

 

「あーあ、今月の支給はこんだけかぁ。」

 

「これじゃあ遠征を繰り返さないと基地がまわらないぴょん」

 

「そういうな卯月、望月。このご時世何処だって厳しいんだ。」

 

夕日を連想させるような赤みがかった髪をポニーテールに結わっている少女が不満を漏らす二人を宥めている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「夕月の言う通りクマー、本土の奴等もぬくぬくするのに忙しいんだクマー。」

 

「球磨まで士気を下げるようなことをいうな......ってなんだあれは。」

 

ポニーテールの少女、夕月は電探に一つの不可解な反応を発見した。

 

「球磨、何者かが凄い速度で此方に来ているぞ。」

 

「敵艦かクマ!?」

 

「いや、深海棲艦にしては小さすぎる。それに五十ノット近く出ている。」

 

「うひゃあぁ、島風より早いっぴょん。」

 

「取り敢えず水偵を飛ばしてみるクマ。」

 

球磨が艦種を特定するため水偵を発艦させた。

暫くすると球磨から気の抜けたような返事が帰ってきた。

 

「......只のボートだクマ。」

 

「それなら安心だぴょん。」

 

「ちょっと待て、それはおかしくないか?」

 

「別にただ漂流したか遊んでるかのどちらかクマ~」

 

「漂流なら助けた方がいいわねぇ。」

 

「助けに行こうよっ!」

 

ボートがこんなところに居ることに疑問を抱かない球磨達に夕月は自分がおかしいのかと頭を抱える。

 

「......所属不明艦艇視認距離に入るぞ。」

 

「ほら、只のボクマァッ!?」

 

「あぐぅっ!」

 

球磨がボートを指差し夕月に言って聞かせようとした瞬間、二発の砲弾が球磨と望月へと直撃しそれぞれ彼女達を包み込むように白い煙が立ち上がり球磨達は夢の中へと抜錨を始めた。

 

「球磨と望月がやられた......卯月!睦月!如月!全員正面警戒っ!ボートから砲撃されたぞっ!」

 

「あらぁ、漂流者じゃなかったのねぇ?」

 

「およ?漂流者を装うなんてゆるさないよっ!」

 

「いや、相手は何も言っていないんだが……まあいい、行くぞっ!」

 

「う~ちゃんが沈めてやるっぴょん!」

 

全員で一斉砲撃を始めるも既にボートから次々と放たれる砲撃を受け一人また一人と夢の中へ誘われていく。

 

「むにゃ……如月ちゃぁ~ん……zz」

 

「う~ちゃんお腹一杯だぴょん……zzz」

 

「卯月と睦月がやられたか、しかしなぜ催眠弾なんだ?」

 

夕月が少しばかり考えに意識がそれたその一瞬を狙い澄ましたかのように敵の砲弾が襲い掛かる。

 

「夕月ちゃん危ないわっ!」

 

「しまっ!?」

 

夕月は砲弾があたる直前に如月に押し出され尻餅をついた。

 

「如月っ!」

 

「すぐに……司令官に……zzz」

 

「くっ……分かった。」

 

「まて。」

 

司令官に報告する時間を稼ぐために距離を取ろうとする夕月をボートに乗った男は呼び止めた。

砲門は既に構えられておりとても逃げ切れる状態ではなかった。

 

「……なんだ。」

 

「輸送船を置いて全員連れて撤退しろ。」

 

「これは俺たちの命だ、貴様みたいな輩に易々と渡せるものではない。」

 

男を性質の悪い強盗だと理解した夕月はその要求を却下する。

しかしこのままでは全員眠らされ輸送船を奪われた挙句全員揃って深海棲艦に沈められてしまうであろうことは夕月も理解していた。

 

(どうしたものか……)

 

十分程の膠着状態を破ったのは男であった。

 

「あ~……じゃあ輸送船についてる小型艇にボーキサイトは要らんから他の資源を三分の一ずつ積んでくれ。」

 

「なっ!?」

 

まさか強盗犯から妥協案が出てくるとは思っていなかった夕月は思わず声を上げてしまった。

 

「しまっ!」

 

先程のように此方の隙を的確に狙われると確信した夕月は必死に構え直しながらも頭の中で艦隊の皆に謝っていた。

 

(こんな場面でっ!すまん……卯月……皆っ!)

 

「お、どうした?」

 

「え……?なぜ何もしない。」

 

「いや……何をしろと?」

 

「先程の実力なら今の俺の隙をついて撃ち込む事も出来ただろう。」

 

夕月の言葉を受け男は自分の構えてる連装砲と夕月を見返して夕月が言っている意味を漸く理解した。

 

「ああ、わりぃわりぃ。別に逃げられると困るから呼び止めるために構えてただけで別に隙を伺ってたわけじゃねぇよ。」

 

「なぜだ?」

 

「いや、お前らも全部取られたら大変だろうし俺も眠れる少女達を海に放ってはおけないしな。」

 

「ふっ……強盗にも人の心があるというのか?」

 

「俺だって好きでこんな事してる訳じゃ無いしなぁ……。」

 

「何か訳有りのようだな、生活に困っているなら俺達の基地へ来ないか?」

 

夕月は男に提案を持ちかけるが男はばつが悪そうに頭を掻きながら答える。

 

「う~ん......有り難い話なんだが犯罪者を拠点へ連れてくのは止した方がいいぜ?」

 

「なに、未遂なら問題ない。幸いまだ司令官には報告し......。」

 

夕月が話終える前に男は連装砲を夕月へ向け直す。

 

「なっ!?」

 

「嬢ちゃん、素性も知らない相手へ無闇に情報を与えない方が良いぜ?」

 

「くっ......。」

 

(これでは俺も人の事は言えないな......)

 

「ま、そういうこった。俺は必要な資材が入りお前らは強盗に襲われながらも無事に帰投でき資材も三分の二は守った。それでよしとしようじゃねーか。」

 

男は砲門を下ろすと夕月に微笑みかけた。

 

「ああ、肝に銘じておく。」

 

「よしっ、これで完了か。悪かったな。」

 

小型艇への荷積みが終わると男は夕月に一言謝罪し南方の更に奥へと姿を消した。

 

「あっちはたしか............っと、先ずは卯月達を輸送船に乗せないとな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あ~......彼女達とお近づきになりたかったなぁ。」

 

「そんなことしたら一瞬で捕まりますよ?色々な意味で。」

 

駆逐隊(チームロリ)の皆(軽巡?俺の視界には映らんな)と別れて早三時間、俺は悶々し続けていた。

 

「ああでもあんな断り方したら絶対嫌われたよなぁ......」

 

「ああもう五月蝿いですね。資材が有るんだから建造すれば良いじゃないですか。」

 

「妖精さん流石っ!そうだそうしよう!早速帰ったら建造だ!」

 

「はぁ......全く......。」

 

にしてもあの子......夕月とか呼ばれてたか......何か他の駆逐艦とは雰囲気が違うんだよなぁ。

顔立ちは幼いのに言動が俺に近いものを感じるんだよな......まあお陰で気楽に話せたからいいんだが。

ま、今はこの資材を使い道を考えながら帰るとするか!

こうして俺は爛々気分で真っ暗な海の上を猛スピードで駆け抜けていった。

 

 

 




何となく登場させたかったのです。
私の番外編を読んでいなくても問題は特にございませんのでご安心を。

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