響乱交狂曲   作:上新粉

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くっ......まさか夏風邪がこの間の台風の様に帰ってくるとは。
しかし、遂にこの日がやって来た!
この上新粉、半月待ったのだ。
     ↓
    半月後
が、鎧袖一触とは正にこの事......(残高ェ......)

あ、嫌な未来が見えた......寝よう。


第二十六番

 修復明けの朝、何を企んでるか知らねぇが摩耶が俺の分まで朝食を用意しているらしい。

正直毒でも盛ってんじゃねぇかと心配だったが、長門曰く艦娘に効果のある毒はこんな場所で作れる様な物では無いらしいので一先ずは信用することにした。

 

「お、早いなお前達」

 

「てめぇが遅ぇんだよ」

 

「門長さんがお寝坊さんなのです」

 

いやぁ、電ちゃんにそう言われたら認めざるをえないな。

 

「全く......ほら、さっさと取りに来いよ」

 

「おう、って朝からカレーか?」

 

「んだよ、金曜の朝はいつもカレーって決めてんだ」

 

ああ、時間の感覚を失わない様にだったか知らんが別に朝じゃなくても良くね?

と思ったが誰一人として疑問に思ってなさそうなので口に出すのは控えることにした。

 

「んで、俺の分まで用意するなんてどういう風の吹き廻しだ?」

 

俺は摩耶からカレーを受け取ってから摩耶へ質問を投げ掛けつつ努めて自然に響の隣の席を確保した。

 

「そ、それは......吹雪達の事を聞く為......だ」

 

「そうか......なっ!?」

 

な、なんと言うことだ......一瞬目を離した隙にさっきまで隣にいた筈の愛しのマイエンジェルが遥か先の席へと飛び立ってしまったぁ!!?

 

「ん、どうし......ああ、そういうことな」

 

「完全に自然な流れだったはず......なぜだ」

 

「まあ、響にも思うところが有るんだろ。気長に待ってやりゃあ良いじゃねぇか」

 

成る程、確かに言われてみれば出かける前より姿が見れる分距離が近くなっている気がしなくなくもないな。

やはり暁達と会えたことが嬉しかったのだろうか。

 

「摩耶にしては良いこと言うじゃねぇか」

 

「一言余計だっつーの。つかそれより吹雪達はどうしたんだよ、また拐ったのか?」

 

「人聞きの悪いこと言うんじゃねぇ、今回は同意の上だ......よな?」

 

俺は暁達の方を見るがあからさまに敵意を返してきていた。

 

「生きるか死ぬかのニ択を迫られその上響さんを人質に私達に同行することを強いておいて同意の上ですか......」

 

「え、ちょっと待って。俺そんなこと一言も言ってなくね?」

 

「まじかよ......見損なったぜ門長」

 

「酷いのです」

 

「うっわ......鬼畜だね」

 

「いやまて!今のは流石に弁解させてくれ」

 

電や竹達の冷めた視線が超絶痛すぎる。

このままでは僅かに残っていた筈の俺の信用が跡形もなく消え去ってしまう!

 

「た、確かに根本的原因は俺かもしれない......だが!直接的に吹雪達を追い詰めたのは宇和の掟破りの無理な進軍と謎の深海棲艦だっ!」

 

「そうなのか?」

 

「まあ......否定はしません」

 

「次に俺は響を人質に取ったりはしないっ!」

 

「な、なによっ。私ははっきりと聞いたわよ!?」

 

「それはな、見知った仲間といた方が良いんじゃないかと思ったのと......是非とも暁達に此処へ来てほしかったから言っただけで他意はないんだっ!」

 

「な、なによそれっ。暁を騙そうとしたって無駄なんだから!」

 

「騙すつもりはない......ただ、誤解させてしまったのは済まないと思っている」

 

「し、信じないわよ......」

 

「あ~......まあ大体把握したわ。」

 

厨房から出てきた摩耶は暁達のもとへ歩み寄り、二人の頭を少し乱暴に撫で始めた。

今の俺には歯を食い縛り摩耶を睨み付けながら行く末を見守る事しか出来ないでいた。

 

「あいつを信じる信じないはどっちでも構わねぇけどよ、お前らはこれからどうしたいんだ?此処でアタシらみたくのんびりと暮らすか、海軍に戻ってまた深海棲艦を相手に戦い続けるか」

 

「そんなこと......」

 

「決まっています......」

 

「別に決まっちゃいねぇよ。戦わないのは艦娘の存在意義に反するって気持ちも解らなくもねぇけど、それでもアタシは今の生活を捨ててまで艦娘としての本分を全うしようとは思わねぇ」

 

「「............」」

 

「ま、直ぐに決めなくても良いけどな!此処を出たきゃ行ってくれ、幸い当てはあるみたいだしな?」

 

摩耶は返事を促すかの様に俺を流し見た。

 

「うっ......まあ、暁達が望むのなら」

 

出来るなら此処に居て欲しいが......無理に引き止める訳にも行かない......か。

 

「と言うことだ、どれくらいの付き合いになるかは解らねぇけどよろしくなっ!」

 

「よ、よろしく......」

 

「よろしくお願いします」

 

暁達が一先ず此処で暮らす事が決まった所で俺達は再びカレー食べ始めた。

 

「ヘーイ、ミスター門長に来客ネー」

 

俺はカレーを口にしながら頭だけ入り口へ向けるといつもの金剛の隣に少しばかり目付きの鋭い少女が立っていた。

 

「ん、その子はどうした?」

 

「彼女は訳あって此処に匿って欲しいそうデース」

 

「不知火です、貴方が門長少佐ですか?」

 

不知火は敬礼をしながら俺の名を呼んだ。

そういえば少佐だったのか、すっかり忘れてたぜ。

 

「ああ、もう少佐じゃねぇとは思うが俺が門長和大だ。遠路遥々俺に助けを求める少女を見捨てては男が廃るってな、歓迎するぜ不知火」

 

「はあ......それは助かります。では早速ですがこちらを聞いていただけますか?」

 

「おう、勿論だ!」

 

やっぱり少女から頼られるのは良いものだな!

不知火は腰に着けていた黒い長方形の物体を持ち上げると俺に向けながらスイッチを親指で押し込んだ。

 

「.....あ.......あー、マイクテステース......いやぁ、まさか本当にたどり着いちゃった感じかな?」

 

「不知火に落ち度はありません」

 

なんだろうな、あの箱から出てる声を聞いてると無性に苛ついて来るな......

 

ーーどんなに同名艦が居ようと奴の声は忘れないさーー

 

「あ、門長君聞いてます?お久し振りですねぇ。と言っても覚えてないかな?」

 

「そうだな、()()あんたとは初めて話したな」

 

「あ、やっぱり?じゃあ改めて自己紹介するわね!私は横須賀第一鎮守府所属の工作艦明石で~す。金剛ちゃんもそこに居るかしら?」

 

「......オーマイゴット」

 

金剛の知り合いか......

 

ーーああ、私は彼奴等の策謀によって改修素材にされたのだ。金剛は私の親友だったからもしかしたらとも思ったが、今も元帥の指示で我々の監視をしているのならば私だけがそう思い込んで居たようだなーー

 

成る程な、そういうことだったのか。

 

ーーうむ......正直あっちの明石には悪いことしたと反省しているよーー

 

まあ、それはどうでも良いが......

 

「それよりもあんたは何処に居るんだ、南方の前線基地か?」

 

だったら今すぐぶん殴りに行こうかと思ったが横須賀の明石は残念な事に簡単に殴りに行ける距離には居なかった。

 

「へ?勿論横須賀第一鎮守府の私の工廠ですが?」

 

「あ?横須賀から話してんのか」

 

「ホワッツ!?イヤイヤ、幾らなんでもインポッシブルデース。それにこんな長距離通信なんて出来ても傍受され過ぎて使い物にならないネー」

 

「さっすが金剛ちゃんは分かってるねぇ。しかし!とある工作艦と軽巡洋艦のお二人が作ったそうなので試しに使わせて貰ってるのよ!」

 

「オー......あそこのキテレツな明石デスカ」

 

「それにそこら辺のエニグマよりも複雑な暗号化をした上で鎮守府や艦娘の無線機を中継してるらしいから、そっちとこっちの通信機でしか複合化出来ないみたいよ?」

 

「そうか、お前を殴れないのは残念だが本題に入ろう」

 

正直何を言っているかさっぱり解らんから話を変えることにした。

 

「あはは、次あったら沈められそうですねぇ。まあ本題としては簡単ですよ?門長君の観察をさせて下さい」

 

「観察?それなら金剛がやってんじゃねぇのか?」

 

「え......なんのことですかネー?」

 

「あっはっは!!金剛ちゃんバレバレじゃないですかぁ!」

 

「ノ、ノー......なんのことだかさっぱりデスネー......」

 

金剛が必死にしらを切ろうとしているが横須賀の明石が大爆笑しているせいで全くもって隠せてなかった。

......まあそれ以前の問題だが。

 

「で、なんで更に観察人数を増やす?」

 

「それはですねぇ、工作艦として自分が関わった作品の経過が知りたいんですよぉ。大淀はあんまり教えてくれないんで」

 

「理由は解った、だがこの上なく不快だから却下だ」

 

「勿論ただとは言いませんよ、海軍全ての情報をリアルタイムでお伝えしますよ?」

 

「要らん帰れ」

 

「じゃあ始めに取って置きの情報をお伝えしますので考えて貰えませんか?」

 

取っておき?どうせ海軍の事なんてこっちには関係ないが一応聞くだけなら無料だし聞いてやるか。

 

「話してみろ」

 

「実はですねぇ、門長君を襲った例の深海棲艦はうちの大淀と繋がってるらしいんですよ」

 

「うん......思ったより面白いが俺には関係ないな」

 

「本当にそうですか?」

 

ん?関係ないだろう?

 

ーー確かに驚きだが我々に関係あるとは思えんなーー

 

ー私も特に思い当たる事は無いぜ?ー

 

よし、満場一致で必要ないのでお引き取り願おうか。

 

「そうですねぇ、じゃあ状況を整理しましょうか。まず私は貴方達と連絡が取れる状態にある、その私が貴方達が例の深海棲艦に取って脅威になると言う情報を彼女達に伝えたらどうなると思います?」

 

「工作艦一隻の言葉で動く様な奴らなのか?」

 

「普通の工作艦なら気にも止められないでしょう。しかし私は例の深海棲艦と関わりのある大淀と共に人々の為に尽力してきた仲ですから?」

 

「成る程な、俺を脅すとは良い度胸だ」

 

「脅してなんかいませんよ?ただ門長君に拒否されたら悲しくて大淀にあることないこと愚痴っちゃいそうだなって思いまして」

 

マジで沈めてぇ......

 

ーー全くもって同意見だーー

 

ーしかし、なんにせよこの話は飲まざる得ないぜ?ー

 

ああ分かってる、あの深海棲艦共の性格を考えると此処にいる全員が人質みたいなもんだからな。

 

「ちっ、非常に気に入らんが好きにしろ」

 

「流石門長君っ!解ってくれると思ってましたよ」

 

「その代わり奴らが響達に危害を加える様な事が有ったらそんときゃ分かってんだろうな?」

 

「大丈夫ですって!実際私が大淀に話すメリットがありませんから」

 

どうにも信用ならんな......まあ疑っててもどうしようもねぇか。

 

「あ、金剛ちゃんは引き続き報告宜しくね!勿論不知火ちゃんの事は内緒で」

 

「......オーケー、そうさせて貰いマース」

 

「うん!じゃあ皆さんこれから宜しくお願いしますねぇ!」

 

それだけ言うと奴は一方的に通信を切断しやがった。

 

「くそっ......つまり不知火が俺を頼って来たってのも演技だったのか......」

 

「いえ、不知火は嘘なんて付いていません。門長少佐の監視任務は生き残る為に明石の要求を飲んだだけですから」

 

「生き残る為?誰かに狙われてるのか?」

 

「はい、深海棲艦......海底棲姫の姿を知ってしまった私を消そうと大淀による撃沈命令が海軍全体に出ているようです」

 

「駆逐艦一人を海軍全体で潰そうってのか?訳わかんねぇな」

 

「マヤの言ってる事も分かりマース。しかしあのオーヨドがそこまでするくらいトップシークレットな案件なのでショウ」

 

「そうですね、海軍が深海棲艦と繋がっているのでは何の為に戦っているのか分かりませんから」

 

そうだよなぁ......手を組めるならなんで戦争を続けるんだって話だよな。

 

ーま、全ての生物が仲良く出来たら苦労はしないんじゃないか?ー

 

ーー確かにな、今の私にはそんな世界想像もつかないなーー

 

あぁ......なんか面倒くせぇな。

 

「まあいいや、周りなんか気にせず俺らは俺らでやりたいようにやれば良いんじゃねぇか?」

 

「はぁ......確かに貴方は自由そうで羨ましいですね」

 

「本能のままに生きてる様な奴だからな」

 

あれ?なんか不知火と松に呆れられてる......なんで?

俺だってちゃんと鋼鉄の理性を持って一日中君達を抱き締めたり撫で廻したりにゃんにゃんしたいのを我慢してるんだよ!?

 

「変態と一緒にされんのはすっげぇ不愉快だけどアタシも同じ意見だな。折角海軍も深海棲艦も関係ない所に居るんだからよ、そんな関係無い事を気にして考えが凝り固まっちまったら楽しくねぇだろ?」

 

「そうか、そういう考え方もあるな」

 

「勉強になります、摩耶」

 

「よ、よせよっ。ただアタシは思った事を言っただけだって」

 

摩耶の野郎......美味しいところ全部持っていきやがってぇ!!

なんでだ!?言ってる事はそんな変わらんだろ!

なのに何で俺は呆れられて彼奴は感心されるんだよっ!

 

ー摩耶とお前さんじゃ信用に差がありすぎるし仕方無いさー

 

武蔵、お前も摩耶派なのか......

 

ーーまあ落ち着け門長、信用と言うのは日々の積み重ねだ。お前も今から積み重ねていけばいずれ思いが伝わるさーー

 

長門............流石ビッグセブンは言うことが違うな。

 

ーーいや、私もお前と何も変わらないさ。悲しみもあれば怒りもある、好き嫌いもあるし憎んだりもする。ただ偉そうな事を言っているだけだーー

 

同じか......じゃあ俺も少しずつでも頑張ってみるか。

 

「おい、大丈夫か?」

 

ふと気付くと摩耶が俺の肩を揺すって呼び掛けていた。

 

「あ、どうした?」

 

「どうしたじゃねぇよ、物凄い形相をしながらこっちを見てるからどうかしたかと呼び掛けても全く反応がねぇしマジでどうかしたのかと思ったぜ」

 

「門長さんとっても怖かったのです......」

 

はっ、しまった!?早速電ちゃん達を怯えさしているじゃないかっ!

 

「だ、大丈夫だ!少し考え事をしてただけだからな?」

 

うっ......空気が重くなってしまった。

 

「ご、ごちそうさん!ちょっと体動かしてくるわ!」

 

いたたまれなくなった俺は食器を食堂に置いて一目散に食堂を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 




ヤヴァイ......最近頭がオーバーヒートしてきた。
楽しい、頭が燃えるのが最っ高に快感だっ!

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