「...........帰るか」
「死ニタイノナラ止メナイケレド」
「セメテ腕ガ生エテクルマデココニ居タラ?」
「気持ちは嬉しいが残念な事に俺の体は緑の生命体の様に再生はしないみたいなんだ」
心配そうに見上げるエリレの頭を撫でてやれないのが非常に残念だが、あっちに戻らねばこの腕は直りそうにも無いしな......
「腕を付ける事は出来ますよ?」
不意に聞こえてきたこの懐かしい声に思わず振り向くと一人の妖精が空間を漂っていた。
「生きていたのかっ!いや、それよりも今の話は本当か!?」
「それよりもって言いましたね......まあ良いですけど。で、腕でしたっけ?付けれますよ」
「頼むっ!今すぐ頼む!」
「あらあら~?人に物を頼むならもっと誠意を見せてくれませんとねぇ」
「誠意......切......腹......か?」
腕を付けるために腹を切る......そうか、これが等価交換か!
「何を閃いたのか知りませんがまさかボケで返されるとは思いませんでしたよ」
「なんだ......違うのか」
「はぁ......もういいですよ、腕を付けるんで横になってて下さい」
「おう......頼んだ」
妖精に促されるままに横になると直ぐ様作業が始められた。
「ま、こんなものですかね?」
作業開始から三十分後、俺の腕は遂に主のもとへ帰ってきたのだが......
「指しか動かねぇ......どうなってやがんだこれはぁ!」
「何って文字どおり応急措置ですよ、設備がありませんからね」
なんてこった......これじゃあエリレを撫でられないじゃないか!
「一応指は動くので引き金を引くことは出来ますよ」
「そうじゃない......そうじゃないんだ............はぁ」
「ごちゃごちゃうるさいですね、良いから帰りますよ」
仕方無い、今回は退こう......だが......またくるぞ!
「また会おうなエリレ!」
「ワカッタ、待ッテル!」
よしっ、今回はこの言葉で我慢しよう!
「よし、帰るぞ吹雪、暁!」
「え、あ......はい」
「ちょっと、私に命令しないでよっ!」
「あーはいはい、じゃあ一緒に行きましょうね暁ちゃん」
「お子さま扱いしないでよもうっ!」
俺は暁をあやしながら響の待つ基地を目指すのであった。
「ネェ......ナンデ
「他ノ二人ハトモカク、アノ門長トイウ男ヲ信ジルニハ些カ問題ガアリスギル......」
「デモオレノ友達ダヨ?」
「貴女ガ彼ヲ友達ダトイウノナラ否定ハシナイ。タダ、私ガ彼ヲ疑ワナケレバキットヨクナイ結果ニナッテシマウ......貴女ニトッテモ......彼ニトッテモ」
「フ~ン......ナンダカ解ンナイケドワカッタ。マタ会エルトイイネ!」
「エエ............ソウネ」
基地への帰投途中、俺等は深海棲艦の艦隊と遭遇していた。
「ソナーに感あり、潜水艦来ます!」
「た、対潜爆雷用意!」
「近づいて............こない?」
暫く待っていると突然ニ隻の潜水艦が海面へと浮上してきた。
「え?い、いまよっ!!戦闘開始っ!」
「私がやっつけちゃうんだからっ!」
あれはもしや......?
「待ったぁっ!!!」
俺は戦闘態勢に入った二人を呼び止める。
「な......なによっ、びっくりするじゃないっ!」
「敵を庇うつもりですか......」
「ちょっと待て、あれは俺の知り合いだ」
「はぁっ!?何を言ってるのよ!」
「......あの時一緒に居た潜水艦ですか......」
「理解が早くて助かる。安心しろ、俺の仲間である二人は奴等の敵じゃないから」
「信じられませんね、私と貴方だって敵同士なんですから」
「......吹雪、もしかして怒ってる?」
「いえ、憎んでいます......貴方さえ居なければ私は仲間も司令官も一度に失う事は無かったんですから」
まあ、そりゃそうだよなぁ......暁だってあの誤解が有ろうが無かろうが俺を恨む理由は充分にあるだろうし......
「ですが......身体を張って助けてくれた事には感謝しています。ですので信じてはいませんが私達は貴方に従いましょう」
「う......確かに助かるが無理に俺に従わなくても良いぞ?」
「私は響を助け出すために付いてきてるだけなんだからあんたに従うつもりなんて無いわっ!」
「お、おう」
「ドウシタトナガ?ワレワレノコトヲワスレテシマッタノカ。トイッテモミタメデハクベツガツカナイカ」
「ワレワレハオマエヲムコウノシママデアンナイシタソキュウダ」
「ああ、大丈夫だ。ちょっと二人に説明してたところだ」
俺はソ級に手を振り返して答えた。
「ナルホド、ソノフタリハコノマエオワレテタクチクカンダナ?」
「暁よっ!」
「............」
「オオコワイコワイ、ソンナニニラマナクテモオマエタチニキガイヲクワエルツモリハナイ」
ソ級は睨みつける吹雪を宥めるように両手を上げて吹雪達に掌を見せていた。
「んで?お前らはどうしたんだこんな所で」
「アア、オマエガアノシマニイルコトガワカッタカラヨビモドシニキタノダ」
「あの島?ああ、エリレと空母が居た所か」
「ヤハリデアッテイタノカ......ソノコトデヒメサマカラハナシガアル。ツイテコイ」
「話?おうわかった」
俺はソ級の誘導に従って港湾棲姫の元へと向かった。
「マズハ生還オメデトウト祝辞ヲ述ベテオコウカシラ」
「響と結ばれてもいねぇのにそんな簡単にくたばってたまるかってんだ」
「流石ネ、彼女達ニ出逢ッテ生キ残ッタ艦娘ハアナタ達ガ初メテジャナイカシラ?」
「カエレッ!カエレッ!」
「ああ、そういやソ級が神のような存在とか言っていたあいつらは一体何者なんだ?」
俺は両腕を揺らめかせたままほっぽちゃんを追い掛けながら港湾に聞いてみた。
「......正直ニ言エバ私達ニモ......イエ、コノ世界ニ彼女ノ正体ヲ知ッテイル存在ガ居ルトハ思エナイワ」
「なるほどな、だから神とか言って崇めているのか」
「エエ......タダ、恐ラク彼女達ト私達ハ相容レルコトナイデショウ。彼女達ハ世界変革スラ容易ク行エルチカラヲ持チナガラ現状ノ維持ヲ望ンデイル」
「ふ~ん、でもそれだといつかあいつ等と相対するんじゃねぇか?」
「ソウネ......戦ッテモマズ間違イナク勝テナイト思ウワ。ダカラ私達ハ彼女達トノ衝突ヲ避ケル方法ヲ今ハ模索シテイルノヨ」
「なるほどね、そしてあの二人に希望を見出すだけの何かがあって匿っていると言った所かしら?」
「アナタハイッタイ......」
「お、こいつに会うのは初めてだったか?こいつは妖精でうちの砲雷長をやってる」
「ども~!砲雷長で~す」
「イヤ、ソウイウコトジャ......マアイイワ。兎ニ角彼女達ノ存在ヲ知ッテシマッタ以上貴方達ヲ海軍ヤ他ノ組織ト関係ヲ持タセル訳ニハ行カナクナッタワ......残念ダケド副業ハ諦メテ頂戴」
「そうか......まあ俺としては資材の供給が有れば特に問題はない」
「ソウイッテクレルト助カルワ、資材ニツイテハ気ニシナクテイイワ」
「お!マジでか!?」
「いやぁ、姫さんも気前が良いですねぇ。良かったじゃないですか門長さん、基地の深刻な問題が解決しましたよ」
「エ......?ネェル級、今トテモ嫌ナ予感ガシタノダケレド気ノセイカシラ?」
「ザンネンナガラドウカンデスヒメサマ......」
「んじゃ、交渉成立と言うことで良いな?そしたらこの身体を治してくっから仕事の時は呼んでくれ」
「エ、エエ......ワカッタワ」
よっしゃ!今三番目位に深刻な問題が解決したところで二番目に深刻なこの問題を何とかしねぇとな。
俺はほっぽちゃんに腕を大きくブン回して別れの挨拶を済ませると吹雪達を連れて俺の基地を目指した。
皆様も