響乱交狂曲   作:上新粉

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執筆活動も後10年続ければ今とは比べ物にならないような作品を書けるようになるかな......そんな希望を持つことによって続かない私は何とか今日も書き続けております。


第十八番

 「ヘーイ、ミスター?看板の上を深海棲艦の艦載機が彷徨いてるネー」

 

「お?来たか!」

 

あれから1週間音沙汰が無かったから半ば諦めていたんだが、深海棲艦の奴等も案外捨てたもんじゃねぇな。

 

「んじゃちょっと行ってくる」

 

「オーケー、グットラックミスター門長」

 

俺は兵装を急いで装備すると、深海棲艦が向かっているであろう島へと向かっていった。

 

「......これは流石に不味いカモネ。テートクに指示を仰ぎますカ」

 

 

 

 

 

 約一時間後、看板のある島へ到着すると既に深海棲艦の艦隊は島に接岸していた。

 

「お、あんたが深海の姫さんか」

 

「アナタ、ヒメサマニタイシテナレナレシイワヨ!」

 

うお、まさかこっちでも注意されるとは......

 

「構ワナイワタ級。私ハ港湾ノ姫、人間ノ間デハ港湾棲姫ト呼バレテイルワ。ソシテコノ子ハ北方......」

 

「お母さん、娘さんを俺に下さい」

 

「エ、アノ......オ母サン?」

 

「オマエ......イヤッ!カエレッ!」

 

「ぐぼぁっ......な、何故だ......」

 

少女に嫌われるような呪いでもかかってるのか俺は......

 

「チョット!バカニスルノモタイガイニシナサイヨ?」

 

「タ級、ヤメナサイ!」

 

今にも襲いかかりそうなタ級を港湾が制止する。

 

「今度カラ一緒ニ仕事ヲスルノダカラ仲良クシナケレバダメヨ」

 

「シ、シカシヒメサマ......」

 

「イイワネ?」

 

「......ワカリマシタ」

 

港湾には逆らえないみたいでタ級は渋々腕を下ろし一歩後ろへと下がった。

 

「ゴメンナサイ、普段ハ良イ子達ナンダケレド......」

 

「別に問題ない」

 

ほっぽに既に嫌われているのは流石に効いたが今は耐えるとしよう。

 

「ソウ、ソレナラヨカッタワ......デハ本題ニ入ラセテ貰ウワネ」

 

そう言うと港湾は近くの岩に腰を掛けほっぽを膝の上に乗せると仕事内容について説明を始めた。

要約するとこんな感じだ。

輸送船団の護衛、そしてある島へ月一で資材で届けて欲しいとの事だった。

 

「ソシテ最後ニ私達組織ノ決マリ事ガアルノダケレド......他言無用ヲ約束デキルカシラ?」

 

俺は問題ないと無言で頷く。

 

「ワカッタワ......ジャア最後ニ、敵味方問ワズ被害ハ最小限ニ抑エル事」

 

「おう、わかっ......た......って敵もなのか?」

 

いや確かに元より駆逐艦娘達には手を出さない様に言おうとは思ってはいたがまさか深海棲艦側から提案されるとは思わなかったな。

 

「エエソウヨ。私達ノ組織ハイズレ艦娘、ソシテ人類トノ和平実現ノ為ニ活動シテイルノ」

 

「へぇ......大層なこった。でも人間や艦娘にはお前らと普通の深海棲艦の違いなんて分からねぇだろ」

 

一般人ならそれだけで殺せそうな位強い眼力で俺を睨み付けるタ級を無言でたしなめ港湾は続ける。

 

「ソウネ、デモイズレ普通トハ違ウ深海棲艦ノ存在ニ気付クハズヨ。ソレマデニ私達ノ組織ヲ他ノ組織ノ抑止力トナル位盤石ナモノニスルツモリヨ」

 

「ふ~ん......俺にはよく解らん。だがまあ都合が良いし了解した。」

 

これなら駆逐艦娘を狙わなくても問題は無さそうだな。

 

「ヒメサマァ......コンナワタシタチノシソウヲリカイシテナイヨウナヤツヲホントニヤトウツモリデスカァ......」

 

タ級が不安そうに港湾へ問い掛けるが港湾は問題ないと答える。

 

「ル級モ認メテルシ大丈夫ヨ。ソレニ船団護衛ハトモカクモウ一ツハ深海棲艦デアル私達ガ行ウヨリハ悟ラレニクイハズヨ」

 

「そういやその島に資材を運ぶのは何なんだ?」

 

「ソレハ申シ訳ナイケレド私達以外ニ繋ガリノアル貴方ニハ話セナイワ。コレハ貴方ノ為デアリ私達ノ為デモアルノヨ、ワカッテクレルカシラ?」

 

「まあ然程興味もねぇしどうでもいいや」

 

「ソウ言ッテクレルト助カルワ」

 

「んなことより幾つか此処で決めとかねぇといけねぇ事が有るだろ」

 

「ソウネ、タ級。アノ子ヲ連レテキナサイ」

 

「エー......ヤッパリカノジョハコンナヤツニハモッタイナイデスヨォヒメサマァ」

 

段々とラフになっていくタ級に港湾の温和な表情が一変する。

 

「一度決マッタ事ニ文句ヲ言ウツモリ?」

 

「ァ......ス、スイマセンナマイキイイマシタァ!イマスグツレテキマスッ!」

 

へぇ......伊達に組織の頭張ってる訳じゃねぇんだな。

俺が感心してるとタ級が何かデカ物を連れて戻ってきた。

 

「ヒメサマ!ツレテキマシタ!」

 

「ゴ苦労様。紹介スルワトナガ、彼女ハ補給艦ワ級flag ship後期型ヨ。」

 

「フラワートヨンデクダサイ」

 

フラワーなんて名前とは裏腹に一九〇の俺をゆうに越える身長のワ級が深々とお辞儀をしている。

 

「彼女ニハ貴方ヘノ報酬ノ運搬ト仕事依頼ノ際連絡役を担ッテ貰ウワ」

 

「成る程な......じゃあ頼んだぞワ級」

 

「イエ、ワタシノコトハフラワートオヨビクダサイ」

 

「フラワーとか柄じゃねぇだろ、ワ級でいい」

 

「ソンナ......ウゥ......」

 

「気ニシテルミタイダカラアマリ触レナイデアゲテネ」

 

「ふ~ん......ま、いいや。んで仕事はいつからだ?」

 

「ソウネ、仕事ニツイテハ後日フラワーニ伝エルトシテ今日ハ資材ノ運搬先ノ島ヲ覚エテキテ貰ウワ」

 

そう言うと港湾は両腕を上げほっぽの頭上で両の鉤爪を打ち付け甲高い金属音を響かせた。

 

「ヒメサマ、オヨビデスカ?」

 

すると、海の中から三人の潜水艦が現れた。

 

「ソ級、オマエ達デトナガヲアノ島へ案内シナサイ」

 

「ハイ、ヒメサマ。オマエガトナガカ、ツイテコイ」

 

それだけ言うと三人は再び海中に潜ってしまった。

 

「......どうやって着いていけと?」

 

「潜れば良いんじゃないですかぁ?」

 

「出来るかぁっ!」

 

「目ヲ凝ラセバ泡ガ見エルデショウ。ソノ泡ニツイテイッテクレルカシラ?」

 

俺は港湾に言われ目を良く凝らしてみると僅かに泡立っている所が三ヶ所確かに有った。

 

「みえ......はぁ、疲れた。後は頼んだ妖精」

 

「え~、面倒ですねぇ」

 

潜水艦の追跡は妖精に任せて俺は辺りを見回していた。

 

「誰一人ついてこねぇんだな......」

 

「それだけ島にあるものを他の深海棲艦に見られたくないのでしょう」

 

「深海棲艦?艦娘じゃねぇのか?」

 

「艦娘からしたら貴方が通ってる方が怪しいでしょうが」

 

そんなもんか......よく解らんが。

 

「まあ奴等の動きは他の深海棲艦にとって余り面白くはないだろうし邪魔が入らない様にってとこか」

 

「門長さんもう少し右ですよ」

 

「お、いつの間に曲がってんだ」

 

進路を修正しつつ何もない海を五時間ほど航海した所でやっと島が一つ見えてきていた。

 

「あれか?」

 

「ソウダ、アノシマガオマエノコンドカラノハイソウサキダ」

 

「私達の居る基地跡より小さいですねぇ」

 

「確かに......ん?あれは何だ?」

 

俺が指差した先には時代遅れな一隻の軍艦とそれを追い掛ける複数の陰であった。

 

「ナンダアノフネハ、シマニムカワセルワケニハイカナイ。オイハラウゾトナガ」

 

「おう、これが俺の初仕事っつー訳だな。報酬は頼むぜ」

 

「ツタエテオコウ」

 

ソ級より返事を受けた俺は意気揚々と軍艦へと進軍を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「くそっ!何なんだあの規格外の化け者共は!」

 

「特定不能っ!海軍のデータベースにも類似する艦種が在りません!」

 

軍艦に乗り込み百を超える舞鶴第八鎮守府全軍を率いて門長もろとも島を焦土に変えようとしていた宇和艦隊であったが、突如現れたたった六隻の正体不明の深海棲艦により既に壊滅状態であった。

 

「ええいっ!吹雪、暁!私が撤退するまで奴等の足止めをしろっ!」

 

「ちょっとっ!あんな化け物相手にたった二隻で足止め出来るわけ無いじゃない!」

 

「うるさいっ!出来るか出来ないかではない!私はやれと言っているのだ!」

 

暁が反論するも宇和は聞く耳を持たず一方的に命令すると無線を隅へ追いやってしまった。

 

「なによもう!信じらんない!」

 

暁が宇和の態度に腹を立てていると吹雪から通信が入ってきた。

 

「暁さん、実は南から更に四隻近づいて来てるのに気付いてる?」

 

「うそ!敵なの!?もうどうすればいいのよ!!」

 

がなりあげる暁とは別に吹雪は落ち着いた様子で続けた。

 

「確かに敵......ですが、その中に門長さんが居ました。彼と奴等をぶつければここを逃れることが出来るかも......」

 

「それはいいアイディアだわ!そうしましょ!」

 

一縷の希望を見いだした暁はそこいらに放っぽりだしていた装備を拾い集め構え直す。

 

「後三キロ程です、何とか逃げ切りましょう!」

 

吹雪達がラストスパートにかけて気合いを入れ直している一方、無言で吹雪達の会話を聞きながら沸々と込み上げる怒りを抑え生き残る為の算段を立てていた。

 

「門長め......奴が居るのか......非常に気に入らないが一度奴に取り入り確実に殺せるタイミングを窺うとするか」

 

宇和は急ぎ甲板に出ると門長の方へ向けて白旗を振り回した。

その三分後、宇和が乗る軍艦に門長が乗艦してきた。

 

「久し振りだなぁ......門長くん」

 

宇和は煮えたぎる殺意を表に出さない様に何でもない挨拶を交わす。

 

「なんであんたがいるんだ?しかもこんな古びた船なんか持ち出して」

 

「そ、それはだな......君にとある話を持ち掛けに直接出向いたのだ」

 

「ふ~ん......軍規違反してまでか?」

 

「なっ!?何を言っているんだ。私がいつ軍規違反したと言うのかね?」

 

内心を悟られない様に笑顔を貼り付けるが門長にはそんなことは関係無かった。

 

「ソ級から聞いたんだよ。あれは人類が掟を破ったときに現れる奴等にとって神のような存在なんだそうだ」

 

「きっ、貴様!深海棲艦についたのかこの裏切り者めぇっ!」

 

深海棲艦とグルである門長ではここを切り抜ける事は出来ないと悟った宇和は懐にある拳銃を門長へ向けありったけの殺意を込めて発砲した。

 

「おいおい、俺を今更拳銃で殺れると思ってたのか?」

 

「くっ......化け物めぇ......私を殺せば貴様は海軍全ての敵となるぞ......」

 

精一杯の強がりを見せる宇和であったが門長にとっては暖簾に腕押し状態であった。

 

「別に俺が殺る必要もねぇだろ、放っときゃあんたはこいつを棺桶に沈んでくだけなんだから」

 

「く、悔しいがその通りだ......だが!今助ければ貴様の罪を無かったことにしてやる」

 

「いらん」

 

「な、ならば貴様に好きな艦娘を用意してやろう!」

 

「ん~......じゃああそこにいる暁と吹雪」

 

「......わ、わかった!好きにするといい」

 

「よし、じゃあ助けねぇとな!」

 

この場を凌いだと確信した宇和は完全に油断しており門長の腕が襟裏を捕らえるのに気付けなかった。

 

「なっ!?何をする気だ貴様!」

 

門長に背負われた宇和は激しく抵抗するも門長は構わず海面へと飛び降りた。

 

「なにって助けんだよ、()()()()を」

 

「おい!話が違うぞ貴様ぁ!」

 

「別にあんたを助ければとは言ってねぇだろ?」

 

「くっ、そんな屁理屈をぉ......」

 

「屁理屈だろうが何だろうが俺は最初からあんたを助ける気なんかねぇよ」

 

門長は時折飛んでくる砲弾を避けながら吹雪達のもとへ辿り着いた。

 

「し、司令官と門長さん!?一体これはどういう事ですか!?」

 

「よう、今日からお前らは俺の仲間だ。勿論こいつの許可を貰っている」

 

「え?ちょっとどういう事!?訳がわからないわ!」

 

理解が追い付いていない吹雪と暁に軽く挨拶を済ませると門長は更に前に出て深海棲艦へ呼び掛ける。

 

「聞こえんだろ深海棲艦!このオッサンはやるから好きにしてくれて構わない。」

 

「貴様ぁ!絶対に赦さんぞぉ!!」

 

宇和が必死の抵抗を試みるが門長は特に気にする様子もなく続ける。

 

「だがな、この二人の艦娘はもう俺の仲間だ。手を出すなら容赦しねぇぞ」

 

「ヘェ......ソレモ面白ソウダケレド、私達ハ貴方ト違ッテ忙シイノヨ。ジャアネー」

 

そう言って深海棲艦の一人が艤装から一発だけ何かを放ち、海中へと消えていった。

 

「あれは......!」

 

直感的に翔んでくるものの危険性を感じた門長は飛翔物に向けて宇和を全力で投げた後直ぐ様吹雪達を呼び寄せて二人を抱き抱える。

 

「い、一体何を!?」

 

「ちょっ!?何すんの、離しなさいよっ!」

 

「動くな!」

 

宇和と深海棲艦が放った飛翔物が衝突した瞬間、辺りは光に包まれた。

 




ただ10年も続けてたら前書きと後書きが先に枯渇してしまいそうです(泣)

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