響乱交狂曲   作:上新粉

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か、書くペースがどんどんと落ちていく......ヴァイスシュバルツタノシ............


第十三番

 一週間の長風呂が終わり体はリフレッシュしたが俺の心は入った時と何も変わらず消沈したままだった。

 

「変態......か、嫌われてるのは解っちゃいるが直球はやっぱ効くなぁ......」

 

「やっぱり似合わなくても周りと仲良くした方が良いんじゃないですか?」

 

「だからそんな自分を裏切るようなやり方はしたくねぇんだよ」

 

「我が儘ですねぇ......だったらいっそのこと力任せに襲ってしまえば良いじゃないですか?貴方にはそれくらい容易でしょう?」

 

確かに容易に出来るが......結局俺を心から好いてくれる可能性は無くなるし最悪自殺でもされようものなら俺は俺を死んでも怨み続けるだろう。

 

「却下だ。」

 

「腑抜けですねぇ......」

 

「うるせぇ、なんと言われようと俺は俺のまま響に好かれたいんだよ」

 

「はぁ、いつになることやら......」

 

「何十年経とうが構わねぇ、どうせ俺も人とは時間の進み方が違うんだろ?」

 

「まあそうですけど。響ちゃんに逃げられるとか考えないんですか?何十年もしたら響ちゃんも脱出出来るくらいには強くなりますよ?」

 

そこかぁ......それまでには少しでも響の心が俺に向いてくれるように頑張らねぇと。

 

「それに響ちゃんの鎮守府の方が助けに来るかも知れないですよ?」

 

「そんなのは追い払えば......」

 

「響ちゃんに更に嫌われるでしょうねぇ......」

 

「なっ......!」

 

どうすりゃいいんだ......ちくしょう......

 

「ま、響ちゃんと仲良くするためにいま出来ることをするしか無いんじゃないんですか?」

 

今出来ることか......兎に角響にアプローチし続けて俺の事を意識して貰うしかないか。

俺は再び響に想いを伝える為に執務室へ向かった。

 

「響っ!俺はお前が好きなん......だ?」

 

扉を開けながらストレートに想いを伝えるもそこには伝える相手が居らずモビルなスーツが二つ置いてあるだけだった。

 

「あんたが門長だな?私は松型駆逐艦一番艦松だ、

量産型だからと言って嘗めるなよ」

 

「私は同じく松型の二番艦竹だよ、門長さんよろしく!」

 

駆逐艦......こいつらが?いや待て、もしかしたら響達が着ているだけかもしれない。

 

「......取り敢えず脱いでくれないか?」

 

「はーい」

 

被り物を取ろうとする自称竹に自称松が単装砲を降り下ろす。

俺はその単装砲を左手で受け止めた。

 

「なっ!?」

 

「ふぇ?」

 

......なるほど、響達ではない事は分かった。

ならば多少強引にやるとするか。

俺は左腕で松を抱き上げ被り物に手をかける。

 

「やっ止めろ!私達の艤装は力任せに外せるものではない!」

 

「ふ~ん、どうすれば良いんだ竹?」

 

「えっとね~、後ろのカバーを開けて中のボタンを押せば取れるよ」

 

「バカ野郎!何教えてるんだ!!」

 

「カバー......これか。」

 

後頭部についているカバーを開けると中には赤いボタンが一つ付いていた。

 

「ボタン一つで外せるのか......そんなんで大丈夫なのか?」

 

「うるさい!良いから閉じろ、押すんじゃない!」

 

「押すなと云われたら押したくなるのが人情ってもんだよな」

 

まあなんと言おうとも押すけどな。

全力で抵抗する松の頭を押さえつけてボタンを押すと、中から深緑色のショートヘアーの幼い顔立ちの少女が顔を出した。

 

「み、みるなぁ......やめろぉ......」

 

か、かわいい......さっきまでの口調から少し生意気そうな奴を想像していたが完全に予想外だったぜ......涙ぐんでいるのがまたそそる......ってそうじゃない!

 

「何で見られたくないんだ?響程じゃないが充分に可愛いじゃないか。」

 

「う、うるさい!かかか可愛いとか言うな!」

 

「松はねぇ、自分の顔が好きじゃないんだってぇ」

 

竹が被り物を外しながら松の代わりに答えた。

そして俺はそんな竹の姿を見て固まった。

 

「お前ら......髪の色以外同じ......なのか?」

 

「そ、量産型だからね。だから松は私が装備を外すのも止めようとするんだよ~」

 

そう、そこには俯いて涙ぐむ松と瓜二つの顔でにこやかな笑みを浮かべる竹の姿があった。

髪の色が違うと言っても深緑か若草色かの違いだけでほぼ差なんて無いようなものであった。

 

「なるほどな......まあ、無理に取ったのは悪かった。だがな、お前は可愛いんだからもっと自分の顔に自信を持って良いと思うぞ?」

 

身体を捻り俺の腕から逃れた松は俯いたまま床に落ちた連装砲をひろいあげ......

 

「......明石といい、お前といい......私を何処まで辱しめれば気が済みやがるんだぁっ!!」

 

遂に暴走した松は俺に向けて連装砲を撃ちまくり始めた。

 

「ちょっまてって!悪かったってうお!?落ち着け松!」

 

「うるさい!貴様はここで沈める!絶対にだ!!」

 

何で俺はこんなに嫌われるんだ!?いや確かに俺が悪いのは解らなくもないがここまで撃たれる程では無いだろ!?

 

「竹!ちょっとお前の姉ちゃん何とかしろぉ!」

 

「はいは~い、松ストーップ!」

 

竹は暴れる松の後ろに立ち笑顔のまま右腕を首に絡ませる。

 

「何をする!放せたぐぇっ!?」

 

首に絡めた右腕を左手でしっかりとホールドし松の首を締め上げ気道を完全に塞いだ。

 

「か......はっ......」

 

暫くして松の身体から力が抜けたのを確認した竹は松を背負いこちらへガッツポーズを見せた。

 

「だ、大丈夫かそいつ......」

 

「ん?大丈夫大丈夫!門長さん、松が迷惑掛けてごめんね~?」

 

「あ、まあ大丈夫だ......あれは俺も悪かったしな。」

 

「と言うわけで普段はあんな格好だけどよろしく!」

 

そう言うと竹は俺に向けて左手でビシッと敬礼を行った。

わざとなのかは知らないが俺も敢えて左手で敬礼を返してやった。

 

「へへっ、じゃあまたね門長さん!」

 

それだけ言うと竹は執務室から楽しげに出ていった。

 

「ああ......なんだか心が少し救われた気がしたぜ」

 

「以外とチョロいんですね?」

 

「うるせぇ、お前に俺の気持ちが分かってたまるか!」

 

響には嫌われたままだし電は電で何だかよそよそしいし、遠征で出会った少女達には敵対されるし夕月にもあんな別れ方したからきっと嫌われただろうし......

 

「とにかく!そんな状況の中少女が親しげに接して来たら誰だって嬉しいに決まってんだろっ!!」

 

「はあ、どんな状況かは知りませんが泣きながら力説しない方が良いですよ?ドン引きですから、()()()()が。」

 

妖精がまあ私もですがと付け加えるがそんなことはどうでもいい!それよりも今とてつもなく恐ろしい事をいいおったぞこいつ!?

俺は直ぐ様扉の方を振り向く。

 

「響ちゃん待ってなのです~!」

 

静かな廊下に電の声と走り去る二つの足音だけが響いていた。

 

「ひ......ひびきぃぃぃ違うんだぁー!愛してるのはお前だけなんだぁー!!」

 

俺は響の誤解を解くために部屋を飛び出し全力で響を追いかける事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「吹雪、作戦準備はどうなっている。」

 

「は、はい!あと少しで第二艦隊の練度が九十を越えます。ですが......」

 

「どうしたのだね?」

 

「あの......彼は中部海域にいるんですよね?でしたら放っておいてもいずれ......」

 

「それでは私の気が済まんのだよっ!」

 

宇和は拳を机に勢い良く叩きつけた。

 

「あの一件以降私の信用は地に落ちたっ!そのせいで私と繋がりのあったパイプは全て断ち切られた!」

 

「し、司令官......」

 

「私が何をしたと言うのだ!どう考えても奴のせいではないか!」

 

宇和は昂った気持ちを落ち着けるように深呼吸をすると椅子に座り込んだ。

 

「はぁっ......はぁっ......まあ、奴に対する復讐心が無いと言ったら嘘になるがそれだけでは無いのだ。」

 

「それは......いったい?」

 

「元帥は奴の事で何かを隠している。それを奴の口から吐かせれば元帥の弱みとなるはずだ。」

 

「阿部元帥が......?」

 

「そもそも元帥との繋がりのある奴だからこそ私は此処へ迎え入れたのだ。それならばこうなることも織り込み済みだったのではないだろうか、そう考えているのだ。」

 

「そ、そんな......じゃあ響さんが拐われたのも......」

 

宇和は吹雪に近付いて頭を撫でながら続ける。

 

「それも、元帥と奴の計画通りだったのかも知れんな」

 

宇和は吹雪の隣を横切り部屋を出ながら吹雪に一声かけた。

 

「この作戦の成功は響の救出にも繋がる。力を貸してくれるな?」

 

吹雪は振り返り宇和の背中へ向けて真っ直ぐに敬礼を送り答えた。

 

「了解ですっ!司令官!!」




門長のとこの資材管理が無理ゲー過ぎるorz

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