「敵の艦種がわかったクマ......」
球磨が珍しく言葉を詰まらせている......恐らくそういうことなのだろう。
俺は嫌な予感を感じつつも球磨へ続きを促す。
「聴かせて欲しい」
「......旗艦がヲ級改flag ship、随伴艦がヲ級flag ship.軽巡ツ級elite、駆逐ハ級flag shipが三隻クマー」
「これは......撤退するべきよねぇ。」
「撤退するのも難しそうだけどね~」
さて......どうしたものか。
俺は球磨の方を見ると眉間を指で押さえてむむむと唸っていた。
「球磨?」
「むぅ......いや、何でもないクマ。全員面舵一杯!対空警戒を厳としこの海域から撤退するクマぁ!」
「「了解ッ!!」」
撤退を始めた所で卯月が突然叫び声をあげた。
「どうした卯月っ!」
「北東の方に艦影が二隻向かってくるぴょんっ!?」
この海域で二隻だと!?姫級か、それとも......
「次から次へと何なんだぴょんっ!!」
「如月ちゃん......」
「睦月ちゃん、生きるためにはやるしかないわよ!」
「敵の艦載機が来たクマー!」
俺達は向かってくる敵艦載機を迎撃するがあまりにも多すぎる物量を受け次第に損傷が蓄積されていく。
「っ!......まだ、やられるわけには!」
「夕月っ!?」
「夕月ちゃん!」
一発の爆撃が直撃し俺の制服が所々焼け落ちてしまった。
「大丈夫、まだ中破だ。」
「全然大丈夫じゃないぴょん!」
「夕月を中心に輪形陣を組むクマ!」
くっ......皆を護ると決めた俺が護られてしまうなんて。
「済まない......」
「あらぁ?おねぇちゃん達はそんなに信用出来ないかしら?」
「ちがうっ、そう言うことじゃない。」
「だったらおねぇちゃん達に任せると良いにゃしぃ!」
「うーちゃんももっと頼って欲しいぴょん!」
「まぁ、かわいい妹の為に頑張るよ~。」
睦月、如月、卯月、望月............そうだな、俺はまだまだ姉達には敵いそうにないな。
「ありがとう、姉さん」
「クマ~......姉妹愛を見せ付けるの構わないけど艦載機が撤退して行ってるクマー」
なに......撤退?そう言えば先程の二隻も居なくなっている。
「なにが起きているんだ......?」
「分からないクマ、でもちょうど良いから撤退するクマー!」
あの二隻は......まさか本当に?
俺は疑問が拭えないまま卯月に曳航され無事海域から撤退したのだった。
「あー......くそ!」
補給艦は居ねぇし空母はありったけの攻撃機を飛ばしてくれやがるし冗談じゃねぇ!
「クッ......コロセ......」
俺が右手に掴み上げてる空母が何か言ってやがる。
「てめぇらが資材になるならとっくに殺してる」
その方が損害も抑えられるしな。
「ナラバワレラヲドウスルツモリダ。」
「あ?資材にする以外にてめぇらを捕らえる理由なんてねぇよ。金剛、こいつから頭の奴ひっぺがせ。」
俺は空母を一人金剛に放り投げるともう片方の空母の帽子を引き剥がした。
「ホワッツ!?私がパージするのですカー?」
「フザケルナッ!」
金剛の方へ放り投げた空母は体勢を立て直し金剛へと殴りかかる。
しかし金剛はその手首を掴みそのままの勢いで地面へと叩きつける。
「私とならファイトになるとでもシンキングしてましたカー?」
金剛は手首を掴んだまま空母の背中を踏みつける。
「艦娘も接近戦出来るんだな。」
「イエース!といっても他のシップガールがインファイト出来るかはわからないけどネー」
まあそもそもここまで近付くことがねぇのか?
「オゥ......それにしても中々グロテスクなハットですネー」
金剛が空母の帽子を引き剥がし観察している。
まああんまり気味の良いもんではねぇな。
「一応目的のものは手に入りましたが派手にやられましたねぇ。」
「ああ全くだ、気付いたらパンツ一丁じゃねえか。」
「あれだけの魚雷を受けたら戦艦水鬼すら沈むと思うのデース。」
流石に魚雷三十本はやられ過ぎたな、身体が重く感じるぜ。
「修復資材が面白そうですねぇ?」
「全然面白くねぇ......どうすんだこれ。」
「一度ゴーホームした方が良いですヨー?」
「そうだな、最後にあっちにいる奴等の艦種を見てこい。」
「まだトライするんですネー......」
「補給艦の一つや二つもって帰んねぇと資材がやべぇだろ」
いくらボーキサイトの為とは言えこんなんじゃ他の資材が枯渇しちまう。
「オー!今回はル級flag shipとツ級flag shipとワ級flag shipがそれぞれ二隻ずつデース!」
「うっし!補給艦以外は沈めるぞ!」
四十六センチ三連装砲から鳴り響く轟音を合図に砲撃戦が再び始まった。
一方門長達が
「あら?お二人がここへ来るなんて珍しいですね、どうしました?」
「あの......明石さんに私達を鍛えて欲しいのです!」
「お願い......出来る......かな?」
響と電は明石に向かって深く頭を下げる。
「ん~......演習なら金剛さんの方が適任じゃないですか?」
明石は困ったように頭をかきながら答えるが響達は頭をあげようとはしなかった。
「金剛さんは暫くは門長さんと一緒に遠征をしていると思うのです。だからその間に私達も強くなりたいのです!」
「私は早く皆の所へ帰れるように強くなりたいんだ。」
「......そうね、気持ちは分かったわ!私も資材がないと開発出来ないし、私でよければ特訓に付き合うわ」
明石は二人の前に拳を突きだし親指を上に立てて答えた。
「......スパスィーバ」
「明石さんありがとうなのです」
響達に感謝された明石は照れ臭そうに頬を掻きながら、少しだけ門長の気持ちが分かったような気がして
「(まあ小さい子を可愛いと思うのは普通......ですよね?)」
などと自分に言い聞かせるのであった。
次は響回だ!!門長なんか知らん!カエレッ!!