※第七十七番が意図しない処で重複していた為、サブタイトルを一部修正致しました。
長門さん達と合流を果たした姉さん達はその有様に愕然とした。
その水雷戦隊には旗艦が軽巡那珂、随伴艦として駆逐艦五月雨、満潮、曙、潮、若葉の六人が居たのだが、そのいずれもが報告通りの初期装備だったのだ。
「柱島第十一鎮守府第一艦隊旗艦、那っ珂ちゃんだよ!よろしくねっ!」
「あ、暁よ……ってそうじゃないわ!貴女達はどうしてこんな所に居るのよ!!ここを何処だと思ってるの!?」
明るく自己紹介を始める那珂さんに対して姉さんは怒涛の勢いで問い詰める。
しかし、那珂さんは何を責められているのか解っていないらしく目を白黒させながら五月雨へと助けを求めていた。
そしてその様子に気付いた満潮が前に出てここまでの経緯を話し始めたのだった。
因みに五月雨も那珂さんと一緒になってあたふたしていたので気付かなかった様だ。
「どうして来たかなんて司令官が出撃命令を出したからに決まってるでしょ!ここは中部海域だって事は聞いてるわ」
「はぁ!?そもそも貴女達程度の練度でここまで来れるわけないでしょ!他に高練度の艦隊はいないの?」
「そんなの居ないわ!そもそもここまで深海棲艦に一度も会っていないもの。深海棲艦の勢力が縮小してるんでしょ?」
満潮の言葉を受けて姉さんは言葉を失った。
斯く言う私も彼女の言葉が信じられなかった。
深海棲艦の勢力が縮小してるなんて有り得ない。
舞鶴に居た頃だって鎮守府正面には絶えず深海棲艦が侵入して来ていた。
それが一年もしない内に全てが撤退するなんて考えられないし、撃滅したなんてもっと考えられない。
私はその事を長門さんに相談するとやはり長門さんも同じ考えだった。
「うむ、だが那珂達が無傷で此処に居る事も事実。ならば考えられる事は二つだな」
「二つ?」
「そうだ。一つは妖精の力で此処までの直通ルートが出来たか。もう一つは深海棲艦達が何処か一箇所に集中した為に接敵しなくなったか」
妖精の力でそんな事が出来るのかは解らないけど長門さんが言うならきっと可能性はあるのかな。
ただ、もう一つの深海棲艦が一箇所に集まっている可能性。
これに関しては一つ思い当たる事がある。
EN.Dっていう深海棲艦の組織が門長を連れていったって事だ。
理由は解らない……けどもし門長を倒そうとするならそれ位戦力を集中させる必要があるかも知れない。
もしそうなら門長は……
「門長……」
「あ、いや……だ、大丈夫だ!他に大規模作戦があるのかも知れんし、そうでなくとも奴なら無事に戻ってくるさ!」
「……うん、ありがとう」
私を気遣って励ましてくれる長門さんにお礼を伝えて私は気持ちを切り替える。
門長なら大丈夫、それよりも今は彼女達を無事に安全な海域まで送り届ける事が先決だ。
「兎に角、まだ損傷がないのなら何よりだ。満潮、此処は深海棲艦の本拠地が近く非常に危険なんだ。私達が護衛するから直ぐにこの海域を抜けよう」
私が撤退するように伝えるが満潮達は不審感が拭えない様子であった。
「そんな話をはいそうですかと信じられる訳ないでしょ?仮に此処が本当に危険な場所だったとしてもそっちから来たあんた達をどうやって信じろって言うのよ」
「わ、私達はっ!」
私は事情を説明しようと口を開くが、すぐに姉さんの手に塞がれてしまい続けることは出来なかった。
「私から説明するわ。貴方達は少し前に壊滅した南方前線基地の話を知ってるかしら?」
「南方前線基地が?五月雨、何か聞いてるかしら?」
「へっ?南方前線基地ですか……?ええと…………あっ、そういえば前に提督とその周知を読みながら南方基地ってどこだろうねってお話しをしていました!」
「アイツ、基地の場所くらい把握しなさいよ……まぁ、それはいいわ。で?その話がどうしたっていうのよ」
南方前線基地が壊滅した情報は規模に関わらず一応全ての鎮守府に伝わって居たようだ。
けどその話を持ち出して姉さんは何を話すつもりなんだろう?
姉さんは満潮達が情報を持っている事を確認すると本題へと入った。
「ここに居るのは南方前線基地で生き残った数少ない艦娘の一人よ」
「はぁ!?そんな話を信じろっていうの?」
「信じるかどうかは貴女達次第だけれどこれは事実よ。そしてこの辺りには基地一つを壊滅に追い込める程の戦力を持った深海棲艦達が居ると言う事もね」
「………」
「満潮ちゃん……」
心配そうにしている五月雨に見つめられながら満潮は眉間を抑えて考えていた。
姉さんの話した事は一見嘘を吐いているように思える。
けど一つだけ疑いようのない事実があった。
それは深海棲艦側にそれだけの脅威が残っている事、そして南方前線基地から然程距離が離れていないという事実。
満潮も気付いて居るからこそ返答に悩んでいるんだろう。
自分達だけで撤退するリスクと私達に護衛を頼むリスクを秤に掛けているんだと思う。
やがて答えを決めたのか満潮は一度顔を上げて私達と顔を見合わせてから今度は深く頭を下げて言った。
「お礼は必ずするわ。だから、その……安全な海域までの護衛をお願いしますっ!」
「「お願い致します!!」」
満潮に続いて他の五人も一斉に頭を下げた。
そんな彼女達の誠意に答える様に代表して長門さんが一歩前に出て右手を満潮の前に差し出した。
「こちらこそ、短い間だがよろしく頼む」
長門さんの手に気付いた満潮はその手を両手でしっかりと握り返した。
私は目の前の光景にほっと旨を撫で下ろしていると、突然長門さんの通信機にアラートが鳴り渡る。
「む、どうした?なっ、なんだとぉ!?」
「長門さん?」
酷く取り乱した様子の長門さんにどうしたのか尋ねると咳払いをして気持ちを落ち着けた後、今起こった事を話し始めた。
「みんな、心して聞いて欲しい。今この海域は深海棲艦の大艦隊に完全包囲されている」
「大艦隊って……」
「水偵妖精からの報告では少なく見積もっても千、と言うより数えられない程の数が基地を中心に覆い尽くしているそうだ」
「は、はぁっ!!?意味が分からないわよ!そんな馬鹿な事がある訳……!」
「…………」
どうしよう。このままじゃ基地に戻っても彼女達を守る事はほぼ不可能だ。
と言うより私達ですら抵抗出来る数じゃない。
けど……諦めない……諦めたくない!
何かあるはずだ、何かが……。
指が進まない時は潔く定期投稿を諦める所存です。
(迷走防止の為)