響乱交狂曲   作:上新粉

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ガチャの沼は怖いですねぇ。
危うく二体目の諭吉さんまでリリースしてしまう所でした。



第九十八番~響~

 門長が深海棲艦達に連れられて基地を離れてから数日が経った。

今日も島の周囲を歩きながら電探を起動させて三人の帰りを待っているが今の所反応は無い。

 

「はぁ……」

 

どうしてこんなにも落ち着かないのだろう……。

別に門長がこうして基地を留守にするのは今に始まった事じゃない。

タウイタウイで別れた時はもう少し冷静だったはずだ。

あの時は帰って来るって信じていたから?じゃあ今は信じていない?

違う、門長は私を置いて居なくなったりしないって信じてる!

けどあいつはきっとエリレを救う為に無茶するかもしれないから、また()()()()()になってるかも知れないから……。

 

「どうした響?具合が悪いのなら明石に診てもらうか?」

 

付き添ってくれていた長門さんに声を掛けられ私はハッとして長門さんの方を向いて首を横に振った。

 

「ん~ん、大丈夫。長門さん、毎日付き合ってくれてありがとね」

 

「な、なに!私が勝手にやっている事だ、気にする必要はない」

 

長門さんは何故か顔を逸らせながらそう答えるが長門さんには本当に感謝している。

舞鶴に居た時から長門さんは司令官に楯突いてまで私を守っていてくれた。

門長に改修されてしまってもあの人は私を救ってくれた。

そして今もこうして私の傍にいてくれる。

 

長門さんにも門長にも私は返しきれない程の恩がある。

報いる術は今の私には分からない……けど受けた恩には報いなければ誇り高き特型駆逐艦の名折れだ!

どうすれば自分が皆の力になれるかなんて考えつつも気づけば島を周り終えていた。

 

「ありがとう長門さん。それじゃあ基地に……って、ん?」

 

今日も門長達は帰って来ていない。

その事を確認して内心肩を落とした私が基地へ戻ろうと長門さんに伝え電探に手を掛けた時、西北西の方角に反応が六つある事に気が付いた

 

「どうした、何か反応があったか?」

 

「うん。方位二九〇、距離四五〇〇〇に反応が六つあるんだ。門長達かな?」

 

「六隻か……確認の為水偵を飛ばすとしよう」

 

「うん、お願い」

 

長門さんに水偵を飛ばして貰い待つ事十分。

水偵妖精さんから長門さんに通信が入ってきた。

 

『かんえいかくにんしました!』

 

「艦娘か?それとも深海棲艦か?」

 

『えっと、かんむすではあるのですが……』

 

「なんだ?」

 

『じつは……』

 

水偵察妖精からの報告が余りにも予想外だったらしく長門さんは素っ頓狂な声をあげて聞き直していた。

 

「はぁ~あ!?それは本当なのか?」

 

『まちがいありません。そうびがしょきのものです。それにうごきもつたないしうえのちゅういもおろそかです。わたしのけんかいではれんどいちからごくらいのすいらいせんたいです』

 

「練度が五にも満たない水雷戦隊が中部海域に来ているだと?損害状況はどうなってる!」

 

『そんしょうはみうけられません。あってもしょうはくらいでしょう』

 

「損傷軽微だと?そんなばかな」

 

「長門さん!は、早く助けに行かないと!」

 

こんな海域をうろついている所を好戦的な深海棲艦に見つかったらすぐに沈められてしまうよ!

私は慌てて長門さんの手を引くけど長門さんは何やら難しい顔をしたまま一向に動こうとしなかった。

 

「長門さんっ!急がないと彼女達が危ないよ!!」

 

「待て、落ち着くんだ響。本当に低練度の艦隊だけなら無傷で此処まで来れると思うか?」

 

「それは……」

 

普通に考えたら無傷で中部海域まで来るなんて事はあり得ない。

けど今は事実として彼女達が居るんだからそんな事考えている場合じゃない筈だ!

 

「長門さん!今はそんな事気にしてる場合じゃないよ!いつ深海棲艦が彼女達に襲い掛かってもおかしくないんだよ!!」

 

「響……そうだな。だが彼女達を引き入れる事で基地の皆が危険に晒される可能性もある。罠や囮でないと言う保証が無いのだ」

 

「うぅ……」

 

長門さんの言っている事はわかる。

考えたくないけどもし彼女達が私達に対する罠であれば基地の皆に迷惑が掛かってしまう事は十分にあり得る。

でも、それでもすぐ近くで危機に瀕している彼女達を見殺しにするなんて事……。

 

「…………ふぅ、分かった。私が彼女達と合流してくるからその間に基地の皆に伝えて来るといい」

 

「長門さん……」

 

「もし皆の了承が得られなくても私が責任を持って安全な海域まで送り届けてやるさ。響、行ってくれるな?」

 

私の気持ちを察してくれた長門さんは私の頭を撫でながらそう言って微笑みかけてくれた。

私は長門さんにお礼を伝えてから力強く頷く。

 

「ありがとう、行ってくるよ。長門さん、気を付けてね」

 

「ふ、ビッグセブンを侮るなよ?話が纏まったら教えてくれ」

 

「わかった!また後でね!」

 

私は長門さんに別れを告げると直ぐにみんなに通信を繋いで食堂に集まって貰う事にして私自身も食堂へ急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 食堂には長門さんと門長、それと球磨さんを除く基地の皆が集まっていた。

どうやら吹雪さん達も皆に伝える事があったらしくそのタイミングで私から通信が入ったらしい。

 

「響さん、早速ですがそちらの用件から聞かせて貰えますか?」

 

「えっと、うん。さっきまで島の周囲を索敵していたんだけど……」

 

私は低練度の艦隊を見つけた事、今は長門さんが接触しに向かっている事、そして助けたいけどそれによって基地全体に危険が及ぶ可能性がある事を伝えた。

 

「だから皆の意見を聞きたいんだけれど、どうかな」

 

真っ先に答えたのは吹雪さんだった。

 

「そうですね、今の状況を考えると不安要素は出来る限り持ち込むのは避けるべきですね」

 

「今の状況?何かあったのか吹雪」

 

吹雪さんの言い方に疑問を覚えた摩耶さんが尋ねると、吹雪さんと姉さんは表情を曇らせながら答え始めた。

 

「これはフラワーさんから聞いた話ですが、門長さんが基地を離れてからここ中部海域で不穏な動きがあるそうです」

 

「不穏な動き?詳しい話は聞いてるのか?」

 

「えぇ、どうやら各海域からこの中部海域に深海棲艦が集結しているらしいわ」

 

「話では鬼や姫級も集まっているそうです」

 

深海棲艦が集結している。

目的はきっと門長か私達のどちらかだろうと考えているのは私だけじゃ無いはず。

だからこそ吹雪さんや姉さん達はこの情報を重く捉えているんだ。

 

確かに深海棲艦からの侵攻が危ぶまれる中、海軍からも攻め込まれる様な事になっては目も当てられない。

 

でも……だからこそそんな危険な場所に彼女達を放っておくなんて出来ない。

それに彼女達を安全な海域まで送るにも長門さん一人が孤立してしまうのは幾ら何でも危険すぎる。

どうすれば……どうしたら良いんだろう。

 

その時、思い悩む私の頭にポンと何かが乗っかった。

顔を上げるとそこには姉さんが私の頭に手を乗せてニッと笑い掛けていた。

 

「姉……さん?」

 

「確かにここに連れてくるのは危ないかも知れない……だったら私達でその子達を安全な場所まで連れていけば良いわ!違うかしら?」

 

「それは……長門さんもそう言ってくれたけど」

 

「そう?ならそれでいいじゃない。勿論長門さん一人になんて行かせないわ!」

 

姉さんは私が心配していた事をあっさりと解決してくれた。

だが姉さんの勢いは留まる所を知らなかった。

 

「それと響、貴女も一緒に来なさい!」

 

「え……えぇっ!?そ、そんな私なんて付いてっても足手まといだよ!」

 

「暁さん!響さんをそんな危険な任務に連れていこうと言うのですか!?そんな事認められません!!」

 

姉さんの突然の提案に吹雪さんも堪らず猛反対するが、姉さんも引く気は無く真っ向から吹雪さんに対峙している。

 

「今の状況じゃ基地にいても同じよ!だったら私が響を護れる場所に置いておくわ!」

 

「でしたら私もついて行きます!貴女一人じゃ危なっかしいですから!」

 

「ばっ、馬鹿にしないでよね!というか基地の守りもしっかりとしないと駄目なんだから貴女は基地にいなさいよ!」

 

「二人とも落ち着いてよぉ!?」

 

突如始まった姉さんと吹雪さんの壮絶な言い争いの末、どっちが出撃するかはじゃんけんで決める事となった。

 

「いいわね?勝っても負けても恨みっこ無しの一発勝負だからね!」

 

「臨むところです!絶対に負けませんよ!」

 

「最初はグー!」

 

「じゃんけん!」

 

「「ポンッ!!」」

 

姉さん、グー。

 

吹雪さん、チョキ。

 

「いよぉっっっっしゃああああぁぁあ!!!」

 

「そんなっ……私が負けるなんて」

 

愕然と項垂れる吹雪さんだったが何かを閃いたらしく直ぐ様頭を上げると姉さんに指を差して言い放った。

 

「そうですよっ、六人の護衛に三人で行くのは厳しいでしょう!やはり私も護衛に付くべきですっ!」

 

けど吹雪さんの発案は姉さんによって棄却されたのだった。

 

「基地も護らなきゃ駄目だって言ってるでしょ?バランス的にも私と貴方がどちらも基地を離れるという訳には行かないわよ」

 

「で、でも姉さん。吹雪さんの言う通り三人で六人を護衛するのは大変だよ?」

 

「響さん……!」

 

「そうねぇ……確かに響の言う通りね」

 

「で、ではっ!」

 

姉さんは期待の眼差しを送る吹雪さんに目を合わせずに少し考えた後、姉さん達のやり取りを静かに見守っていた三人に声を掛けた。

 

「それじゃ卯月、望月、夕月。貴女達三人が付いてきてくれないかしら?」

 

「任せるぴょん!」

 

「うへぇ、まじかぁ……まぁ良いけどさ」

 

「ああ、了解した」

 

姉さんは三人の返事に頷くと改めて私達に呼び掛けた。

 

「それじゃあ準備が出来次第すぐに出発するわよ!四人ともついて来なさい!」

 

「「了解っ!!」」

 

そうして私達は工廠で準備を行い先に向かっている長門さんとの合流を果たす為に基地を出たのであった。

 

 

 

 

 




本当は課金なんてしてる場合じゃないんですけどね。
金銭的にもこっちのストック的にも。

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