響乱交狂曲   作:上新粉

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ぐはぁ……このままでは、間に合わない!

白雪「何を言ってるんですか?転これの更新を止めてるんですからまだ行けますよね?」

え、ええとぉ……

白雪「行けますよね?」

……善処します。


第九十七番

中枢棲姫が提示した賭けの内容、それは至極単純なものであった。

 

「つまり、あそこの深海棲艦共に対して俺の仲間が話し合いを持ち掛ければ俺の勝ち。抵抗したり降伏又は逃走した際はお前の勝ちって事か」

 

「エエ、理解ガ早クテ助カルワ」

 

理解はした。だが納得はしていない。

というのも俺は響や長門については大丈夫だとは思っているが、他の面子がどう動くかなんて検討も付かないからだ。

そんな賭けに乗るつもりはないし何よりそんな事で響を危険に晒す訳には行かねぇ。

という事で俺は奴の提案を蹴り基地に戻ろうと考えていた。

だが、中枢の次の言葉で俺の気持ちは大きく揺さぶられる事となった。

 

「貴方ガ賭ケルモノハ最初に話シタ条件デ貴方ガ私ニ協力スル事。ソレデ私ガ賭ケルモノダケレド……ソウネェ、万ニヒトツデモ私ガ負ケル様ナ事ガアレバ組織全体デ貴方ノ理想ニ協力スルッテノハドウ?」

 

俺の理想……つまり響との幸せな日々、そして笑顔溢れる少女達との平和な世界。

その大きな障害となっている存在は二つ。

一つは言わずもがな現状の維持を目的とした正真正銘の化物共、海底棲姫達。

そしてもう一つが深海棲艦以外を淘汰する事による平和を目的とした此奴らEN.D。

だからこそ此処でこいつらの協力が得られれば残る大きな障害は一つとなる。

たが、問題は此奴の言う事が何処までか本気なのかという事だ。

実際俺の理想と此奴らの目的は180度反対であり、それに協力するとは到底思えない。

 

「それが本気なら賭けのチップとしては悪くねぇ。だが、てめぇの今の言葉を信用するだけの根拠がねぇな」

 

俺がそう言うと中枢は目を閉じたまま指を顎に当てて考え始める。

 

「ウ〜ン、貴方ヲ此処ヘ連レテキタ意味ヲ理解シテ貰エテルト有難カッタノダケレド……良イワ、貴方ガ勝ッタラ私ノ生殺与奪ヲ委ネルワ」

 

「ボ、ボス!?気ハ確カデスカ!!ゴ自身ガ言ッテイル意味ヲ理解シタ上デ仰ッテルノデスカッ!?」

 

正直此奴の生殺与奪を委ねられた所で結局信じる証拠にはならねぇじゃねぇか。

そこの戦艦が取り乱してる意味も解んねぇし……ってまぁ自分とこのトップがあんな事言い始めたら普通に焦るか。

そんな戦艦とは対照的に中枢は冷静に話を進めていく。

 

「マァ、コレダケジャイマイチピント来ナイカシラ?」

 

「ああ、根拠としてはさっぱりだな」

 

「ソウネ、簡単ニ言エバ私ヲ殺セバEN.Dノボスハ貴方ニナル。ソウスレバ貴方ノ意向ニ背ク者ハ殆ド出ナイシ、出タトシテモソレダケノチカラガアレバ従エル事モ容易イデショウ?」

 

なるほど、今の話からするにEN.Dっつうのは実力至上主義な組織らしいが……。

結局どこまで行っても此奴の話を信じる証拠にはなり得ない。

そこで俺は隅で俺らの様子を見ていたエリレに事実確認を取ってみる事にした。

 

「なぁエリレ、EN.Dの現リーダーである此奴を倒せば倒した奴が新リーダーになれるって話は聞いた事あるか?」

 

正直な所彼女が組織の事情に詳しいとは思えないが俺はエリレの返答を元に考えようと思い尋ねると、意外な事にエリレは直ぐに答えてくれた。

 

「ウンッ!ソノ話ナラ最初ニ聞イタカラ挑ミニ行ッタケド負ケチャッタヨ」

 

「フフ、配属サレタソノ日ノウチニヤッテ来タノハ貴女ガ初メテダッタカラ良ク覚エテルワ」

 

成程、エリレがああ言ってるのなら恐らく全体の認識で間違いは無さそうだ。

エリレの想像以上の行動力に驚きつつも中枢の話が出鱈目ではない事を確認した俺はどうするべきか次の返答を考えた。

 

だが、腹立たしい事にどれだけ考えようと結局の所俺に選択肢など無かったのだ。

何せこの賭けの内容、勝っても負けても俺にメリットが用意してある。

勝てば勿論の事、負けたとしても俺が協力する条件を使えば基地の奴らの安全は保証される。

 

つうか逆に此処で降りれば響達を危険に晒す事になる。

あれだけの戦力相手では一日堪える事すら厳しいだろう。

だからといって例え此奴を沈めて俺がリーダーになった所で奴らが言う事を聞く保証なんてないし、()()俺に反乱を止める力は無い。

だから俺が今出来る事と言えば賭けに乗り此奴等が不審な動きをしないか見張る事だけなのだ。

 

くそっ、俺が奴らについて行った時から……いや、もしかしたら空母の奴が基地に来た時から奴の手の上で転がされていたって訳か。

 

「……解った。但し二つだけ条件がある」

 

「ナニカシラ?」

 

「一つはお前が賭けに勝った際だが、響達基地の面々に危害を加える事は認めん」

 

「エェ。『鹵獲シタ艦娘ノ処遇ヲ貴方ニ一任スル』、ソレガ貴方ガ協力スル条件ナノダカラ当然ネ」

 

中枢は少しも考える事なくそう答えた。

やはり最初からここまでは想定してたって訳か。

まあいい、これは確認みたいなもんで本命は別にある。

それの返答によっては此奴を沈めEN.Dの奴らが従う事に賭けるしか無くなるだろう。

 

「開始の合図として改めて全員に伝えろ。()()()()()()()()()、ってな」

 

さて、どう答えるか。

もし中枢が奴らにそう伝えれば再度別の指示を此奴が出すまでは響達の安全は保証される。

そうすると俺が賭けに勝った時に響達を人質に賭けを反故にする事がほぼ不可能になる訳だ。

指示を出そうとした時点で潰しに掛かればまともに指示は出せないだろうからな。

 

だからこそこの条件を受けるかどうかで奴の狙いが分かると踏んだのだ。

しかし、中枢からは思っていたのとは少し異なる答えが返ってきた。

 

「解ッタワ。但シ決着ガ着クマデノ私ノ安全ノ為ニ貴方ニハ枷ヲ着ケテ貰ウワ」

 

「枷だって?俺を縛った位でどうにか出来ると思ってんのか?」

 

「思ッテナイワ。ケド貴方ガ枷ヲ千切ッタ時点デ基地ノ子達ノ無事ハ保証シナイワ」

 

ちっ、つまりこれは防犯ブザーみたいなもんって事かよ。

だが逆に言えば奴が不審な動きをした時点で止めに行けば止める事も出来る状況でもある。

奴の考えは解んねぇが状況としてはどっちも下手な事は出来ねぇ筈だ。

なら…………

 

「解った、拘束だろうがなんだろうが好きにすればいい」

 

「ソ、賢明ネ。ルフラ、彼ニ枷ヲ」

 

「ハッ」

 

扉側に控えていた戦艦が頑丈そうな鎖を俺の手足に次々と繋いでいく。

やがて両手両足を繋ぎ終えた戦艦が再び後ろに下がると、中枢は俺の姿に満足そうに頷いた。

そして腰に付けていた無線機と思われる四角い物体を口元に近づけ俺の条件通りに始まり合図を告げた。

 

「作戦内容ヲ改メテ伝エルワ。今回ハ艦娘共ノ行動パターンノ観察。観察対象カラノ攻撃ガアッタ際ハ反撃セズ速ヤカニ撤退スル事!作戦違反者ハ私ノ航空機ガ直々ニ雷撃処分サセテ貰ウワ、以上!」

 

『イエス!ボスッ!』

 

通信機越しでも聞こえてくる深海棲艦共の号哭を皮切りに遂に賽は投げられた。

これ以上俺が干渉出来る事は無い。

後は響達を信じて待つ事しか出来ない俺はその無力感に歯噛みしながらただ事の成り行きを見守り続けていた。

 

「響……頼む、お前だけは無事でいてくれ……」




オラに書き溜められる集中力をくれー!!

響夜「何もしてない時間に少しでも書けばいいだろうに」

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