響乱交狂曲   作:上新粉

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久々にプールに行きましたがやっぱ暑い時は良いですね!
まあ私あんまり泳げないんですけどね( ̄▽ ̄;)


第九十四番

電に戦略的敗北を喫してから早一週間。

俺は前回の反省点を活かしつつ次の計画を練っていた。

 

前回は自然な流れにしようと全員に話を拡げたのが悪かったな。

きっと不自然な流れを感じ取った電に先手を打たれたに違いない。

だから今回は前回の二の舞とならぬ様に響が一人の時を狙って動く事にした。

 

「ふっふっふ、今日は明石に写真を渡すのを条件に作らせたこの空色の朝顔をあしらった風情のある浴衣を着てもらうぜ」

 

二人の時に水着を着てくれなんて言ったら警戒されるかも知れんが浴衣ならきっと着てくれる筈だ!

二人でのんびり花火と洒落込みそして………。

クックック……完璧な作戦だ。

そして万が一電に悟られても海水浴の時みたいなあからさまな妨害は来ないだろう。

 

そこまで考えた俺は今こうして響が一人になるのを後ろから見守っている所だ。

 

「私も姉さんや摩耶さん達の様に何か出来ないかな……」

 

「響ちゃんには響ちゃんにしか出来ない事があるのです。だからそんなに焦らなくても大丈夫なのですよ?」

 

「でも……」

 

「焦っても案は浮かんて来ないのです。だからじっくりと考えていけば大丈夫なのです」

 

「電…………うん、ありがとう」

 

くっ、この距離からじゃ二人の仲が良い事しか解らねぇ。

と言うか電が響の近くに居ない時ってあるのか?

 

……もしかしたら俺は重大な事を見落としていたのかも知れん。

電は俺?や外敵から響を護る為に殆ど一緒に居るのだ。

つまり俺は電が響から少しの間でも離れるまで誰にも見つかっては行けない、見つかれば必ず電に感付かれ詰みだ。

それでいてその瞬間がいつ訪れるのかは全くわからない。

 

「……それって無理ゲーじゃね?」

 

そこに気付いたのは昼を大きく過ぎた時であった。

だが俺は切り替えの早い男、すぐ様次なる作戦に頭を働かせていた。

と、その時!

 

「っ!?……響ちゃん、ちょっと先に部屋に戻っていて欲しいのです」

 

「電?えっと……うん、わかった」

 

電が真剣な顔で響に何かを伝えるとなんと元来た道を戻り始めたのだ。

 

つかやべっ!?こっち来るじゃねぇか!

俺は急いでそこらの草陰に隠れるが電の視線は既に俺を捉えていた。

 

「ぐ、偶然だなぁ電。そんな血相変えてどうしたんだ?」

 

既に手遅れなのは明白だが俺は何とか乗り切ろうと偶然を装う。

だが電の反応は俺の予想とは違うものであった。

 

「そんな事はどうでも良いのです、それよりも暫くの間響ちゃんに誰も近付かせないで欲しいのです」

 

「えっ?お、おぉ……わかった」

 

俺にそれだけ伝えると電は直ぐにその場を去っていった。

 

……何だか分かんねぇが、電から正式に許可を貰ったって事か?

 

マジか……マジ……か?ううぇぇぁぁぁあ!!?マジデ!?いいゃぁっっっふぉぉぉおおう!!!

遂に電ちゃんが認めてくれたって事か!これで障害は無くなった!!我無敵也!!!

 

「ひーびーきぃーー!!!この浴衣来て俺と花火しようずぇぇー!!!」

 

俺は全力疾走で奇声を上げながら響の下へと向かった。

そして振り返り呆然と俺を見つめる響の手を取ろうと右手を伸ばした。

だが俺の右手は何も掴むことなく勢い良く空を切った。

 

「なぁっ!?」

 

俺は慌てて正面を向き直るがそこには既に響の姿は無かった。

何事かと周囲を見渡すと階段の上には奴が居た。

 

「門長、私ニツイテコイ。サモナケレバコノ駆逐艦モ無事デハスマナイ」

 

「うそ、どう……して?」

 

響が信じられないといった表情で奴を見上げる。

だが奴は溜め息一つ吐いて響の問いを切って捨てやがった。

 

「私ハ言ッタハズダ、敵対組織カラノスパイトハ考エナイノカトナ」

 

正直スパイだろうがなんだろうがどうでもいい。

ただ響を悲しませた挙句に危害を加えようとする此奴を俺は絶対に赦さねぇっ!

 

 

「空母テメェッ!!!何してんのか分かってんだろうなぁ!!」

 

「無論意味モ無クコンナ事ハシナイ。大人シクツイテクレバ駆逐艦ハ解放シヨウ」

 

「うるせぇ、今すぐ響から手を離せ……俺の理性が少しでも残っている内にな」

 

「怖イワネ、ダケド私モ引ケナイノ。オ願イダカラ大人シクツイテキテクレナイカシラ?」

 

そうか、離す気は無いか……なら仕方ない。

エリレには悪ぃが此奴には階段のシミになってもら……待て、そう言えばエリレはどうした?

普段ならこの辺りで割って入って来る様なものだが。

まさか……

 

「テメェ、まさかエリレまで手に掛けたんじゃねぇだろうなぁ?」

 

「ナッ!?馬鹿ナ事言ワナイデ!!」

 

空母は先程までの冷静さとは打って変わって感情を剥き出しに反論してきやがった。

 

「じゃあエリレはどうした。何で一緒に居ねぇんだ!」

 

俺がそう聞き返すと空母は言葉を詰まらせた後、誤魔化す様に咳払いをしながら再び同じ質問を繰り返す。

 

「……トニカク、ツイテクレバ響ハ解放スル。ダカラ何モ言ワズニ来ナサイ」

 

エリレの事は気になるがこいつが言う通り響を話すとは限らねぇ。

俺はどう動くべきか考えていたが、響の一言により俺は覚悟を決めた。

 

「門長……私なら大丈夫。それにフラヲさんはきっと約束を守ってくれるよ」

 

「響……解った。おい空母、響の信頼を裏切るような事があれば簡単には死なさねぇから覚悟しておけよ」

 

「言ワレナクテモ約束ハマモルワ。ジャアツイテキテ」

 

響が信じるのなら俺は響を信じて付いていく。

だが同時に響だけは命に変えても守ってみせる。

それが俺を必要としてくれた響に報いる術なんだと信じて。

 

俺は何時でも動ける様常に意識を集中しながら空母の後に続いて海岸へと歩き出した。

 


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