あ"~......今日は昨日行けなかった食糧の調達......を摩耶にやらせて俺は資材を確保しに行くか。
つーわけで俺は猿の鳴き声が聞こえるグラウンドへと足を運んだ。
「せいっ!うぉりゃあぁっ!!」
「おい摩耶。」
「んだよ、何か用か?」
なんでそんな汗だくになるまで近接戦闘の訓練をしてるのかさっぱり解らんが気にせず用件だけを伝えた。
「......アタシはてめぇの分は持ってこねぇっつったよな?」
「んなこたぁ分かってんだよ。俺が遠征に行ってくるからその間の響達の飯を用意しとけって言ってんだ。」
「お前が遠征?どう考えてもマイナスじゃねぇか!」
「るせぇ、俺には俺のやり方があんだよ。」
「へぇ......くれぐれも資材を枯渇させんなよ。」
「たりめーだタコ、つーわけだからちゃんとやっとけよ。」
「てめぇの分以外なら言われなくてもいつも準備してんだよ。」
へぇ、そいつは知らなかったな。てことは自分の取った分は全て自分で食ってたのか......やっぱ燃費わりぃんだな。
「ま、それなら良いや。じゃあな。」
用件を伝えた俺はそのままの足で工廠へと道具を取りに行った。
「おーい、明石。丈夫な縄何本かあるか?」
「ふぇ?私今日何もしてないですよ!?」
「ワタシはそもそも無罪ネー?」
「うるせぇ、今日縛り上げんのはテメーらじゃねぇよ。」
「へ?じゃあだれを縛り上げるんです?」
「ま、まさかついにヒビキにアーンな事やそーんな事をするつもりデスネー!」
「はっ倒すぞてめぇ。」
「ノーノー、イッツジョークネ!」
ったく......こいつは自重する気はねぇのか......
「まあいい、これだけありゃ充分だ。」
俺は数本の丈夫な縄を持って沖へと抜錨した。
「この間の駆逐艦たちでも拐いに行くんですか?」
「ちっげぇよ!」
全く......この妖精まで俺を犯罪者扱いしやがって......
「いや、立派な犯罪者ですよ?」
「ナチュラルに心を読むなっ!」
「まあまあ、それよりどうするんです?また輸送船団を横取りします?」
「それはお前が......まあいい。今日は深海棲艦のワ級から物資を奪う。」
「やっぱり奪うんじゃないですかぁ~」
「
「うわぁ、清々しい位エゴの塊ですねぇ!」
「放っとけ、砲身の操作は頼んだぞ。」
「はいは~い。」
あ、電探装備すんの忘れてた。
俺は明石に作らせた耳当て型の電探を装備する。
「よし......おぉ、頭の中に情報が流れ込んで来る感じだ......」
お、早速敵発見。ええっと艦種は............解らん。
「なあ、この電探で敵の艦種わかんねーの?」
「電探を何だと思ってるんです?無理です。」
「じゃあ水上機も装備しなきゃならねぇか。」
「摩耶さん連れていけば解決じゃないですか?」
「あいつ?来ねぇだろ。」
「それはどうですかねぇ?」
どうもなにもそもそも俺が奴を連れてこうとは思わねぇし奴も俺に付いてこようなんて思わねぇだろ。
「まあ......半分沈めれば良いか。」
おもむろに右手を構え妖精の準備を待つ。
「もう少し左に旋回を。」
「おう、ここか?」
「そこです、三......二......一......今です!」
妖精の合図に合わせて引き金を引くと同時に心地のいい怒号が鳴り響く。
「やっば撃ってるって感じがしていいなこいつは!」
「彼女達を撃ってるときもそんなこと考えてたんですか。」
「ん~......そういや何であんなにキレてたんだ?」
「うっわ、最低ですね。」
「うっせ!」
確かにすげぇ馬鹿にされたのはムカついたがあそこまでするつもりはなかった......はず?
「............ニヤリ」
「お、一人減ったか。次いくぞ!」
「今度は少し右に旋回を」
「おーう。」
「今です!」
ワ級いっかなー、見えねぇからわっかんねぇや。
妖精の言うままに撃ってるけど戦ってる実感がねぇ......
「よし、そろそろ近づくか。」
「装備が変わってもやることは変わらないんですねぇ。」
「資材の確保が目的だからな。最悪戦艦とかでも解体すれは資材になんじゃね?」
「まあ艦娘を解体するより鋼材は手に入ると思いますよ。」
「じゃあ全速前進だ。」
足に力を込め徐々に速度を上げ最大戦速30ノットのまま敵艦隊に接近していく。
「そろそろ見えてくるだろう。敵の艦種はなんだ?」
「へぇ、門長さんにしては運が良いですねぇ。」
「お、いるか?」
「はい、戦艦ル級flag ship二隻とワ級flag shipが一隻居ますよ~」
なるほど、よく解らんが資材が豊富だと云うことは分かった。
「よし、全員捕獲するぞ。」
捕獲っていっても別に生きてる必要はねぇよな。
俺は手始めに一番近くに居た戦艦に接近し奴の額に砲身を押し付け戦艦の頭を吹き飛ばす。
すると戦艦は首の断裂面から蒼い体液を撒き散らし海へ溶けていく。
「ちょっ、回収できねぇ!」
「当たり前じゃないですか、艦娘だろうと深海棲艦だろうと轟沈した船は回収不可能です。」
そうだったか......じゃあ生きたまま連れて帰らなければならないのか。
「キサマ、ワガキュウユウヲヨクモ!」
「あ、人型なら急所に良いの食らわせれば気絶すんじゃね?」
「金的ですね!」
「それは駄目だっ!つーかあいつら無いだろ!?」
「ナニゴチャゴチャイッテイルッ!!」
激昂した戦艦が俺に照準を定め一斉発射してきた。
「だからな、例えばここだよ。」
なんか所々痛い気がするが構わず戦艦の鳩尾に砲身をねじ込む。
「ガアッ!?ナニヲ......」
俺はそのまま引き金を引いた。
「カハァッ!?......ヒュー......ヒュー......」
戦艦の腹はでかい風穴を開けながら体液を垂らし海へ溶けていった。
「あ......威力たけぇな。」
「そりゃあ三十キロ先でも駆逐艦の装甲を貫通するような代物ですから。」
くそっ、じゃあ撃たなきゃいいんだな。
残ったワ級へと向かい少し加減しながら脳天から四十六センチ三連装砲を降り下ろす。
「ヒィィッ、ガァッ!?」
「よし、こいつ縛り上げて帰るか。」
「ワ級一隻でプラスになりますかね?」
「喫水線下が無駄にでかいし大丈夫だろ?」
そういや俺も治すのに鋼材を使うのか?
だとしたらまだ一回も修理してないな。
「まあ......大丈夫......だろ?」
俺は一抹の不安を覚えながら帰投するのであった。
「明石ー、居るか?」
海側から工廠へ入り明石を呼び出す。
「どうしまし............えぇ......どうしたんですかそれ?」
「あ、見て解らねぇか?遠征結果だ。」
「はぁ......これをどうするんです?」
動揺してるのか解らんが俺は当たり前の答えを当然のように答えた。
「明石、解体任せた。」
これで奴にも理解できただろう。
「いやいやっ!無理に決まってるじゃないですか何を言ってるんですかっ!?」
「艦娘だって解体すんだろ?そんな感じでやればいいじゃねぇか。」
「簡単にいってくれますね......」
「まあまあ、解体は私がやっておきますから明石さんは門長さんの修復資材の投入をお願いしますね~」
「へぇ!?あ、貴女は......」
「ああ、私は門長さん所で砲雷長やってます!」
「ほ、砲雷長!?解体出来るんですかっ!!」
「はい、手先は器用ですから!」
手先が器用っつーか万能だよなぁ......
「あ、因みに今回撃たれまくって小破はしてるので資材に気を付けてくださいねぇ」
「へぇ!?は、はぁ。分かりました、門長さんこちらへどうぞ。」
「おう、まさか俺がここに入ることになるとはな。」
衣服を脱ぎ捨てドックという風呂へゆっくりと浸かる。
「あ"あ"~」
「おっさんなんですねぇ。」
「うるせぇ、おっさんて歳じゃねえわ」
まだこちとら二十五だぞ?......おっさん......か?
まあいい、それよりもいつまでここに居ればいいんだ。
「なあ、後どれくらいで出れるんだ?」
「まだ十分もたってないですよ。」
「もう出たいんだが......」
普段十分も風呂に浸からねぇよ。
「今出てしまうと資材が無駄になってしまうので眠ってて大丈夫ですよ。」
大丈夫なのか?まあ確かに眠い......寝るか。
「んじゃ、終わったら起こしてくれ......」
「了解しましたぁ~」
心地よい温度の中徐々に意識が溶けていく。
明日は建造でもすっかなぁ......来るといいなぁ、響達のし......ま............Zzz....
「あぁ......ごゆっくり~......」
苦笑いを浮かべながら修復時間を眺める明石の呟きは門長には届かなかった。
51:32:45
あれ?おかしいな......電探も用意したのに戦闘距離が近いぞ?一体どうなっているんだ!
何とかせねば......