まぁ結局、その後ウォルターは解散後フェリと帰ることになり、帰路を歩いていた。
「……………………」
「…どうしたンだ、ロス。黙りこくって」
「……いえ…なんだか仲間はずれにされているような気がします」
「…んー…」
「イオ先輩はなにも知りませんか?」
「んー。知らん。まぁ、あえて、という点なら、知らないでもない。だが、それがあっているかと言われればオレは知らないな」
「そうですか」
フェリはウォルターの顔を見やると、ウォルターはフェリに微笑を向けた。向けたものの、フェリはどちらかと言えば不機嫌そうにウォルターを見る。
不機嫌そうなフェリの表情に、ウォルターは苦笑を返した。
「……おーい、ウォルターッ!!」
後方から疾駆する物体、1 衝突は回避出来る しかし、加速
「……………………っ?!」
突然、ウォルターの真後ろから突撃され、ウォルターは身体が傾いで転倒することを何とか堪える。
回避しようと思った矢先、旋剄を使ってまで加速して突撃してきた。
ウォルターは、後ろをばっと振り返って睨んだ。
「……ライア……ッ」
「ウォルターっ♪ さっがしたさー」
ウォルターの怒りもなんのその、突撃してきた人物……ハイアは満面の笑みでウォルターを見上げた。
「探さんでいい、探さんで」
「……モテモテですね」
「やめろロス、そういう事言うの」
ウォルターは困った顔をしてフェリを見て、それからハイアを引き剥がした。
苛立たしげにウォルターがハイアを睨め付けるとハイアはさすがに焦った様子でウォルターから離れた。
「……ライア……?」
「ごごごご、ごめんなさいさぁぁ! そんな睨まないでほしいさ!」
「それはいいですけど、とっとと離れなさい」
フェリは酷く面倒だという顔をしてハイアを睨んだ。
そうこうしているうちに生徒会長でもあるカリアンが到着し、フェリは一層嫌そうな顔をした。
「……何故兄さんも来るんですか……」
「ウォルターの助言どおりにしたらこうなったさー」
「……………………イオ先輩……………………?」
「……オレは別に…会わせろってライアが言ってたから会わせただけで……こうなるとは」
「本当になにしてくれているんですか。あなたはなんて酷いことをするんですか」
「酷いことなのか……」
フェリの鬼気迫る表情で言われ、ウォルターは困った顔をしてフェリを見た。
ウォルターは少し離れて居たところに隠れていたハイアと同じサリンバン教導傭兵団の団員である、ミュンファ・ルファの気配を感じてハイアに呼ぶように告げると、やや戸惑った様子のミュンファが出てくる。
それでもフェリはそんなミュンファには構わずにウォルターに問うた。
「彼らは誰なんですか?」
「ん~、まぁ、つまるところグレンダンの王家直属の下っ端みたいなモンだよ」
「酷い言い草さ」
ウォルターの適当な言い方と、雑な扱いにハイアは苦笑いした。
それでもウォルターははっきりと言いのける。
「そんなもんだろ? サリンバン教導傭兵団って言って、グレンダンのヤツらだ。でもって…、こいつらは王家からの要望……つまり結成された理由を達成する為にあちこちを回ってンだ」
「……サリンバン教導傭兵団……ですか」
「そう。でもって、ライア……ハイア・ライアとアルセイフは仲が悪いってことだけわかっとけばいいンじゃねぇ?」
「……………………別に要らない情報ありがとうございます……」
「そりゃあどう致しまして」
ウォルターはフェリの不機嫌全開の声に肩を竦めつつ答えた。
それでもハイアは特に構わず、にやりと笑みを浮かべてウォルターを見た。
「ともかく、さ~。おれっち達は欲しいもんが貰えればさっさと去るさ~」
「その欲しいモンがこの上なく厄介なンだろうが。……ともかくだ。確かに生徒会長に会えって言ったのはオレだが、まさかこうなるとはさすがに思ってなかった」
「……めんどうですね」
「まったくなー」
「あなたも原因のひとつでしょう」
「ひでぇ」
フェリがひとつ溜息を吐く、ウォルターはやはり肩を竦めていた。カリアンはひとつ息を吐きウォルターに切り出す。
「ともかく、こんな所ではなんだ、一旦生徒会室に行こうか」
「ま、こんなとこで固まってたら目立つしな」
とりあえずという形で生徒会室に移動してくると、ハイアとウォルターは適当にソファに腰掛けた。
「で……ハイア、と呼んでいいのかな?」
「いいさ~」
「では、改めてハイア。キミの目的を聞こうか」
「ん~、さっきもウォルターが言ってくれてたことさ。おれっち達はあるもんをグレンダンに持って帰って来いと言われている。それでもって、それがいまここ、ツェルニにあるのさ~」
「……はたして、それは?」
「それは……廃貴族、って呼ばれるものさ~」
ハイアがカリアンに廃貴族の説明をしている。
廃貴族。
廃貴族とはつまり、都市を失った、壊れた電子精霊……または、狂った電子精霊ともいう。
都市の防衛や汚染獣からの回避などに使用していたエネルギーは、人間への憑依、または物質、物体への放出により巨大なエネルギーへと変わる。
そしてこのエネルギーの使い方によって、武芸者は膨大な力を手に入れることが出来る。
その力はグレンダンの女王、アルシェイラ・アルモニスに匹敵するとも言われる。
―――――って言ったって、純粋じゃないンだけどな
ある意味、自分の力ではないのだから反則とも言えるであろうし実力ではないとも言える。だが戦いという生死、負けは死ぬ事と同義といわれる世界でそれは言い訳に過ぎない。
勝負の世界ではつまるところ勝った方が正しいのだ。だからこそどういう経緯で力を手に入れられたかは関係がない。
大切なのは使いこなせているかどうか、だ。
ただそれだけだ。
何故ならば、それをいえばウォルターも同じだ。
異界法則を使い、ここの武芸者と念威操者と同じ様な状態を具現させただけで、この力は後付にすぎない。
つまり、廃貴族を得た人間と同じ。
そういうことだ。
「ウォルター」
「あン?」
「今回の廃貴族の捕獲、手伝って欲しいんさ」
「……………………オレに?」
「そうさ。会長さんはし~っかり廃貴族についてわかってくれたみたいさ。後は捕獲だけさ~」
「……えぇ、面倒くさいしな~…。ってことでアルセイフにでも頼めよ」
「…嫌さ。……あいつだし」
「わがまま言うな」
「…………でも……」
ハイアが渋るのでウォルターがじとりとした顔で見やると、ハイアはややバツが悪いという顔をしていやいや頷く。
「…………………………………………分かった、さ~…」
「よし」
いやいやでも頷いたのでウォルターはハイアの赤髪をかき混ぜた。
ハイアはそれに関しては何処かそっぽを向いていたが、それでも譲れないらしく不服そうに呟く。
「……あいつがなんだかんだ言ったら、ウォルターがやってくれさ」
「…分かったよ」
ハイアの言葉にウォルターが応じた。