フードを食べ終わり、今度はポフィンといわれるものだ。ポフィンは5種類の色にわかれており、赤いものは辛く、青いものは渋く、黄色いものはすっぱく、桃色のものは甘く、緑色のものは苦い。
正直、チコリータは何を食べていいのかさっぱり分からない。とりあえず、自分が食べる前に他のポケモン達は何色のものを食べているのか参考にすることにした。
まず、テーブル組のハピナスは黄色のポフィン、サーナイトは青のポフィンで、ルカリオは赤のポフィン。その次にミロカロスとダークライは桃色のポフィン。その隣にいるムンナとラティオスは緑色のポフィンで、ラティオスの隣にいるラティアスはサーナイトと同じ青のポフィン。それから少し離れたところで食べているベトベターとカラカラはルカリオと同じ赤のポフィンで、デスマスとタブンネだけは全種類の小さいポフィン──合わせると他のポケモン達のポフィンと同じ量になると思われる──を美味しそうに食べていた。
どうやらそれぞれの好みがあるらしい。なら試しに一番多く食べられている赤いポフィン──最初に配られたポフィンだ──を食べてみた。するとどうだろう、辛いのに仄かに甘みがある!
辛すぎず甘すぎない見事な比率で作られたポフィンはフードを食べ終えた後だというのにぺろりと完食してしまった。これならあと5個は余裕だろう。
「みんなどう? 美味しい?」
『レイカのポフィン大好き! いつも美味しいのをありがと!』
『レイカのポフィンは世界一ね』
『ティア、レイカのつくったものならなんでもすき。ティオもだよね?』
『そうだな』
『うめぇ、うめーぜレイカ! もっとくれ!』
『ちょっとリオ、もう食べたんだからだめだよ?』
『ママ、もっとちょーだい』
『あ、ずりぃ! ベトにやるならおれも!』
『は、はい! おいしいデス!』
『あの、お母さん、いつもありがとう……』
『……私に礼を言われても、レイカが困るだけだろうか……』
『姉さんのごはんはいっつも量が少ない。心配だわ。大丈夫かな?』
「美味しいならよかったわ。チコリータは……ああ、やっぱり赤いポフィンを食べたのね。ゆうかんな性格で間違いないみたい」
ポケモン1体ずつの顔を見つめ、表情を確認していたレイカは、チコリータに向き直ると微笑み、「少し休憩しててね」と言い残して、チコリータが手をつけなかったポフィンを片しに室内へと入っていく。するとレイカのポケモン達がこちらに集まってきた。
12体分の視線を向けられ、何を言われるのだろうと緊張する。しかしそれは杞憂だったようで、掛けられた言葉はやわらかいものだった。
『よぉ、オメーが新顔だな? オレはルカリオのリオ。どうだ、レイカのポフィンは最高だったろ!』
初めに声を掛けてきたのはリオだった。この12体の中でリーダー的存在なのだろうとチコリータは判断する。もっと厳かな性格かと思いきや、随分話し方が男らしい。
『う、うん。初めて食べたけど、とっても美味しかった』
『ムナもチコリータと話す! ムンナのムナだよ。ちっちゃい者同士よろしくね!』
ムンナは自分より小さいが、ふわふわと空中に浮かんでいるため目線は高い。
『おい! おれを抜かすな! おれはカラカラのカラだ。こいつにいじめられたらすぐおれに言えよ、ぶっとばしてやるからな!』
カラが割って入ってきた。どうやらムナとカラは仲が悪いらしい。犬猿の仲というやつなのだろう。