インフィニット・ストラトス~The Lost Rabbit~   作:ヌオー来訪者

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 どうでも良い話かもですがサブタイの元ネタはVガンから。


02 マシンと会った日Ⅱ

 玲次は困惑し切っていた。何故ISに乗れるのか、そもそもこいつは何なのか。

 そんな疑問は湧いたがISは自分の名前しか応えてくれなかった。

 

黒鉄(くろがね)

 

 名前は打鉄に似ているような似ていないような。そんな名前だった。武装もどうやら搭載されているらしい。つまり戦えと言うのか。確かにISは自律兵器を軽々と粉砕する攻撃力も、攻撃を防ぐだけの防御力も持っている。

 だがこういう事は自衛隊か代表候補生の仕事だ。

 

 とっとと退散したいと思ったが逃げた所で自衛隊に捕まって世話になる事は間違いないし、どう足掻いたって碌な事にならないのは眼に見えていた。それに男がISを纏って飛び回るなんて尋常では無い異常事態だ。

 ISに乗れる理由はどうせ篠ノ之の人間だからだろうと投げやり気味に推測しつつ、ビルにめり込んだ右半身を引き抜く。だが逃げ場は無くビルに右半身をめり込ませている内に4基の四足歩行型自律兵器に四方から取り囲まれてしまっていた。

 

「…………チッ」

 

 ISなら空を飛び回る事は出来る筈なのだが、如何せん()()()()()()()()()。何処ぞのロボットアニメみたいにマニュアルは置いていないからどうしようもない。テレビ中継で見た大会や自律兵器との戦闘の動画の知識しか頼りにならない。

 ISには確か防衛機構は有ったはずなので、自律兵器の攻撃はある程度防げるはずだが、操縦方法は分からない。手足を動かす事は辛うじて出来るのだが。

 

 今回の自律兵器は柱状のボディに四本の脚を生やし、両サイドに一門ずつの機銃の銃口が。頭頂部にはミサイルポッドが付いている。レーザーはボディの上部、機銃の銃口と同じ高さの位置に赤く丸い一つのランプのようなものから発生するらしい。

 一基が両サイドに付いていた機銃の発射口が玲次に向いてから火を噴いた。

 避けようとするも間に合わず、装甲に覆われた両腕を盾にして放たれた弾丸の雨を受ける。だが受けた衝撃は微々たるものだった。当然のように痛みは無い。

 

【シールドエネルギー残量94%】

 

 成程ISが持ち上げられる訳だ。生身の人間が喰らえば蜂の巣確定の下手な拳銃より大きな口径の機銃を受けて全く痛みを感じない。しかも腕に付いた装甲が結構な数の弾丸を弾いてしまっていた。

 だが当たり続ける事は間違いなく危険である事ぐらいは素人である玲次でも分かった。悪く言えば4%のダメージを負ったのだ。シールドエネルギーは一種のISにとってのヒットポイントのようなものだ。これが無くなると、ISの防御力は無くなってしまう危険がある。それぐらいの知識は持っていた。

 脳内に送られてくる周囲の状況を確認していると、少し離れた場所にてバラバラになり焼けただれた肉の塊が映った。それは――人だったナニカ。それは一つだけでは無い。幾つもだ。レーザーで焼き切られたり、マイクロミサイルの爆風でバラバラにされ、機銃で蜂の巣にされて。

 最早人と言うにはかけ離れた――原型は最早留めておらず辛うじて焼けただれて皮膚に張り付いた布や発せられる不快な臭いと状況からしてそれが恐らく人間であったのだろうと推測できるぐらいだった。

 

 前々から自律兵器とテロ行為は気に入らなかったが、今回は尚の事気に食わなかった。こんな死体の山と言う胸くその悪い光景を見せられれて喜べるはずがない。喜べる奴が居たらそいつはきっと狂っている。

 

 別の個体がレーザー発射体勢に入ろうとした途端、玲次はその個体に飛び掛かって勢いよくレーザーの発射装置目掛けて殴りつけた。

 ガンッ! と良く響く音を立てて自律兵器は軽く吹っ飛んだ。追い打ちにもう一撃叩き込もうとしたが、残り3機が黙っている訳が無く一基はレーザー、一基は機銃、一基はマイクロミサイルを展開して今にも玲次を吹き飛ばそうとしている。

 

 だが、構うものか。多少のダメージが平気ならこのまま突っ切る。

 地面を力強く蹴り、肉迫し、左の拳を振り上げる。一度玲次に殴り飛ばされたこの個体は既にレーザーの発射機能が先の一撃で壊されており、残っている反撃手段は機銃くらいだ。マイクロミサイルは射出までタイムラグがある。撃つ前に掻っ捌かれている事だろう。

 

 放たれた拳はそのまま真っ直ぐ自律兵器に向かって行く。そしてその最中に左腕の手甲型の装甲から刃が飛び出た。レンジこそ短いが高周波ブレードなので切れ味はそこら辺の金属など容易に斬り裂く。

 拳が自律兵器にヒットする前に飛び出た高周波の刃が自律兵器の装甲にヒットし、火花が派手に散り、瞬く間に突き刺さった。そして追い打ちを掛けるように右膝の装甲からもブレードが出現しそれで膝蹴りを叩き込んだ。

 

 自律兵器の装甲はどうやら大した事は無いらしく、仕込み刃はあっという間に深々と突き刺さり、追い打ちとして左腕の仕込み刃を突き立て、突き刺した右膝のブレードも引き抜いてズタボロになった自律兵器から、別の個体が発砲した同士討ちを考慮しないマイクロミサイルとレーザー、機銃から回避するべく飛び退いた。

 

 すると別個体から放たれたものが玲次に命中する事無く、大破した個体に泣きっ面に蜂の弾丸とレーザー、マイクロミサイルと言う三十苦を浴びせられて、最早鉄屑と化して沈黙した。

 

「滅茶苦茶だ。ISも束姉も……」

 

 そんな感想しか出なかった。正直自分には無縁のものだったので、事実を知っては居てもその力の大きさの感覚的な実感が無かった。驚かずには居られない。束が作った物の大きさは、自分が思った以上だった。

 相手が無人機ならば遠慮も要らないだろう。それと同時に完膚無きにまで壊してやりたかった。先ほど見た惨状が脳裏に焼き付いている。このまま放って置くと後味が悪い。

 武器の切れ味も上々だ。残り3体も倒せそうだ――

 

 仕込み刃の詳細が知りたいと思った時には既にデータは提示されていた。どうやら袖口、肘、膝、爪先を至る所にブレードが仕込まれているらしい。そして通常の高周波ナイフが、両腰に一本ずつマウントされている。

 それ以外の装備は、両腕部に装着されたアンカー射出装置のみ。

 

「飛び道具は……これだけか」

 

 玲次は軽く毒づきつつ構え直す。

 有効レンジは短めだが、威力はそれなりにある事は先ほどの一発で実証済み。

 残り三機の動きには淀みは無く玲次を殺そうと再び銃口を向けている。逃げるにしたって追って来るようじゃ拙い。相手は無人だしただの殺しの機械だ。

 

 玲次は、脚に力を籠め、ゆっくりと膝を折る。そして力を込めて地面を蹴り、空高く飛び上った。それに伴い銃口から外れ、銃口は跳びあがった玲次を追うべく上へと向いて行く、が、もう遅い。10Mほどの高さを頂点に、重力に従って玲次の身体が落ちていく。そんな落下の勢いを利用し、右脚の爪先の仕込み刃を展開し飛び蹴りを放った。ISそのものの重量と落下の勢い、そして仕込み刃の切れ味が上乗せされて、自律兵器の装甲が蹴り抜かれて派手に凹んだ。

 

 そして刺さった右脚を蹴り剥がしてから着地した瞬間、機銃が玲次の背後を襲った。

 弾丸が装甲やバリアに弾かれて行く音が玲次の耳朶を打つ。無理矢理振り返り次の個体も殴り倒そうと機銃の雨の中被弾を気にせず走り出した。

 

【シールドエネルギー残量:85%】

 

 弾かれた弾丸と、落ちる薬莢の音が引っ切り無しに鳴り響く。そしてマイクロミサイルも飛んでくるが構う事は無い。爆発が起き、煙に包まれながらも前進は止めず、両腕の仕込み刃で機銃の砲身を切り捨て、右腕の仕込み刃で突きを放ってから、右腕を即座に抜き、爪先の仕込み刃を利用した蹴りを前方の脚部に叩き込む。すると脚部は瞬く間に斬り裂かれて4本のうち2本の脚を失った個体はバランスが取れず前のめりに倒れてしまった。

 

 さぁ、次はお前だ。

 

 そう言わんばかりに最後の個体に玲次は顔を向ける。最後に残った個体はそんな玲次に臆する事無く無機質にマイクロミサイル発射装置の砲門を開いた。

 

 

//

 

 

 また自律兵器によるテロ。

 その報せを聞いていた金髪碧眼の少女はヘリの座席に座り窓から見える下界の街を見下ろしながら、苦々しげな顔をした。まだ現場から少し遠いのか、街並みは平穏そのもの。そんなあるべき平穏に苛立つ自分に気付き、少しの自己嫌悪を覚える。

 

 少女は待ち続ける。まだか、まだかと。待ち続けていた。

 

 少女は自律兵器が気に食わなかった。アレはISとは違う。ISが乗りこなすのにそれなりに時間を要するのに対し自律兵器は何の苦労も無く手に入れられて、そして自分の血を汚す事無く、人やモノを機械的に潰す事が出来る。そこに責任も何もない。

 そんなモノが少女は気に入らなかった。

 

 ふと顔をあげると、少し離れた場所から黒い煙が登っているのが見えた。もう現場まで近いのだろう。

 

「オルコットさん」

 

 ヘリのパイロットの声に、ふう、と一息吐いてから答えた。

 

「えぇ、分かっていますわ。近いのでしょう? 自律兵器が」

 

「はい。降下準備、お願いします」

 

 これが初陣となる事に、心が躍る。少女に与えられたものは自律兵器など簡単に凌駕する。オルコットと呼ばれた少女はヘリのドアに右手を掛け、空いた手でロールの掛った金色の長い髪に隠れた左耳についたイヤーカフスに軽く触れた。

 一抹の不安こそあれど、カタログスペック上簡単に倒せる筈だ。

 やって見せる。いや、やらなければならないのだ。そうじゃなければこれまで積み上げて来たものは何だったのかと言う話になってしまう。それだけは少女にとって耐えられた話じゃなかった。

 

「お気をつけて!」

 

 パイロットの台詞を背に少女はぽつりと呟いた。

 

「さぁ、参りましょう、ブルーティアーズ」

 

 そしてヘリから少女は――飛び降りた。

 

 

//

 

 

「ふぅ……」

 

 バラバラにされた自律兵器の残骸の跡。全て玲次が斬り裂き、殴り倒したものだった。とは言っても倒したのは4機だけなのだが。

 

【シールドエネルギー残量78%】

 

 酷くダメージを喰らった気がする。まぁ回避の一つもしなければこうもなるのだが。だがもうこれで終わりだろう。大きく安堵の息を吐くと聞きたくない機械の駆動音が聞こえて来た。

 

――まさか。

 

 そのまさかだった。

 先程倒した自律兵器と同じタイプが四脚に搭載されたローラーで走ってやって来たのだ。しかも玲次の逃げ道を奪うように、前方後方5機ずつの挟み撃ち。合計10機と言う先ほどの2倍以上の数でやって来られていた。

 

 残りのこのエネルギーでやって行けるのか。手数は先ほどより増している為にミサイルのシャワーを喰らってゴリゴリとシールドエネルギーを削られてしまうのは眼に見えていた。

 飛び方を知らない素人の身で生き残る事が出来るのか。最早博奕だ。分の悪い賭けは正直好きでは無いのだが、拒否が出来ない強制参加かつ賭け金が命となると勝負に出ざるを得ない。

 

 腹を括る。

 チャンスはある。アンカーと2本の高周波ナイフ、四肢に搭載された仕込み刃、そしてISの力でそれなりに強化された身体能力だけでやっていけるか不安だがやるしか無かろう。

 

 全機一斉にマイクロミサイルの砲門が開く。

 

――拙い

 

 回避に入る。ミサイルの軌道に関しては飛べたらきっと回避できるのだろうが地上ではそうはいかない。

 ぎりぎりの所で上手く回避できないかとタイミングを見計らう。上手く出来るかは不明だが、やるしかないだろう。そう思った矢先――身体が動かなかった。

 片足を持ち上げようにも持ち上がらず、腕も動かない。

 

 それはたった数秒だけの硬直だったが、このマイクロミサイル一斉発射のタイミングでのこの硬直は命取りだった。

 激しい爆音と共に玲次の居た場所は50発程の爆発に呑まれる。熱気が玲次の肌を舐める。そしてそのまま爆発に吹き飛ばされてしまう――

 

【初期化・最適化が完了しました】

 

 筈だった。

 爆煙を斬り裂く白い閃光が玲次の黒鉄を中心に発せられる。先程の50発のマイクロミサイルによるダメージはゼロに等しく、シールドエネルギー残量に変化は無い。しかし――

 

 装甲は様変わりしていた。

 黒がメインカラーなのは同じだが、よりシャープな形状へと様変わりしていた。そしてまるでこれまでに感じていた着込んでいるという感覚は消え、まるで己の手足のような機体のレスポンスの速さに玲次は驚愕した。

 

――行けるか?

 

 まるで先ほどの状態が嘘のようだ。

 玲次の無事を確認した自律兵器群は機銃とレーザーで蜂の巣にしようとするも、その前に玲次は地面を蹴った。まるで先ほどの動きは嘘のような感覚だった。高速道路で走っている車に近いかそれ以上の速度で一機に近寄り、爪先の刃を利用した跳び回し蹴りを叩き込む。

 

 多少の無茶にはISは応えてくれるらしく、すぐさま次の行動に出る事が出来た。地面に着いた手で強く押し込むようにしてジャンプし、両腕のアンカーを射出。別の二機の装甲を突き刺し、捕縛した事で振り回し、ビルの壁に二機とも叩き付けた。

 

 流石の玲次の動きの変わりように自律兵器も困惑したらしく、動きが鈍い。その隙に玲次は前方機体の始末に専念していた。既に二機はビルの壁に叩き込んで大破している。残りは3機のみだ。そのうち1機は回し蹴りを喰らって手負いだ。

 

 背後の5機から機銃の弾丸が飛んでくるのがセンサーで確認されたが、相手取らず、動き回る事で被弾を減らし、じぐざぐに動いて接近して中破した個体の傷口に塩を塗り込むように先ほどの回し蹴りを叩き込んだ場所と同じ個所を狙って飛び膝蹴りを叩き込んだ。まるで抉られるように変形してしまう自律兵器の装甲。

 追い打ちに両腕の袖口の仕込み刃で突き刺し、掻っ捌いた。

 

「次――!」

 

 黒鉄が眼前の自律兵器が完全に沈黙した事を報せてきたので、次の標的にターゲットを変えた。今度は比較的離れた個体のレーザー発射装置を狙い、左腕のアンカーを射出した。

 見事にレーザー発射装置に命中。どうやら補正はある程度ISが掛けてくれるらしく、思い通りにアンカーが自律兵器のボディに突き刺さった.

 そしてそのまま、手元まで引っ張ってからカウンターの要領で右肘打ちを叩き込んだ。無論、仕込み刃は展開している。深々と刃が突き刺さり肘にも直接当たった為、大きく装甲が歪む。悪あがきに機銃で玲次を撃とうとするも、読んでいた玲次は空いた腕で機銃を片方だけ切り落とし、マウントされた高周波ナイフを引き抜いてから、迷いなく抉るように叩き込んだ。返り血のように火花が飛び散る。そして数秒後、それは糸の切れた人形のように沈黙した。

 

「前半ラスト――ッ」

 

 接近しつつある後方の5機から一旦、小刻みなバックステップで距離を取り、近くに有った比較的大きな自律兵器の残骸をアンカーで固定。それをハンマーの如く前方に残った最後の自律兵器に叩き付けた。衝撃に耐えられず最後の一機も大ダメージを負い、追い打ちにもう片腕のアンカーを射出、引き寄せてから爪先の仕込み刃を使ったカウンターキックで切り裂きトドメを刺した。

 

 引き寄せられた勢いのままカウンターキックで斬り裂かれてしまった機体は玲次と擦れ違い、アンカーから外され玲次の背中で爆発四散した。

 

「はぁっはぁっ……くっ」

 

 合計9機目撃破。射出したアンカーを両腕に戻して、残り5機を一瞥する。

 

 身体に強烈な疲れが襲う。玲次自身それなりに鍛えており他と比べてそれなりに体力がある自信はあったのだが、今回ばかりは慣れない事ばかりをやった所為で普通より疲れが溜まりやすかった。

 ISの操縦も楽じゃないらしい。もっとも玲次の場合陸上戦しかしていないというISの性能を十二分に生かせていない半ば縛りプレイに近い状況な上に、常人では有り得ないような滅茶苦茶な動きをしたのもあるが。

 

 玲次は状況の整理をした。

 

――シールドエネルギー残量は……67%。装甲のダメージは軽微。大分後ろから喰らったとは思ったけどンな事は無いって感じか。おれがこいつに慣れたのか? 現状敵は残り5機、それまでにおれの体力が残るかどうか分からないけどまぁ……なるようになるかね。ここまで減ったし、位置取りとしても逃走は可能。つってもここで放置すればあのガラクタ連中が何しでかすか分かんないから自衛隊か代表なんたらが来るまで持ちこたえるのがベターな選択か?

 

 再び人だった肉塊に目をやる。あれを見れば放って置く気にもなれないというものだ。それに自律兵器群がこちらを狙っている以上、逃げれば被害は拡大する。そしてあのかつて人だった肉塊は増えていくのだ。それだけは避けたい、後味が悪い。

 

「やるか――」

 

 玲次は高周波ナイフを構える。無理して殲滅する必要は無い。自衛隊なりが来るまで生き延びれば良い。

 この黒鉄とやらが一体何なのか知らなければならない。篠ノ之玲次と名指しで呼ばれた以上自分には知る権利がある筈だ。だからこそ生き延びてやる。

 

 疲弊した身体を引き摺りながら残り5機に向かって一歩、踏み出す。

 

 ――が、そんな玲次の目論見は思いの外速く果たされる事となる。

 

 

 キュインッ! と耳をつんざくような音と共に蒼白い閃光が玲次の頭上を奔った。その閃光は一つだけでは無く、次々と飛んできて自律兵器を射貫いて行く。

 

「ッ」

 

 2発程度で1機が完全に沈黙していく。自律兵器に反撃を許す事無くたった15秒で5機が全て沈黙した。自分も撃たれる事を危惧した玲次は咄嗟に閃光の飛んできた方向へと身体を向けた。撃たれる事も危惧して高周波ナイフも構える。

 

「……IS?」

 

 閃光が飛んできた方向は上空。そして黒鉄のシステムがそのISの反応を示していた。

 

【戦闘モード状態のISを感知。登録操縦者:セシリア・オルコット。機体名:ブルー・ティアーズ】

 

 それは蒼いISだった。背中に4枚のフィン・アーマーを装備し、手には大型のライフルを持っている。操縦者は恐らく地毛の金髪で僅かにロールがかかっており、いかにも外国人と言う印象を与える外見だ。名前の他にも所属国家がイギリスだとか言った情報が流れ込んでくる。

 

「貴方、自衛隊の方ではありませんわね?」

 

 セシリアと言う少女の問いに玲次は頷いてから応える。

 

「一応一般人。そっちは……もしかして()()()()()?」

 

 そんな玲次の返しに、そのセシリアは些か信じられないようなものを見るような形相で銃口を玲次に向けていた……

 

 




:自律兵器四脚型
 最もポピュラーな自律兵器。装備は側面に搭載された機銃2門、マイクロミサイルポッド、レーザー砲1門。ローラー走行も可能。
 恐らく自律兵器の中で最も量産されている。
 火力面では対人ではオーバーキルかつ装甲は軽火器は殆ど通用しない為脅威として見られている。

 他にも六脚型、タンク型、戦闘機型が確認されている。人型は確認されていない。

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